19-衆-大蔵委員会-67号 昭和29年07月13日

昭和二十九年七月十三日(火曜日)午前十時三十四分開議
 出席委員
   委員長 千葉 三郎君
   理事 淺香 忠雄君 理事 坊  秀男君
   理事 山本 勝市君 理事 内藤 友明君
   理事 井上 良二君
      有田 二郎君    大上  司君
      小西 寅松君    苫米地英俊君
      藤枝 泉介君    三和 精一君
      本名  武君    小川 豊明君
      佐々木更三君    柴田 義男君
      平岡忠次郎君
 委員外の出席者
        公正取引委員会委員長     横田 正俊君
        公正取引委員会経済部調整課長 丸山 泰男君
        大蔵政務次官  植木庚子郎君
        大蔵事務官(主計局長)  森永貞一郎君
        大蔵事務官(理財局長)  阪田 泰二君
        大蔵事務官(銀行局長)  河野 通一君
        大蔵事務官(為替局長)  東条 猛猪君
        農林事務官(大臣官房総務課長)     奥田  孝君
        農林事務官(農林経済局統計調査部長)  野田哲五郎君
        建設事務官(大臣官房長) 石破 二朗君
        建 設 技 官(河川局長)     米田 正文君
        専  門  員 椎木 文也君
        専  門  員 黒田 久太君
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七月十三日
 委員宮原幸三郎君辞任につき、その補欠として藤枝泉介君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
 補助金等の予算執行の適正化に関する件
 金融に関する件
 税制に関する件
 国有財産の管理状況に関する件
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○千葉委員長 これより会議を開きます。
 税制に関する件、金融に関する件、補助金等の予算執行の適正化に関する件、国有財産の管理状況に関する件の四件を一括議題として審査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。平岡忠次郎君。

○平岡委員 本日の議題の一つたる金融に関する件に関連しまして、私は大蔵省東条為替局長にお伺いしたいのであります。
 実は日米石綿社なる会社が設立が企図されまして、通産省は技術及び外資導入を大体許そうというような腹で、これに対しまして、聞くところによりますと大蔵省も一応これに同調して、外資審議会で過去四回これが検討を行つたそうでありますが、この検討の結果についてひとつ御報告をいただきたいのであります。特に外資審議会は、現在のところこの問題を否決したのであるか、それとも保留しておるのであるかを明確にされたいのであります。

○東条説明員 ただいまのいわゆる日米石綿関係の外資導入に関する件でございますが、お話の通りに、外資審議会でもたしか四回くらい審議を願つたわけであります。これはなかなかむずかしい問題でございまして、いわゆる外資法に基きます認可の基準といたしましては、重要産業の技術の向上に資しまするとか、あるいは国際収支の改善に役立つとか、さような条件が満たされました場合に、外資法の認可が受けられるという法律の建前になつておるわけでございます。この件が外資法の認可を受けるとすれば、はたしてどういう観点から認可の値打があるかという点でございますが、この日米石綿のいわゆるフレキシブル・ボードの技術が重要産業の技術ということに当るかどうか、この点はいささか疑義があろうかと思います。従いまして認可するかどうかということは、主としてこの技術の導入が国際収支の改善に寄与するかどうかという点が、判断の基準になつて参ろうかと存ずるわけであります。そこで日本にも従来御承知の通りに、いわゆる石綿工業は相当ございまして、この際この技術を導入しても著しく国際収支の改善に寄与するということはないのではなかろうか。また従来日本にありますところの中小企業の保護と申しますか、育成と申しますか、そういう観点からも、よほどこの技術導入は考えものでなかろうかという考え方が一方にあるわけでございます。他方におきましては、やはり米国の相当進んだ技術でありますので、これを入れますと、主として東南アジア方面にフレキシブル・ボードの輸出の見込みがある。従つてこの際多少国内産業に与える影響はありましても、大局的な観点から踏み切つて、やはり技術導入をして国際収支の改善をはかるべきであろうという見方が一方にあるわけでありまして、この両方の考え方、いずれが正しいか、あるいはいずれをよしとするか、過去四回の外資審議会においていろいろ実は検討を重ねられたのでありますが、ただいままでの外資審議会の審議の模様は、まだこの点について、ぜひこれは技術導入をすべきである、それによつて国際収支の改善がもたらされるということにつきましての結論に到達しておりません。そこで審議会といたしましては、いまだ保留になつておりまして、もう少しいろいろの観点から、ほんとうに国際収支の改善になるかどうかということを検討すべきであるということで、各委員から、もう少し政府側でデータをそろえる必要があるという意味合いにおきまして、本件はそのまま保留になつております。従いまして外資法の建前上、政府といたしましては、外資審議会のいろいろ審議なりその結果というものを尊重いたさねばならぬことになつておりますので、政府自体といたしましても、本件を認可するか、あるいはまた認可しないかという点は保留になつております。かような次第でございます。

