33-衆-災害地対策特別委員会-3号 昭和34年11月04日

昭和三十四年十一月四日(水曜日)午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 南條 徳男君
   理事 江崎 真澄君 理事 田村  元君
   理事 綱島 正興君 理事 前尾繁三郎君
   理事 三田村武夫君 理事 角屋堅次郎君
   理事 佐藤觀次郎君 理事 辻原 弘市君
   理事 塚本 三郎君
      今井  耕君    木村 俊夫君
      久野 忠治君    小島 徹三君
      河野 孝子君    坂田 英一君
      田口長治郎君    田中 正巳君
      辻  寛一君    中垣 國男君
      二階堂 進君    丹羽 兵助君
      服部 安司君    坊  秀男君
      山手 滿男君    伊藤よし子君
      太田 一夫君    岡本 隆一君
      金丸 徳重君    小林 正美君
      田中幾三郎君    館  俊三君
      中島  巖君    松平 忠久君
      八木 一男君    横山 利秋君
 出席国務大臣
        建 設 大 臣 村上  勇君
        国 務 大 臣 赤城 宗徳君
 出席政府委員
        自治政務次官  丹羽喬四郎君
        総理府事務官(自治庁財政局長) 奧野 誠亮君
        防衛庁参事官(防衛局長)  加藤 陽三君
        大蔵政務次官  奧村又十郎君
        大蔵事務官(主計局長)  石原 周夫君
        大蔵事務官(理財局長)  西原 直廉君
        文部政務次官  宮澤 喜一君
        厚生事務官(大臣官房長) 森本  潔君
        農林政務次官  大野 市郎君
        農林事務官(農地局長)  伊東 正義君
        通商産業政務次官       内田 常雄君
        通商産業事務官(大臣官房長) 齋藤 正年君
        通商産業事務官(中小企業庁長官) 小山 雄二君
        運輸政務次官  前田  郁君
        運輸事務官(大臣官房長) 細田 吉藏君
        郵政政務次官  佐藤虎次郎君
        労働事務官(職業安定局長)    百田 正弘君
        建設政務次官  大沢 雄一君
        建 設 技 官(河川局長)  山本 三郎君
        建 設 技 官(住宅局長)  稗田  治君
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十一月四日
 委員松平忠久君辞任につき、その補欠として中島巖君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
 災害地対策に関する件
 昭和三十四年九月の暴風雨により塩害を受けた農地の除塩事業の助成に関する特別措置法案(内閣提出第二号)
 昭和三十四年七月及び八月の豪雨、同年八月及び九月の暴風雨又は同年九月の降ひようによる被害農家に対する米穀の売渡の特例に関する法律案(内閣提出第三号)
 昭和三十四年九月の風水害を受けた漁業者の共同利用に供する小型の漁船の建造に関する特別措置法案(内閣提出第四号)
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○南條委員長 これから会議を開きます。
 すでに補正予算が国会に提出されておりますので、本日は、まず大蔵当局から、災害対策に関する予算措置及び財政投融資計画等につきまして総括的に説明を聴取し、引き続き関係各省から、それぞれ所管に応じて災害対策の諸施策、並びにこれが予算措置等について説明を聴取することにいたします。大蔵政務次官。

[中略]

○南條委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。
 午前の各省の説明に引き続きまして、午後は通商産業省、郵政省、自治庁関係の説明を求めることにいたします。
 まず、通産省関係につきまして内田通産政務次官から御説明を願います。

○内田(常)政府委員 お手元に中小企業関係の対策についての資料がとりあえず出ておりますが、その資料に入るに先だちまして、私から、商工業関係全般にわたりまして簡単に被害の概況を申し上げ、あわせて、これに対してとるべき対策につきまして概括的に申し述べたいと思います。
