19-衆-予算委員会-33号 昭和29年06月03日

昭和二十九年六月三日(木曜日)午後二時三十二分開議
 出席委員
   委員長 倉石 忠雄君
   理事 西村 直己君 理事 西村 久之君
   理事 森 幸太郎君 理事 川崎 秀二君
   理事 佐藤觀次郎君
      岡田 五郎君    尾関 義一君
      小林 絹治君    迫水 久常君
      庄司 一郎君    灘尾 弘吉君
      羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君
      福田 赳夫君    船越  弘君
      山崎  巖君    稻葉  修君
      河本 敏夫君    竹山祐太郎君
      中曽根康弘君    足鹿  覺君
      伊藤 好道君    滝井 義高君
      松原喜之次君    山花 秀雄君
      稲富 稜人君    岡  良一君
      小平  忠君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 岡崎 勝男君
        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君
        厚 生 大 臣 草葉 隆圓君
        通商産業大臣  愛知 揆一君
 出席政府委員
        大蔵事務官(主計局長)  森永貞一郎君
 委員外の出席者
        専  門  員 小林幾次郎君
        専  門  員 園山 芳造君
        専  門  員 小竹 豊治君
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六月三日
 委員川島金次君辞任につき、その補欠として岡良一君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
 予算の施行状況に関する件
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○倉石委員長 これより会議を開きます。
 予算の実施状況に関する件を議題といたします。質疑を継続いたします。佐藤觀次郎君。

[中略]

○佐藤(觀)委員 きようの新聞を見ましても、繊維の大暴落を来しております。このままで行きますと、おそらく日本の重要な産業である繊維工業は、ほとんど全滅するのじやないかというような、非常に悲惨な状態を予想されておるわけでありますが、これに対する確たる信念がなければ、これはもう弱い者いじめでだんだん倒れてしまうわけであります。そういう点についての政府の所見と、もう一つ、昨日も川崎委員からここで発言がございましたが、私は先日予算分科会において、日米合弁の石綿会社につきまして非常に疑問を持つたので、政府の答弁を求めたのであります。もう三月ばかり前になつておりまして、そのままになつておりますが、御承知のように日本では中小企業者が非常に困つておる。特にセメントの材料などはあつて、しかもスレートなどは大体需要を満たしておるばかりではなく、現在四割くらいは操短をやつておるというような状態であるわけであります。こういう日本の中小企業者を倒すような外資の導入は、避くべきではないかというようなことを考えておりますが、通産大臣はこういうような問題に対してどういうようにお考えになつておるのか。こういうことにつきましては、あなた方の与党の議員で反対しておられる人もあるので、われわれ野党としてはどうも納得が行かない。何か不明朗なことがあると思うわけでありますが、そういう点について通産大臣はどういうようにお考えになつておるのか、ひとつ御答弁を願います。

○愛知国務大臣 外資の導入それから外国機械の輸入、技術の提携という問題につきましては、従来よく内地でやつておりました業者その他との間にいろいろ意見の全い違いが出て来ることは、ある程度はやむを得ない事情があるように思いますが、私は明朗不明朗ということではなくて、合理的に処理をして参りたいと考えております。原則論といたしまして、日本でなかなか得られないような優秀なものであるならば、これは大所高所から、こういうものを入れて、合理化の一助に資するという考え方が正しいと思うのでありますが、これははたしてそういう技術が優秀であるかどうかということを技術的に調べることも必要であり、またたとえばさような特殊のものを入れました場合に、輸出振興に限定してこれを使わせるというような条件を考えるとか、こういうような点でできるだけ広い視野から、あらゆる観点から総合して合理的な結論を導くべきもの、こういうふうにわれわれはかねがね考えております。従つてただいま御指摘の問題につきましても、非常に長い間の懸案でありますが、外資審議会等におきまして非常に熱心にあらゆる角度から検討をしていただいておるものでございまして、そのうちにすみやかに結論が出ることと考えております。

○佐藤(觀)委員 りくつ上は非常にりつぱでありますけれども、日本ではどうにか生きて行かれるような中小企業者が非常に多いために、一個の大きな会社は都合はいいけれども、日本全体の立場からいいますと倒産者が出る、それも日本ではセメントに関連して瓦のような、あるいはスレートのような、すでに飽和点に達しておる事業を、わざわざ外資を導入してまでやらせるというところに、私たちが納得行かない点があるわけであります。そういう点については実は今の愛知通産大臣の御意見には賛成しがたい点がありますが、一体どういう意味でそういうようなことをやらなければならぬのか、その御真意をひとつ承りたいと思います。

