2-衆-不当財産取引調査特別委…-16号 昭和23年04月27日

2-衆-不当財産取引調査特別委…-16号 昭和23年04月27日

昭和二十三年四月二十七日(火曜日)午後三時十七分開議
 出席委員
   委員長 武藤運十郎君
   理事 鍛冶 良作君 理事 辻  寛一君
   理事 梶川 靜雄君 理事 河井 榮藏君
   理事 荊木 一久君 理事 小松 勇次君
   理事 石田 一松君 理事 中野 四郎君
      高橋 英吉君    古島 義英君
      益谷 秀次君    山中日露史君
      橋本 金一君    野本 品吉君
      田中 健吉君    中村元治郎君
      徳田 球一君
 辻嘉六氏をめぐる政治資金の問題について出頭した証人
                世耕 弘一君
                青木  勇君
                杉田 馨子君
                大塚 令三君
                三宅 則義君
                宇田 國榮君
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本日の会議に付した事件
 一、辻嘉六氏をめぐる政治資金の問題
 一、証人出頭要求に関する件
 一、昭和電工、竹中工務店、梅林組、清水組、その他に関する融資問題
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[前略]

○武藤委員長 それでは青木さん、杉田さん、大塚さん、三宅さん、宇田さんの順序で伺います。
 まず青木さんから伺いますが、あなたと辻嘉六氏との関係をやや詳細に述べてください。

○青木證人 私の親代りになつているのが辻嘉六と申しまして、戰時中から現在に至るまでずつと関係を続けておりますが、そのほかのことといえば別に何でもないのです。

○武藤委員長 何か事業の関係でありますか。

○青木證人 事業の関係はありません。

○武藤委員長 どういうことで続けているのですか。

○青木證人 現在は私の親代りというほかには説明のしようがありません。

○武藤委員長 あなたは貿易商をしておられますか。

○青木證人 昔はやりました。昭和十八年からやめております。

○武藤委員長 貿易商をしているころには辻氏と関係はなかつたのですか。

○青木證人 ありましたが事業的には関係ありません。

○武藤委員長 何か貿易をやるのについて、官廳方面あるいは会社方面に辻氏の口入れ紹介等をしてもらつた。そういう意味で関係をしたのですか。

○青木證人 いいえ、違います。私は石綿、アスベストの貿易をやつておりました。

○武藤委員長 どういう機会から親代りというような深い関係になつたのですか。

○青木證人 自分の知事から紹介されまして、出入するようになつたのが端緒です。

○武藤委員長 親代りというと大事な間柄ですが、知事の紹介で出入りして親代りになるというのでは薄弱ですね。

○青木證人 私は今両親がありませんから。

○武藤委員長 それなら辻とは限らないでしよう。

○青木證人 しかし先ほど政治資金糾明ということをおつしやいましたけれども、私は政治資金に対して金を出したのではありません。

○武藤委員長 いや金のことを伺つているのではありません。親代りになつたのはどういう動機でなりましたかということです。

○青木證人 動機といつて別にありません。ずいぶん長いことだからそんなことは忘れている。利害関係とかそういうことはありません。

○武藤委員長 私の方は利害関係があるとか、金を何したかということを聽いておるわけではない。あなたと辻さんとの関係について聽いておるのです。親代りというから、親代りになるに至つたのはどういう事情ですかということを聽いております。何か初めから警戒をして、もし関係があると言つたら困るのじやないかという立場でなく、あつさり答えてください。

○青木證人 私はこわくも何もありませんから、ほんとうのことを言つておるわけであります。はつきり憶えておりませんけれども、昭和十五、六ごろ私の知人から紹介されてあすこに出入りするようになつた。

○武藤委員長 出入りして何をやつておいでですか。どういう用で……。

○青木證人 それは個人的なことで、ただ行つたり來たりすることです。

○武藤委員長 何かあるのじやないですか。

○青木證人 何かあるかと言われますが、ないものはない。ただ親代りに願つたのは終戰と同時ぐらいで、それまではただ出入りするというにすぎません。私が結婚をするときに親代りになつてもらつた。(「それなら何でもないのだ」「それを早く言えばいい」と呼ぶ者あり)

