21-衆-貿易振興に関する調査特…-3号 昭和29年12月16日
昭和二十九年十二月十六日(木曜日)午前十一時二十七分開議
出席委員
委員長 中村 高一君
理事 小川 平二君 理事 首藤 新八君
理事 帆足 計君
瀬戸山三男君 前田 正男君
小笠 公韶君 楠美 省吾君
笹本 一雄君 赤路 友藏君
松原喜之次君 今澄 勇君
加藤 鐐造君 中崎 敏君
久保田 豊君
出席国務大臣
通商産業大臣 石橋 湛山君
国 務 大 臣 高碕達之助君
委員外の出席者
総理府事務官(経済審議庁調整部長) 松尾 金蔵君
通商産業政務次官 山本 勝市君
通商産業事務官(大臣官房長) 岩武 照彦君
通商産業事務官(通商局長) 板垣 修君
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十二月十六日
委員大矢省三君辞任につき、その補欠として加藤鐐造君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員加藤鐐造君辞任につき、その補欠として中崎敏君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
貿易振興に関する件
対共産圏輸出制限緩和に関する件
中国通商使節団招請に関する件
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○中村委員長 これより会議を開きます。
本日はまず貿易振興対策、主として日中、日ソ等いまだ国交を回復せられていない国家との貿易振興などについて、今後の方針につき、通産大臣よりその所見をお述べをいただきたいと存じます。通産大臣石橋湛山君。
[中略]
○今澄委員 時間がないので、経審長官に一、二分間ぎたいのは、外資の導入と中小企業の関係です。アメリカから一部の中小企業だけに外資の導入をする、すなわちシンガーミシンとパイソミシン、それから日米石綿とジヨンス・マンビル、これは日本の中小企業があげて、反対をしているところであるが、新内閣は、こういうような一部の中小企業に外資の提携をやつて他の業者を非常に圧迫するがごとき吉田内閣の亜流をくむ政策はおやりにならぬと私は思うのだが、経審長官としてのあなたの見解を一言だけ聞いておきたい、あと石橋さんに質問する都合がありますから。
○高碕国務大臣 私は、中小工業を振興する、助成する必要があることは、皆様同様十分感じておる一人であります。しかし、世の中というものは非常に進歩しておりますから、国民大衆はより安いもの、よりいいものを要望しております。大衆というものの味方としても考え、それと一緒に中小工業をどうして生かすかということを考て政策をとりたい、こう存じております。
○今澄委員 そうすると、今の答弁は、日米石綿とジヨンス・マンビルの関係、それからパイソミシンとシンガーミシンの提携、明治パンが提携せんとする外資の導入等は、新しい経審長官としての方針ではこれは当然やつてしかるべし、そういう御答弁と了解してよろしゆうございますか。
○高碕国務大臣 それはよく個々について取調べてやるべきものでありまして、今パインとかなんとかいう御質問がありましたけれども、私はさつぱりその事情はわかりませんから、回答することはできません。明治パンのことにつきましては、当時の政府から、国民生活を改善するためにはパンを安くいいものをつくるようにしろ、こういうことについて助力してくれろという申出がありまして、そういうことについてできるだけ努力したつもりであります。
[中略]
○今澄委員 この点は、御就任早々ですから、いろいろありましようが、あとに譲ります。
