55-参-社会労働委員会-19号 昭和42年06月29日

55-参-社会労働委員会-19号 昭和42年06月29日

昭和四十二年六月二十九日(木曜日)午前十一時四分開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         山本伊三郎君
    理 事
                土屋 義彦君
                丸茂 重貞君
                佐野 芳雄君
                藤田藤太郎君
   委 員
                川野 三暁君
                黒木 利克君
                佐藤 芳男君
                山本  杉君
                横山 フク君
                大橋 和孝君
                杉山善太郎君
                藤原 道子君
                小平 芳平君
       発  議  者  藤田藤太郎君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  坊  秀男君
       労 働 大 臣  早川  崇君
   政府委員
       厚生大臣官房長  梅本 純正君
       厚生省社会局長  今村  譲君
       労働政務次官   海部 俊樹君
       労働大臣官房長  辻  英雄君
       労働省労政局長  松永 正男君
       労働省労働基準
       局長       村上 茂利君
       労働省職業安定局長       有馬 元治君
   事務局側
       常任委員会専門員        中原 武夫君
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  本日の会議に付した案件
○社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案(内閣提出)
○炭鉱労働者の一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案(藤田藤太郎君外一名発議)
○駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○雇用促進事業団法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○労働問題に関する調査(国際労働条約の諸問題に関する件)(昭和電工鹿瀬工場元従業員の水銀中毒問題に関する件)(職業病に関する件)
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<前略>

○委員長(山本伊三郎君) ただいまより社会労働委員会を再開いたします。
 労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。

<中略>

○国務大臣(早川崇君) ただいま基準局長から詳細にわたってお答えになりましたとおりでございます。ただ一つ私からつけ加えたいのは、従来、中毒とか炭じんとかけい肺とか、二万件に近い職業病についての対策がやられておりますが、一つ新しい問題をとり上げました。それは、技術革新が進むにつれまして、いわゆる人間疎外の単純繰り返し労働というものが非常に多くなってまいりました。その典型的な労働はパンチャーで、パンパンと数字を何時間もたたく。これは私なんか現場を見ましたが、われわれなら十分も続かない、気違いになってしまう。そこで、これに表象されるいわゆるオートメ化した単調人間疎外労働というものがどういうように人間のからだに影響を持つか。パンチャーは一種のノイローゼを起こしまして、それから手に病気が出まして自殺する者も出てくる。孤独感、恐怖感ということで、いわばいままでは非常に重労働、肉体労働がヘビイワークでありましたけれども、むしろ単調な人間疎外の労働という精神的な苦痛というのが、これが近代産業の一つの大きい労働のタイプになりまして、そこで、このような精神病、それから手の病気というものに対しては、労働省として特別の労働基準をつくりまして、六十分に十五分休憩をさせるとか、いろいろなことを指示をいたして、かなり改善をされたわけでございます。しかし、これはパンチャーにかかわらず、たとえばIC工業という電子工業関係におきましても同じものをずっと見ているわけですね。そうすると、大体一年もそれをやっていると目がつぶれる。それから、最近は計器の監視業といいまして、計器板を一日じゅう見ておる、これも一種の孤独感というか、精神がかたわになるわけです、その間完全に人間が死んでいますから。ですから、これからの新しい職業病といいますか、職業衛生という観点からしますると、こういった単純繰り返し労働、ベルトコンベヤー労働、その間は完全に人間が死んでいる、これによる精神的苦痛、そのために尿に出るホルモンまで変わってきているという結果も出てきておるわけでございます。新しい分野といたしましては、こういった近代産業の発展に伴うチャップリンのモダンタイムスに出てくる機械化されたかたわの人間。そこで、昨日東大の尾高教授を会長にいたしまして、医学、工学、経営学及び心理学その他の各界の専門家に、医学の面、工学面、あるいは環境、経営面というので、真剣にこれにメスを入れていただきたいというので、専門家会議が設置されまして発足いたした次第でございます。従来の職業病と違った新しい形の、これは病気とまで言えるかどうか、病気になればもちろんパンチャーみたいに対策を講じますが、精神面のノイローゼ、孤独感、いわゆるかたわという問題は今後の新しい分野として取り組んでいかなければならぬと思って、すでに専門家会議を設置いたしましたことを、局長の答弁につけ加えて、皆さんに御披露したいと思います。

