28-衆-決算委員会-12号 昭和33年03月07日

昭和三十三年三月七日(金曜日)午前十時四十八分開議
 出席委員
   委員長 坂本 泰良君
   理事 井原 岸高君 理事 田中伊三次君
   理事 田中 彰治君 理事 山本 猛夫君
   理事 吉田 賢一君
      加藤 精三君    堀川 恭平君
      八木 一郎君    淡谷 悠藏君
      小川 豊明君    細田 綱吉君
      山田 長司君
 出席国務大臣
        運 輸 大 臣 中村三之丞君
 出席政府委員
        運輸事務官(大臣官房会計課長)    佐藤 光夫君
        運輸事務官(船員局長)  森  嚴夫君
        運 輸 技 官(港湾局長)  天埜 良吉君
        気象庁長官   和達 清夫君
        気象庁次長   太田九州男君
 委員外の出席者
        運輸事務官(鉄道監督局国有鉄道部長)  八木 利眞君
        会計検査院事務官(第三局長)  石渡 達夫君
        会計検査院事務官(第五局長)  上村 照昌君
        日本国有鉄道副総裁      小倉 俊夫君
        日本国有鉄道常務理事     久保 亀夫君
        日本国有鉄道参与(電気局長)  關  四郎君
        日本国有鉄道参与(管財部長)  安田 正三君
        日本国有鉄道管財部次長    杉野 信吾君
        日本国有鉄道監察局監察役   氷室 史郎君
        専  門  員 黒田 久太君
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三月七日
 委員上林與市郎君辞任につき、その補欠として細田綱吉君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 昭和三十年度一般会計歳入歳出決算
 昭和三十年度特別会計歳入歳出決算
 昭和三十年度国税収納金整理資金受払計算書
 昭和三十年度政府関係機関決算書
 昭和三十一年度一般会計歳入歳出決算
 昭和三十一年度特別会計歳入歳出決算
 昭和三十一年度国税収納金整理資金受払計算書
 昭和三十一年度政府関係機関決算書
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[前略]

○坂本委員長 昭和三十年度決算及び昭和三十一年度決算を一括して議題といたします。本日は右両件中運輸省所管及び日本国会鉄道関係につきまして審査を進めることにいたします。
 それでは昭和三十年度決算につきましてはすでに説明を聴取しておりますので、昭和三十一年度決算検査報告一五九ページより一六五ぺーに至る報告番号九二二ないし九三一、二〇八ページより二三七ページに至る報告番号一一〇五号ないし一一二一号につまましてそれぞれ検査院当局より説明を聴取いたすことにいたします。石渡第三局長。

[中略]