○愛知国務大臣 これは具体的な問題でございますし、ただいま申しましたように、外資審議会でも、政府側が考えておりました以外に、こういう点もさらに慎重に検討したらよかろうというようないろいろな御意見も出ておりますので、それらの点を十分勘考いたしまして結論を出したい。原則的なものの考え方といたしましては、先ほど申しましたように優秀な技術は入れたい、しかし同時に入れ方の程度なり規模、方向なりについては十分考えなければならないという点については、一般論といたしましても十分配意いたしたいと思つております。関連しまして、川崎秀二君より発言を求められております。この際これを許します。川崎秀二君。

○川崎委員 ただいまの質疑応答を聞いておりますと、フレツクスボードの製造は日本ではできないということでありますが、フレツクスボードだけでも日本でもできる業者は、私はあると思う。ところがフレツクスボードというものは、それだけ日本に需要量があるのか、むしろ普通の石綿スレートといいますか、これに進出することの目的で、今まで日本にあまりなかつたフレツクスボードというものを一つの足がかりにして外資導入ををしよう、進出をしようということが、今度の日米石綿社設立趣旨のようにわれわれは考えられてならない。そのことが結局普通の石綿スレートの製造に非常な打撃を与えることになつて、中小企業者が苦しみを受けるというので、昨日来の当委員会で問題になつているわけです。この点に対する明快なる御答弁を煩わしたいと思います。

○愛知国務大臣 これは今佐藤委員の御質問にお答えいたしましたように、確定的な意見をまだきめておりませんので、さらに十分慎重に研究いたした上で態度をきめたいと思つております。

○川崎委員 すると、まだ許可をしようという段取りにはなつておらないのですか。

○愛知国務大臣 これは当初工業技術院その他の技術陣なども動員して相当慎重に研究をいたしまして、さらにこれがたとえば輸出に貢献するものであるとか、あるいはフレツクスボードなるものに限定して取上げるものであるというようなこと、そのほかいろいろの条件を勘考して、こういうふうな条件であるならば、しいて拒否しなくてもいいではないかという意見が政府部内では有力でございます。しかしながら先ほど申しましたように、いろいろの観点から慎重に考慮しなければなりませんから、外資審議会の審議とも見比べまして、さらに一層慎重な態度で善処いたしたいと思うのであります。

○川崎委員 フレツクスボードのみに限らず、その他のものをも包含して許可をしようという意見が政府部内で有力なのですか。

○愛知国務大臣 そこまではまだきめておりません。

○川崎委員 何が有力でしたか。

○愛知国務大臣 先ほど申しましたのは、このフレツクスボードなるものが——ただいまの御意見とは多少違うかもしれませんが、技術的に検討してみれば、なるほど優秀なものであるということには結論が出ております。ので、それに限定して、そして一方中小企業者あるいは具体的にはこれを輸入しようという計画を持つている会社以外の会社は、これに対して非常な批判を打つておりますので、その批判が具体的な問題について出ておる点は十分考慮して、心配のないように解決でき るかどうかという点を中心にして、た だいまさらに慎重に検討しておるわけであます。

○川崎委員 そうするとフレツクス ボードの製造のみでなしに、その他の 部面の関係等も顧慮してきめるということになりますと、自然に現在セメント関係の中心会社であるスレート製造 のみやつておる業者が生産しておる品 物が、日本で大体需要供給の関係のバランスがとられておる、それにそれだけの石綿が入つて来るとすれば、日本では非常な生産過剰ということが予想されるので、そのことによつて中小企業が倒壊するのじやないかということが、今日一番憂えられている問題なのです。従つて、もし入れられるとすれば、当然フレツクスボードのみの製造ということになるのでしようけれども、それではまた日本ではそれだけフレツクスボードを使つてつくるような高級な建築様式は、発達しておらないのじやないかということが問題になつて来る。それなのにかかわらず、全体の資本金が百三十万ドルですか、そういうような多額のものであつて、そしてその中の二五%をジヨン・スマンヴイルというのが持ち、さらにこれとまつたくタイアツプしたような形でそれの出先機関のような東京興業貿易というものが二七%持ち、つまり全体の五二%を持つということになると、まつたく外国例の支配に属するような会社ができて、それが従来の日本の中小企業を圧迫することになりはしないか、これが私の聞かんとする根拠なのです。そういうことに対して通産大臣はどう いうふうにお考えでありますか。

○愛知国務大臣 でありますから、先 ほど申し上げたような考え方で、これを具体的に処理をいたします場合に は、外国側の会社と日本側の会社との間の具体的ないろいろのネゴシエーシヨンが必要だと思います。さらにそれを政府側が側面的に、あるいは援助しあるいは注意を喚起するということも必要なのであります。それで、先ほど来くどく申し上げておりますように、いろいろ考えるべき要素がありまして、相当の日にちをとつておりますが、さらに慎重に検討して、できるだけ早く結論を出したい、こういうふうに考えております。

