71-衆-交通安全対策特別委員会-14号 昭和48年06月20日
昭和四十八年六月二十日(水曜日)午後一時三十二分開議
出席委員
委員長 久保 三郎君
理事 大竹 太郎君 理事 唐沢俊二郎君
理事 左藤 恵君 理事 中村 弘海君
理事 野中 英二君 理事 井上 泉君
理事 太田 一夫君 理事 紺野与次郎君
阿部 喜元君 越智 通雄君
加藤 六月君 片岡 清一君
佐藤 守良君 斉藤滋与史君
野田 毅君 野坂 浩賢君
沖本 泰幸君 松本 忠助君
渡辺 武三君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 新谷寅三郎君
出席政府委員
運輸大臣官房長 薗村 泰彦君
運輸省船舶局長 田坂 鋭一君
運輸省船員局長 丸居 幹一君
海上保安庁次長 紅村 武君
委員外の出席者
水産庁海洋漁業部長 大場 敏彦君
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本日の会議に付した案件
委員派遣承認申請に関する件
船舶安全法の一部を改正する法律案(内閣提出第六九号)
船舶職員法の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)
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○久保委員長 これより会議を開きます。
船舶安全法の一部を改正する法律案、船舶職員法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
まず、委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。
両法案の審査のため、委員を派遣したいと存じます。つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
[中略]
○新谷国務大臣 瀬戸内のカーフェリーの問題については、おそらくこの委員会でも御説明を申し上げたのではないかと思いますが、御承知のようにカーフェリーが非常に最近数が多くなるのみならず、内容も変わってき、大型化してきたことは事実でございますが、先般の瀬戸内におけるカーフェリーの事故につきましては、さっそく具体的に担当の検査官といいますか、担当の技術者を中心にして現地に派遣いたしまして、詳細に調査をされまして、その原因と推定せられるものはよく捕捉ができたと思っております。
これについてはあとで政府委員から御答弁させますけれども、とにかく構造上、つまり船舶安全法の上で欠陥があってあの事件が起こったかというお尋ねだったと思いますが、そうではなかった。ただ、その検査を受けました当時の状態がそのまま続いておれば、ああいったことにならなかったろうと思います。検査を受けた当時におきましては、原因と推定せられますエンジンルームのいろいろな故障、つまり油が噴霧状になって吹いた、それがエンジンの非常に温度の高い部分に当たって発火したということのようでございますから、検査を受けた当時の状態で保守されておれば、これはああいう事故にならなかったろう。のみならず、あの事故におきましては乗り組み員の訓練が十分でなかった。それで、エンジンルームのドアをあけっぱなしにして出ていってしまったり、いろいろの乗り組み員の過失と思われるような事故があったわけでございまして、そういったものも、カーフェリーがおそらく出たり入ったりが非常に激しいものですから、訓練が十分行き届かなかったというようなことも原因であったと思います。
それに対しまして、さっそく通達を出しまして、これは海運会社ですが、海運会社に対しましては、そういう船員の訓練の励行をしなさいということ、それから船が出ますときには、これは現行法にもあるのですが、ああいう旅客船においては、発航前に、つまり船が出る前に必ず事前の大事な部分の点検をしなさいと言っているのですが、それが励行されていないというようなことにつきまして厳重な注意をいたしまして、ことにカーフェリーについては、古いカーフェリーと新しいカーフェリーとがありまして、昭和四十六年が境のようですが、四十六年前に建造したカーフェリーとそれ以後のカーフェリーは安全基準が多少違います。それで、できるだけ四十六年以前の建造にかかるカーフェリーにつきましても四十六年以後のカーフェリー並みにしようというので、これはなかなかすぐにはできない面がございますが、そういった点について技術的にも検討させまして、できるだけ安全基準を高めるようにという通達を出しまして、いまそれを実行に取りかかっておるということでございます。
