19-衆-厚生委員会-51号 昭和29年05月27日

昭和二十九年五月二十七日(木曜日)午前十一時七分開議
 出席委員
   委員長 小島 徹三君
   理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君
   理事 松永 佛骨君 理事 古屋 菊男君
   理事 岡  良一君
      越智  茂君    庄司 一郎君
      降旗 徳弥君    安井 大吉君
      滝井 義高君    萩元たけ子君
      柳田 秀一君    山口シヅエ君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 草葉 隆圓君
 出席政府委員
        厚 生 技 官(公衆衛生局環境衛生部長)  楠本 正康君
 委員外の出席者
        通商産業事務官(企業局産業施設課長)    大宮 二郎君
        建設事務官(計画局総務課長)       江ヶ崎太郎君
        建 設 技 官(計画局水道課長)      岩井 四郎君
        専  門  員 川井 章知君
        専  門  員 引地亮太郎君
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五月二十七日
 委員佐藤芳男君辞任につき、その補欠として町村金五君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
 参考人招致の件
 水道法案(内閣提出第一八〇号)(予)
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[前略]

○小島委員長 次に内閣提出の水道法案を議題とし、質疑を続行いたします。柳田秀一君。

[中略]

○庄司委員 本問題はその程度にして、直接水道法案に関係のあり、関連のある問題を二つほどお伺いしておきたいと思います。
 きのう楠本政府委員よりきわめて正鵠を得たるお答えを得ておつた問題でございますが、本法はむろん見通しからいいまして、あるいは若干の附帯決議等がつけられるかもわかりませんが、大体原案のままで各党各委員の御協賛を賜わり得るものであると私は考えております。その場合において新しい画期的のこの総合的な水道法案が実施されるあかつきにおいては、概して重複になるようですが、要点だけ申し上げると、わが国においては水道関係の専門の技術を体得しておる者がきわめて少い。一県平均約四、五名であります。そこでぜひひとつ講習会を開いて、本法の趣旨を徹底させ、了得させると同時に、技術の再講習をしてほしいというような点、それから本法によつてこの後各市町村の上水道、下水道あるいは簡易水道、これの健全な発達を保護助長して行くという本法の趣旨を運営する上において、ことしのように若干補助費が減らされたり、起債のわくが縮められたりするようでは、はなはだ遺憾であります。部長さんのお答えでは、少くとも十二億、あるいは起債のわくは二百億程度をもくろんで、来年度の予算の確保をしたい、こういう御希望のようでございまするが、厚生大臣としてはぜひ社会福祉のために——ただいま全国において新しく水道を希望しておる町村が教百箇町村あり、あるいは町村合併によつて合併して新しくここにでき上つた市が約百ぐらいございますが、こういう場合において上水道、あるいは部落においては簡易水道等の要望が相当熱烈に要請されて来ると思うのであります。そこで相当額の補助予算、それから相当額の起債のわく、要するに水道行政上における各市町村自治団体に対するところの水道財源、水道財政、水道経済、あらゆる観点より、でき得るだけ厚生大臣の責任において、内閣閣僚諸君特に大蔵省の了解を得られて相当額を確保し、御計画の十箇年計画でありましたか、その十箇年計画は五箇年計画に圧縮し短縮して、理想の一端をすみやかに実現することのあとうような措置に邁進を願いたいというような意味であります。
 もう一つは、私が毎度申し上げておる私の信念でございますが、厚生省が薬務官を各ブロツクに派遣しておる。仙台にも京都にも……。しかるにその注射薬の検査が不徹底であつたために、京都には二十六名の学童のあの不幸なる死亡の事件もありました、宮城県においては岩ケ崎という町において、現に二十何名の不具廃疾の状態にあるかわいそうな子供があるのであります。それは注射薬を薬務官が、専問官が検査しても、そこにエラーがあつたのであります。あの注射の場合において他の黴菌等が混入したかどうか、そこまでは私はわかりませんが、そこでこの水道の場合、ぜひ耐久力のある破損の少い、水道の生命力をより長く保持させるためには、水道の鉄管なり鋳鉄管なり、あるいは石綿セメントのパイプなり、すべての検査励行を実施したい、このことは今まで二度も私は申し上げて参つたのであります。なるほど形の上においては日本工業規格によるJISの方式によつて、水道協会が検査はされておる。けれどもその検査は不徹底であります。どこが不徹底であるかといいまするならば、ある有力なる大会社のごときは検査を拒絶して受けません。その会社の名前は大臣も御承知でありましよう。はつきりきようは申し上げる。秩父セメント会社、これは業界における大物である。しかも株式界からこれを見れば、一切の市場の株式を買い占めて、同族会社的な存在にただいまなつておることでございましよう。その会社のごときは、自分の工場のメイクした生産品は決して検査を受けない。おれの会社の製品はおれの会社の監査部がこれを検査するからいいのだ、水道協会はまことに当惑をしております。水道協会にはもとより強制力はない、ただ日本工業規格によつて、業者の申合せによつて検査をされておるだけでありまするから、強制力は持つておりません。私はこのことはまことに悲しむべきことである。むべなるかな、検査を受けない無検査のパイプが——これは鉄管のような、鋳鉄管のような直径のインチの大きな管ではありません。導水管ではありません。これは給水方面のこまかいパイプであるが、無検査のものが横行濶歩して、水道知識に乏しいところの市町村等においてこれを買うのである。そこに事故がひんぴんとして発生しておる。長野県だけで四、五箇村がその被害をこうむつておるのであります。工事施工後間もなくそれが破損する。これはパイプそのものの善悪ももとよりのことであるが、工事の施行において、水道工事に経験のない、心ない者の乱暴なやり方もあるいは手伝いをしておるかもわかりません。それはその面の建設省よりとくと御監督を願わなければならないが、パイプの検査の励行を何とか合法的にまた業者の納得を得てできないものでございましようか。甲乙丙丁の会社はまじめに出して検査を受けておる、戊己庚の会社はがんとして拒んで検査を受けない。それでは日本工業規格、JISのせつかくの計画というものも無残な状態に陥つておる。ひいては各町村に相当なる被害、損害を与えておるのであります。ただ単に売らんかな主義をもつてやつておるそういうふまじめな業者がある場合においては、厚生省なり建設省なりにおいて、特にそういう業者を呼びつけて、断固として、大多数の国民福祉の増進のためには、これは適当な処置を講ずべきものだと思うが、大臣はどういう御所感でございましようか。願わくは検査を励所して、でき得る限り完全なりつぱなパイプを市町村に供給することができるように、しこうして日本工業の健全なる発達のために、私はこのことを申し上げるのであります。決して一、二の会社のために弁ずるのではない。国民全体の福利福祉のために、町村水道将来の健全化のために、また本法の前置きの中にありますように、水道の健全なる発達と保護助長のために、私は検査制度の励行を何とか実施したい。本法の実施と同時に、もつと強化されたるところの施行細則あるいは政令でもお出しくださいまして、御善処くださる御意思があるかないか、私はこれに対する御答弁をいただいて、大臣に対する質問を終ります。