○大橋和孝君 仰せのように、そういうような形で職業病というものが新しく出てくるわけでございます。特にいま申したように、環境が悪いためにも起こってくるでありましょうし、あるいは、また、一定の負担なり、あるいは、また、著しい過重された職場で、一定の悪い条件のために、たとえば腰痛とか、ああいうふうなものも起こってくるわけであります。あるいは二次的に有害ガスによる中毒からくる職業病もあるわけですが、こういうものも職業病として入れるのか、あるいは職業病として取り扱うのか、こういうようなことが非常に問題になるわけなんでありますが、それを取り扱う前に、私はいま一番やらなければならぬことは、そういう職業病に対しての実態調査といいますか、あるいは具体的にそういうようないろいろの職業に、あるいは、また、非常にいろいろ開発されたそういうようないまのオートメーション化された職業についての実態の調査というものがもっともっと私は徹底的にされるべきではないかと、こういうふうに思っているわけです。たとえば現在職業病として研究もされ、あるいは、また、検診も広く行なわれているといわれているところの、最先端を行ったところの、たとえばじん肺について考えてみましても、先ほど申し上げたように、非常に早く急性に進行して三、四年で死んでしまうというような人があるわけです。たとえば滑石だとか石綿だとか、あるいはアルミニュームの精製工場とか、あるいは活性炭の工場、これも四、五年ぐらいの就労期間で相当きついじん肺を起こして、四、五年で死んでしまっている例がたくさん報告されているわけです。あるいは、また、いままでそうでないといわれておったところの有機じんですね、たとえば清掃局の従事者とか、そういうような者の中にもかなりきついじん肺があり、これが結核なんかとまじったり、あるいは気管支炎を併発したりして、非常な重篤な症状が出てきているというふうな例もたくさん報告されているわけです。あるいは非常に問題になっておりますのは、こういうような、いままで考えられていないような職業の病気が相当急テンポに起こってきている。私は、じん肺の問題を見ましても、非常に私はいまの段階であの法律ができて施行されておりましても、実際において私は減っていないように思うのですがね、じん肺患者というものは。そうすると、大企業あたりは特にそういうようなことに力を入れられているが、中小企業ではまだそれが行なわれていない。また、一面、考えてみますと、大企業でも、そういう職業病を起こしやすいようなものは、請負といいますか、下請工場のほうに流していっている、こういうふうな例もたくさんあるわけです。結局有害な作業はなるべく大工場ではやらないで下請に持っていく、あるいは検診をやる場合でも、法律を先ほどちょっと借りて見てみますと、これは会社がやるわけであって、会社が適当にやっているわけですね。本人の申請があって、自分の指定する医師に見てもらいたいというときになって初めて見てもらえるのだというような便利な法律になっているわけですね。あるいは、また、何かはかのほうを調べてみますと、何か監督官か医者の場合には立ち入ってそれを審査ができるような条項もあるようですね。それはそういうことで法律になっているから、法律によってそれをするといえばそうでありますけれども、やはり事業主も職業病としてあまり摘発はされたくない、そういうものに指定はされたくないという意識と、それから、また、法律の上では事業主ができるという規則のたてまえで、都合のいい診断だけをして、ほんとうにやはりそれが職業病であり、業務上の疾病であるというものを摘発されないまま済んでいってしまうものが相当多い、こういうことは私はあり得ると思うのです。全部がそうだということではないけれども、そういうことがあり得ると思うのです。こういう問題について、だれが一体そういうことに対して歯どめをしていくか。やはり産業構造がどんどん進展をして、そのしわ寄せが労働者にいきそうだということに対して歯どめをするのは、やはりこれは労働省じゃないかと思うのですね。非常に初期にそれが発見できたならば早く助かっているのに、それが発見できないために非常に重症になるという例もある。それから、非常に患者が出始めて、労働組合あたりがいろいろな要求をし出して初めてそれが問題になってきているというのが、いままでの例を見てみると、ほとんどそういうことになっている。監督署のほうが、あるいは、また、事業主のほうが積極的にやられた場合もあるでしょうけれども、全体の面からいえば、ほとんどもうこれがどうにも職業病になっているということがだれが見てもそうなって、しかも、大きく世論になり、運動になって、あるいは交渉になって、あるいは労働組合の一つの闘争にまで展開しないと非常に表立ってこない、こういうような例もあるのです。私はこういうような角度から考えてみると、少数例で、ごく初期のものは、もう何にも知られないうちに葬られてしまって、結局はそういうふうな産業の発展に対して泣いている者はそこで働いている弱い労働者であったということになるのではないか、こういうことを私は心配して、いつもいろんな問題のたびごとに聞いているのです。この被害を受けているところの労働者を一体だれが助けるのか、これは労働省はこういうことを監督するところの責任がどうしてもあるんだと、労働省にやってもらわなかったらそれが歯どめできぬと思うのですが、そういう点に対してはどういうふうにお考えになっていますか。

