1-衆-隠退蔵物資等に関する特…-17号 昭和22年09月23日

1-衆-隠退蔵物資等に関する特…-17号 昭和22年09月23日

昭和二十二年九月二十三日(火曜日)午後一時五十八分開議
出席委員
委員長 加藤 勘十君
理事 梶川 靜雄君 理事 大森 玉木君
理事 吉田  安君 理事 辻  寛一君
理事 本多 市郎君 理事 石田 一松君
清澤 俊英君    佐竹 新市君
田中 健吉君    小島 徹三君
鍛冶 良作君    北浦圭太郎君
水田三喜男君    明禮輝三郎君
村上  勇君    木下  榮君
小西 寅松君    中野 四郎君
徳田 球一君
出席國務大臣
司 法 大 臣 鈴木 義男君
商 工 大 臣 水谷長三郎君
國 務 大 臣 和田 博雄君
出席政府委員
總理廳事務官  國鹽耕一郎君
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本日の會議に付した事件
小委員會設置に關する件
現地視察に關する件
隱退藏物資等に關する問題
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[前略]

○徳田委員 鈴木司法大臣にお尋ねしたいのでありますが、今問題になりました埼玉縣の隱退藏特殊物件處理に關する調査資料というのがここへ出てきております。これは政府から出したものでなく、今聽いてみますと自由黨の方から出ておるようでありますが、この調査資料は今出てきたばかりでちよつと讀んでみたのですけれども、これだというと明確な犯罪だ。三和銀行の點もこれは犯罪で、この方はすでに八年の懲役が確定し服役したとかいう話であります。これには、新聞には六十二萬點いくらとありますが、もつといろいろのものを合計すれば、百萬點以上を勝手に隱匿したようなことになつておりますから、これに對しまして司法省では手を入れて、十分なる調査をしておらるるかどうか、これをお尋ねしたいのであります。

[中略]

○加藤委員長 ちよつと徳田君、司法大臣に對してほかに御質問がありませんければ、司法大臣から先般のことについてきわめて大まかではあるが、口頭で報告のできる程度のものを報告したいということでありますから、その方の報告を先に聞いてから今の御質問に移つていただきたいと思います。どうぞ鈴木司法大臣。

