34-衆-社会労働委員会-11号 昭和35年03月02日

昭和三十五年三月二日(水曜日)午前十時五十六分開議
 出席委員
   委員長 永山 忠則君
   理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君
   理事 八田 貞義君 理事 藤本 捨助君
   理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君
   理事 堤 ツルヨ君
      池田 清志君    大橋 武夫君
      亀山 孝一君    齋藤 邦吉君
      中山 マサ君    古川 丈吉君
      柳谷清三郎君    山下 春江君
      亘  四郎君    大原  亨君
      小林  進君    多賀谷真稔君
      中村 英男君    山口シヅエ君
      本島百合子君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 渡邊 良夫君
        労 働 大 臣 松野 頼三君
 出席政府委員
        厚生政務次官  内藤  隆君
        厚生事務官(大臣官房長) 森本  潔君
        厚生事務官(社会局長)  高田 正巳君
        厚生事務官(保険局長)  太宰 博邦君
        労働事務官(大臣官房長) 三治 重信君
        労働基準監督官(労働基準局長)      澁谷 直藏君
        労働事務官(職業安定局長)      堀  秀夫君
 委員外の出席者
        議     員 齋藤 邦吉君
        大蔵事務官(主計官)   岩尾  一君
        専  門  員 川井 章知君
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三月二日
 委員岡本隆一君辞任につき、その補欠として山口シヅエ君が議長の指名で委員に選任された。
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三月一日
 労働関係訴訟における労働組合の当事者適格に関する法律案(堤ツルヨ君外三名提出、衆法第一号)
 労働基準法の一部を改正する法律案(堤ツルヨ君外二名提出、衆法第二号)は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)
 じん肺法案(内閣提出第四号)
 身体障害者雇用促進法案(内閣提出第五五号)
 失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案(齋藤邦吉君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第二三号)
 厚生年金保険法の一部を改正する法律案(田中正巳君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第二四号)
 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案(田中正巳君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第二五号)
 船員保険法の一部を改正する法律案(田中正巳君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第二六号)
 船員保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第三十一回国会閣法第一六八号)
 厚生関係の基本政策に関する件
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○永山委員長 これより会議を開きます。
 去る十二月二十九日付託になりました内閣提出の労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案及びじん肺法案、以上両案を一括議題とし、審査に入ります。
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○永山委員長 まずその趣旨の説明を求めます。松野労働大臣。

○松野国務大臣 ただいま議題となりましたじん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を説明申し上げます。
 労働者の業務上の傷病に対する予防及び災害補償につきましては、一般に労働基準法及び労働者災害補償保険法に基づいて実施いたしているところでありますが、けい肺はその予防が困難であり、一度かかると治癒しがたく、多くの場合労働基準法または労働者災害補償保険法により三年間療養補償を受けた後においてもなお引き続き療養を必要とするのでありまして、またこの点については重度の外傷性脊髄障害もけい肺と同様であるのであります。そこでこれら二つのものについては、その特殊性にかんがみ、関係労働者の保護の充実をはかるため、昭和三十年、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法が制定され、石炭鉱山、金属鉱山その他遊離けい酸粉塵を発散する場所で働く労働者に対して定期的にけい肺健康診断を行ない、その結果に基づき一定の者について粉塵作業からの作業転換をはかる等、健康管理について特別の措置を実施するとともに、けい肺及び外傷性脊髄障害にかかった労働者に対して、労働基準法または労働者災害補償保険法による打ち切り補償が行なわれた後さらに二年間引き続いて療養給付及び休業給付を支給することとされたのであります。
