31-衆-商工委員会-15号 昭和34年02月17日

昭和三十四年二月十七日(火曜日)午前十一時三十分開議
 出席委員
   委員長 長谷川 四郎君
   理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君
   理事 中村 幸八君 理事 南  好雄君
   理事 田中 武夫君
      赤澤 正道君    新井 京太君
      岡本  茂君    岡部 得三君
      菅野和太郎君    木倉和一郎君
      始関 伊平君    關谷 勝利君
      中井 一夫君    野田 武夫君
      野原 正勝君    渡邊 本治君
      板川 正吾君    今村  等君
      内海  清君    大矢 省三君
      勝澤 芳雄君    鈴木  一君
      堂森 芳夫君    中嶋 英夫君
      水谷長三郎君
 出席政府委員
        通商産業事務官(大臣官房長) 齋藤 正年君
        通商産業事務官(重工業局長) 小出 榮一君
        通商産業事務官(軽工業局長) 森  誓夫君
        通商産業事務官(鉱山局長)  福井 政男君
        通商産業事務官(繊維局長)  今井 善衞君
        中小企業庁長官 岩武 照彦君
 委員外の出席者
        専  門  員 越田 清七君
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[中略]
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本日の会議に付した案件
 プラント類輸出促進臨時措置法案(内閣提出第一〇一号)
 軽機械の技術提携に関する件
 繊維産業に関する件
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○長谷川委員長 これより会議を開きます。
 軽機械の技術提携に関する件について、質疑の通告がありますので、これを許可いたします。勝澤君。

○勝澤委員 私はアメリカのジョンス・マンビルと久保田建材社との間のドライ・プロセスによるカラベストスの製造技術援助契約締結認可の申請に関しまして、経過についての緊急質問をいたしたいと存じます。
 まず最初に、本問題に入る前に、石綿スレート産業の今日の現況、久保田建材社の行なっているアメリカのジョンス・マンビル社とのカラベストスに関する技術提携の今日までの経過、こういう点について局長の御回答をお願いいたします。

○森(誓)政府委員 日本の石綿スレート業界は五十年の歴史を持っておりまして、ととに二、産年前からは、たとえばフレキシブル・ボードなどという相当技術的に進んだものも作るというようなことで、相当の発達をいたしてきているのでございます。しかしながら、建築用材のうちで特に住宅用のもの等につきましては、いろいろ需要家などの意見を聞きましても、いろいろな不満が申し出されておりますが、これはまだそういう方面についての歴史が非常に浅いところからくるためだと思っておりまして、将来の石綿スレート業界の進むべき方向としては、そういう住宅の不燃化を目ざした適当な材料の生産という方向に進んでいかなければならないというふうにわれわれは考えております。
 ところで、この久保田建材のカラベストスの技術導入の問題は、昨年の初めころから、その申請がわれわれのところに提出されているのでございますが、何しろ新しい建築資材でございまして、国内にもあまり経験のないものでございますので、審査も相当困難なわけでございます。通産省としましては、これをいろいろ国立の試験所で試験をするとか、あるいはこの製造技術に関してすでに日本の特許で、特許の公告もされておるというふうなこともありまして、それらの内容につきましていろいろ技術的に研究をいたすということもしておりますし、そのほか学識経験者あるいは需要家、あるいは関係官庁等の意見もいろいろ取りまとめるというようなことをいたしまして、現在もまだそういう意見の取りまとめの段階でございまして、今日までわれわれの研究してみたところでは、ある経度いいようなところも感ぜられるのでございまするが、まだ関連業界との関係等につきましては、さらにわれわれ今後も研究をいたさなければなりません。従って現在のところでは、われわれとしては、まだ最終的な線を出していないという段階でございます。ただこの問題は、かつて日米石綿問題として類似のケースが非常に騒がれたのでございますが、それとの違いと申しますと、前の場合には、そういうジョンス・マンビルという外国系の会社が、日本における新しい会社の株を五二%持つというふうな、むしろ日本の企業か外国の企業かわからないような経営体をとろうとしていたのでございますが、今回の場合は単なる普通の技術導入でございまして、パテント料とかあるいはノー・ハウの代金を払うという、単なる普通の技術導入のケースにすぎません。また入れようとする技術がドライ・システムと申しまして、日本では現在行われていないような新しい方法で着色の石綿スレートを作るのでございます。これはこの前はフレキシボードの技術導入でありまして、この前のときには日本でも若干そういう同じものが生産されていた、それと同様のものについての技術樽入をしようということで、政府としても既存業界への影響につきまして、大きく問題として考えなければならなかった次第であります。さらにまたこの前のときには製品の種類が非常に広範にわたって、その導入技術によって作られるということになっていたのでございますが、今度の場合は、単にヵラベストス、着色された石綿スレートの板と申しますか、そういうものだけに製品が限られているというようなことで、日本の既存業界に与える影響も前のと比べますと著しく小さいというふうな点が違っておりまして、この問題を前回の日米石綿問題とあたかも全く同じような感じで取り扱うということは、われわれとしては注意しなければならないのじゃないかというふうに思っております。いずれにしろ、今後ともいろいろ業界なりあるいは関係官庁等ともよく打ち合せをいたしまして、その上で最終的な線を決定いたしたいというふうに考えております。