 伊勢湾台風によります産業の被害額は、御承知のように愛知県を筆頭に三重県、岐阜県などが一番多うございましたが、これらの被害を金額で概算をいたしてみますると、鉱工業、商工業関係で、この三県だけで八百八十億円に達しております。その他の各府県約五十億円、また、電気、ガスなどの公益事業関係で約四十五億円の被害がございまして、合計をいたしますと九百七十五億円程度に上っておるのでございます。これは、先般の十五号台風だけでありまして、山梨県、長野県などを襲いました八月の台風七号などの被害を入れますと、全体では約一千十二億円という被害に相なっております。そのうち、最も被害の激しかった愛知、三重、岐阜三県では、特に名古屋市の南部の工業地帯——これは重化学工業の中心地でありますが、この方面の被害、また、毛織物の中心地であります津島方面の地区、綿織物の生産地であります半田の地区、さらに、また三重県の四日市の工業地帯、これは繊維工業などを中心とした地帯でありますが、この方面の被害、それから、岐阜県の西美濃地方の被害など、非常に大きいのでございまして、繊維工業、機械工業、化学工業、陶磁器などの被害は、そのうちでもことに著しいものがございます。
 さらに、またこの通産省関係で非常に関心を持たなければならなかった台風の被害は貿易関係のものがございまして、先般の伊勢湾台風の被害によりまして輸出商品が約七百六十万ドル、これは主として陶磁器とか合板、繊維製品、ミシンなどの輸出商品がおもでありますが、これらが七百六十万ドル、また、輸入品が、綿花でありますとか、羊毛でありますとか、ラワン材、麻類などを主といたしまして約一千九百七十万ドルの被害があります。この輸出入品合わせますと二千七百三十五万ドルの貿易貨物が、冠水、破損、または流失をいたしましたために、商品価値にいたしまして約一千万ドルくらいの被害があったものと推定されております。ことに、また台風直後、名古屋港の機能が全く失われましたので、輸出の遂行に支障を一時来たしました。しかしながら、名古屋港におきましては、輸出優先の方針に基づきまして、この災害がありました後、十月八日に初めて北アメリカ向けのクリスマス用陶磁器、その他緊急船積みを要するものの積み出しが行なわれ始めまして、ようやく輸出の積み出しが開始をされるように至りまして愁眉を開いております。もっとも、輸出が再開されましたこの十月当初におきましては、人夫とか、はしけが不足いたしましたために、船積み量は正常の半分以下となっておりましたけれども、十一月十一日くらいまでには大体一日五千トンくらいの輸出船積みが可能になり、正常に近い状態になるものと見られております。
 輸入の方面におきましても、名古屋向けの貨物は、一時横浜、神戸などに陸揚げをいたしまして、これを需要先に陸送をいたしておりましたけれども、最近、ようやく輸入業務も再開の段階に入っております。しかし、輸入貨物は輸出貨物よりも扱い数量が多いのでありまして、一日八千トンのベースに復旧いたしますためには、なお、まだ荷役人夫の確保でありますとか、あるいは綿花などの損害貨物の荷さばきや、また、これらの損害を受けました保険関係の査定業務などを迅速に処理する必要が残されておるような状況でございます。
 なお、また、これは貿易に限らず、先ほど申し述べました今回の愛知県を中心とする伊勢湾台風の被害におきましては、中小企業の被害が実に多い。被害総額の七割、八割くらいまでは中小企業が占めておるのでありますが、貿易業務におきましても、今回被害を受けましたものの大部分は中小の商社であり、さらに、また、その取引先の多くが中小メーカーでありましたために、その方面の金融措置など手当を必要とするものがいろいろあるような状況でございます。
 さらに、また、輸出関係におきましては、事務手続などでやり直さなければならないものがいろいろあります。輸出承認書とか、あるいは輸出検査書などの手続、書類を再発行いたしますとか、あるいは訂正、変更するような事情もあるのでありまして、これらにつきましては、現地におきまして簡単な取り扱いで再発行するような手続をいたしております。さらに、輸入貨物などにおきましては、それらの災害のために、もう一度外貨の追加割当を行なわなければならなくなるだろうというようなものもあるわけでありまして、これらの外貨の追加割当につきましても、ただいま考慮をいたしておるような状況であります。