○平岡委員 その保留が大体否定的な結論が出るということを予想しての保留でなしに、何とかこれを肯定的な結論を出したいという意味で、多少そうした意図のもとに保留されているきらいがあるように仄聞しておるのであります。これは仄聞でございますから、そのことが正しいか、妥当であるかどうかはわかりませんが、しかし石綿工業などというものは、先進国の技術を入れるというほどむずかしい問題ではないわけです。大体石綿の質さえよければ、石綿は大体カナダのケベック州でできるはずです。戦前でも日本にじやんじやん入つて来ておつたのでありますが、戦時中これがとだえましたために、毛足の短かい石綿を使つて、日本でできる戦時中の石綿というものは、品質がうんと低下したのであります。しかしこれは日本の技術が悪いとかなんとかいうのではなしに、原料石綿の輸入がとだえただけなんであります。従いまして、もともとセメントに大体石綿をまぜて、これを圧縮してかわかすだけのことなので、特に今まねのできないものでないものを、そういう高級な技術を日本に導入するとか、そういうふうな理由はこの工業に関する限りないように私思います。私たまたまスレート工業にタッチしたことがあるので、よく知つておるのです。ですから、大蔵省あるいは通産省が尾ひれをつけて言うほどの技術的な一つの劣等性がわが国のスレート工業にあつて、どうしてもアメリカのジヨンス・マンヴイルですか、その技術を導入しなければならぬというようなことは、どうも納得できないのです。今の東条局長のお話でも、技術の点では大した優劣がないようなお話で、ただ国際収支の問題が、当面の審議会の審議の中核をなすべきであるやにお伺いしたのですけれども、この国際収支の問題も、このジヨンス・マンヴイルの機械施設を入れ、技術を入れたために、コストを著しく下げて、アジア市場において、あるいは東南アジアの市場におきまして何とか日本の国際収支に貢献し得るだろうというようなことは、雲をつかむような話で、とてもそうした理由も薄弱であろうと思うのです。こういうことを考えますと、この関連産業がずいぶんあります。直接に石綿工業、スレート工業をやつておる会社が二十五社、三十八工場、それから関連の工場、企業というものは百以上になるわけです。そこで日米石綿社設立反対同盟というものが、この直接スレート工業の会社の従業員を中心としまして、関連産業の労働組合が百十七加わり、なおこれに総評その他友誼団体三十が加わりまして設立反対同盟をつくつて、政府筋に対しまして抗議をいたしておるので、この点は東条さん自身も反対陳情をお受けのことと思うのですが、この反対を押し切つてまで技術導入、外資導入を強行する理由というものがどうも明確でないのでありまして、この反対を押し切つてまでこれをやらなければならぬ理由が他にあるとするならば、御明示いただきたいのでございます。

