17-衆-厚生委員会-3号 昭和28年11月07日

昭和二十八年十一月七日(土曜日)午前十一時五分開議
 出席委員
   委員長 小島 徹三君
   理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君
   理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君
   理事 堤 ツルヨ君 理事 中川 俊思君
      庄司 一郎君    高橋  等君
      山下 春江君    萩元たけ子君
      柳田 秀一君    杉山元治郎君
 出席政府委員
        厚生事務官(児童局長)  太宰 博邦君
 委員外の出席者
        議     員 足鹿  覺君
        厚生事務官(保険局長)  久下 勝次君
        厚 生 技 官(公衆衛生局環境衛生部長)  楠本 正康君
        専  門  員 川井 章知君
        専  門  員 引地亮太郎君
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十一月七日
 委員寺島隆太郎君及び山口六郎次君辞任につき、その補欠として石井光次郎君及び庄司一郎君が議長の指名で委員に選任された。
同 日
 委員庄司一郎君辞任につき、その補欠として山口六郎次君が議長の指名で委員に選任された。
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十一月六日
 昭和二十八年六月及び七月の大水害並びに同年八月及び九月の風水害の被害地域において行う母子福祉資金の貸付に関する特別措置法の一部を改正する法律案(吉川久衛君外十三名提出、衆法第五号)
 昭和二十八年六月及び七月の大水害並びに同年八月及び九月の風水害の被害地域に行われる国民健康保険事業に対する資金の貸付及び補助に関する特別措置法の一部を改正する法律案(吉川久衛君外十三名提出、衆法第七号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
 委員派遣承認申請に関する件
 閉会中審査に関する件
 昭和二十八年六月及び七月の大水害並びに同年八月及び九月の風水害の被害地域において行う母子福祉資金の貸付に関する特別措置法の一部を改正する法律案(吉川久衛君外十三名提出、衆法第五号)
 昭和二十八年六月及び七月の大水害並びに同年八月及び九月の風水害の被害地域に行われる国民健康保険事業に対する資金の貸付及び補助に関する特別措置法の一部を改正する法律案(吉川久衛君外十三名提出、衆法第七号)
 厚生行政に関する件
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○小島委員長 これより会議を開きます。
 まず水道の問題に関して庄司委員より発言を求められておるので、これを許可いたします。庄司一郎君。