 これらの災害の状況に対処いたしまして、応急対策といたしましては、通産省におきましては、生活物資とか、あるいは復旧資材などの入手や輸送につきまして、これまで特別の配慮をいたして参りました。たとえば、亜鉛鉄板でありますとか、くぎ、板ガラス、石綿のスレート、セメント、畳などの復旧資材について緊急出着手続を行なう必要がありましたので、これらのものにつきましては、通産省の省内に一つの連絡機構を作りまして、これらの緊急出荷のあっせんに遺憾なきを期して参っております。
 さらに、つけ加えますことは、公益事業、なかんずく電力関係におきましても相当の被害がありまして、一時罹災地区の方々に非常な不便をかけておりましたけれども、中部電力を中心といたしまして、発電、送配電などにつきましても復旧作業を急ぎまして、今日におきましては、これらの電気の供給につきましては、おおむね遺憾なき状況に立ち至っております。
 以上が今回の伊勢湾台風を中心とする大ざっぱな概況でありますが、これに対しまして、通商産業省といたしましては、今後これらの企業、なかんずく中小企業の復旧を促進いたしますために、中小企業金融につきまして格別の配慮をいたすことが決定されております。それらのものにつきましては、あるものは法律とし、また、予算として今国会に提出する段取りがきまっておりますが、あるものは法律や予算を要せず、現実の金融措置あるいは閣議決定でその処理を済まし得るものもございます。これらの概略につきましては、お手元に一覧表のような資料をお配りをいたしております。これは「昭和三十四年度中小企業災害融資および年末金融対策(予算補正、財政投融資の追加)」という一枚紙の資料をお配りをいたしております。ちょうどこの災害が年末に近く起こりましたので、金融の面におきましては、御案内の通り、毎年例といたしております年末金融対策とかち合いましたので、今回の中小企業金融対策につきましては、政府におきましては、災害と年末とを合わせましてそれぞれ所要の措置を講ずることといたしております。
 その第一が中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金並びに不動産銀行に対する財政投融資の追加でございます。お手元の表によりまして御説明をいたしますと、中小企業金融公庫に対しましては、災害融資分として六十三億円、年末融資分として二十億円、合わせて八十三億円の財政投融資を、資金運用部から主として追加をいたすことに決定をいたしました。国民金融公庫につきましては、災害関係資金四十二億、年末対策資金三十億、合計七十二億円、商工中金については、災害関係資金三十八億円、年末関係資金四十五億円、合計八十三億円を追加して供給することといたし、不動産銀行につきましては、災害関係七億円、年末関係五億円、合計十二億を追加供給することといたしております。これらを合計いたしますと、政府関係の二つの公庫並びに商工中金、それに不動産銀行合わせまして、災害関係では百五十億円の追加融資を決定いたしております。これは、十五号台風の直後に池田通産大臣から、その災害のひどかった状況にかんがみまして、少なくとも百億円の追加融資をするということを国会において宣明いたしましたが、その後、災害の状況が判明いたしますにつれて、とうてい百億円では間に合わないという状況になりましたので、百五十億円を計上いたしたのであります。年末関係資金といたしまして、四つの機関を合わせて百億円、合計二百五十億円を資金運用部を中心として追加融資をいたすことといたしたのであります。さらに、これらの追加融資をいたしますものにつきましては、通常これらの金融機関が貸し出しておりますところの金利よりも安くすべきである、また、過去の例においても安かったということにかんがみまして、特別低金利を適用することにいたしております。このうち、中小企業金融公庫、国民金融公庫は、これは全面的に政府資金からなる機関でありますために、格別に予算は必要といたしませんので、これは十月三十日の閣議決定をもちまして、これらの二つの公庫につきましては、一貸し出し当たり百万円までの金額につきまして六分五厘の金利を適用する、しかも、その六分五厘の金利は貸付のときから三年間は六分五厘を適用する、こういう行政措置を決定いたしまして、すでに実施に移されておりますが、商工組合中央金庫は、国民金融公庫並びに中小企業金融公庫とはいささか趣を異にいたしまして、民間の資金も入っておるものでありますので、これらの特別金利を適用いたしますためには法律の規定が要る、また、特別金利を適用いたしますためには、これによって生ずる商工中金の差損を国庫から補てんをしてやらなければならないということになりますので、以上申し述べましたうちで、商工中金関係のことは、これから国会に提出いたし、皆様方の御審議をわずらわしますところの、今回の災害融資に関する特別立法の中に織り込まれておるわけでございます。
