31-衆-商工委員会-39号 昭和34年05月19日

昭和三十四年五月十九日(火曜日)午前十時二十九分開議
 出席委員
   委員長 長谷川四郎君
   理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君
   理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君
   理事 加藤 鐐造君 理事 田中 武夫君
   理事 松平 忠久君
      新井 京太君    岡部 得三君
      鹿野 彦吉君    菅野和太郎君
      木倉和一郎君    始関 伊平君
      細田 義安君    渡邊 本治君
      板川 正吾君    内海  清君
      大矢 省三君    勝澤 芳雄君
      勝間田清一君    兒玉 末男君
      小林 正美君    鈴木  一君
      堂森 芳夫君    中嶋 英夫君
 委員外の出席者
        通商産業政務次官       大島 秀一君
        通商産業事務官(大臣官房長) 齋藤 正年君
        通商産業事務官(軽工業局長) 森  哲夫君
        通商産業事務官(軽工業局アルコール事業長) 橋口  隆君
        専  門  員 越田 清七君
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[中略]
    —————————————
本日の会議に付した案件
 通商産業の基本施策に関する件
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○長谷川委員長 これより会議を開きます。
 通商産業の基本施策に関する件について調査を進めます。
 まず技術導入の問題について質疑の通告がありますので、これを許可いたします。勝澤芳雄君。

[中略]

○森説明員 その点は、今後さらに業界ともう少し話し合いをしていきたいと思うのでありますが、いたずらに時間と経費とを浪費するような方法は、われわれとしてはできるだけ避けたいというふうに考えております。

○勝澤委員 時間と経費、こう言われておるのですが、これは重大な問題だ、中小企業のこの業界では皆そう言っておるわけですから、業界としては重大な問題、死活の問題だと思います。ましてやこういうものが入ったら、業界としては相当混乱をするといわれておる。局長の方では、そう大した問題ではないと奮われておりますが、そこでも大きな食い違いがある。まして問題は、品質なりその用途なり、いろいろそういう問題に問題があるわけですから、そういう問題は時間と経費をかけて十分やるべき問題だ。時間がないといっても、現実には昭和二十九年の日米石綿当時から問題になっておる。品物も何も変りがないわけですから、ことしの二月の十七日に、これがこの委員会で問題になっておる。そうして当時も、私は要望として、この技術の討論会をやったらどうだ、品質試験をやったらどうだ、こういうことを提案して、十分業界と話し合うという約束をされておるわけですから、今日までその時間がなかったということは言えないと思いますし、また今まで試験をしたのはどうだといえば、去年の十月から十二月までにやったのだ、それが問題になって、ことしの二月の十七日に委員会で問題になっておるのですから、これは新しい問題として、私は十分この討論なりあるいは品質試験というものをやって意見を聞くべきだと思うのですが、次官、どうでしょうか。

○大島説明員 このような問題は、ただいま局長からのお話のように、通産省といたしましては、それぞれの立場において十分な研究を続けているわけでありますが、ことに通産省の立場といたしましては、国立の産業工芸試験所などの研究資料を最も大切な資料として考えなければならないということは、これは当然だと思うのであります。そこで勝澤委員のお話のように、業界の声を無祝してやるというようなことは、これはもう当然今の時代とりしてはあり得ないことでありますので、十分業界の方々の意見も尊重いたしまして、そうしてそれと両々相待って工業技術院方面にも話をして、試験調査をいたしまして、先ほど勝澤委員からお話がありましたように、場合によっては立ち会いで技術研究の発表をするということも、やるかやらぬかは別といたしまして、あり得るかもしれません。そのような意味におきまして、これは必ずやるとは私申し上げられませんが、そのようなことも決してないとは考えられないことと思うのでありますが、とにもかくにも、やはり通産省の立場といたしましては、公平無私な国立の工業技術院などの試験結果などを十分尊重いたしまして、これは最終的には外資審議会の決定というようなものが、かなり一つのきめ手の材料にもなろうか、かように考えておりますので、十分検討いたしまして万遺憾ないようにいたしたい、かように考えております。

