64-衆-社会労働委員会-6号 昭和45年12月11日

昭和四十五年十二月十一日(金曜日)
    午前十時五十分開議
 出席委員
   委員長 倉成  正君
   理事 伊東 正義君 理事 小山 省二君
   理事 佐々木義武君 理事 増岡 博之君
   理事 粟山 ひで君 理事 田邊  誠君
   理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君
     小此木彦三郎君    梶山 静六君
      唐沢俊二郎君    小金 義照君
      斉藤滋与史君    松山千惠子君
      向山 一人君    山下 徳夫君
      渡部 恒三君    安宅 常彦君
      川俣健二郎君    小林  進君
      後藤 俊男君    島本 虎三君
      藤田 高敏君    山本 政弘君
      米田 東吾君    古寺  宏君
      古川 雅司君    渡部 通子君
      西田 八郎君    寺前  巖君
 出席国務大臣
        郵 政 大 臣 井出一太郎君
        労 働 大 臣 野原 正勝君
 出席政府委員
        通商産業省重工業局長     赤澤 璋一君
        郵政政務次官  小渕 恵三君
        郵政省郵務局長 竹下 一記君
        郵政省人事局長 北 雄一郎君
        労働省労政局長 石黒 拓爾君
        労働省労働基準局長      岡部 實夫君
        労働省労働基準局安全衛生部長 北川 俊夫君
        労働省職業安定局長      住  榮作君
 委員外の出席者
        通商産業省公害保安局工業保安課長      眞野  温君
        労働省労働基準局監督課長   吉本  実君
        労働省労働基準局補償課長   松尾 弘一君
        労働省労働基準局賃金部家内労働室長     高橋 久子君
        労働省婦人少年局長      高橋 展子君
        日本電信電話公社総務理事   井田 勝造君
        社会労働委員会調査室長    濱中雄太郎君
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委員の異動
十二月十一日
 辞任         補欠選任
  川俣健二郎君     安宅 常彦君
  後藤 俊男君     米田 東吾君
同日
 辞任         補欠選任
  安宅 常彦君     川俣健二郎君
  米田 東吾君     後藤 俊男君
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< 略>
    —————————————
本日の会議に付した案件
 労働関係の基本施策に関する件
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○倉成委員長 これより会議を開きます。
 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。

[中略]

○古川(雅)委員 この百七十四条につきまして、いわゆるきめ手になっていく排出の抑制基準値というものがあるわけです。これが、伺うところによりますと、鉛、四エチル鉛、それからPCP、ベンジジン、この四種に現在のところ限られているということでございます。いわゆるカドミウムとか水銀、弗素、塩素ガス、それからCO——一酸化炭素でございますね、そういった非常に公害と関連のある物質については、この基準が明らかにされていないという点は一つ問題じゃないかと思うのでございますが、安全衛生管理の面から、この点についてはいかがでございますか。

○北川政府委員 御指摘のように、特別則で、たとえば四アルキル鉛とかあるいは有機溶剤とか、それから鉛中毒予防則というようなもので取り締まっておりますほか、ベンジジン、ベータナフチルアミン等は、通達をもちまして排出等につきまして規制を行なっております。それ以外の御指摘のシアンとかあるいはカドミとか、そういうものにつきましては何らの基準を示しておりませんでした。先般の総点検の結果、労働者が非常に危険にさらされる物質というものがクローズアップされてまいりました。例をあげますと、たとえばクロムとかシアンとかカドミとかアンモニアとか、そういうものにつきましては規定がございませんけれども、やはり労働者がそれをかなり扱って疾病も出ておる、こういう結果でございますので、百七十四条の中身につきまして、排気についてはどういうものを重点にやるか、あるいは残滓物についてはどうするかということをいま検討中でございます。
 一応そのおおむねの方向を申し上げますと、排気につきましては今後ベリリウムとか、きょうの新聞で問題になっておりますアスベスト石綿)、それからベンジジン、ベンジジンはやっておりません。有機燐、砒素、こういうものを考えておりますし、排液の関係でもアルキル水銀とかあるいはクロムとかシアン、それから残滓物でもカドミ、鉛、こういうようなものを今後検討いたしまして、その抑制目標あるいは基準というものをどこに置くか、それに近づけるためにはどういう措置をすればいいかというような具体的指導等も、法令の整備とともに通達等で明らかにしたい、こう考えております。

○古川(雅)委員 これは、先ほど藤田委員の御指摘にもあったと思うのでございますが、そういった基準、抑制のきめ手がない上に、それを検討するというようないま段階ではないと思うのです。
 さらに大きな問題になってくるのは、労働省自体の人手不足によって監督行政のしようがないという点がもっと大きい問題じゃないかと思うのでございますが、この点はいかがでございますか。検討もけっこうでございますし、当然基準をきめていくことも十分これは必要でありますし、これまで野放しになってきたということが最大の問題でございますけれども、基準を定めてそれをまた監督していかなければならない、指導していかなければならない。人手不足の面についてはいかがでございますか。

[中略]

