61-参-社会労働委員会-27号 昭和44年06月26日

昭和四十四年六月二十六日(木曜日)午前十時三十分開会
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   委員の異動
 六月二十五日
    辞任         補欠選任
     藤原 道子君     成瀬 幡治君
     上田  哲君     阿具根 登君
     中村 英男君     田中  一君
 六月二十六日
    辞任         補欠選任
     田中  一君     中村 英男君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         吉田忠三郎君
    理 事
                上原 正吉君
                大橋 和孝君
                上林繁次郎君
    委 員
                黒木 利克君
                塩見 俊二君
                高田 浩運君
                玉置 和郎君
                徳永 正利君
                山崎 五郎君
                山下 春江君
                山本  杉君
                横山 フク君
                阿具根 登君
                小野  明君
                田中  一君
                成瀬 幡治君
                瓜生  清君
   国務大臣
       労 働 大 臣  原 健三郎君
   政府委員
       労働省職業安定局長       住  榮作君
       労働省職業訓練 局長       石黒 拓爾君
       建設省計画局長  川島  博君
   事務局側
       常任委員会専門員        中原 武夫君
   説明員
       大蔵省主計局主計官       辻  敬一君
       労働省労政局労働法規課長    大塚 達一君
       労働省労働基準局労災管理課長  桑原 敬一君
       労働省労働基準局労働衛生課長  伊集院兼和君
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  本日の会議に付した案件
○職業訓練法案(内閣提出、衆議院送付)
○労働問題に関する調査(労働者の災害補償等に関する件)(株式会社畑鉄工所の不当労働行為に関する件)
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[前略]

○理事(大橋和孝君) 労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。
 御質疑のある方の発言を求めます。

[中略]

○阿具根登君 じん肺問題で、伊集院課長さんに私がここで質疑を行なうなら、時間が何ぼあっても足りませんから、一、二点だけピックアップして伺いますが、合併症の場合、結核がなおった時点において、これがけい肺の一症度、二症度、あるいは三症度になるか、そうした場合に、この人は、二年以上たって会社もやめて、年金も打ち切られる。そういう形になった方を雇ってくれるところもない。まことにみじめな姿になるのですが、そういう点についてどう考えておられるか。
 さらにけい肺で衰弱しておったがために、余病を併発して最近なくなられる方が非常に多い。そしてこれが皆さんのほうにも陳情あるいは抗議で来ておると思うのです。それに対しては、まことに冷たい法の見方がなされておるのじゃないかと思うのですね。これは私、極端な例を申しますと、ガンになった、ガンで死んだ、お医者の方はガンで死んだのだから労災の適用はありません、こうなるわけなんです。そうすると、それが正しいのだとして一切この適用は受けられない。しかし、今日医学でいわれるのは、ガンの早期治療、早期発見はこれは必須条件で、必ずなおる、手術すれば必ずなおる、こう言っておられるが、早期発見しても、手術しようにも、じん肺で衰弱してしまっておるからだは手術に耐え切らない。だから何ごともなし得ずして死ぬのを待つばかり、こういうことになるわけです。これは極端な例で、私も研究してもらうようにお願いはしてあったんですが、その他いろいろの病気になっても、まずからだが衰弱してきておる、そのために治療が思うとおりにいかない、そして死んでいくけれども、病名はじん肺じゃない、こういう例が非常に多いようですが、これに対してどうお考えになっておるか。
 もう一つ、四症度の場合は、年金で何とか治療をしておりますが、これにもまたいろいろ意見がございますが、四症度、三症度、二症度、一症度という場合に、もう少し考え方はありはしないか。三症度は粉じんの職場には行けない。職場は転勤させられる。転勤するときの転勤料はもらう。しかし、賃金は下がる。これではあまりひどいではないか。この三点にしぼってお答えをいただいてきょうの質問をやめたいと思いますから、どうぞよろしくお願いいたします。