第二点は、外資の導入ですが、高碕さんは今帰られましたけれども、明治パンの進出を大いにやつて、東京におけるパン消費の五割は明治パンが握るのだというような考え方の技術提携あるいは器材の購入等をやると、これで中小企業の圧迫というものはたいへんなものです。これはまあ一つのケースですが、今問題になつておる石綿の、日米石綿とジヨンス・マンビルとの提携、パインミシンとシンガーの提携、これらの外資導入の今の姿は、一部の中小企業に特定にくつついて、他の中小企業を圧迫して行くという姿なのです。基本的な外資導入の問題はあとに残すとして、当面今問題になつておる、こういう一部の政治家なり有力者が握つておるところに、そういう外資の導入なり提携なりをして他の一般中小企業を圧迫するというようなやり方、これに対しては、一般中小企業なり国民輿論の上に立つて、反対の大会を、ミシン業者といえども、石綿業者といえどもみな行つておるのです。これらの問題は当面緊急の問題だが、通産大臣としてはどういうふうな御処置に出られるか。今の明治パンの問題は、当の高碕さんがアメリカにおられるときにいろいろ奔走せられて、これは大体終つておるのであるが、あとのスレートの問題、それからミシンの問題等、あなたのこれに対する対策、御見解をちよつと聞いておきたいと思います。
○石橋国務大臣 実は、就任早々で、そういう具体的問題の研究がはなはだ不十分でお答えができないことを遺憾といたしますが、明治パンの問題は片ついたそうであります。従いまして今のミシンと石綿ですが、この問題は今検討中でありまして、まだいずれとも決しておりません。
○今澄委員 検討中であろうが、明治パンの問題やパインミシンのごとき外資導入のあり方は、あなたはこれを是なりと思われるのか、こういうことではいけないと思われるか、その見解を聞きたいのです。
○石橋国務大臣 これは原則論としては、日本の産業の進歩のために、たとえばアメリカの機械を買つて行く、その他技術を入れるのに外資を利用するということで、それが中小企業を圧迫せず、日本全体の産業のためによろしいという場合にはやつてもよいと思いますが、ただいたずらに一部の業者が外資と提携することによつて利益を得る、そして日本の中小企業者を圧迫するということならば、私は賛成いたしません。ですから、その点が、このミシンや石綿がはたしてどういうことなのか、よく聞いてみて、その上でしかるべく判断したいと思います。
○今澄委員 この問題は、人気取りというよりは、基本的なこれに対する回答を迫られる日も近いでしようから、大臣にひとつ十分御考慮を願つておきましよう。
もう一つは、今輸出が伸びたと言われる。いわゆる在庫を食いつぶして表面的には輸出が伸びたのだが、その背後には企業の食いつぶし等いろいろ欠点があります。さつき為替のことを聞いたのは、たとえば鉄鋼、肥料、機械等に対する報奨リンクでバナナ、砂糧等を入れるということは三百六十円の為林ではだめなのだから、実質は四百五十円ぐらいで売る、そしてその埋合せに、それらのものだけに為替の特別扱いをした、一般のものは三百六十円だが、それらのものは特別に四百五十円で売られたということとあまりかわりがないと私は思うのです。結局今最初に申しました一元的な政府の輸出に対する政策がないのです。だから、そういう一部のものに対して、為替を下げたのと同じ効果をもたらすがごときやり方をとる方が貿易振興としては根本策なのか、それとも、減移措置あるいは設備合理化資金あるいは特許輸入の特典あるいは技術上の援助等で、本格的な今のドイツがやつておりますような貿易政策を助長して行く対策をとつて行くかということが、今の日本の輸出増進に関する基本的な問題だ。国内的には企業の合理化、競争力の増強、対外的には今言つた報奨物資による為替レートを切り下げたと同じ姿で行くのか、それとも為替レートを切り下げるのか、それとも為替レートを守るとするならば守るに足る裏づけは何か。あなたは、吉田内閣に対して、何らの裏づけなくして三百六十円を維持するのはけしからぬじやないかと言われて来たのだが、その為替レートを守つて行くのにどういう税金上の措置その他の措置をとるかということが、この輸出振興の一番大きな眼目なのであります。為替レートは守ると言われましたが、今の前田氏の質問に対する報奨的な問題に対する答弁は非常にあいまいだが、この基本線に立つて、石橋貿易政策というものはどういう点を重視してやつて行かれるのかということは国民の聞きたいところです。御答弁を願いたいと思います。
[後略]