19-衆-厚生委員会-50号 昭和29年05月26日

昭和二十九年五月二十六日(水曜日)午前十時五十八分開議
 出席委員
   委員長 小島 徹三君
   理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君
   理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君
   理事 岡  良一君    庄司 一郎君
      助川 良平君    田子 一民君
      安井 大吉君    滝井 義高君
      萩元たけ子君    柳田 秀一君
 出席政府委員
        厚 生 技 官(公衆衛生局環境衛生部長)  楠本 正康君
 委員外の出席者
        通商産業事務官(企業局産業施設課長)    大宮 二郎君
        建 設 技 官(計画局水道課長)      岩井 四郎君
        専  門  員 川井 章知君
        専  門  員 引地亮太郎君
        専  門  員 山本 正世君
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五月二十六日
 委員山口六郎次君辞任につき、その補欠として庄司一郎君が議長の指名で委員に選任された。
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五月二十五日
 国立療養所の給食費増額に関する請願(降旗徳弥君紹介)(第五〇〇四号)
 戦傷病者戦没者遺族等援護法の公務死適用範囲拡大に関する請願(降旗徳弥君紹介)(第五〇〇五号)
 酒毒者の心身療養のための国営施設設置に関する請願(田中幾三郎君紹介)(第五〇一三号)
 理容師美容師法の一部改正に関する請願(福田篤泰君紹介)(第五〇二一号)
 同(並木芳雄君紹介)(第五〇三四号)
 同(津雲國利君紹介)(第五〇三五号)
 医薬関係審議会設置法制定に関する請願(只野直三郎君紹介)(第五〇三六号)
 同(中村時雄君紹介)(第五〇七九号)
 医薬分業の延期反対に関する請願(只野直三郎君紹介)(第五〇三七号)
 療術法制定に関する請願(石山權作君紹介)(第五〇五九号)
 未帰還者留守家族等援護法による医療給付適用期間延長等に関する請願(石山權作君紹介)(第五〇六〇号)
の審査を本委員会に付託された。
同 日
 水道法案の成立促進に関する陳情書(東京都知事安井誠一郎)(第二八八七号)
 療術師の法制化に関する陳情書(大津市滋賀県療術師会会長丸橋秀夫)(第三一〇九号)
 医薬分業実施に関する陳情書(名古屋市中区京町愛知県薬剤師協会長沖勘六)(第三一二二号)
 結核予防法第三十四条の規定による医療費国庫補助増額等に関する陳情書(東京都議会議長佐々木恒司外九名)(第三一二三号)
 医薬分業実施に関する陳情書(仙台市小田原山木丁宮城県薬剤師協会会長鈴木利平)(第三一四六号)
 同(前橋市神明町七番地宮前鉄平外九十七名)(第三一四七号)
 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正等に関する陳情書(広島県議会議長檜山袖四郎)(第三一四八号)
 医薬分業実施に関する陳情書(高松市西新通町四十二番地堀家敏郎外十六名)(第三一八一号)
 伊豆半島の国立公園指定に関する陳情書(静岡市御幸町静岡県観光協会吉岡恵一)(第三一八二号)
 医薬分業実施に関する陳情書(仙台市原町小田原字南光沢東北薬科大学学生会長千葉哲朗)(第三一八七号)
 医薬関係審議会設置法案に関する陳情書(仙台市原町小田原字南光沢東北薬科大学学生会長千葉哲朗)(第三一八八号)
 医療扶助料打切り反対等に関する陳情書(態本県菊池郡西合志村国立療養所再春荘患者自治会新生会長荒牧卓雄)(第三一八九号)
 医薬分業の実施に関する陳情書(盛岡市仁王菜園相生町岩手県薬剤師協会会長佐々木孝乙外二十四名)(第三二〇一号)
 同(東京都世田谷区玉川奥沢町一丁目三百八十一番地石川正外七十七名)(第三二〇二号)
< 略>
 同(松山市別府町鳥谷寛次郎外二百八十五名)(第三二〇七号)
 医薬関係審議会設置法案に関する陳情書(松山市別府町鳥谷寛次郎)(第三二〇八号)
 結核及びらい患者福祉事業振興会法案反対に関する陳情書(東京都北多摩郡東村山の多摩全生園末木平重郎)(第三二〇九号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
 水道法案(内閣提出第一八〇号)(予)
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○小島委員長 これより会議を開きます。
 まず内閣提出の水道法案を議題とし、質疑に入る前に、政府委員より細部にわたり説明を聴取したいと思います。

[中略]

○小島委員長 次に、本案の質疑に入ります。庄司一郎君。

[中略]