○勝澤委員 ただいまの御説明ですと、意見を取りまとめ中でまだ未決定だ、こういうふうに言われておりますが、その通りですか。

○森(誓)政府委員 今日までの研究の結果ではこれを進めまして、関係官庁の幹事会等に出し、あるいはその後の機関にお諮りするといらふうにしていいのではないかというふうに思っておりますが、しかし許可の条件等につきましては、まだこれからいろいろ研究しなければいけない段階でございますし、また業界との意見の調整ということにつきましても、まだいろいろ残された点がございますので、われわれとしてはまだ最終的に方針をきめたということは言えない段階にあると考えております。

○勝澤委員 私の業界から聞いておることとちょっと違うように思うのですが、二月の五日に新田課長の方から、通藤省としては技術導入に踏み切った、こういうことで認可の理由についての説明があった、こういうことがいわれ、また業界の方の石綿スレート協会からは、これに対する声明書が出されておるわけでありますが、今の御説明ですと、まだそこまで行っていなくて、十分業界の意見を聞いて相談をして、それによってきめていきたい、こういうことでございますね。

○森(誓)政府委員 おっしゃるように、役所としては一応の——これを進めていこうという気持は持つに至っておるのでありますが、しかし現実にこれをどういう形で許可をするかどうか、あるいは許可する場合の条件をどうするか、具体的にどういう形でこの問題を収拾するかということにつきましては、われわれはまだ未決定でございまして、今後業界ともいろいろ話し合いをいたして、そういう最終的な姿をきめたいというふうに考えております。

○勝澤委員 大へん通産省の取扱いとしては、慎重になさっておることで、大へんけっこうなことだと思います。特にこの問題につきましては中小企業の多い問題でありますし、業界が一致をして反対をしておる、こういうものでありますから、やはり取扱いにつきましては、念には念を入れてやることの方がいいと思いますから、十分その点につきましては業界の意見を聞いてやっていただきたい。
 そこで、今説明の中では、昭和二十九年の四月八日あるいは二十九年五月十二日当商工委員会で問題になった日米石綿工業とは違うんだ、こういうことが言われております。そこで日米石綿工業というものと、今度の久保田建材というものとは、どういうふうに違いがあるのですか。それと、関連性はどういうふうになっておるのですか、この点について御説明を願いたいと存じます。