○鈴木國務大臣 先日ただいままでの隱退藏物資をめぐる刑事事件について報告をするようにというお話があつたのでありますが、できるだけ取纒めて御報告いたそうと存じて努力いたしたのであります。實は新聞等に出てすでに久しくたつているのでありますが、實際問題として調べている方ではいい加減に調べて片をつけるというわけにいかぬものでありますから、一々その先その先とたぐつてまいりまして取調べを進めてまいります關係上、いずれも取調べの途中にあるものが多いのであります。それでただいま詳細に全貌を明らかにするような御報告ができないことは非常に殘念でありますが、せつかくの御希望でありますから、ここにその概略を取纒めて御報告を申上げたいと思うのであります。ただ次の二、三の點についてお斷り申上げておきたいと思います。その一はここにいう刑事事件の範圍は全國の檢察廳が事件を受理したものに限らなければならないということであります。從つて新聞紙上に取沙汰されている事件でも、檢察廳が取扱う以前に屬するものにつきましてはここに觸れないこととするのであります。その二は、事件はこれを時期的にいうと、終戰から現在に至る間のものについて述べるのでありますが、通信連絡が不圓滑な状況にかんがみまして、必ずしも迅速に資材を集め得ているとは斷言しがたいのでありまして、また隱退藏物資をめぐるいろいろな現象の中で檢察廳の取扱いますところはもつぱらそれが刑事上の犯罪を構成した場合のみ積極的にこれに臨む立場にありまして、犯罪事實の確定にせ念せざるを得ない關係上、隱退藏物資の所在をたしかめるということ、すなわちその摘發という點からすると、きわめてその一部分の角度の觀察に局限せられるということであります。次にその三としては、後に述べますように、いわゆる隱退藏物資をめぐる犯罪は、隱退藏されている物資そのもの調査の必要にもとずく各種の特別法規の違反としてとり上げられる場合は、統計的にも比較的把握しやすいのでありますが、廣くこういう物資をめぐる犯罪ということになりますと、詐欺恐喝窃盗等の固有の刑法犯の中にこれを觀察しなければならないので、全國の檢察廳について、これらの刑法犯の内容がどうのように隱退藏物資と關係をもつているかということをたしかめた上でなければ、正確なことは御報告できない状況であります。殊に司法省としては、從來これらの刑法犯の内容について一つ一つ全部の内容の報告を徴する必要もなかつたので、本委員會の御要求に應ずることができまする資料は各檢察廳共にこれを十分に整えがたい状況にあるといわなければならんのであります。從つて私は全國の各檢察廳において若干の注目すべき事件として報告を受けたものの中から、隱退藏物資をめぐる犯罪という概念に照して適當と思われまするものを拾い上げて御報告を申し上げるほかはないことになりまする點を、とくと御了承願いたいのであります。
そこで隱退藏物資をめぐる犯罪という概念そのもののもつ常識性からいたしまして、統計的なる説明もはなはだ大ざつぱにならざるを得ないのでありまするが、まず順序として昭和二十年八月終戰當時及びその直後の混亂時の犯罪の統計の説明にはいることといたします。
ときの檢事總長は終戰後一箇月にして全國の檢事長及び檢事正に對して、終戰に伴う經濟事犯處理に關する件という九月十四日附の通牒を發しまして、終戰の混亂に乘じ軍需物資の處理軍需産業關係の經理に關する不當の措置に對する嚴重なる檢察を命じ、その後數囘にわたりまして次長檢事からも事件處理の徹底を指令したのでありまするが、年があらたまりまするとともに、司法、内務兩省打合せの上昭和二十一年二月全國的に一齊取締りを斷行いたしましたるところ、食糧について申しますると、米二千三百七十石、麥九千八百二十四石、乾パン三百七十六箱、小麥粉千五百八十六袋、その他澱粉、雜穀、乾うどん、カン詰、乾甘藷等多量の物を營團に引渡す成果をあげたのであります。續いて二月十七日隱匿物資等緊急措置令の公布とともに、同令違反の檢擧に乘出したのでありまするが、一應昨年六月末日までの報告によつて、いわゆる放出資關係の犯罪を概括いたしますると、こうなるのであります。報告を受けた被疑者の人員は千六百九十名でありまして、この期間中に起訴せられたるものについて申しますると、豫審請求が二十七件公判の請求が三百十九件、略式の請求が四十六件となつております。この被疑者を職業別にいたしますると陸軍軍人が二百六十八人、陸軍の軍屬が百十三人、海軍の軍人が百六十九人、海軍の軍屬が六十五人、軍需工場等の幹部が七十一人、同じく工員が五百二十五人、一般業者及びブローカーが百五人、消費者、農民その他が三百四十七人、また罪名別に分けますると窃盗が最も多く、その大部分は陸海軍將兵や軍需工場の職員、工員たちが終戰時の混亂に乘じて諸物資を不正に持出したものとか、またはこの物資集積所附近の住民が集團的に盗み出したものなどでありまして、横領は軍人、軍屬が保管物資を持出したり、または軍需工場の職員等が資材として支給され、または保管している物資をとつたり隱したりしたもの、あるいは日本通運その他の倉庫業者等が保管物資を横領し、配給の衝にあたる統制機關や官公吏が横領した場合も少くないのであります。そうしてこれらの物資が他に渡りまするときは必然的にやみ取引となつて國家總動員法違反となりまして、このことを種にした詐欺等が行われたのであります。
さきに述べた隱匿物資等緊急措置令の違反は同令に規定いたしておりまする調査物資について所定の期日でありまする昭和二十一年二月十日までの申告を怠つたことが發覺する事例が普通の形態でありまして、これに類することは指定生産資材在庫調整規則に至るまで各種の物資にわたつて設けられておりまして、これらの法令違反についてはいわゆる隱匿それ自體を内容とする犯罪なのでありまして、司法省もこういう違反については一應の統計をもつております。すなわち今これらの違反事件について、法律施行後今年六月末までの統計によつて檢察廳受理の被疑者數を法律違反の類別に見すると、隱匿物資等緊急措置令違反が千三十七人、生絲等の數量報告に關する件違反が七百十八人、眞珠竝びに眞珠製品の取引の禁止等に關する違反が百十三人、臨時貴金屬數量等報告令違反が九人、絹織物檢査蒐荷令違反が二十二人、鉛の調査報告に關する件違反が九人、パイプ類臨時措置規則違反が六人、生ゴム、ニツケル錫地金またはアンチモニー地金の調査報告に關する件違反二人、指定生産資材在庫調整規則違反二十一人、計千九百五十七人であります。