 さらに、今回の中小企業に対する融資は、とうてい政府の三機関並びに不動産銀行だけの融資をもって足りるものではありません。民間の金融機関の非常に大きな協力を受けなければならない。しかしながら、罹災いたしましたところの中小企業者が受信力に乏しい、とうてい単独では市中の一般金融機関から借り出し得ない、どうしても地方にありますところの信用保証協会の保証を特に必要とするというような事態があるのにかんがみまして、政府におきましては、信用保証協会の保証能力を増大する措置といたしまして、今回予算並びに法律の改正をいたしまして、信用保証協会に対しまして再保険の立場に立っておりますところの、中小企業信用保険公庫に対しまして十億円の増資をいたし、その十億円を災害関係地の各信用保証協会にそれぞれ資金を入れる、こういう措置を決定いたしております。補正予算もすでに提出されまして審議中でございまして、関係法律も一両日中には国会に提出の運びになります。
 このほか、今申しました中小企業信用保険公庫、つまり、信用保証協会に対しまして再保険の立場に立ちますこの保険公庫の保険料率を安くいたしますとか、あるいは保険の填補率を引き上げまして、地方の信用保証協会が相当勇敢に、罹災をいたしました中小企業者に対しまして保証することができるような措置をもあわせ講じ、さらに、また、この再保険の一口当たりの金額にも特別の措置を講じまして、罹災をいたしました保証に対する保険につきましては、従来の保険のほか、別口で保険をつけることができるような措置を講ずることにいたしております。
 さらに、またこれはお手元に差し上げました資料にはあるいはないかもしれませんが、中小企業の関係におきましては、今まで中小企業振興資金助成法というのがありまして、中小企業者が設備の近代化をする、あるいは中小企業協同組合等が共同の施設を設けます際に、国と地方の県とがそれぞれ半分ずつ金を出し合って、無利子の金を貸し付けておるのでございますが、この貸付期間は、法律によりまして五年ときめられてあります。しかし、今回の災害にかんがみまして、災害を受けましたこれらの中小企業者あるいは団体に対しましては、特に法律を改正いたしまして、償還期限の延長をいたす措置をとることにいたしております。
 なお、また、法律にはございませんけれども、先ほども触れました中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金あるいは不動産銀行などにおきましては、罹災者に貸し付けてあります融資につきまして、それぞれ政府の指図をもってその償還期限を実情に応じて適宜延長する措置も講じております。
 なお、以上述べました災害融資等につきましては、通常の場合と異なるのでありますから、それらの機関の通常の場合における融資準則によらないで、相当融資の基準をゆるめたような融資をやらせることをそれぞれ実行をいたさせております。
 なお、以上申し上げましたことは、罹災をいたしました中小企業に対する特別の金融などの措置でありますが、今回の罹災を受けました企業は、もちろん中小企業が多うはございますけれども、中企業のうち大きいもの、大企業なども相当の被害を受けておるのであります。これらに対しましては、政府から中小企業金融機関を通じて融資をすることは、その道がありませんので、あるいは長期信用銀行、あるいは興業銀行などの機能を活用いたしまして、これらの機関が発行いたしておりますところの興業債券あるいは長期信用債券等の発行を容易ならしめるような環境を作りまして、これらの興長銀資金、あるいは市中の一般の銀行等の融資能力を動員いたしまして、大企業に対しても遺憾なき処置を講ずることにいたしております。
 以上が大体の状況並びに対策の概要でございます。
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○南條委員長 それでは、次に、自治庁関係の御説明を願います。丹羽政務次官。

[後略]