○勝澤委員 十分意見を聞いて万遺憾なきを期したい、こう言われておるわけです。そこで今業界が言っておるのは、技術の問題について意見が違うから討論会をやってくれ、こう言っておるのです。もう一つの問題というのは、とにかく公開の品質試験をやってくれ、通産省もやった、業界もやった、しかしそれじゃどうもまずいじゃないかということで、二月の十七日の委員会で、それじゃとにかく十分意見を聞こう、こういうことになっているんですから、その公開の品質試験なり、技術の討論会というのをこれからやって、そして業界もそうむちゃな反対をしているわけじゃないですから、どちらの品物がよいか悪いか見てくれ、こう言っているのですから、私はやはり公平な立場で見ていただきたい、こういうことなんです。そういう問題について、あるかもしれぬというようなことじゃなくて、はっきりこれは次官としてお答え願いたいと思います。

○大島説明員 御説明はごもっともだと思いますが、私は実はこの問題はあまり研究しておりませんので、そう決定的な返事をするにはあまりにも勉強が足らない、でありますので、これは十分省内におきまして、やはりそういうことをやるのが妥当かどうか。まあ率直に言って業者というものは新しいものが出ることを阻止しようとするのは当然なんです。ですから、それだけをもって簡単に決定するというようなことは、なかなか問題が残ると思いますので、この点は、きょうは私は臨時雇いみたいなものでありますから、あまりよくわからぬ。けれども、概念的に申しまして、今ここで明確に私がやるとかやらぬとかいうことを申し上げることは、ちょっと僣越じゃないか、かように考えますので、十分一つ省内で研究いたしたいと思います。

○中嶋(英)委員 ちょっと今の問題に関連して質問いたします。局長はこういうことをおっしゃったですね。こういう問題を扱う場合に業界との対処の仕方について、自分でお考えになっている一つのスタイルがある。それは白紙で臨むべきじゃなくて、自分の見解というものに立って、一ぺんそり返るべきだ、こういうお話があったのです。見解を持つのは私は悪いとは思わない。ただ見解をお持ちになるときに、よく意見を聞いておく必要があると思う。たとえばきょうの委員会なども、初めから私はこういう態度だというのじゃなく、こうこういう見解の上に立っているのだとか、やっているのだとかいうこと、そういう問題が、技術の問題になったところが、ただ試験をやっているということだけではわからぬと思う。第一に、この問題をはっきりするためには、現在の国産の石綿スレートの持っている欠陥ですね、それを新しい資材は、どこを埋めていくのだ、この点がはっきりしなければならぬ。それからその欠陥、今もし欠陥があるとするならば、その欠陥が単に強い弱いという問題なのか、これを強くすることによって新しい別の産業の面でこういう発展もあるとか、あるいは伸び切れない問題があるのだが、今度の新しい資材ではそれが伸びられるのだとかいう、そういう重要性というものは産業全般から、通産省の立場において確信を持って、その上でやっているかどうかということが重要だと思うのです。単に新しいものが古いものよりもいいのだといら次官のような概念的な問題で進めているとは思わない。何を埋めるのか、何を期待するのか。その点、新しい建築資材で、今まで構築し得なかった新しい設計が可能になるかどうか、そういうようなものはどういう点があるのかということ、そういう点をお持ちの上で、今言ったように一つの主観を持って折衝するのは当りまえだ、こういうふんぞり返った態度なのかどうか、その点を明白にしてもらいたい。しかも埋めるものがあるとするならば、その埋めるものを、国産の企業を圧迫し、あるいは国産の製品を圧迫する量との比較をどうしたか、そこに問題があると思うのです。その点ちょっとはっきりしておきたいと思います。