○森(誓)政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、前の日米石綿の場合には、まず第一に、日本でそれを導入する企業者の性格が、今回と違っておりまして、合弁会社であったということであります。つまり、前回の場合は、ジョンス・マンビル及びその系統の会社の持ち株が、日本でその導入技術をもって産業を営もうとする企業体の五二%に達しておりましたので、つまり、過半数は外国系の会社の持ち株であるということであります。そういうひどい姿の合弁会社で、この導入技術の企業化をやろうとしておったのでございますが、今回の場合は、普通のパテント料を払い、ノー・ハウを払う、それだけでございまして、企業経営に関与されることもないし、利益配当を与える必要もないし、普通の技術の代価にすぎないのであります。
 それから第二点は、技術導入をいたして作ろうとする製品の品目が、前回の場合は非常に範囲が広かったのでございます。たとえば前回の場合は、フレキシボードが中心ですが、そのほかに、石綿セメント板類とかあるいは平板類とかいうふうないろんな種類のものがありましたので、この導入技術によって、日本の石綿スレート業界は全面的に影響を受ける、有力な競争者の脅威を受けるということになっていたのでございますが、今回の場合は、カラベストスという着色された、石綿板で、しかもこれの用途は大体住宅の外装用で、われわれは下見板を使って従来やっておりますが、それのかわりになる住宅の外装用のものでございます。そのほかに屋根あたりに使われるというものも少数ございますが、主体は住宅の外装用のものでございます。それに限られておるのでございますから、これは既存業界に与える影響というのは、前回と比べまして非常に小さいというふうに思います。
 それから第三点としては、この導入しようとする技術が、日本では、今回のものは全く新しいものであるということでございます。前回の場合は、すでに国内でも同様な技術を用いて行う生産が若干見られたのでございますが、今回の場合は、そういうものが国内には全くないというものでございます。そういう点からしまして、既存の業界に与える影響が非常に軽微であるというふうに考えるのでございます。そういう点で前回の日米石綿問題と今回の問題とは、大へん性格が違うものだというふうに考えております。

○勝澤委員 前回の日米石綿と今回の久保田建材とは違うということを言われたのですけれども、しかし根本というりのは、アメリカの方はジョンス・マンビルだということは明確なんですね。ただこの前は、日米石綿工業を作った、今度はそれをやめて久保田建材にした、こういう違いしかないように私は思う。久保田建材というのは、今現実にこれと似たような仕事をしておるのですか、どうですか。それと、違う、違うと言われておるのですが、背後にあるといいますか、もとといいますか、根本は、ジョンス・マンビルが日本にこのような技術を入れたい、こういうねらいですから、根本的には二十九年に行われた問題と何ら本質的には違いがない、こういうように思うのです。そうして本質的には、一体ジョンス・マンビルはどういうねらいを持って日米石綿でだめになって、今日久保田になってきたのか、こういう点について監督官庁としての御見解を賜わりたい。

○森(誓)政府委員 御指摘のように、技術を提供しようとするものは前回と同じであります。それから今回技術を受けようとする久保田も、まあ石綿スレート製品と類似のものとして、エタニット・パイプを作っておりますが、これは一種の石綿スレート製品でございます。今回のカラベストスにも、そのエタニット・パイプの廃材、端ぎれ、そういうものをカラベストスの原料にして再使用しようというふうなねらいを持っておるようでございます。そういう意味で、現在久保田建材はカラベストスと関係のある仕事をしているということが言えると思います。それから前回の日米石綿と全く同じであるという御指摘でございましたけれども、提供者は同じでございまするけれども、その入れられる形が違うということを先ほど申し上げたわけでございまして、この入れる形の相違があることをわれわれはよく注目いたしまして、前回とは場合がやはり違っておるように思うのでございます。

○勝澤委員 私はしろうとですから、あまり技術的な内容はよくわかりませんですけれども、国内におけるこれと同じようなスレート産業の業者は、これに対してどういう意見を持っておられるのですか。

○森(誓)政府委員 そのこまかい点について一々申し上げるのはどうかと思いますが、きわめて大づかみに申しますると、第一に、今回入れようとする技術は日本にとっては新しいものではない、すでに日本では試験済みのものである、そうしてだめである、ということが、まず一番大きい反対点でございましょう。それから次には、ジョンス・マンビルという会社は元来世界制覇をねらっている会社で、今回この技術を導入することによって、日本の石綿スレート業界を席巻しようとしているということも言っております。そのほか、この技術導入による会社を作りますと、石綿の需給上非常に混乱を来たして、既存業者が石綿の円滑な配給を受けられなくなるのじゃないかというようなことも言っておりますが、そういうふうな点を中心にして反対をいたしておるのであります。

○勝澤委員 私の手元にありますのを見ますと、石綿スレート協会あるいは石綿製品工業会、岩綿工業会、全国硅藻土協会、東京保温保冷工業協会、この業界があげて全部反対をしておる、こういうふうに思うのですが、通産省は当然この業界の行政を担当されている立場から、業界の意見をどういうふうに聞いて、この反対をどういうふうに理解をされて、行政の中で今回のこの導入の中に考えられておるのか、その点について伺いたい。

