46-参-建設委員会-8号 昭和39年02月27日
昭和三十九年二月二十七日(木曜日)
午前十時二十九分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 北村 暢君
理事
石井 桂君
稲浦 鹿藏君
増原 恵吉君
委員
岩沢 忠恭君
小沢久太郎君
小山邦太郎君
小柳 勇君
瀬谷 英行君
中尾 辰義君
田上 松衞君
政府委員
建設政務次官 鴨田 宗一君
建設大臣官房長 平井 學君
建設省都市局長 鶴海良一郎君
建設省道路局長 尾之内由紀夫君
建設省住宅局長 前田 光嘉君
事務局側
常任委員会専門員 中島 博君
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本日の会議に付した案件
○道路整備緊急措置法等の一部を改正する法律案(内閣送付、予備審査)
○首都高速道路公団法の一部を改正する法律案(内閣送付、予備審査)
○日本住宅公団法等の一部を改正する法律案(内閣送付、予備審査)
○産業労働者住宅資金融通法等の一部を改正する法律案(内閣送付、予備審査)
○公営住宅法第六条第三項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣送付、予備審査)
○建設事業並びに建設諸計画に関する調査(建築基準法の政令に関する件)
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[前略]
○委員長(北村暢君) 次に、建設事業並びに建設諸計画に関する調査を議題といたします。
建設基準法施行令について、説明を求めます。前田住宅局長。
○政府委員(前田光嘉君) 建築基準法施行令が、去る一月十四日に公布施行されましたが、この政令は、去年の国会におきまして御審議いただきました建築基準法の一部改正に関連するものでございますので、その内容につきまして、概要を御説明申し上げます。
お手元に「建築基準法施行令の一部を改正する政令関係資料」というのを配付してございますので、これをごらん願いたいと存じます。
建築基準法の一部改正は、申し上げるまでもなく、新たに容積地区制度を設けまして、容積地区におきましては高さの制限を緩和するということを主といたしましたものでございましたが、それに関連いたしまして、容積、すなわち、建築物の敷地及び建築物の延べ面積との関係ということが問題となります。この点につきまして、政令で明確にすべき点を明らかにしたこと及び容積地区が指定されますが、同時に、敷地の隣地との関係におきまして、斜線によって制限を加えておりましたが、その緩和する規定を政令にゆだねておりましたので、その関係の規定、それから高層建築が建築されますと、防火、あるいはその他特に構造上特別の配慮をしなければならない事項が出てきますので、これら高層建築に関する、あるいは避難、あるいは防火等に関する規定を整備したことであります。さらに、最近建築技術が進歩いたしまして、従来の建築基準法及びその関連の政令等では不十分な点がございましたので、この際、それらをあわせて改正をいたしたのでございます。
まず、初めに、「建築基準法施行令の一部を改正する政令要旨」というのを掲げてございます。これに基づきまして御説明申し上げます。
第一は、これは、先ほど申しました容積地区と容積地区内における建築物の容積を算定する場合の扱いといたしまして、自動車の車庫をどう勘定するかという点でございます。第一、容積地区及び特定街区内における建築物については、自動車車庫その他のもっぱら自動車の停留、または駐車のための施設の用途に供する部分の床面積は、同一敷地内の建築物の床面積の合計の五分の一までは延べ面積に算入しないこととした。建築物のすべての面積を合計いたしますのが延べ面積でございますが、特に、自動車の車庫につきましては、最近の都市交通の実態から考えまして、しかも、交通の発生源そのものではないという観点から、これを扱うにつきましては、床面積に算入いたしますと、非常に厳に過ぎると考えられましたので、政令によりまして、容積地区及び特別街区の容積の算定の場合には、ここにあげましたように五分の一、床面積の二割ぐらいまではこれをはずす、それ以上を越えたものにつきましては、これはやはり、あるいは前面道路の関係、その他におきまして、建物が大きくなり過ぎますので、五分の一までは床面積に算定しないということにいたしまして、高層建築を建てる場合の自動車車庫の設置というものにつきましての緩和措置をはかったわけでございます。
その次の第二は、これは、建築物の大規模化に伴いまして手数料の引き上げをはかったものでございます。法律では十万円までの限度をきめていただきましたが、そこに掲げました表にありますように、規模に応じた金額を手数料としてきめようと考えるわけでございます。
第三は、帳壁の緊結、いわゆるカーテンウオールといわれまして、最近の建築の進歩に応じまして、特に高層建築になりますと、その建物自体の重さを軽からしめるために、いわゆるカーテンウオール工法が相当活発に進んでまいりましたが、その際、現行法にあるところの帳壁の規定が多少不備でございますので、ここに掲げましたように、「帳壁は構造耐力上主要な部分に緊結するものとし、このうち屋外に面する帳壁については、建設大臣の定める基準にしたがって、安全上支障のない構造としなければならないこと」といたしまして、今後、相当活発に行なわれるであろうカーテンウオール工法につきましての所要の基準を設けまして、心配のない構造にさせていくことに考えたわけでございます。
