19-衆-大蔵委員会-79号 昭和29年11月11日

昭和二十九年十一月十一日(木曜日)午前十時四十八分開議
 出席委員
   委員長 千葉 三郎君
   理事 坊  秀男君 理事 久保田鶴松君
   理事 内藤 友明君 理事 井上 良二君
      大平 正芳君    苫米地英俊君
      福田 赳夫君    藤枝 泉介君
      宮原幸三郎君    三和 精一君
      小川 豊明君    佐々木更三君
      柴田 義男君    福田 繁芳君
      古井 喜實君    春日 一幸君
      平岡忠次郎君
 委員外の出席者
        大蔵事務官(理財局長)  阪田 泰二君
        大蔵事務官(銀行局総務課長)     谷村  裕君
        大蔵事務官(為替局長)  東条 猛猪君
        郵政事務官(貯金局次長) 吉政 重保君
        郵政事務官(簡易保険局長)      白根 玉喜君
        国民金融公庫理事       最上 孝敬君
        中小企業金融公庫理事     中野 哲夫君
        住宅金融公庫理事       鈴木 憲三君
        専  門  員 椎木 文也君
        専  門  員 黒田 久太君
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本日の会議に付した事件
 参考人招致に関する件
 税制に関する件
 金融に関する件
 国有財産の管理状況に関する件
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○千葉委員長 これより会議を開きます。
 税制に関する件、金融に関する件、国有財産の管理状況に関する件の三件を一括議題として調査を進めます。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。井上君。

[中略]

○柴田委員 金融の問題をもう少し伺いたいのですが、今の同僚の委員のお方と同じようなことで、やはり大蔵省から首脳部の出席を求めてもう少し掘り下げて伺いたいので、この金融問題はきようはこれで打切りたいと思います。
 なお私ども新聞紙上等でも承つておりましたので、為替局長に承りたいのが一つございます。十一月九日かに、四十九回の外資審議会における民間外資の受入れ方針に対する大蔵省の構想というようなことを聞いたのでございますが、大蔵省当局、しかも大蔵省の為替局長以外の、たとえば大蔵大臣なりあるいは次官なりの構想であるのかどうか。この点を明らかにしていただきたいと思うのは、たとえば最近民間の外資の導入が一応限界点に達しておる。これはだれにもわかつていることなんですが、こういう観点から国内の業者と国外の業者との摩擦が随所に見受けられるのです。例をあげて申しますと、国内のミシン業者と海外のミシン業者との摩擦がある、あるいは石綿の問題にいたしましても同様な問題がかもされておる。こういう場合に、審議会の議を経ないで、大蔵省の考え方一つでこういういろいろな外資導入の構想を立てておるのかどうか、この点をまず承りたいと思います。

○東条説明員 最近外資の導入に関して、まず限界点に達しておるのではないか、こういう御所見が第一と承つたわけでありますが、外資に関する法律に定めておりますように、私どもは国際収支の改善に寄与いたしましたり、あるいは重要な産業の技術水準の向上に寄与するという、経済的な効果を収めますところの技術なりあるいは資本の提携の申出がありました場合におきましては、それぞれ個々の案件につきまして、外資審議会の議を経まして案件の処理に当つておることは御承知の通りであります。ただいま限界点に達しておるのではないかという仰せがございましたか、外資に関する法律に基きますところの申請は、まだ今後たくさん出て来るであろう。これはわが国の技術水準というものが、相当遅れておるということの結果出て参るのであろうかと存ずるのでありますが、そういう個々の案件につきましては、その案件の経済的な効果を十分外資審議会においても審議してもらいました上で、政府としての措置をきめているわけでありまして、いろいろ案件によりましてはむずかしい問題もあるわけでありますけれども、私どもの考え方といたしましては、この外資導入の問題がすでに限界点に達した、かような考え方はいかがなものであろうかと考えておるわけであります。
 それから外資の導入につきまして大蔵省限りで処理をするような、何か考え方を持つておるかというお尋ねの点でございますが、通常外資の導入と言われます場合に、大きく申し上げまして、入つて参ります法律上の基礎といたしまして、私どもは二つぐらいにわけることができるだろうと思うのであります。第一は、いわゆる外資法の認可を受けまする外資の導入でありまして、この外資法の認可を受けます基準は、先ほど来申し上げておりますように、国際収支の改善なりあるいは重要産業の技術水準の向上ということが、非常に重要な要素であることは御承知の通りでありますが、この外資法に基きまする政府の認可を受けました場合におきましては、将来日本の外貨の事情がどうなろうとも、認められましたロイヤリティーなり、元本なり、利子なりあるいは配当金の送金の保証が受けられる。つまり外国為替及び外国貿易に関する管理法の認可を受けずして、そういう海外向けの送金が保証されておるというのが、この外資法によります認可の効果であるということも、これまた御承知の通りであります。そこで外資が入つて参ります場合におきまして、つまり、たとえば外国人が内地において事業活動をいたしまする場合におきましては、何も外資法によらなければ外資が入つて来て事業をしてはいけない、提携があつてはいけないということではありませんで、外資法の認可を受けました場合におきましては、今申し上げましたような為替管理上の特典が受けられる、かようなわけであります。しからばこそこの外資法によります政府の認可は、相当きびしい条件の上に行われているわけであります。なお、これまた御承知の、たとえば日本とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約におきましては、特定の業種を除きましては——われわれはいわゆる制限業種というのでありますが、これは日本人も外国人も同じ待遇をする、事業上の活動は同一待遇とするということになつているわけでございます。そこで、たとえば外国人が日本で事業をしたい、あるいは日本人と技術提携をしたいという場合におきましては、そういう制限業種に該当しない限りは、自由に、日本人と平等の立場において、日本の国内において事業活動ができるということに、条約上相なつているわけであります。但し、そういう日本において事業活動をいたします場合におきまして、法律上の形といたしましては、今申し上げます外資法の認可を受けたものもありますし、外資法の認可を受けるに至つておらないものもあるわけでございます。そこで、ただいま私どもが研究いたしておりますのは、外資法の認可を受けるに至つておらない種類の外資の導入でありまして、しかもこれが日本の国際収支に非常に役立つという場合におきまして、外国為替及び外国貿易管理法の第二十七条に基くところの主務大臣の認可のやり方について、相当弾力性を持つていいのじやないか。つまり日本の国際収支の改善に寄与するような場合においては、その事業の活動によつて生じた収益、そういうものの海外への送金を比較的幅を持つて考えていいのじやなかろうか。つまり、くどくなりましたが、外資法の認可を受けました場合においては、為替管理法の規定上は、認可はあらためていらないわけであります。しかも日本の外貨事情がどうなろうと、海外の送金ができるわけでありますが、外資法の認可を受けておらない日本における外国人の事業活動についても、それが日本の国際収支の改善に非常に寄与する、日本経済にとつて非常に大きなメリットがある場合においては、為替管理法の運用においての海外送金を、相当機動的に幅を持つて考えてもいいじやなかろうかという考え方をいたしている次第でございまして、私どもといたしましては、この外資法の形態と、為替及び貿易管理法の二つの海外送金を認める形態があり得るのだということであります。さような考え方をいたしまして、ただいま政府としていろいろ研究いたしているという段階でございます。