○森(誓)政府委員 反対運動の中にはたくさんの団体の名前が並べられておりますが、これは前回の反対運動の際にも名前を連ねてきた団体が、ほとんど全部そのまま出てきております。しかしわれわれとしては、このカラベストスの影響が、実際にはどの範囲の業界に及ぶかということをまず明らかにいたしてみますと、必ずしも影響の及ばないような業界もあるわけです。たとえば岩綿とか硅藻土とか関係がない業界も業界としての徳義上、名前を連ねている関係だと思いますが、そういうこともあります。従ってわれわれとしては実質的にこのカラベストスと影響、関連のある業界につきましては、よくそういうところと話し合いをいたしまして、できるだけ業界の納得を得るように努めていきたいと考えております。

○勝澤委員 業界の意見というのは大へん穏当な意見を出されておると私は思うのです。第一の問題は、品質の比較試験をやってもらいたい、第二番目の問題は、技術、コストに関する討論会をやっていただきたい、第三は建材に関する学識者の見解を聞いていただきたい、こう言われておるのです。この問題については、まだこれから十分聞いてやる、こういうことでございますか。

○森(誓)政府委員 業界と話し合う際に、もちろん技術等の点でわれわれが今日まで研究したところを披瀝いたさなければならないと思います。そういう機会を今後も作りたいと思っておりますが、これがただ公正にまたきわめて能率よく行われるような方法を、今後ともわれわれは考えていきたいと考えております。

○勝澤委員 そうしますと、まだこれから十分聞いていきたい、こういうふうに私は理解するのですが、それでは具体的な内容について少し、私はあまり専門家でないのですけれどもお聞きをいたしておきたいと思うのです。
 この業界からの一致した意見としては、技術は新しい技術ではない、こういうことを言われておるのです。これは私は大へんな問題だと思うのです。通産省の方では、これは新しい技術だ、こう言われておる。しかし業界の方ではこれは新しい技術ではない、こういうことが言われております。それから品質の面についても日本で十分品質がいいものができる、こういうことが言われておるわけでございまして、もしどうしてもこの方が品質がいいとなれば、やはりお互いが納得する立場で十分品物を研究して、そうしてその結果われわれの方の技術が悪い、こういうことならば考えるけれども、今言われておるように日本の技術もいいということが言われておるわけであります。あるいはこの経済性の問題につきましても、これはコストが安い、こういうことが言われておるけれども、片方の業界の意見によりますと、これはそうではない、こう言う。それから需要面についても同じことが言える、あるいは原料の石綿についてもいろいろと問題点がある、輸出についてもある、こういう工合に、業界として意見がもう明確に対立をしているのです。ですから、この明確に対立している問題について十分な話し合いもせずに入れていくということになりますと、これは大へんな問題になるのじゃないだろうか、こういうように私は思うのですが、その点どうでしょう。

○森(誓)政府委員 ただいまいろいろ両者の技術的な比較上の問題についてお話がありましたが、これらについてわれわれとしてはここで一々御答弁いたすのはまだ尚早であろうと思いますので遠慮さしていただきますが、業界とやはり円満に事を進めていくためには、そういう点について話し合いをいたしたいというふうに考えておるのであります。ただそういう方法等につきましては、一番弊害の少い、能率のいい方法を考えていきたいというふうに考えております。

○勝澤委員 弊害の少い、能率的な方法というのが実はよくわからないのですが、その意見というのは、この業界が言っているようなことでやっていく、こういう意味なんでしょうか。

○森(誓)政府委員 そのために事柄が長引くようなあまり大仕掛なことをやるということは慎重に考えなければいけないと思うのであります。やはり業界の非常に良識ある公正な判断をせられる方々と話し合いをしていくということを、私は意味しておるわけであります。

○勝澤委員 長引くことがいけない、こういうふうに言っておられるのですが、それは二十九年のときにこれが問題になったのです。二十九年のときには、合弁会社だからというような理由で言われておりました。今回は先ほどの御説明ですと、もう相当前からこの問題が出されておったというふうに言われておるわけです。ですから今までの経過から考えてみれば、ここ半年や一年おくれたからといって、別にどうということはない、こういうふうに思うのです。ましてや国内の石綿スレート産業界としては、これは死活の重要な問題なんです。ですからそういう点でもっと一つ業界の意見をくんだ誠意ある処置というものについての御見解を賜わりたいと思います。

[後略]