68-衆-科学技術振興対策特別委…-14号 昭和47年06月07日
昭和四十七年六月七日(水曜日)午後一時二十五分開議
出席委員
委員長 渡部 一郎君
理事 木野 晴夫君 理事 佐々木義武君
理事 田川 誠一君 理事 藤本 孝雄君
理事 前田 正男君 理事 石川 次夫君
理事 近江巳記夫君 理事 吉田 之久君
大石 八治君 橋口 隆君
福井 勇君 井上 普方君
堂森 芳夫君 三木 喜夫君
古寺 宏君 内海 清君
山原健二郎君
出席国務大臣
国 務 大 臣(科学技術庁長官) 木内 四郎君
出席政府委員
科学技術政務次官 粟山 ひで君
科学技術庁長官官房長 井上 保君
科学技術庁研究調整局長 千葉 博君
厚生省公衆衛生局長 滝沢 正君
厚生省医務局長 松尾 正雄君
委員外の出席者
科学技術庁原子力局次長 倉本 昌昭君
文部省大学学術局研究助成課長 手塚 晃君
国立がんセンター研究所長 中原 和郎君
参 考 人(東京大学教授)太田 邦夫君
参 考 人(財団法人ガン研究会ガン研究所所長) 吉田 富三君
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委員の異動
六月七日
辞任 補欠選任
近江巳記夫君 古寺 宏君
同日
辞任 補欠選任
古寺 宏君 近江巳記夫君
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本日の会議に付した案件
科学技術振興対策に関する件(対ガン科学に関する問題)
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○渡部委員長 これより会議を開きます。
科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。
対ガン科学に関する問題調査のため、本日、参考人として財団法人ガン研究会ガン研究所長吉田富三君及び東京大学教授太田邦夫君に御出席を願っております。
この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、ありがとうございます。
わが国のガン研究は、ガンに関する各種学会、研究機関、病院、大学等において熱心に進められているのでありますが、医学の急速な進歩にもかかわらず、ガン患者は、日本のみならず世界的に年々増加の傾向を示していることは、まことに憂慮すべき状態であります。加うるに、高度経済成長に伴う大気、水質、土壌等の環境汚染は想像を越える速度で進行しており、これらと発ガンとの関係についても、国民は少なからず危惧の念を抱いていることは事実であります。
そこで、本日は、ガンに関する専門家である両参考人から御意見を承り、本問題調査の参考に資したいと存じます。どうかそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。
それでは、最初に、吉田参考人よりお願いいたします。
[中略]
○中原説明員 見解というよりもお話しをいたしましょう。
最近世界じゅうで日本だけが肺ガンが減っているんです。それはちょうど戦争中に巻きたばこというものが非常に欠乏した時代に成長した人がいまガン年齢に達して、それで減っている。うちの統計学者によりますと世界にこういう国はないそうです。それで趣きたばこは肺ガンの原因じゃないかということを主張したい人はそれをそういうふうに利用するわけです。それを私は否定する意思はありません。けれども、戦時中に欠乏していたものは巻きたばこだけじゃない。お砂糖もなかった、そのほかいろいろなものがなかった。ですから、そういうふうにものを簡単に割り切ってしまうということはやはり学問的には警戒を要する点があると思います。
○山原委員 どうも専門家にあうと一々あまり得手のすくないことになってしまうわけですが、次にこれは厚生省に伺いたいのです。
例のアスベスト、石綿製造の問題で、これにつきましても、肺ガンがこれと関係があるという報告がなされたのが一九三五年だと聞いております。その後一九七〇年、一昨年十一月に大阪で絶縁材あるいは断熱材としての電気器具、建築用のものに広く使われておる石綿の製造工場で従業員に肺ガンが多発しておるという問題が出ておりますが、御存じだと思います。これはすでに泉佐野、泉南、両市の石綿紡績、石綿紡織工場で最近十一年間に八人の肺ガン患者が出ており、そのうち六名が死亡しておるという状態でありますが、これについてこれらの工場における——全国的にこれはあると思いますけれども、ガンの定期検診とかあるいは精密検査、健康診断などがなされているんでしょうか、その点を厚生省に伺ってみたいと思います。
○滝沢政府委員 石綿も先ほど申し上げました肺ガンと関係を認定をされました職業性疾患と私は理解しております。したがいまして、石綿の健康管理につきましては、労働省が今度安全衛生法を改正しました中に、従事中に特殊な職業性疾患を起こすおそれのある工場に従事していた職員に、退職後も手帳を持たせまして健康管理をするという法改正をいたしましたので、先生の御要望にその関係者はこたえられると思うのでございますが、その周辺の者、住民というような問題が起こり得る可能性がある条件の場合には、これは一般住民対策としてわれわれが健康管理の立場からは実施する必要がございます。したがいまして、石綿等の工場の最近の実態というものは、労働衛生の立場からかなり周辺に散逸するような点を防止する対策が行なわれておりまして、過去のそのような工場が地域社会に粉じんをまき散らしたというような状態はかなり改善されていると思うのでございますが、問題がそういうように発展する可能性は防がれているとは思いますが、あれば一般住民の検診についてはわれわれのほうで考慮する必要がある、こういうふうに考えております。
○山原委員 たいへんおそくなってお疲れだと思いますが、あと二つだけまとめて質問をいたしたいと思います。国立がんセンター疫学部と癌研究所病理部が、沖繩医学会との共同調査、昭和四十二年から四十三年に行なわれております沖繩の全ガン患者千九百八十三例を診察集計したものでありますが、それによりますと、沖繩の胃ガン患者は本土の胃ガン患者の半分という数字が出ておるわけでございますが、これは事実こういう状態でしょうか。日本人に胃ガンが多いのはなぜ多いのかということは、ガンの専門家の間でもなぞにされておると言われておりますが、今後沖繩と本土のこの大きな差というものを足がかりにしまして、それぞれの胃ガンの原因を調べることにより、胃ガンの征服への道を開くことができると私は思うのでありますが、これについてどういう研究をされようとしておるのでしょうか。そういう計画があれば知らせていただきたいと思うのです。たとえばいままで胃ガンは米食によって生まれるなどということを私どもは聞かされたことがあるわけです。しかし、沖繩は同じく本土の者と同じように米食でございます。そういう点から考えまして、この差は一体どこから出てきたのか、どういう環境の中から出てきたのかというようなことが当然問題になると思うのでありますが、それらのことについて現在どのような研究の段階にあるのでしょうか、伺っておきたい。
[後略]