75-衆-公害対策並びに環境保全…-21号 昭和50年09月09日

昭和五十年九月九日(火曜日)午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 渡辺 惣蔵君
   理事 田中  覚君 理事 登坂重次郎君
   理事 林  義郎君 理事 森  喜朗君
   理事 島本 虎三君 理事 土井たか子君
   理事 木下 元二君
      橋本龍太郎君    八田 貞義君
      角屋堅次郎君    佐野  進君
      小林 政子君    中島 武敏君
      米原  昶君    有島 重武君
      岡本 富夫君    坂口  力君
 委員外の出席者
        厚生省国立公衆衛生院次長   鈴木 武夫君
        労働省労働衛生研究所労働生理部長      坂部 弘之君
        参  考  人(日本化学工業株式会社社長) 棚橋 幹一君
        参  考  人(日本電工株式会社社長)   松田  信君
        参  考  人(日本化学工業協会専務理事) 長澤 榮一君
        参  考  人(東京都副知事)      志賀美喜哉君
        参  考  人(東京都公害局規制部長)   田尻 宗昭君
        参  考  人(北海道夕張郡栗山町長)   則武 基雄君
        参  考  人(関東学院大学教授)     武藤 暢夫君
        参  考  人(北海道大学助教授)     渡部 真也君
        参  考  人(三重大学教授)      吉田 克巳君
        参  考  人(株式会社アグネ技術センター所長)     長崎 誠三君
        特別委員会調査室長      綿貫 敏行君
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委員の異動
九月九日
 辞任         補欠選任
  岩垂寿喜男君     佐野  進君
  米原  昶君     小林 政子君
  坂口  力君     有島 重武君
同日
 辞任         補欠選任
  佐野  進君     岩垂寿喜男君
  小林 政子君     中島 武敏君
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本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 公害対策並びに環境保全に関する件(六価クロム汚染問題)
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○渡辺委員長 これより会議を開きます。
 公害対策並びに環境保全に関する件、特に六価クロム汚染問題について調査を進めます。
 まず、本件に関して、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本日、参考人として日本化学工業株式会社社長棚橋幹一君、日本電工株式会社社長松田信君、日本化学工業協会専務理事長澤榮一君、東京都副知事志賀美喜哉君、東京都公害局規制部長田尻宗昭君、北海道夕張郡栗山町長則武基雄君、関東学院大学教授武藤暢夫君、北海道大学助教授渡部真也君、三重大学教授吉田克巳君及び株式会社アグネ技術センター所、長長崎誠三君、以上の方々の御出席を求め、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

[中略]

○有島委員 ありがとうございました。
 それで率直に言うと、ちょっと言葉がこなれてないかもしれないけれども、日本の国は長い間ずっと生産第一主義、経済第一主義で来てしまったのだ。そういった流れの中で、働いている方も雇っている方も、みんなそれが自明のようになっていた。そんな常識の中でいたから、おくれたというようなことでございますね。そうすると、これからは大分そういった意識が変わってきた。変わってきた中にあって、いま学者には、かなり有害の可能性が知られておるけれども、いままで余りまだ摘発されていなかったというような、クロムに似たような、こういったケースが次々にまた起こってくるであろう。といたしますと、どこら辺あたりに、それが出そうであるかというようなことを、お教えいただければ……。

○坂部説明員 われわれは職業がんが、いま最も深刻な問題だと思うのでございますが、職業がんの歴史を見まして、世界の塩ビ工業が発足して三十五年間たって、やっと肝臓にがんができるということがわかっているわけなんですね。世界でアスベスト工業が発足して四十五年目になって、初めてわれわれは中皮腫、メゾテリオーマが起きるということに気づいたわけなんです。そのように産業発展とともに、いろいろな職業がんが出ているのですが、その発見までに非常に期間がかかっているわけです。潜伏期間は長いし、探さなければ、あれは見えない、出てこないのですね、ある意味において。それでなかなか見つかってない。しかし、われわれが戦後における日本の経済の非常な発展で、いわゆる例の技術革新という名のもとに多くの化学物質を導入しておるわけなんですが、そういうものによる職業がんの危険というものが、これから出てくるかもしれない。現に去年とことし、去年とおととしにわたって、新しいものを二つ、また見つけているわけなんです。報告しましたが。そのために何が起きてくるかわからないという気がするわけなんです。しかし、われわれとしては動物実験において発がんの可能性のある物を知っているわけですね、少なくとも、それについては十分な対策をしていこうじゃないか。ところが、いままで塩ビなんて、それもわからなかった。そういう物がこれから出てくる可能性がある。
 そこで本当にざっくばらんに言いますと、全労働者に背番号をつけたいというのが私の気持ちなんです。というのは、背番号をつけて、どのような濃度に暴露して、そしていつ発病したかということがなければ、労働者が救えないわけなんですね。そうしなければ新しい職業病が確立しないということがあるわけです。ところがこれは絶対にできないだろう。プライバシーの問題と絡むだろうということに重要な問題が出てきたわけです。これは多くのわれわれの同僚からは支持されるだろうと思うのですが、何とかして労働者のプライバシーを侵害しないようにして、何らかの形で労働者のその暴露物質の記録を残すようにしていただきたい。それなしには疫学的研究が進まないわけなんです。渡部さんが苦労しましたように、われわれが苦労しましたように、必死になって探し回らなければいけないという事態が現在の事態です。これから先、考えていかなければならないのは、長い潜伏期の後に出てくる低濃度で暴露してきた職業がんに対して、われわれはどういう態度をとっていくかということが当面、大きな問題になるだろうというふうに考えております。

○有島委員 それでは、もう一つ伺います。
 同じ労働条件の中にありながら、がんになる人、あるいは鼻中隔せん孔になる人、いろいろあるわけです。お医者さんは、それは体質であろうというようなことであるわけで、体質とは何ですかと言うと、まだ解明されていない部分が体質だということになるようですけれども、私たち素人考えでございますけれども、労働したときに汗が出る、排除作用には塩というものが非常に関係があるであろうと思うわけです。ところが塩が、昔、使っていた日本の塩と、いまの電解で非常に純純なNaClというものとは大分、違っているのではないかというようなことを、ある学者から私は耳学問で聞くわけであります。昔ならば、重金属が五十種類ぐらい微量ながら入っている、そういったような複合的なものである。ですから、非常に純粋な形でもっての塩、ほとんどそれしか知らないで育っている人たちも、たくさん、いまいるわけですけれども、そういうようなものの排除作用ということについて、背の日本人といまの、ないしは今後の日本人で、そういった差も出てくるのではないかというようなことを、私は聞いているわけなんだけれども、そういったことについて何かお考えがおありになりましたら、伺わしていただきたい。

[後略]