65-衆-産業公害対策特別委員会-17号 昭和46年05月18日
昭和四十六年五月十八日(火曜日)午前十時八分開議
出席委員
委員長 小林 信一君
理事 小山 省二君 理事 始関 伊平君
理事 渡辺 栄一君 理事 島本 虎三君
理事 岡本 富夫君 理事 寒川 喜一君
葉梨 信行君 浜田 幸一君
林 義郎君 松本 十郎君
阿部未喜男君 加藤 清二君
土井たか子君 古寺 宏君
西田 八郎君 東中 光雄君
委員外の出席者
参 考 人(セメント協会専務理事) 田中 巖君
参 考 人(公害追放臼杵市民会議議長) 小手川道郎君
参 考 人(臼杵青年会議所理事) 後藤 国利君
参 考 人(臼杵風成婦人会議議長) 亀井 良子君
参 考 人(東京大学教授) 増田 閃一君
参 考 人(宇部市市民部次長) 越村 禄郎君
参 考 人(滋賀県公害課課長補佐) 西川 丑郎君
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委員の異動
五月十八日
辞任 補欠選任
米原 昶君 東中 光雄君
同日
辞任 補欠選任
東中 光雄君 米原 昶君
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五月十四日
企業における産業公害防止組織の整備に関する陳情書(東京都千代田区丸の内三の二の二東京商工会議所会頭永野重雄)(第三〇一号)
公害対策の強化促進に関する陳情書(福岡市天神一の一の八福岡県町村会長三輪修平)(第三〇二号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
産業公害対策に関する件(セメント産業における公害と立地問題)
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○島本委員長代理 これより会議を開きます。
委員長が所用のために少々おくれますので、委員長が参りますまで、その指名により私が委員長の職務を行ないます。
産業公害対策に関する件について調査を進めます。
本日御出席の参考人は、セメント協会専務理事田中巖君、公害追放臼杵市民会議議長小手川道郎君、臼杵青年会議所理事後藤国利君、臼杵風成婦人会議議長亀井良子君、東京大学教授増田閃二君、宇部市市民部次長越村禄郎君及び滋賀県公害課課長補佐西川丑郎君、以上でございます。
この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。
本委員会におきましては、産業公害対策樹立のために調査を進めておりますが、今般、セメント産業における公害と立地問題について参考人に出席を求め、意見の開陳をお願いすることとなりました。参考人各位には、当該問題についてそれぞれのお立場から、忌憚のない御意見を開陳していただくようにお願い申し上げます。
なお、参考人の御意見の開陳は、おおむね一人十分程度といたしまして、あとは委員の質疑の際にお答えくださるようにお願いいたします。
それでは、最初に田中参考人にお願いいたします。
[中略]
○小林委員長 次に、西川参考人。
○西川参考人 私、滋賀県の公害課におります西川でございます。
滋賀県内におきますセメント工場の状況につきまして、概略を御説明申し上げたいと思います。
私どもの県内には、豊富な石灰岩の存在を背景といたしまして、セメント工場が現在三つ立地しておりますが、歴史の古い順序に申し上げますと、まず第一番目に、住友セメントの彦根工場がございます。これは初め野沢石綿セメントが経営しておりましたが、昭和四十一年に住友セメントに譲渡されたものでありまして、大型キルンを二基持ちまして、月産大体十六万トンの生産能力を有しております。工場の敷地面積は約二十万平方メートルでございます。従業員は二百七十名でございます。
第二番目は、大阪セメントの伊吹工場でございますが、この工場は伊吹山がほとんど石灰岩からなっておりますところに着目いたしまして、昭和二十七年に立地したものでございます。大型キルン一本を含めまして現在六本のキルンを持っております。月産は約二十万トン、工場の敷地面積は二十七万平方メートル、従業員は四百五十名でございます。
第三番目は、住友セメントの多賀工場でございますが、この工場は彦根の東南のほうにあります多賀町という町にございまして、住友セメントの彦根工場と同様に、当初は野沢石綿セメントの系列会社でありました東亜セメントという会社が経営しておりました。これは昭和三十五年に立地したわけでございます。この工場につきましても、彦根工場と同様に昭和四十一年に東亜セメントから住友セメントが譲り受けて現在経営しております。この工場は中規模のキルンを二基持ちまして、月産七万四千トンの生産能力を持っております。敷地の面積は四十万平方メートル、従業員は約二百名でございます。
滋賀県内のセメント工場は以上の三工場でございますが、比較的苦情の少なかった住友セメント多賀工場を除きまして、住友セメントの彦根工場あるいは大阪セメントの伊吹工場の公害の状況につきまして、御説明申し上げたいと存じます。