○庄司委員 簡単にもう一、二点をお伺いしたいと思います。既設の上水道のパイプの中にもろもろの黴菌が発生する。それには病原菌でないものもございまするけれども、さしあたり心配のない菌もございまするが、中には病原菌も混入しておることは、はなはだ遺憾であります。よつて水質の検査を十分御履行くださる意味が、法文の中に取入れられておる。けつこうなことであります。ところが、こういう点においてひとつ御考慮を煩わしたいと思うのであります。たとえば火災が不幸にして発生しておる。消防手が意気軒昂として、あるいは無我夢中になつて、消防用の消火水栓を抜いてじやんじやん放水をする。もとよりその刹那における消防員の心理状態は、ただ火を消しとめるだけに全心全霊をささげておるのでありますが、その結果するところは、その消火栓の附近一帯が水浸しになります。その附近に汚水等があり、あるいはまずいものがありました場合は、大きな直径何尺の消火栓の中に汚水が溢水して、濁水が入る。そういうこともあり得るのでありますが、今まで、水道関係の事業者と消防団との間においては、そういう関係の交渉といいましようか、あるいは通牒といいましようか、そういう御懇談が今まで、全日本を通じて一回もなかつたようであります。これもやはり懇談の上において、なるべく汚水あるいは濁流等が溢水して水道の中に入らないような装置に万全を期して行かなければならない。水質を絶えず調査するということはもとより大切であるけれども、そういう公務の上において、その結果するところが、送水管なり給水管の中に汚水が横溢して、いろいろ黴菌が発生して来るということもあり得るということをわれわれは認識しておく必要があるのであります。今まではこれが等閑に付されておる。消防が消火に全力をあげている、これに協力しなければならぬことはもちろんその通りであります。けれども一方水道の送水管なり給水管なりの中に多くの汚水がじやんじやんと流れて行く、その危険性をわれわれは最少限度に食いとめる必要がある。こういう点において御考慮を願いたい。
 それから第二は、前回も強く申し上げたのであるか、いろいろな黴菌あるいはひるであるとか、みみずであるとか、そういうものが飲料水の中に入つておる。その根本的の原因はいろいろございますが、一つはこういうことがある。御承知の通り導水管なり、送水管なり、あるいは給水パイプなりの中に穴があく。それから継ぎ合したジヨイントが正しく科学的にジヨイントされておらない、こういうことなんです。それは何を意味するかというと、心なき土木建築請負師、水道工事に専門的な体験のないところの土工の諸君なんかが、早く能率を上げてこの導水管、給水管を埋めて土さえかければいいのだという単純な考えから、今まではむちやな水道工事をやつた。それを今後十分監督して行かなければならない。私は一昨年ある温泉場の水道工事を見ておつた。めちやくちやなことをしておるから、諸君の監督者はだれだ、親方はだれだといつて呼んでそのことを注意しましたら、よく納得してくれまして、慎重にその給水管を埋立てする工事を開始したのであります。これは顔を知つておる連中であるから、よく言うことを聞いてくれました。そういうことで、今までわが国の水道工事は、特に管やパイプの敷設工事に無関心でやつて来た。そういう場合にこのパイプや管の一部に亀裂を生ずるそれからいろいろなものが入つて来る。これは私が若い時代に水道課に奉職しておつたので、私の体験の上からこのことを語るのである。
 それからもう一つは、前回も強く申し上げて要望しておきましたあの問題、あの問題と言つただけであなたはおわかりでございましようが、鉄管なり、鋳鉄管なり、あるいはエタニツト・パイプであろうが、モルタル・ライニングであろうが、秩父セメント、石綿セメントであろうが、市町村の水道係が購入する前に、厳重なる検査をしてもらいたい。管やパイプの検査制度を確立してもらいたい。お答えは多分、それは日本工業規格、JIS、これによつてやつておりますというお答えではございましようが、それはやつておるまじめなメーカーもあるが、検査をおそれているためであるか、何のためであるかわかりませんが、全然検査を拒絶しておる大会社もあることは、あなたも御承知の通りであります。御承知でないならば、参考のために教えてあげる。こういうことは画一的に公正なる検査をして、水道の資材その他の関係において、水道知識のきわめて乏しいところの町村等の水道係が、ただこれはパイプであるからいいのだ、これは石綿セメントであるからいいのだというように無条件で購入することのないように、十分厚生省が監督をされてJISを活用され、日本工業規格通りの原則を守り抜く、そこに厚生省の厚の字のスタンプでも押して、安心して市町村が購入することができるような措置をとつていただきたい。ある何億という資本金の会社が、絶対に出しておりません。その社長さんは社会的にきわめて高い地位にあると客観的に見られる、そういう人間が、JISのモラルをおそれずして、あるいは傲慢な態度といいますか、自分の会社工場の製品の検査を拒絶しておる。これは私から申し上げるよりは、むしろあなたが水道協会の総務部長なり専務の方をお呼び出しになつてお聞きくだされば明快でございます。そういうことであつてはならない。なるほど国会で制定した法律ではないけれども、法律以上のメーカーの同業者の自発的につくつた一つのモラル・ルールである。その検査を拒絶しておる。その拒絶しておる会社の製品は、長野県だけで五箇町村でしよう。全国において十何県ある。これはパイプの破片でありますが、こういう斑点がたくさんあるのは、これは石綿及びセメント以外の繊維質の雑物の混入しておることを証明するものであります。こういうインチキなものが横行しておる。顕微鏡などで見ますと、きわめてよくわかります。私はこの仕事に経験を持つておるものでありますから、一目瞭然わかるのでございますが、どうかJISの規定によつて検査励行をこの新法の施行と同時にひとつおやり願いたい。これは全国市町村の福祉、福利のために私は申し上げる。
 なおもう一つお許し願いたい。上水道関係はわが国においてだんだんと発達して参りましたが、これと並行しなければならない下水道の方は、本省においてもあるいは市町村においても等閑視されておる傾向であります。これは並行して行かなくちやならぬ。それが一方の上水道だけが進んで、一方の下水の方は遅々として進まぬ。そこで水洗便所、改良便所をたいへん厚生省は、保健所を通して御奨励になつておるが、下水がなくて、どこに持つて行くのですか。これくらい矛盾撞着はございません。申し上げたいことはたくさんございますが、専門の厚生委員の方々がたくさん手くすね引いて質疑の機会を待つておられるのに、私みたいにアルバイト的に質問に来ました者かあまり長くやると笑われますから、この程度でやめますが、どうかひとつ、ただ水道法というりつぱな法律ができ上つただけではいけない。これに伴うところの施行細則等もできましようが、厚生省はひとつがんばつていただきたい。何も建設省を恐れる必要はない。もともと内務省の社会局、衛生局のほとんど全部が厚生省に行つたのであります。それが形式上は長官になつておりましても、工事そのものの直接の監督権はどこにあるか知らぬけれども、厚生省が一切指揮がとれる、そういうように行政管理庁においてもきめておる。ただ私の話しを聞き放しでなく、少くとも水道事業に私は体験を持つておるものでありますから、そういう意味から私の申し上げることは決してテーブル上のペーパー・プランではない。これは内容のあるものと私は考えております。この上申し上げて恐縮でございますが、くれぐれもただいままで申し上げたことを御採用くださいまして、全国民の福祉福利のために御善処あらんことを要望してやまないのであります。私の質問はこれで終ります。

