22-衆-社会労働委員会公聴会-1号 昭和30年06月09日

昭和三十年六月九日(木曜日)午前十時四十分開議
 出席委員
   委員長 中村三之丞君
   理事 大石 武一君 理事 大橋 武夫君
   理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君
   理事 吉川 兼光君
      植村 武一君    臼井 莊一君
      亀山 孝一君    小島 徹三君
      床次 徳二君    森山 欽司君
      横井 太郎君    亘  四郎君
      越智  茂君    加藤鐐五郎君
      倉石 忠雄君    小林  郁君
      野澤 清人君    八田 貞義君
      岡本 隆一君    多賀谷真稔君
      滝井 義高君    長谷川 保君
      横錢 重吉君    受田 新吉君
      神田 大作君    堂森 芳夫君
      山口シヅエ君    山下 榮二君
 出席公述人
        珪肺労災病院長 大西 清治君
        日本石炭鉱業経営者協議会専務理事      早川  勝君
        労災審議会長社会保障審議会委員       清水  玄君
        日本鉱業協会総務部長     北里 忠雄君
        全日本金属鉱山労働組合連合会常任中央執行委員 能見  修君
 委員外の出席者
        専  門  員 川井 章知君
        専  門  員 引地亮太郎君
        専  門  員 浜口金一郎君
        専  門  員 山本 正世君
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本日の公聴会で意見を聞いた案件
 けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案について
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○中村委員長 これよりけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案についての社会労働委員会公聴会を開会いたします。
 < 略>

[中略]

○中村委員長 ほかに清水公述人に対する御質問はございませんか。
 それでは北里公述人。

○北里公述人 ただいま御指名を受けました北里でございます。私は金属鉱山に関係いたしておりますので、使用者の立場から、この法案に対する意見を申し上げたいと思います。時間の関係もございますので、要約して申し上げます。本日は少しかぜを引いておりまして、からだの調子が悪くて大へんお聞き苦しいと思いますが、あらかじめ御了承願いたいと思います。
 < 略>
 第二の問題は、適用の問題でございます。本法案を見ますと、適用事業場は、一応粉塵作業場を持っておるところというふうに規定してございます。それも、定義として粉塵作業という中に別表として掲げてあるだけでありまして、特段に一条を設けて、適用範囲が他の労働立法のようにきめられておる法律ではないようでございます。しかしながら、この法律を考えますと、これはけい肺に対する特別立法でありまして、ただ粉塵作業場を持っておるからこれに対して適用され、しかも、その結果は負担を負わされるということは、少し趣旨が違うのじゃないかと思うのであります。これはおそらく保険財政といったような意味合いから、その範囲を拡大されているのじゃないかと思うのでございますが、これは労働省からの確かな説明を受けておりませんので、私の想像にすぎないとお考えいただきたいと思います。しかしながら、この粉塵作業場は非常に多岐にわたっており、また広範にわたっておると思うのであります。その中でも、粉塵が発生しておりましても、けい肺の発生しない作業場もあり、また低けい酸の粉塵を発生する作業場もあり、また予防装置が完全であって、けい肺の発生しない作業場等もございまして、一がいに粉塵作業場、しかもそれが遊離けい酸を飛散する作業場であるからといって、全部が適用対象になるというふうなことは、少し機械的ではないかと思います。従って、そういうけい肺を発生することのない場所、あるいは将来発生するおそれのない粉塵作業場を持っておる事業場に対しては、私はこの法施行の時から、当然適用除外をさるべきものと考えておるのであります。たとえば、金属鉱山に例をとって申し上げますと、石灰石あるいは石膏あるいは石綿、水銀というふうな業種は、一応鉱業法の鉱物の採掘ではございますけれども、ただいま申し上げたように、今までにけい肺の一人も発生しない事業場でございます。また将来も、岩石その他の分析によって、科学的にその可能性がないということが立証されておるものであります。そういうものに、なぜ最初から適用をされるのかということに、非常な疑問を持つわけであります。
 ところが、労働省当局の御説明によりますと、一応初年度においては、粉塵作業場は全部健康診断をして、けい肺があるかないか洗ってみる、それから三年目にさらに事業主の負担において健康診断を行なって、その期間にけい肺患者が発生していないという事実があれば、そのときに適用を初めて除外する、こういうふうなことになっておりますが、けい肺患者のないところが、三年間負担金率の適用事業場ということになって、その費用を納めるというふうなことは、非常な矛盾ではないかと思うのであります。それならば、けい肺が、もしかりにそういうところに発生したときに、適用事業の中にこれを入れるということでもおそくはないのでありまして、最初から全部にかけることは、ことに中小企業に対しては過酷であろうというふうに思います。今申し上げましたことは、健康診断の作業場にも適用があると思いますが、健康診断の方も、法案にありますように、今の粉塵作業場の規定とは違って、若干しぼられておるようでございますけれども、やはりただいまのように、けい肺の発生しない粉塵作業場に対して健康診断を行うということは、私は国費をいたずらに乱費することにもなり、事業主に無用の出費をさせるというふうなことになりますので、そういう点についても、同様な配慮をお願いいたしたいというふうに思います。
 < 略>

○中村委員長 次に能見公述人。

[後略]