○坂本委員長 次は上村第五局長。

○上村会計検査院説明員 三十一年度の日本国有鉄道に関するものについて御説明いたします。三十一年度の検査報告の掲記事項は、不当事項十六件、不正行為一件、合計十七件でありまして、前年度の三十三件に比べ約半数となっております。
 次に各個別の案件について御説明いたします。
 まず、一一〇五号の予算経理としての給与総額超過の問題であります。三十一年度における国鉄職員に支給する給与の総額は千二百九十億二千七百余万円で、支出決算額千二百八十九億四千三百余万円、不用額八千三百余万円となっておりますが、この決算額のほかに鉄道経費所属の職員が建設工事または改良工事の業務に従事した場合等に、当該職員のその従事期間に相当する職員給、扶養手当等四億九百余万円を鉄道経費等の当該科目から建設費等、職員給などの当該科目に振りかえないで、工事費に振りかえて支出しているものがあります。これを考慮しますと、職員に対して支給する給与総額を三億二千六百万円超過して支出した結果となっておりますので、予算経理上考慮を要するものであります。
 次は工事のうち「予定価格の積算が過大なためひいて工事費が高価となっているもの」として一一〇六号から一一一〇号の五件でありますが、一一〇六号は、東京電気工事局で千三百四十二万余円で請負わせられた栗橋—久喜間架空送電線路鉄塔新設その一工事の予定価格積算の問題でありまして、工事は利根川の州に鉄塔一基を井筒型基礎によって新設するものでありまして、井筒沈下工費を四脚で六百十二万千余円と積算しております。この脚の沈下深さが平均一四二六メートルでありますから、メーター当り沈下工費は十万七千四百九十四円となっておりますが、三十、三十一両年度に施行した他の同種工事の沈下工費の積算が、沈下深さ一〇メートルの場合、調査例中高いものでもメーター当り四万円程度となっております。本件工事は、他の工事調査事例よりも経が短いので、メーター当り堀さく量が少ないことなど有利な点が認められますが、他工事より沈下深さが深い点もありますので、これらの点を考え、かりにメーター当り四万五千円としますと、約三百五十五万円が過大と考えられます。その他工事用資材等の運搬費も過大な点もありまして、契約価格に比べ約三百九十万円が高価と考えられます。
 一一〇七号は、大阪電気工事局で七百二十万円で請け負わせた加古川架空送電路新設その一工事の予定価格積算の問題で、一一〇六号と同様に井筒工費の積算、運搬費の積算が妥当でなかったため、約二百七十万円工事費が高くなっているものであります。
 一一〇八号は、大阪電気工事事務所で二千二百余万円で請負に付せられた横大路、山科間架空送電線路新設その工事についての運搬費等の予定価格積算の問題であります。工事に使用するセメント骨材その他重量約二千五百五十一トンをトラック取りおろし場所から建設現場までの平均距離二百五十四メートルを人肩によって運搬するものとして、トン当り二・八人を要するものとして計四百五十余万円を積算しておられますが、この程度の距離の場合人肩運搬の歩掛りが一般に〇・七人程度であり、過大と認められ、かりに
〇・八人とみましても約三百二十万円が過大な積算と考えられ、また飯場から工事現場までの往復時間がいるということで、作業地点割増として八十三万余円を積算されていますが、平均距離が一キロ程度、所要時間として十五分ぐらいでありますから、積算の必要はないものでありまして、両者をあわせて請負額が約四百万円高いと考へられます。
 一一〇九号は大阪電気工事局ほか三カ所で三千二百余万円で請負わせた既設レールボンドを熔接ボンドに取りかえ、または熔接ボンドの取りつけを主体とする三十四工事の予定価格の問題で熔接ボンドの取りつけ費用を、五十キログラムレール用六百三十四円から七百五十六円、三十七キログラムレール用五百五十四円から六百九十五円と積算しておられますが、各局とも取付労務費が過大に積算されており、また東京鉄道管理局及び東京電気工事局では主要材料である溶接ろうの所要量を過大に見積られているため、請負額に対して総額約四百五十万円高価となる計算であります。
 一一一〇号は、新橋工事局で請け負わせられた白棚線の路盤工事の工事用砂利採取地選定の問題であります。この工事は、旧路盤を自動車専用道路にするため延長十一キロ余にわたり、切込砂利を搬入し、転圧する路盤工を主体とする工事でありまして、予定価格の算定に当り、切込砂利一万四千二十立米、その全量を平均運搬距離一七・一キロの阿武隈川の双石から採取するものとして、立米当り八百六円と積算し請け負わせて施行していましたが、工事途中砂利の数量をさらに四千二百四十五立米分増すこととし、この分は平均運搬距離六キロの黄金川から採取するものとして、立米当り六百三十七円として、この分を増額したものであります。しかし本件工事は、切込砂利が大量で、工事施行延長も長いのでありますから、できるだけ施行現場に近いところに砂利採取を選定し、経済的に施行する配意が必要と考えられます。従って、当初から距離の近い黄金川からも採取するということで、予定価格を立てられたならば、工事費が約四百七十万円は節約できたものと考えられます。
 次は、「工事の施行が設計と相違するもの」で、一一一一号から一一一四号の四件であります。一一一一号から一一一三号までは、大阪、仙台、札幌各鉄道管理局で請負に出されたいづれも電気関係の工事でありまして、通信用木柱の取替工事、あるいは照明用鉄塔新設工事でありますが、いづれもその基礎が設計と異なるでき上りになっている事態でありまして、その後これらに対しては業者の負担において手直しまたは補強を行なっておられます。
 一一一四号は、札幌工事事務所で二千七百余万円で請負わせられたのり面防護その他工事外三件の工事におきまして、設計通りできたものとして検収しておられますが、のり面防護の編さく工の編さく高等の施行が設計と相違しており、約八十九万円が出来高不足となっている事態であります。
 右のように工事の施行が設計と相異する事態の多いのは、工事施行に当って関係者の指導監督が十分に行われず、また検収が適正に行われないこと、任意に設計と異なる施行を指示することなどによるものでありまして、設計と異なる工事をする場合、強度にも影響がありますので、今後十分の留意を御願いしている次第であります。