まず、住友セメントの彦根工場でございますが、当時野沢セメントでございましたが、昭和三十八年の暮れごろではなかったかと存じますが、当時としては日本一とも東洋一ともいわれておりました超大型のキルンを増設する計画を発表いたしまして、昭和三十九年の四月から工事を開始いたしております。この施設は、昭和四十年の二月に完成いたしまして、運転を開始しましたところ、機械の整備が不十分であったのか、あるいは運転がふなれであったのか、多量の粉じんが飛散いたしまして、民家の屋根といわず、植物といわず、粉じんをかぶって、まっ白になったというような状況でございます。また、ひどいところではたんすの引き出しの奥までセメントの粉じんが入っていたというような話も聞いております。こういうことで、住民から非難の声が非常に高くなりまして、県といたしましても、彦根市と協議いたしまして、こういうふうな苦情に備えるために、昭和三十九年からデポジットゲージ、これは直径が約三十センチメートルくらいのガラス製のじょうごで、下に、約二十リットル入りのびんで雨水と降下粉じんを一緒に受けるわけでございますが、こういうようなデポジットゲージというものを設置いたしまして、一カ月に一回たまった液を分析しております。ここに出てくる値といたしましては、一平方キロメートル当たり一カ月に何トンたまるかというような調査でございますが、このデポジットゲージを十五地点にわたって設置いたしまして、調査を開始いたしました。
調査を始めました昭和三十九年の四月から新しい機械が稼働する直前、昭和四十年の二月でございますが、この間では、多いときで大体一平方キロメートル当たり一カ月に十トン、少ないときで七トン程度の粉じんがありましたが、新しい機械が運転を開始いたしました昭和四十年の二月以降につきましては、急激に増加しております。これは先ほども申しましたように、運転のふなれの関係、あるいは設備の不十分の関係、いろいろあったと思いますが、このときのデータでは、多いときで一平方キロメートル当たり大体二十トン、少ないときで十一トンというような数字になっております。この数字は十五地点の平均の数字でございます。四十一年の四月に住友セメントがこういう状況にある野沢セメントの工場を譲り受けたわけでございますが、住友セメントといたしましては、地元からの苦情に従いまして、諸種の設備の改善をやっております。特に、四十二年の十一月には、クリンカーのクーラー部に電気集じん機を設置しております。こういうふうな公害防止の努力によりまして、大体それ以後は、多いときで九トン前後、少女いときで四トン前後まで減少しております。現在では彦根につきましては、住民からの苦情はほとんど出ていないような状況でございます。
次に、大阪セメントの伊吹工場でございますけれども、先ほど申し上げましたように、昭和二十七年に立地いたしまして、逐次設備の拡張をやっております。これは昭和三十六年には五号キルンまで増設しているわけでございますが、昭和三十六年ごろから住民の苦情がぼつぼつ出かけております。
この内容といたしましては、主として住宅の屋根、あるいは、とい、こういうところに粉じんがたまる、あるいは野菜やら果樹に粉じんがつきまして商品価値が低下する、そういうような苦情の内容でございますが、その後大型キルン、これは六号キルンでございますが、この大型キルンを設置する際、大型キルンの建設計画が明らかにされた昭和四十二年でございますが、この四十二年の終わりごろから一そう苦情が激しくなりました。
私どものほうといたしましては、地元の伊吹村あるいは隣村であります山東町、浅井町、こういうところと協議いたしまして、昭和四十二年の五月から九地点におきまして、先ほど申し上げましたデポジットゲージによる調査を開始しております。この当時の会社側の説明では、六号キルンができれば新式の集じん機を設置するので、さらに古いキルンは一基か二基休む、そういうことで粉じんは非常に減少するはずであるというような説明をいたしておりましたし、私のほうも、大体その辺の結果をはっきりつかむためにこういうふうな調査を始めたわけなんですが、この新しい六号キルンの稼働を開始する前の一年間とあとの一年間を調査しております。調査を開始いたしましたのは、四十三年の五月でございますが、新しいキルンの稼働開始までの一年間の九カ所の平均数値といたしましては、多いときで十五トンないし十六トン、少ないときで四トンないし五トンという数字が出ております。それから新しいキルンが動き始めた昭和四十四年の五月以降から四十五年の二月、昨年の二月でございますが、この間では、多いときで七トン、少ないときで五トン前後に減少しております。この調査につきましては、大体会社側の申し立てのとおりの結果を示しましたので、昨年の二月で一応私どものほうの調査は打ち切っております。その後、地元からの苦情は現在出ておりません。
以上が滋賀県下におきますセメント工場の公害の概要でございますが、私どもといたしましては、今後とも住民の生活環境をよりよいものにいたしたいということで、工場の公害防止設備の改善については、一段と強力に指導していきたい所存でございます。
説明を終わらしていただきます。(拍手)
○小林委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