○川崎委員 この問題について非常に熱心なのは通産省並びに大蔵省だというふうに聞いておるけれども、これを四、五日前に外資審議会で協議をした際におきましての、その審議会の経過はどうなつておりますか。私の聞いておるところでは、民間側は全部反対で、官庁側の内部においても反対があつた、つまり三対六ですか、九人の委員の構成においてそういうような数字まで出しておるということは、相当通産当局も反省をしなければならぬのじやないかと考えられるのですが、いかがでしよう。

○愛知国務大臣 その点は、三対六であつたかどうかは私聞いておりませんが、先ほど来申しておりますように、これは具体的に正式議題になつてからでも、四月の末以来相当の日数かかつております。何べんかこの審議会の議題にもなつておりますが、六月一日の審議会でも結論は得られなかつた。それから、非常にこまかいことは私も報告を聞いておりませんが、数点について、出席の委員側から、こういう点についてさらに掘り下げて検討したらどうだろうかという御意見が出たようでありまして、それらの点について研究の結果は報告を受けることにいたしております。

○川崎委員 通産当局あたりあるいはこれを推進しようとしておる側の意見は、この日米石綿社というもののもくろみ書に、その製品の四〇%を東南アジア地域に輸出する、そのことによつて日本の国際収支の改善に資するから、一挙両得であるという考え方、日本の国内における建物の改造にもなるし、同侍に東南アジア地域へ輸出するということになれば、非常にいいのではないかという、もくろみ書を一つの基準にしておられるように聞いておるのでありますが、私の聞き間違いかもしらぬ、あるいは材料の集め方が間違つておるかもしれません。しかしこれは公正に考えております。私は質問をしておるからといつて決してただ反対ではないのです。そこで聞きたいのは、そういうことが一つの基礎となれば、日本よりも経済水準の低い東南アジア——どうせビルマかタイ、あるいはその他の地域でしよう。反共地域だと思うのです。それらのアジアの反共地域で、それほどの受入れ態勢というものかあり得るのかどうか。受入れ態勢があり得るものならば、一つのおもしろい考え方でもあろうと思うのです。ところがどうもそういうことの根拠が、非常に薄いのではないかというふうに私には考えられるのだけれども、そういうようなことについての通産大臣の御見解を承つておきたいと思う。

○愛知国務大臣 その点は確かにもくろみ書にもあつたようでありますし、それから出願者、申請者側でもかなり大きなポイントにしている点であります。それから同時に、それのみではなくて、もしかりに日本がこれを受入れなかつた場合においては、東南アジアの諸国においてこれを受人れて工業化するおそれもある、こういう話題も出ているくらいでありますから、これは確かに研究の一つの課題であると思います。

○川崎委員 それは私が今申し上げているように、日本で製造して、そうして東南アジア地域へ輸出するということではなしに、日本が受入れなかつたならば東南アジア地域だけでも工場を興してやるという意味ですか。

○愛知国務大臣 そういう話も出ておるくらいであるので、はたしてその製品の四割が、言うがごとくはけるものであるかどうかというような点についても、おそらくきのうの審議会でも一つ出ました具体的な問題だろうと思いますが、それらについてもいま少し情報を集めて研究する必要があろうと思つております。

○川崎委員 大体通産大臣のきようの御答弁でけつこうでありますが、私はこれはどちらへきまつてもいいと思つておる。実情をまだ双方とも調べたわけではない。ただもしこれが輸入をされた結果、わが国の中小企業に非常な危機が到来する。その結果は何ら得るところはない。ただ優秀なるフレツクスボードの製品を輸人するだけであつて、そのことが決して日本の経済に対してプラスにならぬというような態勢が考えられたときには、これはお取消しになつてしかるべきではないかというふうにも考えます。現にフレツクスボードは製品化しておらぬが、日本にもこれ以上のものができるというイグザミネーシヨンもあつたというようにわれわれも聞いておるので、そうなるとこれらの問題はさらに複雑になつて来はしないか、その意味で通産大臣の御善処を願いたい、かように考えておる次第であります。

○愛知国務大臣 御趣旨はよくわかつておるつもりであります。大体私もそういう考え方で慎重に、しかしできるだけ早く結論を導きたい。しかし先ほど佐藤さんにお答えいたしましたように、私は合理的に解決いたしたいと考えております。
 それからもう一つこれにつけ加えて申し上げておきたいと思いますのは、えてしてこういう問題については——これをさして言うわけではございませんが、非常に心配をし過ぎる向きもございますので、たとえばこれは非常に悪いたとえになるかもしれませんが、電燈が新しく発見されて使われるという場合に、昔はろうそくを使つておつた。そのろうそくの関係の人たちが非常に心配するが、しかしやつてみれば文明の利器を使つた方が、全体の日本の産業の合理化になり、また全体としての利益にもなる、こういうような考え方も一方においては忘れられないことだと思います。これは今の問題について特に申し上げるわけではございませんが、私の気持を率直に申し上げたのであります。

[後略]