22-参-社会労働委員会-31号 昭和30年07月25日

昭和三十年七月二十五日(月曜日)午後一時四十五分開会
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   委員の異動
本日委員加藤武徳君辞任につき、その補欠として西岡ハル君を議長において指名した。
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 出席者は左の通り。
   委員長     小林 英三君
   理事
           常岡 一郎君
           竹中 勝男君
           山下 義信君
   委員
           榊原  亨君
           高野 一夫君
           谷口弥三郎君
           西岡 ハル君
           松岡 平市君
           田村 文吉君
           森田 義衞君
           阿具根 登君
           山本 經勝君
           吉田 法晴君
           相馬 助治君
           有馬 英二君
           長谷部廣子君
  国務大臣
   労 働 大 臣 西田 隆男君
  政府委員
   厚生省保険局長 久下 勝次君
   運輸省船員局長 安西 正道君
   労働省労働基準局長      富樫 總一君
  事務局側
   常任委員会専門員       多田 仁己君
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  本日の会議に付した案件
○けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(小林英三君) ただいまから委員会を開きます。
 午前中予定しておりましたあん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案につきましては次回に譲りまして、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案を議題といたします。
 御質疑を願います。

○高野一夫君 大臣でも、大臣でなくても政府の方でけっこうでございますが、皆さんの質疑が出てからいろいろまた質問いたしますが、表題について伺いたいのでございますが、外傷性脊髄障害をけい肺と並べてこの法案の中に入れたことについては、どういうようなお考えがあってのことでしょうか。それを一つ伺っておきたいと思います。

○政府委員(富樫総一君) けい肺と外傷性脊髄障害、この二つは医学的、病理的に見ますれば、全く違った系統の病気であることは申すまでもございません。ただこの両病とも不治の病でございまして、その重篤、悲惨の点におきましては共通しておると考えます。ことに本法案の内容から申し上げますると、従来の基準法ないし労災保険法による給付が三年で打ち切られておる。これに対しまして、さらに別途二年間の給付をするということにおきましては、同じ保護を加える必要がある、こういう考え方でございます。

○高野一夫君 労働者が業務に従事しておる間に不治の病気の障害をこうむるというのに、けい肺もしかり、外傷性脊髄障害もしかりと、こういうようなことに今のお話からはなるわけでありますが、このほかに——まあ私医学のことはわかりませんから存じませんが、労働者が業務に従事して不治の疾病にかかり、障害を受けるということは、このほかにもまだありそうなものだと思いますが、ないものであるか、あるものであるか。もしあるとするならば、ここで外傷性脊髄障害だけを入れて、そのほかのものは取り入れなかったということについては、何らかのお考えがありましょうか。

○政府委員(富樫総一君) この二つの病気のほかにも、むろん現在の基準法あるいは労災保険法で、三年でなおらないものは幾らかそれぞれあり得るわけでありまして、現にそのためにこの打ち切り補償という制度で、賃金の千二百日分をその際に支給して、その打ち切り補償金をもって自後の療養なり、生活をする、こういう建前になっておるわけであります。けい肺なり、あるいは外傷性脊髄と比べますと、その他の病気との間には格段の相違がある。ただそのほかに現在問題になっておりまするのは、潜水病、石綿肺の問題があるのでありますが、最近に至りまして、潜水病につきましては、それを相当に軽快ないし治療のできるというような方式なりが研究されまして、また石綿肺につきましては、これは現在のこれに対する医学的なり、研究がほとんど手がついておりませんので、これは今後の問題として残る。現在の研究成果におきましては、他の病気に比べるとこの二つだけが格段の差をもって悲惨かつ不治、重篤である、こういうことでございます。

○榊原亨君 今のお話によりますと、けい肺症とかあるいは脊髄損傷というもののほかにあまり病気がないようなお話でありましたが、ここにございます資料を見ましても、昭和二十八年、十二月末までにおきまして打ち切り補償をいたしたものが五百四十八で、その中でけい肺症が二百八十九例、脊髄だけでなしに頭蓋、体幹の骨折等を入れまして六十四例というような数字になっているわけであります。従いまして脊髄損傷と同じような悲惨な症状を呈しますものは、何も脊髄損傷だけに限っておるものではないと思いますが、この点が今の御答弁と少し食い違っておるようでありますが、政府は将来これらの不治なものに対しましても処置をするお考えはないのでありますか。承わらさしていただきたいと思います。

○政府委員(富樫総一君) 先ほども申し上げましたように、現在三年でなおらない病気というものはこの打切補償の資料からいたしましてもそれぞれ相当あるということは私どもも承知しておるのであります。しかしその大部分はその際に支給される打ち切り補償で自後の療養がまかなえるという考え方であるのであります。そうしてこの二つの病気以外には、これほど悲惨な、これに準ずる程度の悲惨なものは現在のところない、将来万一このけい肺ないし外傷性脊髄とほぼ同様の程度においてその必要性が認められるというものが出ますれば、論理的に当然に同様の措置が講ぜられるべきものと考えるのでございます。

[後略]