これはああいう事故が起こったのは、どこか安全法上の設備基準あるいは構造基準において欠けるところがあったのではないかというような御心配のようでございますが、あれをつぶさに点検いたしましたが、そういうことではなかったということでございます。しかし、現在の安全法で要求しております基準以上に安全性を高めるということは必要でございますから、現行法以上の安全基準を要求することに決定いたしまして、カーフェリーのみならず、一般の旅客船につきましても、小さな旅客船がたくさんございますから、その旅客船につきましても、いま、カーフェリーにおけるような問題を起こさないように、船会社に対しましても十分設備を整えると同時に、船員の訓練を怠らないようにということを通達いたしまして、ああいった事故が二度と起こらないような措置をしておるのでございます。
○紺野委員 「せとうち」の事件について、油が噴霧状になって出てきた。それが炎になって燃えたところですね。これはちょうど排気ガスのパイプが出てくるところで、石綿ですか、アスベストでもっておおうところがおおわれておらなかった。境のところですね。過熱して四、五百度のところで油が噴霧状で燃えたんじゃないか、こう言われているというふうにあのとき政府のほうの方からお聞きしたと思いますけれども、石綿でそこをおおうということがされておらない。それで、四、五百度の非常に高い排気ガスのパイプが露出しているというふうな面がやっぱりあったのですね。ですから、そういうふうに構造上、そこのところがこの間のあれでも十分出されておらない。そういう欠陥がやはりあった。十分そこはおおわれておらないで、もちろん油が出てこなければそうはならなかったかもしれないけれども、そういう過熱の露出部分があるとすれば、ああいう特殊な船ですから、ガソリンを満タンにした自動車が三十台ですか、あのときでも何台かあったというふうな爆発的な燃料をたくさん積んでいる、そういう構造の船でありますから、それにふさわしいように、万一のそういうことが起こりかねないような構造上の弱点ですね、それを絶えず点検しておくということがやはり必要なんじゃないでしょうかね。この点が一点。
それからもう一つ、そういう基準から見て、古い四十六年度前の船はいろんな弱点があるということを言われているのですね。この点、前の船の欠陥というものの程度、こういうものは一体どうなのかということと、それからカーフェリーそのものの船の本来的なものでありますけれども、自動車と一緒に旅客を満載するという、こういう船をそのまま許していいのでしょうか。つまりあの「せとうち」でも、定員を見ると四百二十二名なんですね。四百二十名ほどの定員になっています。それで乗り組み員は二十六名の定員なんですね。それがこの間は偶然に三十五名のお客さんで二十三名の船員であった。そして、発火してから五分後に救命具をつけさせて三隻のボートに乗せた。そして二時間五分後には数度の爆発を起こして沈没したのですね。ですから、かりに客が四百二十二名乗っておった、そして自動車も三十台だか積めるようになっておりますから、そういうことでああいうことが起きた場合、はたして安全に誘導するだけの乗り組み員の比例、あの二十六名でできるのかどうか。こういうふうな非常に根本的な点で何か不安があるのではないか。
○新谷国務大臣 私、さっき申し上げましたように、安全法あるいは船舶職員法、船員法等の規定が不備のために起こったのではないと思っております。船舶検査を受けました当時の状態ですね、結局安全法で要求しておりますのは、こういう石綿でおおってなければならない。それからまた噴霧状に噴出したというのはどこかに穴があいたからでしょうね。それから、それは毎日検査するわけじゃありませんから、そういう検査を受けた安全な状態に船をいつでも保持するということは、これは船舶所有者の責任であり、また船長の責任でもあるわけです、船長が船を預かっているわけですから。そういう問題はございます。ですから、安全法上の問題としましては、船舶安全法によって要求されておる要求をそのままいつでも持続しているという義務があるわけでしょうね。その義務が励行されてなかった、これにも責任が一つあると思います。