○中川(源)委員 上水道あるいは簡易水道につきましても、技術指導につきまして厚生省あるいは建設省、通産省等におきましてはりつぱな技術家がおいでになると思いますが、はたしてそのりつぱな人がおられるかどうかということをもう一度お尋ねしておきたい。それから先ほど御説明の中の第六か七であつたかと思いますが、水道を設けるのに従来のような厳重なことでなしに、簡易水道その他におきましても地方自治体の方で建設する場合には緩和をさせようというような御説明のように承つたのでありますが、そうでありますかどうか。簡易にやろう、厳重なことを言わないというふうな計画があるのかどうか。

○楠本政府委員 一般水道につきましては必ず責任の技術者を置きまして、建設の場合にもあるいは維持管理の場合にもこれをして管理せしむることを法で規定してございます。しかしながら簡易水道の場合には必ずしもそれぞれ専任のかような責任者を置く必要もないだろう、むしろりつぱな人を数箇町村連合でお互いに共同して設置することの方が、むしろ実情としては適当であろう、かように考えまして、専任技術者をお互いに共同して兼務し合つて使うというふうに緩和をいたしておるわけでございます。従いましてその技術の内容、管理の内容等を緩和したという意味ではございません。なおただいまも御指摘のように、あるいは庄司先生からもお話のありましたように、今後は工事の監督というものはきわめて重要でございます。この点は庄司先生も第二点に御指摘になつておるようにきわめて重要でございます。しかしながら簡易水道を布設する町村等におきましてはこれらの専門の技術者がおらない。場合によりますと業者に設計させ、業者に監督をさせておるというようなことでありまして、しかも地下にもぐるもので何ら監督の目が届かぬというような事例がかなりございます。それがやがていろいろなところに支障がございますので、今後は必ず市町村の工事におきましてもかような専門家によつて厳重に工事を監督させる、あるいは設計等につきましてもできるだけ厳重に能率的な、効率的な設計をさせるというふうにいたしたい所存でございまして、これらの点はかように数箇町村あるいは十箇町村一緒になつて技術者を置くことによつて十分である、かような考え方でございます。
[後略]