○説明員(伊集院兼和君) 先生御指摘の第一問は、管理区分四に該当して療養中の場合、幸いにして結核合併症が好転をしたために、管理区分三に変更される場合ということだと思います。じん肺法は、健康管理法でございます関係で、ただいま御指摘のとおりのことになるわけでございます。ただし、そのことは、先生の三番目の御指摘の問題とも関連があるかと存じますが、じん肺法が制定されました当時には、けい肺法の法施行の過程の中で、かつてじん肺が不治の病であるというふうに言われておりましたのが、幸いに部分的には治療効果がある。ことに、御指摘のように、本来のじん肺についてはなかなか治癒は期せられがたいけれども、合併症については、合併結核については、治癒の可能性があるということで、四から三への転換ということも一応予定されたわけでございます。しかしながら、実際問題といたしまして、その後の運営におきましては、確かに幸いにして部分的にそういうことがあり得たわけでございますが、同時に、具体的な作業能力の判定等については、なかなかむずかしいことがございます。したがいまして、管理四から管理三に変更されます場合につきましては、非常に慎重にケースごとにこれを取り扱うことによりまして、そのケースごとの処理に当たっているというのが実情でございます。したがいまして、その実数はただいま手元に持っておりませんが、非常に例外的な数だと御報告申し上げることができると存じます。
 なお、第二点につきましては、管理四として、じん肺の療養中における死亡の場合に、必ずしもじん肺による死亡として取り扱われない場合があるではないかという御指摘だと存じます。御承知のように、死亡に際しましては直接の死因、間接の死因等がございます。じん肺によりまして療養中の者でも、直接、間接、必ずしもじん肺によって死亡するとは限らないわけでございまするので、死亡の直接、間接要因が、いわゆる死亡原因がじん肺と無関係だという場合には、御指摘のように、じん肺による死亡としての業務上の取り扱いということができないというのが確かに法律上のたてまえでございまして、そのように実施されなければならないわけでございます。また反面、ただいまガンのことについて特に御指摘がございましたが、じん肺の中にはいろいろな種類のじん肺がございます。中には石綿によります石綿肺がございます。石綿肺につきましては、これが肺臓ガンに転化する可能性というものも、学問上も論議がなされておるような次第でございます。その意味では全く無関係だとはいえないという観点で処理をいたしております。またじん肺によりまする肺の機能障害、心臓の機能に及ぼす影響から、心臓マヒが起こったという観点で、いわゆる肺性心の診断のもとに、この種の死亡について、業務上の取り扱いをいたしておるというのも多数ございます。これを要するに、今日じん肺で療養をしておられる方の大部分の方の中で、不幸にして死亡された方の大部分は、今日業務上の死亡として取り扱われておるわけでございますが、何ぶん死亡の際に、最初に触れましたように、直接間接ともに関係がないのだという診断をいただいておる場合には、最初の原則に戻らざるを得ないというのが実情でございます。なお、これらにつきましては、先ほどのじん肺審議会でも御検討をいただきまして、今後運用上、特に具体的な一そうの配慮を引き続き行なうことという御要望をいただいておる次第でございます。
 なお、三番目の問題は、管理一、二、三という中で、特に管理二、管理三、その中でも特に管理三はじん肺の所見が軽微といいがたい程度にある。そのために、粉じん作業からの配置転換を勧告すべき対象でございます。しかしながらじん肺の治療については、特段に今日の治療技術の効果がないという観点から、治療の対象になっておりません。したがいまして療養補償の対象にもなっていないということでございます。しかしながら、御指摘のとおり、配置転換を必要とする程度に障害があるわけでございまするから、労働能力等につきましても、ケースによっては多少の相違はあるにしても、相当の労働能力障害ということも当然に考えられるわけでございます。その観点で従来から配置転換手当等の支給はございますが、それ以上に何らか保障の手段はないものかということがじん肺審議会でも審議をされて御審議いただいておるところでございまして、先ほど小委員会が昨月引き続き開催されましたのも主としてこの問題でございまして、この問題は、実はじん肺審議会は、じん肺健康管理についての審議をされるところでございますが、それと関連をして審議をされました。先ほど御質疑のございました労災補償審議会のほうに、このことについて具体的な御要望を申し上げたらどうだということで、近く重ねてじん肺審議会が開催され、ここで労災審議会のほうに御要望を申し上げるという結論を御答申いただくのじゃないか、かように存じております。

○阿具根登君 最後に大臣がお見えですから御要望を申し上げておきたいと思うのですが、短時間で労災の問題を一応質問申し上げて終わるわけですが、私が質問申し上げた真意は十分おつかみいただいたと思うのです。特に人命の問題につきまして、何か職場で命を失うことが一番生命の価値は安いのだと、職場で死ぬのだったら途中で自動車にひかれて死んだほうがよかったのだというようなことが言われるような今日でございますので、格段と前向きのひとつ施策をお願い申し上げたい。
 さらに、ただいまのじん肺の問題は、すでに法律が出て久しい。もうこれは何にも心配はないのだというようなことがささやかれておるのですけれども、事実は逆で、ますますじん肺患者もふえておるし、その陰で非常に泣いておる。伊集院課長さんが言われるように、審議会の中でもその問題が審議されておると思います。どうぞ大臣のひとつ決断力で労災法がいまよりも数段明るい法律になっていくように、みんなに力を与えるようにひとつ御努力をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

[後略]