○草葉国務大臣 水道行政は、全般の環境衛生その他国民保健の上から申しまして、まことに重大であり、御説のように今後大いに力を注ぐべき問題だと存じまして、これがすみやかな普及発展を期したいと存じております。ただいろいろ予算等の関係ありまするが、この点につきましてもつとめて努力をいたしたいと存じております。本年度におきましては、上水道で現在希望は約三百億程度になつておりまするが、起債は百億といたしておりますので、約三分の一程度であるような次第でございますが、簡易水道等と合せて、簡易水道では十年計画で着々進んでおり、ことに国会等の御努力をいただいて、この計画のすみやかな完成を期して参りたいと存じております。従つてこれらの完成と合せまして、その用具あるいは器具、あるいはこれが水道としての十分なる機能を発揮いたしまするためには、いろいろな点からさらに改善くふうを加えるべき点が多々あると存じます。先般もただいまの御指摘の引例等を庄司委員から承りまして、さつそく環境衛生部におきましてこれが対策並びに調査等をいたして参つておる次第でございます。これらの点につきましては今後一層努力をいたしまして、今後あるいは汚物が入つたりあるいは不十分なる器具のために不安なる状態に陥るということのないことを期して参りたいと存じております。なお具体的の御指示の点につきましては環境衛生部長からひとつお答えを申し上げたいと存じます。

○楠本政府委員 最後に御指摘の石綿セメント・パイプの製品の不良から来ると思われるいろいろな水道事業の事故でございまするが、当方におきまして全国的にいろいろ調査をいたしましたその結果、石綿セメント・パイプにおきまする水道の事故を原因別に分類いたしてみますると、施工不完全によりますものが三七%、最も多数を占めております。次にパイプ自身の不完全と申しましようか、パイプ自身に原因のありましたものが約三三%、第二位を占めております。その他外圧によるものあるいは維持管理の不完全によるもの等がございます。従いましてこの場合、今後石綿セメント・パイプが簡易水道の普及等と相まちまして一層利用されて参ります気運にありますので、昨日もお答え申し上げましたように、今後は施行工事を十分に監督をし、また良心的な工事をしてもらうように十分な指導をいたしたい所存でございます。一方パイプにつきましては従来水道協会において必ず検査をいたすことになつておりますが、ただそれが国家検定といつたような強制的な意味を持つておりませんために、検査漏れもあるやに考えられますので、今後は各メーカーに必ず検査を受けるように指導をいたしますとともに、地方に対しましては必ず検査済みの品物を使うように指導をいたしたい所存でございます。

○青柳委員長代理 水道法案に関する爾余の質疑はこれを延期し、本日はこれにて散会いたします。次会は明日午前十時より理事会、十時半より本委員会を開きます。
   午後零時二十三分散会