しかし以上申し上げましたところでは本委員會御要求のねらいに對應していないと思われまするから、隱退藏物資をめぐつて起りました一般犯罪について申し上げたのでありまするが、前に申し上げましたような事情から申して特に範圍を限定して統計を示すということに適しませんので、おもな事件約十件について事件の内容に重きをおいて、ごくあらましの御報告を申し上げて御參考に資したいと考える次第であります。
第一は皇國復興協力會事件、横領事件であります。昨年三月二十日鹿兒島地方裁判所の公判請求濟事件でありまするが、被告人は元憲兵中尉でありまして岩村英夫、同人は勤務先の鹿兒島縣下某陸軍療養所から復員するに際しまして、昭和二十年九月二十日ごろ米、澱粉、小麥粉、茶、わかめ、毛布、ふとん、かや、大なべ、食用油、木工具、鍛工具、電話機、電話線、エンピ、のこぎり、油脂、眞空管、自轉車、乘用自動車、貨物自動車、同附屬品、アルコール、ガソリン、その他多數の物資を多量に拂下げた名義で横領いたしまして、この數量も一々明らかになつておりまするが、何がいくら、何がいくらということを、あとで書面にお手もとに差上げることにいたしまして、あまりこまかくなつて長くもなりまするから、この數量を申し上げることは省略させていただきます。これを資本として皇國復興協力會という團體をつくりまして、燒跡整理等の土木運送の請負業を營んでおつた事件であります。
< 略>
第十一は、山北町の事件、窃盗と業務横領でありますが、横濱地方裁判所小田原支部に起訴濟みであります。被告人は神奈川縣山北町町長田代彌市、同助役武井郡平及び合資會社東海工業支配人神部北之助であります。本件は進駐軍から日本政府に引渡された物資、綿絲、短綿、撚絲、洋紙、水藥原紙、錫、機械油、電氣銅、それから釘、石綿粉、屋根用フエルト、ブリキ板、ワイヤロープ等多量を搬出いたし、あるいは隱匿いたしたのであります。同町民間で非常な紛議を招いた事件でありまして、綿絲について言いますと、同町が得た量は二百梱以上に達すると報告されております、
それからキヤラコ事件というものがありまするが、目下東京地方檢察廳において捜査中のものであります。被疑者は佐々木在久、大野圭演、泊利一、平山寅雄という者でありまして、佐々木は弊原男爵の甥であり、大野は朴烈の伜であり、泊は滿洲國高官であると名乘りまして、大倉喜七郎、中島知久平共有の無籍物のキヤラコ五萬七千反が桂公爵邸や野村大使邸の地下室に保管してあるが、大倉からこれを正規のルートによる賣捌き方を依頼せられていると稱しまして、G・H・Qの輸送證明書のごときもの及び朝鮮獨立促進青年同盟の加工委託及び輸送證明書を作成いたしまして、漆原徳藏ほか數名を欺岡いたしまして、代金名下に百九萬八千圓を騙取いたしまして、全部遊興に使用したことがわかつておるのであります。
その他大分地方檢察廳からの報告によりますと、群馬縣太田市の舊中島航空機太田工場に國際綜合大學を建設する資金獲得のため大藏、商工、内務、各省の拂下になつているキヤラコ、てんじゆく、サラシ、麻服地、ふとん、蚊帳、日用品、雜貨、藥品、軍手、軍足、地下たび、軍衣袴、作業服、窓硝子、ジユラルミン材、鐵板等合計二十四億圓ぐらいあり、拂下先は公共團體に限るが、入用はないかと申しまして水産業會その他からは注文を受けた者がありまして、あるいは連合總司令部が日本キリスト教團擴帳費用に充當するため軍管理物資中から物品を拂下げることになり、既に三箇月前日本キリスト教團が放出申請をなし許可せられ、總司令部直屬米軍衣料仕立工場主田邊某が約六、七十億圓程度の處理をすることができるというようなことを申したということが言われているのであります。
それから隱匿物資摘發權限あることを装つた者の状罪といたしましては、去る七月十八日宇都宮地方裁判所に窃盗罪で起訴されました井上登外四名のように、摘發情報係と稱して各所の倉庫等を檢査し、賍品の所在を確めておいてから後日不良朝鮮人等と組んで貨物自動車を利用し倉庫破りを敢行して各種生地類、衣類、毛布等を多量に奪いとつている事例がありまするし、また大阪地方檢察廳の報告によりますれば、安本隱匿退藏物資摘發隊員と稱する者の不審な行動に出ている數個の場合を示され、たとえば晝間の臨檢に加わつた者が夜間再び同じ家に現われて「晝間見せてもらつた物資を賣つてくれ、もちろんマル公とは言わない、即金で拂うから旅館で商談したい」などと申込んだ事實等があるのであります。
こういうふうに引例してきた多くの事件を通じて、私どもは次のことを知り得るのであります。すなわち隱退藏物資ありとして金錢の動くところはほとんど皆詐欺漢の策動にほかならない、まことしやかに傳えられる誇大な嘘言はいろいろの臆説を生んでこれを冷静に考えてみますれば、まつたくばかばかしい狂態の現出であります。
以上によりまして一應の資料に基くきわめてあつさりした報告を申し上げたわけでありまするが、冒頭に申し上げましたように、その角度からする資料がはなはだしく不十分でありまして、また犯罪捜査中に部分が少くないために、まことに簡略に過ぎるということは私といたしましても遺憾に存ずる次第でありまするが、御了承あらんことを希望いたすのであります。

○本多委員 ちよつとお伺いしておきたいと思いますが、今中曽根某のことを自由黨の公認としてということを説明されたようですが、私ども自由黨としては公認にはなつておらん。本人から獻金を條件に公認というような、いろいろな人を通じての運動のあつたととは聞いておりますが、公認の事實はない。その人物に對して信用ができなかつたので公認しなかつた。こういうことに黨の方ではなつているのですが、公認の事實をどういうふうにして確認せられたものであるか、それをちよつとお伺いしたいと思います。

[後略]