 しかるに、昭和三十二年秋ごろから、けい肺等特別保護法による給付の期間が切れる者が生じ、しかもその大部分の者は依然として療養を必要とする状態にありましたので、とりあえずの措置として、昭和三十三年、けい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法が制定され、けい肺等特別保護法による給付の期間が切れ、なお引き続き療養を必要とする者に対しては、昭和三十五年三月三十一日まで、療養給付及び傷病手当を支給することとされますとともに、政府はけい肺及び外傷性脊髄障害にかかった労働者の保護措置について根本的検討を加え、昭和三十四年十二月三十一日までにけい肺等特別保護法の改正に関する法律案を国会に提出しなければならないこととされたのであります。
 そこで、政府といたしましては、昭和三十三年六月に、けい肺等特別保護法の改正に関してけい肺審議会に諮問をいたし、同審議会では一年有半にわたり審議検討が行なわれた結果、公益側委員の意見を中心に、労使各側委員の意見を付した答申がなされたのであります。
 続いて政府は、補償に関する問題につきまして、労災保険審議会にも諮問をいたし、その意見を聞いた上、けい肺審議会及び労災保険審議会の公益側委員の意見の線に沿い、これら審議会の労使各側委員の意見をも考慮しつつ、慎重に検討をしたのであります。その結果、予防及び健康管理につきましては、最近における医学の進歩、粉塵管理に関する技術的研究の成果等を基礎として粉塵作業に従事する労働者について適切な保護措置を講ずることとし、その対象についても、医学的にその実態が明らかにされて参りました石綿肺、アルミニューム肺等、鉱物性粉塵の吸入によって生ずる他の塵肺を含めて、新たに特別法を制定すべきであると考えたのであります。また、補償につきましては、労働者災害補償保険法を改正して、けい肺等特別保護法及び同臨時措置法の補償に関する部分を吸収し、けい肺及び外傷性脊髄障害に限らず、潜水病、放射線障害、頭部外傷等類似の重篤な業務上の傷病にかかった者及び両手、両足の切断、両眼失明等重度の身体障害を存する者に対して必要な補償を行なうため、これらの者に対する現行の一時金による打ち切り補償費または障害補償費にかえて長期給付を行なうことが必要であると考えたのであります。そこでそのような考えに基づき、それぞれ法律案要綱を作成し、再度、前者の法律案要綱についてはけい肺審議会会に、後者の法律案要綱についてはけい肺審議会及び労災保険審議会会に付議いたしますとともに、後者については社会保障制度審議会にも諮問いたし、その結果に基づいて、じん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を作成し、昨年十二月二十九日に提案する運びとなった次第であります。
 次に、それぞれの法律案について概要を説明申し上げます。
 まずじん肺法案について申し上げます。
 第一に、現行のけい肺等特別保護法では、対象をけい肺に限っておりますが、この法律案では、現行法の施行の過程を通じ、ようやくその医学的実態が明らかにされて参りました石綿肺、アルミニューム肺等鉱物性粉塵の吸入によって起こるその他の塵肺をも広く対象としたのであります。これらのものはいずれもその発生原因、治療の困難性等において非常に類似しておりますところから、同様に取り扱うべきこととしたのであります。
 第二に、塵肺の予防に関して、労働基準法及び鉱山保安法の規定によるほか、技術の進歩に即応した粉塵発散の抑制措置、呼吸用保護具の整備、着用等、塵肺の予防のための適切な措置について使用者及び労働者双方の努力義務を定めるとともに、使用者は粉塵作業に従事する労働者に対して、塵肺の予防及び健康管理に関し必要な教育の徹底をはかるべきこととしたのであります。
 なお、これら予防に関する技術的措置につきましては、一般事業場における一層の促進をはかるために政府といたしましても積極的に技術上の援助を行なうこととし、衛生工学に関し学識経験を有する粉塵対策指導委員を新たに設けて、各事業場について実地に技術上の援助指導を行なうこととしたのであります。
 第三に、労働者の健康管理のために、使用者は常時粉塵作業に従事する労働者に対して、その新規就労の際及び三年または一年以内ごとに定期的に、または新たに肺結核にかかったことが明らかにされた者についてはそのつど、それぞれ塵肺健康診断を行なわなけばならないこととし、これらの塵肺健康診断の結果の資料は都道府県労働基準局長に提出を求めまして、塵肺診査医の診断または審査により労働者の健康管理の区分を決定することとしたのでありますが、これは塵肺の症状等の決定が一般に困難であることと、この決定の効果として、塵肺健康診断の回数が変わり、作業転換の勧告等が行なわれることとなりますので、公の立場から公正的確にその健康管理区分の決定を行なう必要があるためであります。
 第四に、塵肺健康診断の結果、塵肺が管理区分三の程度になっている者については、個々の場合の必要に応じ都道府県労働基準局長が粉塵作業からの転換を勧告して療養を要する段階に至らないよう防止措置を講ずることとし、また、この勧告に従って作業転換を促進させるよう、使用者において粉塵作業から転換する労働者に対して賃金の一カ月分に相当する額の転換手当を支払わなければならないこととしたのであります。
 第五に、作業転換の勧告を受けた労働者について、使用者の努力にもかかわらず作業の転換が企業内において行われがたく、そのためにやむを得ず離職せざるを得ない労働者に対しては、政府といたしましては職業紹介、職業訓練等についてできるだけ適切な措置を講ずるよう努力いたしますとともに、さらに進んでこれら離職した労働者のために就労の機会を与えるための施設または労働能力を回復するための施設を設置経営いたしまして、その労働者の生活の安定をはかるよう努力いたすこととしたのであります。