○古川(雅)委員 今回のこの事業所の総点検につきまして、私は、この「週刊労働ニュース」という新聞の十二月七日付で読んだわけであります。そのほかの新聞にも報道されておりまして、当局のほうからも調査結果の概要について資料をいただいておりますし、いずれにいたしましても、有害物質を取り扱っている事業所の実態、そしてまた有害物質の排出処理の状況あるいは健康障害に対する健康診断の結果、そういったものを重点的に調査をしておられるわけでありますが、この総点検の結果をどう今後の安全衛生対策に生かしていくか、この点に大きな労働者としての期待が集まると思います。この調査で明らかにされましたように、六十五万人の人たちがこうした危険な労働環境の中に置かれているというこの実態ですね。そしてまた、この総点検の結果によりまして、その中から千九百四十五事業所に労働衛生規則違反で警告や行政措置を行なったというふうに報告をされているわけでございます。この総点検のそういう報告を受けたわけでありますけれども、先ほどの質問にもございましたように、再度やはり労働者の保護という立場で、これ以上危害を拡大しないという意味で、このあとどういう手を打っていかれる予定か。さらに警告を続けていくというような措置によるのか、あるいは何らかの行政指導というものを考えていかれるつもりか。さらに基準監督局の指導にもかかわらず、その改善に努力をしないというようなそうした事業所が当然出てくると思いますが、そういう事業所に対してどういう態度で今後臨んでいくおつもりであるか、その点をお伺いしたいと思います。

○北川政府委員 今回の調査を今後行政にどう反映さしていくかという問題でございますけれども、今回の調査によりまして、どういう地域にどういう物質が使われておって、どれだけの有所見者がいるかということが明確になってまいりました。そういう意味では、行政の的をしぼることができるのではないか。先ほど百七十四条については、抽象的でしり抜けではないかという御指摘がございましたように、ややおそきに失しますけれども、百七十四条をもっと明確にしようということで、先ほど申し上げたような物質等につきまして、早急に抑制目標あるいは基準あるいはそれの措置というものを明らかにするということが第一点でございます。それから、健康診断をあわせてこの際やっておりますけれども、法律で健康診断を義務づけております、特殊検診を義務づけております業種につきましては、八〇%から九〇%の実施率であるにかかわらず、行政指導あるいは法律の規制のない業種につきましては、二〇%くらいと非常に、実施率が悪い。その結果、有所見者の数につきましてもはなはだ信用できないような数字ではないか、その部面についてはそういうような感じもいたしますので、健康診断の実施義務についてもっと広く業種を指定する必要があるのではないか。あるいはそれに応じて検診項目も追加する必要があるというようなことでの行政面の充実をまずいたしたいと思います。
 それから、もうすでに一部につきましては器具等を配置をいたしておりますけれども、まだまだ検知器あるいは測定器というようなものが不十分でございますので、これにつきましては、来年度予算でかなりの増額要求をいたしておりまして、それの実現をぜひお願いをいたして、今度の調査の場合には、少なくとも清浄装置があるかないかというだけでなくて、なければ、ではその結果どうなっているか、あるいはあっても有効に働いているかどうかというようなところまで突っ込んで、そのときは物質をしぼらなければいかぬかと思いますが、そういうもっと正確な一歩突っ込んだ総点検というものもなるべく早く実施をいたしたい、こう思っております。
 それからもう一つは、こういう結果もございますし、それから最近続発しておりまする災害、さらには古寺先生御指摘の新しい職業病対策という意味からも、何といいましても第一線機関の増強というものに結びつけていきたい、そういう方向で今後努力をいたしたいと思っております。

○古川(雅)委員 この有害物質を取り扱っている事業所の問題につきましては、公害問題が今日これほど大きな社会問題としてそれこそ臨時国会が開かれるまでの大問題に発展しながら、そういうものを実際に取り扱っている事業所自体において、こうしたシアンとかクロムとかカドミウムあるいは石綿とか鉛とか、そういったものを取り扱っている全国の工場、事業所の七割がほとんどその処理施設を持っていない、あるいは二割余りが廃液や残りかすの処理装置を持っていない、こういったことをこの総点検によって明らかにしたわけであります。これは、一面から言えば非常にショッキングな総点検の結果の公表ではなかったかと思います。こうしたシアンなんかを未処理のままにたれ流しているというようなことが今回の臨時国会の論議の中にずいぶん繰り返されましたけれども、少なくともこうした有毒物、毒劇物の取り扱いについで、これはやはりこうした事業所の中で個々の作業員が取り扱っていくその危険の中で、そうした労働環境の中に置かれているという点から考えますと、これまでいろいろ御答弁をいただいてまいりました数々の問題点について、これはもう早急に対処しなければならない。さしあたって今度の総点検の結果をどう反映していくかという点についてはいま御答弁をいただいたわけでありますが、昭和四十六年度、来年度の労働省の施策の中にこれが大きく反映され、大きな効果を生むように期待をいたしまして、ちょうど私の持ち時間になりましたので、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

[後略]