その次の第四の規定は、これは直接高層建築の関係ではございませんけれども、最近プレハブ等の新しい構造方法がどんどん進んできております。同時にまた、軽金属等新しい材料によるところの構造が出てきております。これらにつきましては、従来の建築基準法に基づく政令には詳細な規定がございませんし、日進月歩の建築技術の状況には即応しかねますので、これを新たに規定を入れまして、それに即応するようにいたしたわけでございます。「第四 木造、粗積造、補強コンクリートブロック造、鉄筋コンクリート造及び無筋コンクリート造の建築物又はその構造部分でプレハブ建築など特殊の構造方法並びにこれらの木造等以外の軽金属造などの建築物又はその構造部分の構造方法に関し、安全上必要な技術的基準を定めた場合においては、その技術的基準にしたがった構造としなければならない」というふうにいたしまして、技術的基準自体は建設省の告示で規定していくのでございますが、技術の進歩に即応した新しい構造方法も取り入れる、しかも、安全にしていこうという趣旨の規定でございます。
その次の耐火構造に関する規定は、これは高層建築ができるに従いまして耐火度を強化する必要がございますので、これらの耐火構造の規定のしかたを変えまして、一定の時間火に耐えるという構造方法を指定いたしまして、しかも、高層建築物については、この耐火度の強いものを使わせるというふうにしたわけでございます。「第五壁、柱、床、はり及び屋根の耐火構造は、建設大臣が通常の火災時の加熱に建築物の階に応じ一定時間耐える性能を有すると認めて指定したもの等とすることと」、少しわかりにくうございますが、最後のほうに参考資料といたしまして図表をつけておきましたが、その図表の一番最後のところに、「耐火構造の基準」という図表がございます。建築物のようなものが書いてあります表でございますが、この図表でごらん願いますように、最上階から数えまして四以内の階と、それから四から十四までの階と、十五以上の階に分けまして、そこに使われる部分に応じて、耐火構造の基準といたしまして、火災に耐え得る時間を限定いたしまして、この表によりまして、結局一番右にありますように、十五階以上の階になりますと、柱等は三時間耐えなければならぬというふうに強化いたしまして、高層建築物の場合の耐火度を強めるというふうな基準を設けまして、この基準によりまして、具体的にどれがどういう材料に該当するかということは、告示で指定するわけでございます。現在告示を出しておりますのは、その次の告示の中に書いてございますように、従来と同じものを一応あげておきましたが、今後新しい技術の進歩に従いまして、告示を追加いたしまして、耐火度の強い材料ができ次第追加いたしまして、建築技術の進歩に合わせようと考えております。
その次は、防火構造に関する事項の追加。この規定は、これは別に高層建築には直接関係ございませんけれども、最近プレハブ等が進んでまいりまして、新しい材料による防火構造も進んでまいりましたので、従来なかったような、そこにあげました「一定の厚さの石膏板張等の上に亜鉛鉄板又は石綿スレートを張ったもの」というものを追加いたしまして、これも最近の建築技術の進歩に合わせたわけでございます。
その次は、高層建築ができてきますと、防火関係の規定を整備する必要がございますが、この防火区画につきまして、現在の規定よりも強い制限をつけ加えたものでございます。「第七 高層建築物の十一階以上の部分で、各階の床面積の合計が百平方メートルをこえるものは、床面積の合計百平方メートル以内ごとに防火区画をすることとし、壁及び天井の内装を不燃化又は準不燃化した場合にはそれぞれ一定限度防火区画の規制を緩和することとした。」、現行法では、十階までと申しますのは、三十一メートル以上のものは一応認めておりませんので、その部分につきましては、千五百平方メートルごとに防火区画を設けるということになっておりますが、これ以上になりますと、火災が起こるとなかなか消火上問題がございますので、防火区画を厳格にいたしまして、原則としては、百平方メートルごとに防火区画で区切っていくということにいたしまして、高層建築物の防火に役立たせようということにしたわけでございます。
その次は、高層建築物の避難施設でございます。「第八 十五階以上の階の居室については、その居室及びこれから地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路及び天井の内装を不燃化又は準不燃化したものを除き、避難階段又は直通階段に関する規制を強化するほか、十四階以上の階の居室について内装を不燃化した場合等については規制を緩和することとした。」「2 十五階以上の階に通ずる直通階段は特別避難階段としなければならないこととした。」「3 特別避難階段の構造については、その附室は窓又は適当な排煙設備を設けることとし、その階段室及び附室の天井及び壁の内装を不燃化するとともに、十五階以上の階における特別避難階段の階段室及び附室、バルコニーの床面積の当該階の居室の床面積に対する割合を一定割合以上とすることとした。」、現在避難階段の規定がございますが、十四階程度までならば現在の規定でいいと思いますが、それ以上になりますと、やはり強化いたす必要がございますので、十五階以上につきまして、特に避難階段につきましては特別に強化いたしたわけでございます。と申しますのは、少しくおわかりにくい表でございますけれども、部屋のあらゆる部分から避難階段まで通ずるその距離を短くいたしまして、要するに避難しやすいように階段の数を、結局多くしなければならないというようにいたしまして、避難しやすいようにしたわけでございます。それからまた特別避難階段というのを、従来特別の場合にしか認めていなかったものを、十五階以上の建築物には、必ずつけさせるというふうにいたしまして、災害の場合の避難に支障ないように考えたわけでございます。