[中略]

○柴田委員 今同僚の春日委員も主張しておりますが、要は私どもはやはり新序の日本産業のことをどうしても考えてみなければならぬという建前から議論を進めておるわけですが、ただいま局長のおつしやるように、この日米通商航海条約だけを中心として、そうしてそれだけをまた一つの目標として、アメリカの資本家から強要され、これに屈服しなければならぬという考え方だけは除いていただきたいと思います。やはり日本の既存産業を擁護する、そうして日本の自立経済を確立しなければならぬというお考え方を為替局長は持つていただきたい。それがまず第一であります。具体的には、たとえば今の日米石綿の問題につきましても、日本の今のセメント業界でも、いろいろな角度から非常に関心を払つている問題であります。これはミシンの問題も同様でありましようが、こういうことでありますと、日本の産業を脅かすことが非常に強い。こういうことで、今の国際収支のバランスがどうなつておるかということはだれしも知つておることですが、決してよい方向に向いていない。こういう実態もひとつよくごらんになつて、外資法によつて厳選の結果、この民間外資の導入ということも考えなければならぬ。単に吉田さんが一枚看板のようにしておりますところの外資の導入あるいは技術の導入ということだけでは、日本の産業は成り立たぬと思います。こういう観点から、もう一度局長のほんとうの意図をお聞かせ願いたいと思います。

○東条説明員 非常に考え方が一方的で、国のことを考えないとか、いろいろな御批判は承りましたが、私といたしましては、日本の大蔵省の役人であるつもりでおります。なお先ほど来申し上げておりますことは、やはりわれわれといたしましては、条約の解釈も、法律の運用も、さような場合には、公正に、しかも非常に現実に立脚した考え方で運用をやつて行くべきものでありまして、かりに一つの行政措置をいたします場合に、それが法律に抵触してもいけませず、また条約に抵触してもいけません。そういうことは役人としてやるべきことではない。かようなことで厳格な法律解釈、法律論を申し上げておりますので、運用の実際にあたりましては、国会の権威ある皆様方のいろいろな御意見は、われわれ行政運営の重要な指針としてよく拝承いたしておるつもりであります。柴田委員のお話は、外資法の運用にあたつてもう少し国内産業の面に重点を置いた考え方ができないかという御趣旨と拝聴いたしましたが、先ほど来申し上げておりますように、外資法の運用にあたりましては、法律の命じております通り、国際収支の改善に寄与するかどうか、重要産業の技術水準の高揚に寄与するかどうかということを基準にして外資法の運用に当るようにと、法律には定められておるわけであります。多少技術の優劣の差異がありまして、国内産業にいろいろの影響を及ぼす場合がありましても、要するに物事はいろいろ利害得失のあることが多かろうと思うのであります。それらの効果あるいは影響というものを彼此勘案いたしまして、法律の命ずる通りに行政運営をするのがわれわれの立場であろう、かように考えております。

[中略]

