19-衆-大蔵委員会-80号 昭和29年11月24日

昭和二十九年十一月二十四日(水曜日)午前十時三十六分開議
 出席委員
   委員長代理 理事 内藤 友明君
   理事 黒金 泰美君 理事 久保田鶴松君
   理事 井上 良二君
      大平 正芳君    苫米地英俊君
      藤枝 泉介君    宮原幸三郎君
      三和 精一君    小川 豊明君
      柴田 義男君    春日 一幸君
      平岡忠次郎君
 委員外の出席者
        大蔵事務官(為替局長)  東条 猛猪君
        参  考  人(全国銀行協会連合会中小金融対策委員長)酒井杏之助君
        参  考  人(全国地方銀行協会会長)  亀山  甚君
        参  考  人(全国相互銀行協会常務理事)島崎 政勇君
        参  考  人(全国信用金庫会専務理事) 安武 善蔵君
        参  考  人(日本銀行政策委員)    岸 喜二雄君
        参  考  人(外資審議会委員)     駒村 資正君
        専  門  員 椎木 文也君
        専  門  員 黒田 久太君
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十一月十八日
 委員有田二郎君辞任につき、その補欠として山口六郎次君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十日
 委員山口六郎次君辞任につき、その補欠として降旗徳弥君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
 参考人より意見聴取の件
 金融に関する件
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[前略]

○内藤委員長代理 次に外資政策に関する件につきまして参考人の御出席を願つておりますので、これからその御意見を拝聴したいと思います。それではまず日本銀行政策委員の岸さんから御意見を承りたいと思います。

○岸参考人 私は今御指名がございました岸でございます。政策委員の方は任務としまして、外資政策問題につきましては権限がないのでございます。ただ外資導入そのものについての理論というものはときどき雑談的にやつております。それは信用調整という大きな問題から出るのでありまして、特に外資政策について何か言えとおつしやいましても実は困りますのですが、ただ先般新聞に外資導入につきましての批判的な意見が政策委員会で行われたかのごとき記事が出ておりまして、それにつきまして何か御質問があるように承知いたしまして出て参つたのでございます。私どもの方としましては、たとえば日米石綿の問題、あるいはパイン・ミシンの問題などは具体的には議題にしたこともございませんし、外資導入政策いかんというような議題を持つたことはないのでございます。ただ雑談的に、先ほど申しましたように、ときどき出るわけでございます。その中で特に日本の国際収支の改善に資するために、外資導入をやるということはもちろんけつこうなんでありますが、あまりに安易に、外資導入をやられるのは困るという意見がときどき出ております。それから特に外国の機械を輸入しまして、あるいはそれを向うの投資によつて輸入するというようなことにつきましても、民間側におきましてあまりに簡単に、安易に、バスに乗り遅れては困るというような考え方で、十分に検討しないで、争つて入れるというような風潮に対しましては、常に批判的なのであります。それは別口外貨貸付制度がありましたときにも、よくその問題が出たのであります。それからよくあまりたくさん出て参りますと、過剰設備問題が起ります。それにつきましても常に批判的であることは事実でございます。それから新聞記事なんかに出ておりました中で、輸出を急速に伸ばすについてもいろいろな施策を行いましても、相手方のある仕事であるからなかなかこれは思うようにいかない。だから日本の側で食糧の自給力を向上させて輸入外貨の節約をはかり、あるいは産金などももう少し力こぶを入れる余地がありはしないかというような研究はしております。それから投融資をしますにつきましても、たとえば合成繊維等につきましての政府融資その他につきましてあまりに総花的になり過ぎる傾向がありはしないかというような、批判的意見がときどき出ておるわけでございます。これも合成繊維そのものが外貨の節約になり、国際収支の改善になるということから、政府でも力こぶを入れていらつしやることはよく承知しておりますが、それにつきましても集中的にやつた方が効果があるんじやないか。われわれの方としましては、資金の効率的運用ということを、任務上特に強く考えるので、そういう点を取上げて議論が行われておる次第であります。
 大体以上のようなことでありまして、特に具体的な問題で議論したことはございません。一般論としてそれだけ申し上げておきます。