 次は物件関係に移ります。最初は、予定価格の積算の問題で一一一五号と一一一六号の二件であります。
 一一一五号は国有鉄道資材局で信号器材株式会社からレール絶縁金物L型鈑と継目板を単独またはP・L・F絶縁物等と組合せ購入せられたものについてでありますが、この購入はL型鈑及び継目板については、右会社に製造設備がないのに、会社の特許品であるP・L・F金物と大部品は組合せて購入せられたものでありまして、検査院で同会社からL型録及び継目板を下請している製作業者について調査しますと、L型鈑については、購入価格はこれを使用する軌条によって異なりますが、大体五千十三円から六千三百六十五円に対し、実際は三千八百六十九円から四千八百三円となって相当の開きがあります。これは特許品と組み合せて購入する扱いをするなど価格の算定及び購入処置が適切でなかったものでありまして、製作の実情に合せて購入したとしますと、約五百十万円は節約できたと考えます。
 一一一六号は、北海道外六地方資材部で三好式車両用保温帯を、種類によって単価は異なりますが、五十二円から百九十円、総額千八百二十余万円で購入されたものについてであります。その予定価格の積算を見ますと、主要材料である石綿リボンの価格が、所要量を多く見過ぎたり、原料を低価品を併用するのが通常であるのに、高価品のみで見込んだり、実情に沿わない過大のものとなっております。その結果約三百二十万円は高価となっている計算であります。
 次は資材の調達に当り購入規格の選定が適切でなかったため不経済となったものとして一一一七号と一一一八号の二件が記述してあります。
 一一一七号は、資材局で信興産業株式会社から銘柄指定により千六百余万円で購入せられた殺虫剤フジサイドについてでありますが、本品採用の経緯を見ますと、国鉄における総合比較試験の結果、駅舎散布用剤としては、フジサイドのほかにガンマー乳剤、強力ネオヂクロン等が同等品として選ばれましたが、あと二つについては毒性が強いとか、仕様書の試験規格を作るため試験品を再提出させたところ、さきに比較試験のとき提出した試験品と違っているという理由で排除し、フジサイドを採用されたものであります。しかし、当局で行なった総合比較試験の毒性試験の数値から見ますと、採用されたものがかえって毒性が多いということになっており、また試験品がさきに提出したものと異なっていたものについては、再提出させることもできたと考えられます。従って本件の品だけを採用する理由は乏しく、排除したものを含めて競争させれば有利と考えられ、そのような処置がとられれば約八百万円は有利に購入できたと考えられます。
 一一一八号は、北海道地方資材部外五カ所で高価な削成製品を指定して分岐器用タイプレートを千六百余万円で購入しておられますが、分岐器用タイプレートとしては、削成製品のほか使用上優劣のない鍛造製品がありますから、これを購入せられるようにせられた方が購入事例から見て約四百七十万円は有利であったと考えられるものであります。
 次は、一一一九号の古ボイラーの売却についてでありますが、これは鷹取工場で三十一年度中機関車のボイラー取替工事で発生した古ボイラー二十三基を解体切断して鋼くずとして売却せられたため、ある姿で売却した場合に比べて、約三百四十万円が不経済になった事態であります。
 次は、一一二〇号の東京鉄道管理局における高架下の使用料の決定についてであります。土地建物等の使用料については、従来著しく低廉であったので、二十九年度に従来の料金を当局が時価相当と認めた料金に改定しましたが、その際改定料金が従来の料金に比べて、著しい値上りとなるものについては、二十一年度において改定料金に達するように漸増する扱いとし、二十九年度に実施料金を定め、三十年度においては当初の予定の漸増料金によらないで、二十九年度分実施料金に据え置いたため、改定料金に比べて著しく低廉に決定せられたものであることについては、昭和三十年度の検査報告に記述した通りでありますが、東京鉄道管理局においてはさらに実施料金がなお一部に値上りが著しいことなどを理由とする値下げ陳情、納入拒否等の抵抗がありましたので、継続使用者についてはある程度の補正による軽減処置をとることが、社会慣行にも合致し、不能収入確保の上からも適当であるということから、二十七年度以前から三十一年度十一月まで引続き同一名義人に使用承認している三百四十六件、使用名義人鉄道弘済会外二百七十四名の使用料について、二十九年度に設定した改定料金から三割相当額を減額した額を基準として、二十九年度から三十一年度分の使用料を改定することとし、二十九年、三十年度分については既往にさかのぼり千七百余万円を減額し、三十一年度分については、三十年度減額前の料金より八百余万円を減額することにされたものであります。しかしもともと減額前の料金は高額であったとは認められないものでありまして、二十八年の従来の料金に比べて実施料金が大幅の値上りとなりましたのは、従来の料金が低廉に過ぎたからでありまして、本件減額処置は適当とは考えられません。しかも当局の調査によって見ましても、減額の条件の継続使用は名義だけで、実際は当局の使用承認条件に反して他に使用させているものが少くなく、また料金負担能力も十分あると認められる会社等も多数含まれている状況であります。
 最後は一一二一号の不正行為でありますが、特に説明することはございません。
 以上申し述べました個別事項のほか、最初の方に概説としまして、部内発生の石炭がらまたは古軌条を工事に使用する場合、経済性を考える必要のあること、本社運用の工事機械の運用について改善の要がある点、あるいは船舶の岸壁接岸用の補助汽船の運営を適切にする必要のある点などを述べておりますが、これらについては国鉄において対索を講じておられることと考えられます。
 以上で説明を終ります。

○坂本委員長 次に運輸大臣及び国鉄総裁におきまして、補足説明があればこの際これを許します。運輸大臣中村三之丞君。

[後略]