○森説明員 ただいま問題になっておりますカラベストスの用途は、従来の国産の石綿スレートとほとんど競合しないと言っていいのです。従来の国産の石綿スレートにおいてややこれに似ておるものは平板類、フレキシボード等でございますが、これらのうちで約八割は非住宅用に使われておりまして、住宅用は二割程度であります。ところでこのカラベストスというものは、住宅用にもっぱら使うものであります。従来の石綿スレートの使われておりまする用途は、住宅用といえども室内の壁板用のものが多いのであります。外壁は、普通下見板と言っておりますが、壁の外側に東京あたりでは板を横に打って、ずっと壁の土を保護するようになっておりますけれども、その下見板代用に使われておる国産スレートというものは、ほとんどないといっていい状態です。そこをこのカラべストスでやろうというのでありまして、従って製品は着色されたスレートでございまして、これを室内に使うには、その着色の状態が装飾的に見て十分ではない。しかし住宅用以外に使うには、少し色がついておりましてぜいたく過ぎるというようなもので、大体住宅用の下見板代用といら用途に使われるものでございます。そういう点からいきますと、国産品は現在のところほとんどそういう分野には製品を供給していないのであります。そういう意味ではただいま御質問のありました点に大体お答えができるかと思うのでありますが、新しい分野を開くものでございます。さらに申しますと、製法が従来の国産品とは全然根本的に違っておりまして、従来のはいわゆる湿式法で、石綿とかあるいはセメント類というような原料の何倍かの水を初めから使ってやっていくのでありますが、このカラベストスは乾式法でございまして、水をあまりたくさん使わないやり方でございます。それが新しい方法でございまして、現在特許を出願されておりまして、これは一応第一審では認めて、出願公告されております。そういう意味で、これは新しい技術と、まずわれわれは考えていいというふうに思っておるのであります。従って、現在の日本の住宅建築を、木造と土というふうな旧式なやり方から、新しい一つの方式、これをプリファブリケーションと言っておりますが、大体現場で組み立てないで工場生産、各工場で部品を全部作っておいて現場に持っていって、いきなり組み立ててしまう、こういうプリファブリケーションの方式を日本の建築業界の改善のために進めていかなければならないのでありますが、その一つの方法としては、たとえば石綿スレートを使わなければならない。そうしてその場合に、今すぐに外の下見板代用として使えるものとして、このカラベストスが相当役に立つだろうというふうに私は考えておるのでございまして、そういう意味で、これは日本の建築界の改善のために相当貢献するものであるというふうに考えております。
 なお、製法がドライ・システム、いわゆる水をたくさん使わない製法でありますために、含水率あるいは吸湿性、吸水性と申しますか、そういう点ですぐれております。従って家の外側に使いまして、雨に打たれたりあるいは非常に強い日に当ったりなんかした場合にも、膨張、収縮が非常に少い。従って亀裂とかあるいはひずみとか、そういうものの発生する可能性が少い、こういう点はドライ・システムによる製品の特長として私は否定できないものであろうというふうに考えております。

○中嶋(英)委員 委員長の時間の御制限があるようですが、この建築資材は、私も実は本職は土木屋で、建築関係の雑誌を参考に毎月とっておりますが、応接にいとまがないほど新しい資材が生まれ、新しい工法が発表されて、たとえば一時はジュラルミンがいいとか、今言ったような資材の問題がある。たとえばよく見てみると、果して住む側の方に立っているかというと、むしろ企業家の側に立って、たとえば造船関係が行き詰まったからその工場があく、こういうものを建築関係に伸ばしていこう、あるいは何かそういう企業の側から新しい品種が出されたり、新しいテーマが出されたりしていく。たとえば現に、過去、戦後十何年間たっておりますが、いろいろなスタイルだってずいぶん変っていますね。非常に奇異の感を持ったものが長年の間にかえって親しいものになったり、あるいは博覧会みたいで一、二年たってみると、ばからしいこっけいみたいなものになる。しかし一々意味がついている。非常に建築界は技術と関連してくるのですけれども変化が多い。従って今の資材の面でも、たとえばボード類も、一時穴があいたボードが出て、そしてこれに金をかけて、いろいろおもしろい内部の装飾ができるというのが出ると、一ぺんにデパートなんかでたくさん出される。使ってみると穴の中から黒くさびが出たり、色が出て部屋をかえってよごしたり、重いものは乗っけられないというので、どんどん変っていく。その変っていく中で追いついていく日本の中小企業者の苦労というものを、やはり考えなければならぬ。あまり変化を追いかけすぎる。少くとも日本の建築スタイルは種々雑多で統制がとれていない。確かに建築落命が進んでおるけれども、何か小刻みに新奇を追っていくという観がある。そういうところに私は問題があると思うので、もっと腰を落ちつけたもので行きたい。たとえばきょうこの発表を確信を持って局長が言う、また来年新しいこういうものが出たがどうだ、はい、と言って変っていく、そういう国の狭い、こまかい変り方というものが業界に混乱を起すし、またこれを使う工法だってなれないものに変っていくということで、こういうことから技術者の方で当惑する。喜んでいるのは企業家と、新しい何か目先の変った設計で喜ばせていくプランを立てる人、デザイナーとか、そういうところだけ喜んでおるという建築界の現状というものをはっきり見つめて、先ほど同僚勝澤委員からいろいろ指摘したような点をもっと検討した上で、対処した方がいい、こう私は考えますので意見を申し求べておきます。

[後略]