○政府委員(村上茂利君) 先生の御指摘の点、私どもも職業病対策を強化しなければいかぬし、御指摘のような問題があるんじゃないかという点については日ごろから懸念をいたし、先生の御指摘の点について十分配慮をいたさなければいかぬというふうに感じておるものでございます。ただ、従来の職業病に対する問題を考えてみますと、法令整備の問題もございますけれども、医師の方々に診断の段階でできるだけ職業病であることの配慮をお願い申し上げたい。そういう点から、たとえば先ほど申しました産業医という方々に御協力を願いまして、いわゆる職業病としての病的な現象及びその検診方法などにつきましても、いろいろな形で普及指導をいたしておるつもりでございます。ただ、それにしても、末端にいきますと、ある疾病を職業性疾患であるかどうかということを判断することは非常にむずかしいという面がございますので、昨年から特に中小企業を対象にいたしまして労働衛生モニター制度を設けたわけであります。これは一般の民間のお医者さんでございますとか、有害物を扱いますような地区を大体選定いたしまして、適当な方にモニターになっていただきまして、普通の病気になっている者であっても、これこれの職業疾患である場合があるから、特に注意して診断をしていただきまして、そしてそういった発見につとめていただきたいということが主眼であるわけであります。もちろん労働基準監督官が法的にはそういったものについての発見、法的な基準によって是正を行なわなければならぬわけでありますが、何ぶんにも医師の御協力をいただかなければならない問題でございますので、そういった面について今後さらに御協力いただけるように、労働衛生についての関心を医学的にもさらに一そう高めていただくように私どもはお願いしたいと思っております。
 なお、先生のいまの御質問の昌頭に、私どもは職業病として考えるのがよろしいのか、そうでなくて、健康管理として考えるべき問題か、これを職業病という観点から扱いますと、伝統的な職業病としての扱い方は、先ほど私が申し上げましたように、労働基準法で申し上げますれば、労働基準法施行規則の三十五条に規定されておる「業務上の疾病」のうち、第四号と、第七号から二十五号、第二十七号ないしは第三十二号に掲げる疾病が、これが諸外国におきましても職業病として予防面においても特別の規制をする、補償の面についても、特別の立証を要せずして、当然として職業病として扱うということになっているわけでございます。それ以外に疲労だとか、そういった問題も職業病として扱うのか、それはむしろ健康管理の問題として、もっと幅広く、普通の労務管理の問題との関連において扱うのかといったような問題がございます。意見にわたって恐縮ですけれども、そういった点を私どもはそれぞれの面から対策を講じたい。したがいまして、大臣が申し上げましたキーパンチャーの問題、あるいは単純労働による身体上の問題というものも職業病として扱うべきか、健康管理の問題として身体上の不快状態を解消するのがよろしいのか、いろいろなアプローチのしかたがあると存じますので、そういったものを多角的に配慮したいということを申し上げさしていただきたいと思います。

<後略>