○内藤委員長代理 それでは次に外資審議会の委員をしていらつしやいます駒村さんにお願いいたします。

○駒村参考人 私外資審議会の委員をやつておりますが、御承知の通り民間人でございますので、法律なり政策の根本義というものは、すでに国会の立法府においでになる皆さんの方がお詳しいのでありますが、ただ法文に出ておりますものを実行いたして参ります上において、いろいろ民間人らしいセンスでもつて色づけて行くというふうなときに、多少の役立ちをしておるというふうな考え方で、ここ二、三期間引続き委員になつておりますので、外資政策その他につきましては、外資審議会の中にも各官庁の方面からの権威者が出ておられます。そういう方々の御審議を基本として、われわれ独自の考えをもつてそれに賛成したり反対したりしておるようなわけでございます。何か具体的にこういう問題はどう思うかというようなお尋ねでございましたら、私なりの意見を申し述べさしていただきたい、こういうふうに考えております。

○内藤委員長代理 それでは御両氏の御意見はこれでお聞きしたのでありますが、引続いて質疑に移ります。

○春日委員 両参考人にこの外資政策に関する事柄について、特に御足労を煩わしたことについて敬意を表するものでありますが、最初にお伺いをいたしたいことは、先刻来御承知の通りジヨンスマン・ビル並びにシンガー・ミシン、この二つの資本と技術が日本国内のそれぞれの企業と提携して、日本に進出の計画があり、これが外資法に基いてそれぞれ許可申請が出されておる様子であります。ところが賛否両論にわかれてなかなか結論に達しがたく、すでにこれが数箇月にわたつてペンデイングの案件として外資審議会でそれぞれ審議されている様子であります。そこで駒村さんに特にお伺いいたしたいことは、一体どうして一つの案件が数箇月にわたつて結論が出ないのであるか、その内情についてひとつお伺いをいたしたいと思います。
 なお申し述べたいことは、この二つの問題は、すでに経済界でもわれわれの委員会でも大きな問題になつておりまして、先般東条為替局長の御答弁によりますと、この二つの問題だけではなく、類似しているところの案件がすでに四十数件にわたつて、これまた結論が出ないままにあなた方の審議会にかけられて、問題が山積いたしているということでございます。私は、それぞれの問題についてそれぞれの内情が介在をして、結論が出ることはなかなか困難な面も多々あろうと思いますが、少くともその外資審議会なる、法律に基いて国民の信託を受けているこの機関が、四十数件に及ぶ案件、なかんずくこの二件のごときは、国内の産業がこぞつて反対し、関係労働者数十万がこれまた反対をしている事柄について、何ら結論を出すことなく数箇月をけみするがごときは、あまりに国際的に顧慮し過ぎるというのか、あるいは政治的に配慮し過ぎるというのか、これは職責を尽しておられる姿ではないのではないかとすら私は考えられまして、外資審議会の審議そのものに、重大な疑義をさしはさまざるを得ないのでございます。従いまして、この機会に伺いたいのは、この二つの問題その他四十幾つの案件が何一つ結論が出ないという理由は何であるか、それから、その二つの案件は今どういう方向に向つて審議が進められているのであるか、ありのままにひとつ御意見をお伺いいたしたいのであります。