 第六に、この法律の施行に万全を期するよう、塵肺の予防措置等について一層の促進をはかるために関係研究施設等の整備充実をはかるとともに、塵肺の診断については中央、地方を通じて塵肺診査医を置きましてその公正を期することとし、また、労働省にじん肺審議会を設置して塵肺に関する重要事項を調査審議することとし、法施行に遺憾なきょう期しております。
 次に、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 第一に、現行労働者災害補償保険法では、業務上の傷病が療養開始後三年を経過してもなおらない場合には、平均賃金の千二百日分に相当する額の打ち切り補償費を支払い、以後一切の補償を行なわなくてもよいことになっており、ただ、けい肺及び外傷性脊髄障害につきましては、けい肺等特別保護法及び同臨時措置法によりましてその後引き続き約四年間療養給付、休業給付等が行なわれることになっているのでありますか、この改正法律案におきましては、けい肺及び外傷性脊髄障害に限らず、潜水病、放射線障害、頭部外傷等、療養開始後三年経過してもなおらないすべての傷病について、必要の存する期間、打ち切り補償費にかえて長期傷病者補償を行なうこととしたのであります。
 第二に、以上のような長期傷病者との均衡をはかるとともに、外傷性脊髄障害等重度の身体障害者に対する対策といたしまして、療養開始後三年以内に症状が固定した場合でも、半身不随、両手、両足の切断、両眼失明等、労働能力を百パーセント喪失した障害等級第三級以上の重度の身体障害を残す者については、従来の一時金による障害補償費にかえて長期給付金である障害補償費を支給することとしたのであります。
 第三に、長期傷病者補償及び長期給付金である障害補償費に要する費用につきましては、傷病の特殊性、使用者負担の増加等を考慮し、長期傷病者補償については、労働基準法による打ち切り補償に相当する部分をこえる部分について、塵肺に関してはその四分の三、その他の傷病に関しては二分の一を国庫が負担し、障害等級第一級から第一二級までの身体障害者に対する長期給付金である障害補償費については、政令で定めるところにより、労働基準法による障害補償に相当する部分をこえる部分の一部を、国庫が負担することとしたのであります。
 第四に、今回の改正による長期給付については、現行の保険加入制度のままでは労災保険に加入していない事業場において業務上負傷しまたは傷病にかかった労働者で、三年間療養を行なっても傷病がなおらない者あるいはなおった後障害等級第一級から第三級までに該当する身体障害を残す者は、労働基準法による災害補償を受けることができるのみで、これらの長期給付を受けられないわけでありますので、このような場合に対する特別の措置といたしまして、その後かかる事業が労災保険に加入するに至って、その事業主あるいはその事業場の労働者の過半数が希望するときは、事業主から特別保険料を徴収して、労働者に長期傷病者補償または長期給付金である障害補償費を労災保険から支給することとしたのであります。
 第五に、今回の改正は、けい肺等に対する特別保護措置の根本的検討から出発したものである経過にかんがみまして、けい肺等臨時措置法が失効いたします昭和三十五年三月三十一日において、けい肺等特別保護法または同臨時措置法による療養給付の支給を受けるべきである者であって、同年四月一日以降なお引き続き療養を必要とする者につきましては、経過措置として、この改正法律案による長期傷病者補償を行なうこととしたのであります。ただ、これらの者は、すでに労働基準法または労働者災害補償保険法による打ち切り補償を受けた者でありますから、これを、新たに三年の療養を経過して長期傷病者補償を受けることとなる者に比較いたしますと、少なくとも打ち切り補償分だけは余分に給付を受けていることになりますので、それに相当する額を減額することとしたのであります。
 第六に、長期傷病者補償または障害補償費のうちの長期給付金の支給を受ける者が、同時に厚生年金保険法等の障害年金または国家公務員共済組合法の廃疾年金を受けることができる場合には、その者に対する当該長期給付金の額は、これらの障害年金または廃疾年金のうち、国及び使用者の負担割合に相当する額を減じたものといたし、また長期傷病者補償及び障害補償費のうちの長期給付金につきましては、労働省で作成しております毎月勤労統計による全産業の労働者の平均給与額が百分の二十以上変動した場合には、その比率を基準としてその額を改訂することとしたのであります。
 以上申し述べましたこの改正法律案の内容につきましては、他の社会保障制度と関連する問題もあり、将来社会保障に関する制度全般の調整がなされる機会におきましては検討を加えなければならないと考えておりますが、そのような見地より国庫負担、厚生年金保険の障害年金等との調整及び賃金情勢の変動に伴う長期給付金の額の改訂につきましては、本法案に定める措置を当分の間のものとし、そのような機会に検討して必要な措置を講ずることとしたのであります。
 以上が、じん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を提案するに至った理由及びその概要でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。

○永山委員長 両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。

[後略]
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