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○小林委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
先ほどの理事会の申し合わせにより、参考人に対する質疑は各自十五分以内にお願いいたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
[中略]
○小林委員長 西田八郎君。
[中略]
○西田委員 けっこうです。
それでは、続けて両参考人にお伺いいたしますが、それぞれの自治体では、その地域の住民に何か金額的補償をしているような、先ほど亀井参考人でしたか、お話があったわけですが、そうしたことにおける地方自治体とその工場、あるいは市町村、住民代表を入れた場合もあるでしょうし、入れていない場合もあると思うのですが、そういう補償等について何かあったら、あるかないかの事実と、それから、それに対する内容等を御存じかどうかお伺いをしたいと思います。
○越村参考人 宇部市では、補償ということについて、問題が出たということは聞いておりません。
○西川参考人 大阪セメントの伊吹工場におきましては、昭和三十六年に伊吹村当局と協定を結びまして、毎年二百万円を払うというような内容ができております。それと、近隣の山東町という町があるのですが、こことも、金額は私いまはっきり記憶しておりませんけれども、五、六十万円ではなかったかと思いますが、毎年そのぐらいの金を出しているようでございます。住友セメントにつきましては、全くやっておりません。住友セメントの前身の野沢石綿セメントの時代に、若干そのような事実があったということを聞いております。
○西田委員 そこで、問題になりますのは、そういう補償が出されていると、いわゆる市町村議会あるいは地方当局から、金をもらっているんだから、もう少々のことはしんぼうしてくれや、頼むわ、というようなことで、私は、地方のボスが押えて歩くという危険性もあると思うのです。したがって、先ほど西川参考人は、そういうことでほとんど現在のところ苦情を聞いておりませんということですが、そうした補償ということとその苦情ということの関連について、金をもらっているから文句は言えないんだというような空気がないと思われますかどうですか。
○西川参考人 私どもの県といたしましては、公害の防止が補償金で片づくとは実は全く考えておりません。それで私どもといたしましては生活環境の調査をやり、粉じんがふえておれば当然会社に対して行政指導をすべきであるというふうに考えておりまして、その点苦情が出ていないということにつきましては、先ほども若干御説明申し上げましたように、デポジットゲージの量が比較的少ない、そういうことから考えまして、苦情がないのであろうというふうに想像しているわけでございます。
○西田委員 次に、両参考人にお伺いいたすわけでありますが、先ほどけい肺という問題も出ましたけれども、こうしたいわゆる粉じんによって現在住民の健康被害が出ておるかどうか。これはきわめて重要な問題だと思うのです。そういう点について、市なら市で検診車を走らせるとか、あるいは県で定期的にそうした健診をしているとかというようなところまできめこまかいことをやっておられるのかどうか。それと、実際に健康被害が出ているかどうか。その二点についてお答えいただきたいと思います。
○越村参考人 お答えいたします。
宇部市におきましては、一昨年の十二月に山大の公衆衛生学教室に委託をいたしまして、小学校の全児童、一年から六年まで一万二、三千人おりますが、それの、いわゆる学童の呼吸器疾患のアンケート調査というものを行ないまして、その第二次、第三次調査を昨年からことしの一月まで行なっております。また、今年度におきましても、引き続き小学校の一年から六年までの学童全部を対象にいたしまして、同じ調査を実施して、そしてその結果に基づいて、調子の悪いといいますか、そういった者がおれば、治療をどうするということを具体的に進めていこう、こういうことでございます。
それから、宇部市は大気汚染防止法の旧法によります指定地域になっておりますので、その指定地域内の一般住民一万人を対象に空気のよごれ調査を実施いたしました。アンケート調査がございます。それに基づき香して、ことしの六月から九月ごろにかけまして、三千人を対象に重ねてアンケート調査を実施する。その結果に基づきまして、さらに医学部のほうで検討していただこう、こういうようなことで現在は進めております。(西田委員「被害のほうは……」と呼ぶ)被害のほうは、先般市議会におきましてもそういったいろいろな問題がございますけれども、山大の専門学者のお話によりますと、それによって公害病と認定するというものは、まだいまのところ発見されるに至っていないというようなことを聞いております。
○西川参考人 滋賀県におきましては、健康関係の調査はやっておりませんので……。
○西田委員 時間ですから、これで終わりますが、参考人の方々、本日はお忙しいところをほんとうにありがとうございました。私どもも一生懸命になって公害対策にがんばりますので、それぞれの立場でひとつ御努力をお願いをいたしまして終わりたいと思います。
[後略]