その次は、高層建築物の内装の制限でございまして、また、「三十一メートルをこえる建築物の居室及びこれから地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路及び天井の内装の仕上げを不燃材料等でしなければならないこととした。」、高層建築物になりますと、繰り返して申し上げますように、消火活動も困難になりますので、三十一メートルをこえる従来以上の建築物につきましては、内部の内装につきましては、不燃材料でつくってもらうというふうにして防火上の配慮をお願いするわけでございます。
同じく、高層建築物につきまして、建築設備の問題でございますが、この建築設備につきましては、それぞれ適当に不燃材料でつくることにいたしまして、火災の発生を押えるようにしたわけでございます。「高層建築物等に設ける建築設備に関する規制の強化」「地階を除く階数が十一階以上である建築物又は延べ面積が三千平方メートルをこえる建築物に設ける換気、暖冷房の設備の風道は、不燃材料で造ることとした。」「地階を除く階数が十一以上である建築物の屋上に設ける冷却塔設備については、構造耐力上主要な部分に緊結し、主要な部分を不燃材料で造り、配管等を建設大臣の定める基準に従って安全上支障のない構造とする等規制を強化した。」ということでございます。
第十一の規定は、これは先ほどちょっと申し上げましたが、容積地区制度を設けた場合の隣地との関係につきまして緩和をする場合でございます。「容積地区内における建築物の敷地が児童公園を除く公園、広場、水面等に接する場合における隣地境界線は、これらの公園、広場、水面等の幅の二分の一だけ外側にあるものとみなし、建築物の敷地の地盤面が隣地の地盤面より一メートル以上低い場合における建築物の敷地の地盤面は、その隣地境界線との関係による建築物の高さ制限については、その高低差から一メートルを減じたものの二分の一だけ高い位置にあるものとみなす等隣地との関係についての高さの制限の緩和措置を設けた。」、わかりにくうございますが、これも図面に書いてございます。先ほどの図表の前のページに、「隣地境界線からの斜線制限の緩和」という図表を書いておきましたが、この上の欄でごらん願いますと、上のまん中に隣地境界線という線がございます。この隣地境界線から少し上に点線で斜線が入っておりますが、注釈を加えましてその斜線のところに、「隣地が公園、広場、水面等でない場合の隣地境界線からの斜線制限」とありまして、三十一メートルをこした部分については、こういう点線の斜線がかかるように、一対二・五の割合でなっておりますが、隣が広い公園、広場がありますと、何も隣に影響するところがないので、それほどきつい制限をする必要はないということから、その左側に「公園、広場、水面等」というのがございますが、それを全部にいたしますと非常に度が過ぎるので、その半分のところに、この三角の「隣地境界線」があるように仮定いたしまして、その半分のところから点線を上げていくというふうにいたしまして、結局それが点線が上がっていきまして、自分の境界線にきますと、かなり上のほうにまで斜線がきますので、実線の斜線の入っていますところが限界になる。こういたしまして、隣地に広場等がある場合には、斜線の制限を緩和しているという趣旨のものでございます。
その次の下の図は、敷地に高低の差がある場合でございます。これも隣が高い敷地であります場合に緩和してやるほうがいいと思いますので、もし高低差がないとすれば、その点線で書いてございますように、「隣地との高低差がない場合の隣地境界線からの斜線制限」という、点線の制限で一応いくわけでございますが、それでは低いほうの人に気の毒でありますので、一メートル引いたものの半分、これは一般の、従来の建築基準法で、高低差がある場合に、こういう扱いをいたしておりますので、そういうふうな基準で設けて、その分は認めてやるということから、実線で書いた程度の線まで斜線を緩和していく、こういうことによりまして、この斜線制限と実際の隣地との関係についての調和をはかったわけでございます。
第十二の規定は、これによりまして、容積地区内における既存の建築物に対する制限の緩和、容積地区が新たに指定されて、既存の建築物がありました場合に、増改築等におきましては例外を設ける必要があります。これは一定の場合に限って例外的に認めるということの規定を置いたわけでございます。
それから第十三の規定、これは建築物が高層化いたしてきますと、やはり工事に関連いたしまして、落下物の危害もかなり多くなる可能性もございますので、新たに、従来もありましたけれども、さらに工事現場における落下物に関する防護措置に関する基準を明確化いたしまして、工事の施行に万全を期したわけでございます。「第十三建築工事等を行なう場合において、落下物による工事現場の周辺に危害を生ずるおそれがあるときは、建設大臣の定める基準にしたがって、落下物による危害を防止するための措置を講じなければならないこととした。」、とりあえず、簡単でございますけれども、告示の中に当面の落下物防止の基準を掲げて、これによりまして危害の防止をはかるように指導いたしております。
以上が今回の政令の概要でございます。
○委員長(北村暢君) 御質疑のある方は、順次御発言を願います。——別に御発言もなければ、本日はこれにて散会いたします。
午前十一時十八分散会
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