それから、おっしゃるように、いざ何か事故にあって遭難をしたという場合に、救命艇もあります。ブイもあると思いますが、そういったものをどう使うか、また、どういうふうにしてお客さんを誘導するかというようなことについては、これは当然訓練をされておるわけでありますから、訓練が徹底しているとそれは何でもないことなんですね。当然のことです。それを聞きますと、これは会社の責任ばかり言うようでございますけれども、訓練も十二分に行なわれてなかったという事実があります。そういった点は法律上の欠陥ではございませんで、そういった安全を保つために要求されておる各法律の要求を、十分船舶所有者あるいは船長がそれを満たすだけの措置をしてなかったというところに欠陥があるわけでございまして、私どものほうは、さっき申し上げましたように、さらに安全性を増す意味で、そういう欠陥、そういう過失がありましてもすぐにそういう事件が起こるようでは困りますから、なお安全性を高める意味において、構造上の問題、たとえば設備の問題とかそういった問題についてさらに強化すると同時に、船会社に対しまして、そういう訓練をもっと徹底して、それから、いまお話しになりましたような旅客の誘導とか、あるいは救命艇の使い方とか、そういったことについても十分船員が訓練されて、万一の場合でも対処し得るような体制をふだんからとっておきなさいということをやかましく注意しておるのでございます。だからその点は、法律に非常な欠陥があって、そのためにああいう事件が起こったというのとは違うということを申し上げたいと思います。
○紺野委員 大臣は非常にきれいに言ったと思うけれども、あれは構造上に欠陥はなかったかというと、私、あったと思うのです。いま言った石綿でおおっておくということは、そこの接点ですけれども、機関とそこから出てくる境のあたり、その辺が最初からこれはおおわれておらないような構造的なものになっているということが一つ。
それからもう一つは検査官ですね。政府の検査官がやはり少ないのだと私は思うのです。政府の船舶の検査の方々が合理化でどんどん定員を縮小して、そういうふうなところをほんとうにちゃんと、穴の気づかない点も、やはりそこは専門官でありますから、普通の船員でも必ずしも発見できないような弱点、構造的に不完全なところをちゃんと指摘するような人と時間というものが足りないのじゃないか。政府が法律はちゃんとつくったけれども、あと、人をちゃんとそれだけ十分にしなければああいうことが起こるわけでありますから、やはりそういう点での教訓をくまれておらないのじゃないか。おまえたち怠けていたのじゃないかというふうに論がいくと思うのです。
それから、労働者のほうも、あれによると、向こうに着いてすぐもう三十分か一時間で引き返さなければならぬ過密ダイヤでダイヤが動いている。そして時間は、ほとんど訓練の時間というものが作業時間の中に組み入れられておらないというふうな点からして、やるべきであるということを言っていてもそういうふうになっておらないですね。そういう点をやはりきびしく見て、そして安全法というものの実行面も、またカーフェリーのような危険な船に対しては特別の一そうの新しい注意と発展というようなものを考え出すというふうなことがなければ、ほんとうは怠慢じゃないかというように私は思うのです。
○新谷国務大臣 簡単にお答えしますが、先ほど申し上げたとおりでございまして、いまのあなたのおっしゃったアスベストで巻いてあるようなところ、これは安全法上、巻かなければならぬようになっている。おそらくそれは検査を受けたときには巻いてあったに違いありませんが……(発言する者あり)それはあなたがよく御存じないからです。定期検査と中間検査、いろいろな検査があります。いつでも検査のときにあらゆるところを全部見るかというと、そうではない。これは技術的に説明させてもけっこうです。安全法上はそういうものを要求しているわけです。その要求しているとおりに保持するということは船舶所有者の当然の責任で、船長は毎日それを見ているというのは当然の責任です。何万隻とある船を毎日検査官が行って見ているわけにはまいりません。検査を受けた当時に合格したその状態をいつまでも持続させるということは、船舶所有者の責任、船長の責任なんです。そのとおりにしてなかったということなんです。これは船舶安全法上に欠陥があるわけではないのです。
ただ、おっしゃるように、船員の訓練の問題なんかはおっしゃるとおりなんです。これはあまり航海の回数が多くて、営業中心でありますからそうなったのでしょうか、訓練時間を十分とって、そして、さっき申し上げたように、船は出航前に大事な部分を必ず点検をするということを義務づけてあるわけです。それを実行しなかったとすれば、これは船舶所有者なり船長の責任になるということはさっき申し上げたとおりでございます。
○紺野委員 監督官庁としての責任はないのですか。
[後略]