71-衆-社会労働委員会-15号 昭和48年04月13日

昭和四十八年四月十三日(金曜日)午前十時三十九分開議
 出席委員
   委員長 田川 誠一君
   理事 伊東 正義君 理事 塩谷 一夫君
   理事 竹内 黎一君 理事 橋本龍太郎君
   理事 山下 徳夫君 理事 川俣健二郎君
   理事 八木 一男君 理事 寺前  巖君
      加藤 紘一君    瓦   力君
      小林 正巳君    斉藤滋与史君
      住  栄作君    田中  覚君
      高橋 千寿君    戸井田三郎君
      登坂重次郎君    中村 拓道君
      羽生田 進君    増岡 博之君
      枝村 要作君    金子 みつ君
      島本 虎三君    田邊  誠君
      多賀谷真稔君    山本 政弘君
      石母田 達君    田中美智子君
      大橋 敏雄君    小宮 武喜君
      和田 耕作君
 出席国務大臣
        郵 政 大 臣 久野 忠治君
        労 働 大 臣 加藤常太郎君
 出席政府委員
        人事院事務総局職員局長    中村  博君
        環境庁大気保全局長      山形 操六君
        厚生省公衆衛生局長      加倉井駿一君
        林野庁長官   福田 省一君
        運輸省自動車局長       小林 正興君
        郵政省郵務局長 溝呂木 繁君
        郵政省人事局長 北 雄一郎君
        労働政務次官  葉梨 信行君
        労働省労政局長 石黒 拓爾君
        労働省労働基準局長      渡邊 健二君
        労働省労働基準局安全衛生部長 北川 俊夫君
        労働省職業安定局長      道正 邦彦君
        労働省職業安定局審議官    中原  晁君
 委員外の出席者
        議     員 川俣健二郎君
        警察庁交通局交通指導課長   加野久武男君
        林野庁職員部福利厚生課長   樋口  優君
        運輸省港湾局港政課長     岡田 専治君
        運輸省自動車局業務部通運課長 中島 真二君
        郵政大臣官房資材部長     田所 文雄君
    —————————————
本日の会議に付した案件
 国有林労働者の雇用の安定に関する法律案(川俣健二郎君外九名提出、衆法第二四号)
 港湾労働法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)
 労働関係の基本施策に関する件
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[前略]

○寺前委員 < 略>
 環境庁、長いことお待たせしておって申しわけございません。いま大気汚染の問題で、亜硫酸ガスの問題もずいぶん問題になっております。しかし、肺ガン問題というのは製鉄工場のあるところはやっぱり大きな問題になります。アメリカでは、最近は公害防止協定というのが州で結ばれるというところが出てきているわけですね。これはいまアメリカにおける公害対策としては、亜硫酸ガスにプラスしてこの問題が大きな位置を占めてきておる。しかもアメリカの経験からいうならば、アメリカの実態では、全体のこの関係の大気汚染の状況のうちで、コークス工場によって発生しておるのが大体六分の一である。あるいは、焼却炉によるところのものが半分近くある。発電所の関係がまたそれに近い状況にある。だから自動車関係におけるところの影響なんかは部分だ。問題はこういう製鉄所とか発電所とか焼却炉における問題が将来の大気汚染の肺ガン問題としては非常に重要な位置を占めておるということがちゃんと論文にも出ておるし、協定の面にもあらわれてきておる。私は日本の研究は非常におくれておると思う。そういうことから考えるならば、いま労働省のほうからいうならば、労働者に対するところの直接の被害に対する規制の問題としては、現に屋内作業場でなければ規制がされないのだから、事実上ないのにひとしい。それから環境庁のほうからいうならば、大気汚染防止法によって一体どれだけのことが保証されているのか。そうしたら、大気汚染防止法の二条五項の「粉じん発生施設」ということで、取り締まるということになるのだろうけれども、ところがここでもやはり同じことは、室内じゃありませんから、排出基準というのが実はないでしょう。法的にも野放しなんです、ここの分野においても。ですから、これは労働省の側においても環境庁の側においても、法的に将来の問題として重大な段階に来ておると思うのです。だから、すみやかにこの問題について、タールガスをまず明確に有害物質に——大気汚染防止法に「有害物質」の規定がありますね。その第一条にもなければ第十条にもないのです。非常に重大な位置として位置づけられていない。だから、はっきり有害物質として重大な位置づけを大気汚染防止法の中にも明確にしていただいて、そうしてすみやかに排出基準もきめ、構造的にも制度的にも緊急に対策を生むという決意を持っておられるのかどうか。私の問題提起に誤りがあれば御批判をいただきたい、私はそういうふうに思うので、まず環境庁の方にお答えをいただきたいと思うのです。

○山形(操)政府委員 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、粉じんの問題に関しましては、環境庁のほうは、粉じんの発生施設の構造、使用及び管理に関する基準しか定まっておりません。それから、それ以外のコークス炉、焼却炉、ボイラー等につきましては、一応ばいじんに関する排出基準をつけてありますが、御指摘のような三・四ベンツピレンを含む有害物質としての考え方というものはまだ出ておりません。
 その理由を少し申し述べますと、現在有害物質で大気汚染防止法に載っておりますのはカドミウムとか鉛とか塩素とか水素、弗素、窒素酸化物となっております。それから一般大気にどれだけあるかというような、非常に全国的なポピュラーになっておるもののうち、鉛に対してもまだ環境基準がきまってない段階でございます。そうして現在窒素酸化物について、これもまた胸部疾患としての問題がありますので、これの作業を進めておる最中でございます。御指摘の三・四ベンツピレンのような非常に発ガン性の問題を含む重要なものについては、これは早く有害物質としての取り扱いをしたいのでございますが、何せこれ全体の実態調査的なものもまだ実施されておりませんし、それから検査法の問題も、全国的にこれを微量計量するという問題も、これはなかなか技術の問題もあります。しかしまだ全般的には——砒素の問題、クロムの問題、硫化水素の問題、あるいはシアン、アスベスト、いろいろな紛じん中のものをこまかく手を入れて作業しております。三・四ベンツピレンの問題もその中には入っておりますが、これを直接排出規制をするというこまかい手段というものがまだなかなかむずかしいと思いますので、この点に関しましては労働省とも十分連絡をとりながら作業は進めてまいりますが、たちどころに現在、有害物質としてこれを入れてまず規制の手段を講ずるということは、ちょっと時間がかかるということを申し上げておきます。

○寺前委員 これは、時間をかけておったら、現実にもう過去の事態でも、私がさっきから言うように、ずっと広がっておるのですよ、皮膚ガン、肺ガンその他で。それが全部大企業でしょう。そんな、そこいらじゅうあるのじゃないのだから。局長さんのお話によると、三十八工場でしたか、しぼられている。しぼられているところが実は大気汚染でたいへんだ。その大気汚染も、亜硫酸ガスの面からはだめなんだ。いろいろ面がかかっている。その中に肺ガンという発ガン性物質の重要な位置がここに存在している以上は、この問題について緊急に検討してもらわなければだめだ。同時にそのことは、労働者の側においても健康管理の面において重大な位置に今日来ておる。しかもそれが規制が一つもない。野放しになっておるというのが実態だということになったら、緊急に労働省と環境庁に検討してもらって対策を出してもらうという決意をぜひとも持っていただきたい。だから、相当まだ時間がかかりますなんてのんびりしたことで国民に対する責務は果たせないと私は思う。労働省の考えはどうですか。

[後略]