○武藤委員長 次に伺いますが、辻氏に百五、六十万円、あなたが献金をしておると辻氏は言つておられるのですが、その通りですか。

○青木證人 献金という意味ではなく、私が終戰前に三回か四回にわけて金を出したことはありました。

○武藤委員長 いつごろですか。

○青木證人 昭和二十年のころじやないでしようか。

○武藤委員長 二十年のいつごろですか。

○青木證人 三回から四回にわけて出しておりますから。

○武藤委員長 いつからいつごろまでですか。

○青木證人 まだ終戰になる前ですから、春から夏ごろまでの間、三回ないし四回にわけて……。

○武藤委員長 いくらぐらい……。

○青木證人 おそらく百四、五十万になるのではないかと思います。

○武藤委員長 それはどういう趣旨の金ですか。

○青木證人 そのときは牛込も経済的にはあまりゆたかでありませんし、ただ生活資金の一端にと思つて出しました。

○武藤委員長 向うから要求があつたのですか。あなたの方から自発的に出したのですか。

○青木證人 私は始終出入りしておりましたから、あそこのふところ勘定はよくわかりましす。だから私は自発的に出しました。

○武藤委員長 これはあなたのもつておつたお金ですか。

○青木證人 もちろんそうです。

○武藤委員長 そのときはもう商賣はやめておるでしよう。

○青木證人 やめております。

○武藤委員長 そうすると貿易でもうけた金ですか。

○青木證人 そうです。仕事でもうけた金です。

○武藤委員長 仕事というのはアスベストの貿易ですか。

○青木證人 そうです。

○武藤委員長 いくらくらいですか。

○青木證人 そのことはよくわかりません。

○武藤委員長 あなたがやつておつたのでしよう。

○青木證人 しかしいくらもうけたかということははつきりわかりませんですね。

○武藤委員長 大体でいい。

○青木證人 大体二三百万じやないかと思います。

○武藤委員長 そのうち百四五十万円献金したのですね。

○青木證人 そうです。

○武藤委員長 献金するときに二三百万残つておつたのですか。

○青木證人 残つておりました。それは私が熱海に家を五六軒もつております。もちろんそれも賣りました。

○武藤委員長 何か献金するときに條件みたようなものはなかつたのですか。

○青木證人 何もないです。そうして私が終戰後一つ会社をやるのに、辻から九十万か九十五万くらい会社が借金しておるはずです。それはいまだに帳面に残つております。日本化学産業という会社を私が終戰後辻から引継ぎまして、会社経営をやつたのですが、これは木材です。赤字が出ましたものですから……。

○武藤委員長 辻氏から会社を引継いだのですか。辻氏がやつておる会社をあなたが引継いだ……

○青木證人 そうです。私は昭和十八年に前の仕事をやめて、そのままおりました。ですから終戰後何か仕事をしなければいけないというので、その会社を引継ぎました。

○武藤委員長 その会社は辻さんがやつておつたのですか。

○青木證人 元はそうです。

○武藤委員長 そうすると全然事業関係がないということでもないのですね。

○青木證人 それは終惻後事業関係はできました。しかしその会社は一年足らずで赤字を出しました。それを辻にうめてもらつて現在に至つておるわけです。

○武藤委員長 ほかには辻氏に金を出したことはないのですか。

○青木證人 ありません。

○武藤委員長 百四、五十万円というのは相当莫大な金だが、辻以外にもあなたはどこかへ金を出したことはありませんか。

○青木證人 ありません。

○武藤委員長 辻という人はどういう人に考えますか。

○青木證人 まあいい人というよりほかに言い方がないですね。

○武藤委員長 政治家ですか。事業家ですか。

○青木證人 私はそういう面にはタツチしておりませんが、ただ自分の親代りだということでもつて、普通の人が親孝行するような氣持でおります。

○武藤委員長 一月に何回くらい出入りしますか。

○青木證人 最近は、その会社が終つてからはあまり行きません。

○武藤委員長 昭和二十年から二十一年ごろまでは……

○青木證人 この一年ばかりは行きませんですね。

○武藤委員長 献金した当時は……。

○青木證人 それは毎日のように行きました。

○武藤委員長 そのころに政治家がずいぶん出入りをしておりませんでしたか。

○青木證人 私は大抵朝行きますからよくわかりません。まだ寢起きを襲うくらいのものですから……。

○武藤委員長 あなた方から受取つた金をずいぶん多くの政治家に辻氏が配つておるというようなことがあるのだけれども、そういうことはあなたは聞いておりませんか。

○青木證人 聞きません。またそういうことは私たちに話しません。

○武藤委員長 君らからこういうふうな金を受取つても、これはみな結局政治家の諸君にわけてやるのだというような話は出ませんか。

○青木證人 聞きません。

○武藤委員長 ほかに何ございませんか。中野君。

[中略]

○武藤委員長 済みました。御苦労さまでした。それではお帰りになつてよろしいです。
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[後略]