○東条説明員 多少私の御説明の仕方がまずいのだと思うのでありますが、先ほど来申し上げておりますように、外資法の認可はいらない。そのかわり国内で事業をしたいと言うて来た場合においては、いわばこれは条約の命ずるところに従つて事業を——われわれはむしろ実際問題としてはこれを拒否することはむずかしいのじやなかろうか。そこで行われておりますところの事業を、それじや内外人平等な立場において海外送金を認めるか認めないでということが、その場合において非常に大きな問題になつて来るのじやなかろうか。もしその事業が非常に日本の国際収支の改善に寄与しておるということであるならば、たとい外国人の事業でございましても、よつて生じた利益というものの海外送金を認めるということが行政措置としては適当なのではなかろうか、かように考えておるわけでありまして、二十四日までにそういう事業の進出を押えるというようなことかできるかどうか、こう仰せられましても、ちよつとその点は法律問題としていかがであろうか、かように存ずるわけであります。

○小川(豊)委員 私これは重大だと思う。今国会でこの問題が取上げられて、ことに日米石綿の問題等を中心にしてこの問題がきわめて真剣に論議されていることはあなた方がよく御承知の通りです。また外資委員会でもこれが問題になつていることも御承知の通りです。そういうことがありながらも、どうしても外資導入をはかろうとし、またはからなければならないような条件というものも、あなた方が背負つてしまつているのではないかということをわれわれは憂えておる。そういうことから、今までのこの論議をさらに明確化するために二十四日には委員等にも出ていただいてこの問題をもつとわれわれが慎重に論議したい、かように考えておる。ところがあなたの方では、外資法、今度は為替管理法の運用によつて道を開いてしまおう、こういうふうな考え方があることは、私どもは看取しておる。だから二十四日のこの委員会のあるまでは、これはあなたの方ではそういう措置はとらないで済ましておけるかどうか。あなたはその点において先ほど国会の権威を非常に認めておる。国会は、この委員会はこの問題について今まで非常に熱心に、真剣に論議しているのだ、その論議していることを知りながら、この為替管理法の解釈によつて導入の道を開いてしまうということは、なさらないだろうということを私は信ずるけれども、念のためにお聞きしたい。

○東条説明員 少し私の申し上げ方が悪いのかもしれませんが、今現に外国の人で相当国内で仕事をしている人があるわけです。もしその事業が日本の国際収支の改善に寄与しておるという事実があるならば、現に為替管理の仕事は毎日々々利益金の送金なり利潤の送金の仕事をいたしておるわけでありますから、私は日本の経済に役立つておるというものをさしとめねばならぬというまでの仰せはなかろうと思います。問題のミシンの問題、日米石綿の問題について仰せになつておると思いますが、それは外資法上の認可を受けたいということで現に申請が来ており、それを外資審議会として審議しておる問題でありまして、まだその申請はそのまま外資審議会の審議の途中でありますから、それを今この二つの案件をお前為替管理法でやるのかというお尋ねであるならば、まだその申請も出ておりませんということを申し上げたら正確だろうと思います。

○井上委員 問題が大分こんがらがつて質疑がされておるのですが、問題は、この委員会でかつて取上げました日米石綿問題に関して、政府が一体どういう処理をするか、それに対して委員会としてはこの案件は外資を導入しなくても、国内において技術的その他の面から考えてもやつて行けるという自信があるしするから、国内産業を保護しまた技術を高めて行く上からもその必要はないと思う。また国際収支の改善にさほど大きく役立つとは考えられないという意見が本委員会中心の意見です。これは通産委員会でも一緒だろうと思う。ところがその外資委員会における審議が遅々として進まないと言いますか、そういう議論があるために進まないということからいたしまして、外資委員会が進まなければ別に何とか外資を入れる方法はないかということで、いろいろ検討された結果、大蔵省の方でそんなに外資委員会がむずかしいなら、そんなむずかしい法律によつて審議をすることよりも、為替管理法によつて運用の道が開かれるじやないか、こういうところへこの問題を切りかえようとしてしておるじやないかということがとかくいわれておるわけです。そういう臆測が伝わつておるわけです。そこでそれはけしからんことじやないか、外資委員会で結論も出ない、かつ技術的にもまだはつきり結論の出てないものを、それはそれでほうつて、他の道を開くということはもつてのほかじやないかというのが、今の質問の重点です。だからあなたの方としては、今お話のようにこの日米石綿会社の問題は、外資法の関係で審議しておる案件であつて、まだ結論はついてない、従つて結論がつかぬ以上は、当局としてはどうするわけにも行かないということが一つと、従つてそれがつかぬ限りは一応他の方途を考えるということも、こんなことはまだ取上げる問題じやないと思う。また今お話のような為替管理法によつて抜け道を考えるというようなことは全然考えてない、こういうことでしよう、はつきり言えば。そういうことをはつきり言うていただけば今のここの質問はそれで終りです。

○東条説明員 現在は外資法に基きます申請が出ておりますから、しかもそれが外資審議会でまだ審議中でありまして審議会として結論が出ておりませんから、両方の案件とも政府といたしましても省としても処分決定には至らぬという段階でございます。
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[後略]