19-衆-予算委員会-32号 昭和29年06月02日

昭和二十九年六月二日(水曜日)午前十一時十八分開議
 出席委員
   委員長 倉石 忠雄君
   理事 西村 直己君 理事 西村 久之君
   理事 森 幸太郎君 理事 川崎 秀二君
   理事 佐藤觀次郎君
      相川 勝六君    岡田 五郎君
      尾崎 末吉君    尾関 義一君
      迫水 久常君    富田 健治君
      中村  清君    灘尾 弘吉君
      羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君
      船越  弘君    山崎  巖君
      山本 勝市君    稻葉  修君
      小山倉之助君    竹山祐太郎君
      足鹿  覺君    伊藤 好道君
      滝井 義高君    山花 秀雄君
      横路 節雄君    稲富 稜人君
      河野  密君    小平  忠君
 出席国務大臣
       大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君
 出常政府委員
        大蔵事務官(主計局長)  森永貞一郎君
        大蔵事務官(為替局長)  東條 猛猪君
 委員外の出席者
        専  門  員 小林幾次郎君
        専  門  員 園山 芳造君
        専  門  員 小竹 豊治君
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五月三十一日
 委員北れい吉君辞任につき、その補欠として岡田五郎君が議長の指名で委員に選任された。
六月二日
 委員三浦一雄君及び佐竹晴記君辞任になき、その補欠として稻葉修君及び堤ツルヨ君が議長の指名で委員に任された。
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本日の会議に付した事件
 予算の実施状況に関する件
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○倉石委員長 これより会議を開きます。
 予算の実施状況に関する件を議題といたします、質疑を行います。川崎秀二君。

[中略]

○川崎委員 通産大臣にあとで伺いたいですが、大蔵大臣しかおいでにならないので簡単に大蔵大臣に伺つておきます。最近小野田セメントがアメリカのジヨン・スマンヴイルという会社と提携をして石綿の輸入をして、日米石綿社というものをつくるという計画——これは外資導入ですから、おそらく大蔵省も関係しておられると思うのですが、これが今明日中にも外貨の割当を決定するというようなことを言われておりますけれども、そのことについてはお知りはないでしようか、

○小笠原国務大臣 これは私もちよつと聞いております。なお私がニューヨークヘ行つたときに、ジヨン・スマンヴイルの研究所がニューヨークの郊外にありまして、見て来たのは事実であります。しかしながらこれは外貨審議会の方で決定することになつておりまして、その方で目下審議中であるというように承知しております。なおあれは何か日にちがそれぞれきまつておりまして、今明日中というような、そんな近くそういうふうにきまるものじやなくて、何か定例日がありまして、定例日に問題になるように承知しております。これについてはそれ以上私まだ詳しく承知いたしておりません。

○川崎委員 これは通産大臣に伺うべき筋だと思いますが、大蔵大臣も承知をしておつていただきたいし、御見解を承つておきたいのは、ここのジヨン・スマンヴイル会社というのは、カナダに世界最大の石綿鉱山を持つており、アメリカで石綿を原料とする二次製品その他百数十種に及ふ製品を製造している有力な会社であることだけは世界でも知られている。しかしながら今度の日米石綿社というのが製造する品目は何かというとフレキシ・ボートという屋根のスレートといいますか、あれの板の大きなものをつくろうとしているようですが、これが製造されると、日本にあるスレート会社というものは非常な危機に立ち至つて、スレート関係の中小企業はほとんど軒並に倒産をしなければならぬというように言われている。現に日本の国内においてできるのは、その品質においてジヨン・スマンヴイル会社の製品と優劣がなく、コストにおいても国産品は遜色がないと言われているにかかわらず、日米石綿社というような会社をつくつてこういうものを多量に輸入をする、そして投資の資本金の関係からいうと、何でもジヨン・スマンヴイル会社の資本構成として大体一五%を持つようであります。しかしながら二五%を持つにかかわらず、何でも二、三年先にはまたこれを引上げるというようなことになつて、決していい条件ではない。しかるにこういうようなものをつくて日本の中小企業を危機に陥れるようなことは、はなはだ不適当ではないかという陳情があるのであります。しかし私はこの陳情がはたして正当なものであるかどうかということについても相当審査をしてみました。これらの言い分には正当なところもあり、かつ小野田セメントと淺野セメントとの競争的なものもあるので、決して一力に加担をするということは許されないと思います。しかしながら非常に重大なことは、中小企業が軒並に倒れる、スレート会社が倒れるということになるならば、これは中小企業擁護の立場から、そのような外資導入をはかつて、そしてわが国の製造業者を苦しめることは適当な措置ではないと思うから、外貨の割当については慎重な考慮がほしい、こういうふうに考えるのでありますが、大蔵大臣の御見解を承つておきたのであります。

○小笠原国務大臣 外貨の割当は外貨審議会で慎重に検討することと思います。このことについては、実は私もちよつと聞きまして、今川崎さんもおつしやつておりましたか、コストも日本で同じようなものができるし、品質も差がない、それならば向うから入つて来たつて圧追を受けることはないので、どこが競走上困るかということはちよつと私にはわかりかねる。コストが高いとか、品質が悪いということがあるので、圧迫を受けるのではないかという感じを持つたのです。同じ品質で、コストがかわらなければ、自由競争のもとに何もさしつかえないのじやないかという感じもいたしました、これは私が思つた感じだけを申し上げるのです。しかしながら中小企業に対する保護ということは重要なことであり、同じことであれば外国資本はそう望ましいことでもないのですか、ただ日本がこういうときに外国資本をな必要といたす場合もありますので、(「生産過剰になるぞ」と呼ぶ者あり)そういう場合もありますので、あまり日本が鎖国主義に流れることはどうかと考えております。

○川崎委員 ただいま議席からも御発言があるように、今の会社の製品だけでも大体需要をまかない得る、あるいは少し足らぬかもしれないが、需要供給はバランスがとれているにかかわらず、こういうものを多量に入れるのはどうか、生産過剰になりはしないかという議論かあるのである。ところが日米社のもくろみを見て行くと、その製品の四〇%以上——これは大蔵大臣はまだよくお知りにならないかもしれないが、東南アジア地域に輸出して、国際収支の改善に資すると書いてあるそうです。つまり日米合併の会社をつくつて、日本で製品にして、それを東南アジア地域はやればよくなるだろうという一つの見通しもあるのです。そんな日本よりも経済水準の低いところに上等な屋根瓦を持つて行つて、そこで受入れられるものかどうか。私は想像するのですよ。もう一つ発展して想像するのに、これは東南アジアの各地域に新しい官庁ができたり、会社ができる、それとアメリカと非常に結びつきがあつて、受入れ態勢も十分だという一つのプランがあつてやられておるならば、ある期間を限つては悪いことではないかもしれぬと思う。ところがその見通しもどうも十分でないようにも考えられるので、これは非常に慎重願わなければいかぬのじやないかというのが、私のきようの所論であつたのです。しかもこういう発言はあまりしたくないけれども、このスレート会社の許可にはこれまた池田政調会長が非常な御関係にあるようであつて、またぞろいろいろなことになつても困るから、この際御忠告を申し上げて私の質問を終ります。

○小笠原国務大臣 川崎さんの言われたことは私も大体同感です。よく慎重に取扱うことにいたします。

○倉石委員長 それでは午後一時まで休憩いたします。
   午後零時五分休憩
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  〔休憩後は開会に至らなかつた〕