○東条説明員 先ほどあるいは申し上げ方がちよつと足りなかつたかと存じますが、この石綿工業が外資法にいわゆる重要産業であるかどうかということは、相当問題があろう。従つて外資法の建前では、国際収支の改善に寄与するかどうかという観点から判断すべきであろうというので、外資審議会で審議中であるということを申し上げたのでありますが、しからば重要産業であるかどうかという問題を離れまして、いわゆるジヨンス・マンヴイルの技術と日本の在来の技術の優劣性の問題につきましては、主務官庁でありますところの通産省の方でいろいろ慎重に検討いたしまして、お耳に入つておると思いますが、東京工業試験所でこれは相当綿密な実験、調査、試験をやつてみたのであります。それで平岡委員のお話のように、この優劣性はいろいろの要素があるそうでありまして、はつきりもう問題にならぬほど技術が進んでいるというところまでの判定は出ておりませんが、私ども通産省のそういう専門家から聞いたところによりますと、いろいろの角度から見まして、やはりジヨンス・マンヴイルの製品にいわば一日の長があるということだけは事実だというのが、通産省あるいはその試験の衝に当りました東京工業試験所の判定の結果になつておると存じております。従いまして大蔵省といたしましては、技術の優劣性の問題につきましては、通産省のそういう判断に従いまして、米国の技術の方がいわば一日の長があるというふうに考えておる次第でございます。
 それから東南アジア方面に対する輸出がはつきりした話じやないじやないかという点でありまするが、その点が実は外資審議会で問題になつております非常な重点でありますが、ジヨンス・マンヴイルの方では、もし今回の技術提携が外資法の認可を受けるならば、ある意味において輸出の保障はしてよろしい、もし輸出が思うように伸びないならば、ある程度自社で、米国で買い取つてもよろしいというような気持があるようであります。この点ははつきりそこまで明確に引受けるという書面による意思表示までは来ておりませんが、もし日本政府で国際収支の改善ということが非常に重点であつて、そういう条件付でなければ認可しないということならば考慮してもよろしいというような考え方があるようであります。しかしこれは先ほども申し上げましたように、外資審議会でまだ保留中で結論を出しておりませず、従つて政府としても結論を出しておりませんので、そういう条件をのむかのまぬかということまでもまだジヨンス・マンヴイルに当るべき段階ではもちろんありませんので、その意味におきましては、まだはつきりいたしておりませんが、そういうような意味合いにおきまして、東南アジア方面への輸出ということにつきましても、全然見込みがないというふうには考えがたい面がある、さような事情もある次第であります。そういうようなことでございまして、なお本件は先ほどお話のように、石綿工業側のいろいろの陳情あるいは実情のお申出もありますので、外資審議会ももう少し十分検討しようということで保留になつておるのが実情でございます。

○平岡委員 たとえば写真機の感光板とかは微妙な点でコダックに対して日本の製品が劣るとか、こういうような点は、技術の問題がかなりあると思うのです。しかしもともとこんなふうなものです。大体波型スレートというのは屋根にする、あるいはこれを下見に張るとか、大体こんな程度のものの優劣もへちまもないと思う。多少一日の長があろうとも、これをもつて今の外資導入をし、しかも国内の関連産業を圧迫するというような結果を招来する憂いのあることをあえて強行する理由はないと思う。大体外資審議会でこんな問題をまごまごやつておるというのがおかしいように思うのです。今の輸出の問題とかなんとかいうようなことでも、そのけはいありという、そんなことが理由で、今まで外資審議会がその権限を行使したというふうな例はおそらくないと思う。何かその理由を見つけてやつておるというふうな、相当無理なけはいがそれこそ横溢しておるように思う。こういうふうな点はあつさり否決してしまつたらいいと思うのです。そうでなくても、日本の産業の進展のためにもつと重要な技術導入の場面がたくさんあろうと思うのです。こんな石綿工業の粗筆的な原始産業です。こんな問題まで、しかも外資そのものとして導入する計画は非常に少いのです。少いからいいだろうというのではなしに、こんなくだらぬところまで日本の産業の今の劣等感をまる出しにするというのは、政府当局の識見というものに対してわれわれは疑念なきを得ないのです。こんなものを今何回も外資審議会の方で検討の対象にしておるということはおかしいように思うのです。こういう点をほんとうにとらわれることなしに明断をもつて結末をつける、こういうことにぜひとも局長は推進していただきたいと、私希望を申し上げておきます。
  〔委員長退席、内藤委員長代理着席〕

[後略]