○駒村参考人 お答えいたします。巷間にやかましくいわれている問題でございますが、御承知の通り、外質法自体が外資導入を歓迎するという建前でつくられたものであつて、外国の投資家に、かなり安心感を与えるということが一つの基礎になつておりますが、一面また外資に関する法律の第八条でございますか、それに、国内の経済界に悪影響を及ぼすものは、これは大蔵大臣は認可してはいけないという規定もございます。そういうふうな面で、今やかましくいわれております問題一も、いろいろ検討されたのでありますが、外資のいろいろな面において非常にコンプリケートした問題を検討しなければ、認可の結論に達しないものがたくさんございます。シンガー・ミシンと石綿の二つの問題は、御承知の通り国内の業者の間で非常に反対の声が高いのでございまして、非常な猛運動をして反対をしておられるのでございますが、国内に同種類の産業がたくさんある場合、その影響いかんということがまず大きな問題になるのでありまして、非常に技術のすぐれた、また製品として非常にすぐれたものであつて、それが日本に導入されれば、またそれを日本でつくることができれば、非常に役立ち、また一般の文化の上にも、国民生活の上にも非常にいい結果をもたらすのじやないかというふうなものもございますが、それとまた類似した仕事で、その程度まで日本の技術も急に向上するであろうと思われるものは、今日の段階では見合せておけばいいじやないかというようなことも考えられているのであります。しかし遠く及ばなく、十年かかつても二十年かかつてもこの程度にはできないであろうというふうなものは、文化の方面とか公共性とかいうようなことを考えて導入してもいいじやないか。その導入することにおいて、同業の業界にどれだけの大きな反響を及ぼすかということが顧慮されておるわけであります。今四十何件と言われましたが、私の記憶いたしますところでは、審議会に表向きに出ておりますのは二件あるいは三件だけでございまして、そのほかのものは、この審議会に付属いたしておりまする幹事会でいろいろと検討しておられる案件だろうと承知いたしております。そういう関連からいたしまして、この石綿問題にいたしましても、日本の技術が、導入した後にこしらえた製品とどのくらい開きがあり、どれだけの程度の差があつて、その成果が上るか上らないかというふうな点、これは主としてやはり外資審議会に出ておられまするスタッフの権威者に検討していただいて、その報告に依頼しておるのでありますが、その点がまだはつきりした線が出ておらないということが一つと、一面業界から非常な反対の運動があることは御承知の通りでございまして、その及ぼす影響が通産行政の面から見まして、どういうふうな結果になるであろうかということが、今まだあまりにはつきりといたしておりませんので、現在ではこの運動もありますことでもあり、このままの形では許可しがたい。何かほかに新しいフアクターが指摘されるならば、審議するにやぶさかでないという観点で、現状のようなかっこうになつておるのであります。これも外資法とまた対外的な通商航海条約とかいうようなものの見合いもありまして、すこぶるデリケートな問題でございますので、現在の形では許可、不許可の決定はむつかしい。また新しいフアクターができてそれをモデイフアイすることができるような形の申請になれば、また審議してもいいというふうな考え方で保留されているわけですパインの方も非常な情勢でありますが、これは現在のミシンの業界から見まして、かりにパイン・ミシンとして製品が国内で売れて行きますれば、国内の消費者が多少のロイアルテイを——たしか一台二ドルのロイヤルテイを払つて操業しなければならぬというふうな案件でございますので、これは技術的に見ましても、現在のミシンの姿が、わが国で十分使われている状態であるにもかかわらず、新しい、入つて来たもののために、かりにそれを使おうとすれば、一台につき二ドルを払わなければならない。これはおもしろくないというので、これも許可されておらないというふうな状態であります。今申しました通り、同じような種類でも遠く及ばない技術が導入されて、それが日本の国民生活に非常に役立つものであるということになりますれば、必ずしも外貨の収支をもつてのみ認可、不認可のフアクターとはいたしておらないのでございますので、この御指定の二件につきましては、ただいま申しましたようなことで認可と申しますか、決定が遅れておるような次第でございます。

○春日委員 ただいまの駒村委員の御答弁によりますと、現状においてはこれは許可すべきものではないという大体の御意見である。そうであるといたしましたならば、これは却下するとかあるいは不許可の答申をされるとか、とにもかくにもあなたの方の機関は学術団体でも思想団体でもないので、これは明らかに法律に基く行政機関なんだから、あなた方がそういうような大多数の意見がほぼそこということであるならば、これは新しきフアクターの出現を待つということはどうかと思われるのです。現状において許可すべきでないという段階ならば、これは不許可にするのがたれが考えても当然であります。しかも何とか許可をするにしても、新しいフアクターの出現が必要だから、その出現を待望して、その結論を回避するというようなときには、私は公正なる行政機関のあり方ではないと思うわけであります。従いましてこういうような問題が結論がペンデイングになることによつて続々と新しい申請が出て来る。あなたの手元には二、三件しか付議されていないと言うが、幹事会においては、先般東条局長の御答弁によると、数十件の問題が審議され、いまだ結論が出ていないという。すなわち一殺多生の剣といいましようか、一つの規範を示すことによつて後続にその範を示す、ジヨンスマン・ヒルの問題といい、シンガー・ミシンの問題といい、国内産業の大多数のものがこぞつて反対するという事柄については、それぞれしかるべき理由があつてのことでありますから、お説のごとく現状においては許可すべきでないというお考えであるならば、不許可もしくはそのような御処理をされることを強く要望いたします。
 そこでさらにお伺いいたしたいことは、先般新聞の報ずるところによりますと、大蔵省はその技術援助契約で送金保証を希望しないものは外資法上の認可を要せず、為替管理法上の支払い許可の手続によつて送金が許される、こういうような見解をとられておるということが新聞に報道されたのでございます。そこでお伺いをいたしたいことは、本委員会において大蔵当局あるいはまたこの許可推進論者の中からここでむつかしかつたならば一応これを取下げて、外資法によらずして為替管理法でありますか、そういうようなもので、これを取扱つたらどうかというような御意見が頭を出しておるが、そういうことが正式の論議として論議されたことがあるのでありましようか、どうでありましようか、この点をひとつお伺いいたしたいと思います。

[後略]