○庄司委員 本員は本月二日に、議員に与えられております権限において質問主意書を衆議院議長あてに公式に提出をいたしました。それが印刷済みの上、各先輩同僚諸君にすでに五日の日に配布済みのことであると思うのであります。私の厚生省関係当局にお伺いしておきたい点は、実はこの質問主意書が出ておりますので、これに対して御答弁がすみやかに公式に公文書であられるならば、あえてこの席上においてあらたまつた質問の必要はなかつたのでございますが、公文書としての公式な答弁書がまだありませんので、なお国会も本日をもつて今回の議会は終了ということになつておりますので、念のために簡単にお伺いし、御答弁をいただきたい、こういつた意味でお伺いを立てた次第でございます。
 環境衛生の普及発達の上より、わが国水道及び簡易水道等が年々各市町村等に普及されておることは、まことに御同慶にたえない次第でございます。しかるに水道用の鉄管が、鉄不足その他鉄価格の暴騰等によつて、鉄管を用いることが理想でございましようけれども、鉄管だけを使用することは、経費の関係上町村等はなかなか入手が困難でございます。そこで代用品といつては語弊がございますが、鉄管にかわる石綿セメント管がだんだんと発達して参つて、石綿セメント管はかなり製造もされ、従いまして、町村水道あるいは簡易水道等に普及されておるようでございます。ところがもともと代用品でございますので、鉄管と比べればこれは理想的なものではないようでございます。そういう意味においても、石綿セメント管は、これをりつぱなもの、耐久力のあるもの、丈夫なもの、そういうものをメーカーをしてつくらしめなければならぬ、こういう意味において、日本工業標準調査会は、審議の結果、日本工業規格という一つの規格をつくりました。その規格によつて石綿セメント管は製造され、それが町村水道や、あるいは簡易水道に使用されておるのでございます。あるいは農村においては、暗渠排水等の場合において用いておる農村等も若干あるようでございます。その日本工業規格としては、その一は、セメントはポルトランド・セメントに規定せるものを用いる。第二は、石綿は品質良好な精製品を用いること。第三は、有機質繊維、その他のものを用いてはならない。たとえばメリケン粉の袋であるとか、あるいはその他の雑繊維等を混合物として混入してはならないこと、こういう意味のようでございます。第四は、石綿とセメントの配合の割合は規定の重量を標準とすること、以上のそれぞれの規格がございます。この規格によつて石綿セメントは生産され、それがだんだん水道、簡易水道等に普及されておるようでございます。厚生省は環境衛生の面で水道の普及発達のために御指導なされておることは言うまでもございません。やかましい監督権があるかどうか私は知りませんが、とにもかくにも許可認可の権限を把握され、それと対応して若干の補助を与えられる、また起債のわく等を町村に与える上において、御参考になる御意見を自治庁その他関係の審議会等に御表現になられておるやに伺つておるのでございまするから、大きな意味においては御指導と監督力を持たれておるものと私は拝察するのでございますが、前述の日本工業標準調査会の審議の結果の日本工業規格としての石綿セメント管が製造され、それが普及しておるならば、何もあえてこの質問の必要がないのであります。しかるに近年、この石綿セメント管施工の工事中には、往々にしてただいま申し上げたような四つの規格を具備しませんで、すなわち不適格なものが往々見受けらるるような傾向がございますることは、市町村の水道並びに簡易水道普及発達の上から、また水道の耐久力の上から、はなはだ遺憾なことであると聞いておるのでございます。御指導とある程度の監督権を持たれておる厚生省とされては、かような現実の問題についてどういう御指導やら、あるいは御警告やら、あるいは監督やらをなされておるものであるかどうか、それがお伺いの第一点であります。
 そこで便宜続けて申し上げます。しかるところ前申し上げた一より四までの規格に沿わない現実の生産品がある。現に東京都立工業奨励館長橋本宇一氏の発表された成績書なるものによりまするならば、某々会社等の生産されておる石綿セメントの中には、有機繊維が微量認められるというような成績書が、遺憾ながら発表されておるのであります。たとい微量でありましても、御承知のごとく、有機質の繊維が混入されておりますと、当該石綿セメントは爆発するおそれがあるのであります。破壊するおそれがあるのであります。現に爆発の結果破壊せられておる、自爆でございます。さような例もないではございません。現に町村によつてはさような結果が、今回の水害、災害等の結果、破損された跡よりセメント管を出してみて、そういうことがはつきりわかつて参つたのであります。こういう点についてもう少しく厳重なるところの検査方法、つまり製品の検査あるいは町村に受渡し等の場合における御検査等があつてほしいものである、あつた方がいいのではないかということを私は考えまして、あえて所管大臣の御所見をお伺い申し上げる次第であります。
 ただいま申し上げた東京都立工業奨励館長橋本宇一氏の発表された成績表の中には、会社の名前を申し上げてちよつと恐縮でございますが、これは改善をする意味における心構として、たとえば秩父パイプのごときものには、ただいま申し上げた有機質の繊維が微量あるいは多少混入されているというような発表がある次第でございまするから、こういうようなことがないように、おいおい水道、簡易水道の普及に町村が非常に熱意をもつて努めている今日であります。また水害、災害等によつて補修をしなければならぬ、工事の再建をはからなければならない災害地の町村が非常に多い今日において、日本工業規格に沿うた適格なるものを生産さして、適格なものを町村の工事に供給することができ得るような御指導と御監督があつてほしい、さような意味から以上お伺いを立て、御意見を承つておる次第でございます。

○楠本説明員 お答えを申し上げます。まず第一点の石綿セメント・パイプに対する監督あるいは指導方針でございまするが、現在御指摘の鉄管等に比して、細いものでありますれば、セメント・パイプは六割程度の価格であります。従いまして町村が財政的な見地からかようなものを歓迎いたすことは申すまでもございません。これらの点につきましては今後なお改良すべき点はございまするが、最近は逐次製品の内容が改善されて参りまして、おそらく鉄管に比して一長一短というところまで進歩いたしております。従つて必ずしも鉄管に劣るものでもなく、また見方によつてはまさる点もあるので、かような指導は今後一層強化して行かなければなりませんが、従来、ただいまも御指摘のように、これらの製品の向上に対する指導といたしましては、まず工業規格を定めまして、これによつて指導いたしておる次第であります。
 なおこれらの製品がはたしてその工業規格に合うかどうか、あるいはどの程度まで水圧に耐えるかどうかという点につきましては、逐次社団法人水道協会におきまして現物を検査し、これに合格したもののみを使つておるという方法をとつております。なおこの工業規格等も逐次技術が進歩して参りますので、これを改めて高度のものにいたして行く方針でございます。
 次に第二点の、有機繊維の問題でございますが、実はこの石綿セメント・パイプは戦時中から製造が始められたものでありまして、その当時は技術的にもうまくできず、ことに石綿の繊維が短いために、やむを得ずパイプ繊維をつなぎとして使用しておつたのであります。しかしながら試験の結果はこれらパルプ類の繊維つまり有機繊維を含みますものは、強度の点において支障がありますので、逐次これらを用いず、石綿のみにおいて製造する方法を研究したのであります。これも最近の技術的な進歩から参りますと、どうやら見込みが出て参りましたので、本年の七月新たに日本工業規格は従来のものを改正いたしまして、ただいま御指摘のように、有機繊維は絶対に使つてはならぬということにいたしたわけであります。従つて今後できますものにつきましては、もちろん有機繊維というようなものは絶対に入つておらないと確信をいたしております。ただ以前つくられましたものには、私どもは指導といたしまして、有機繊維の入りますことは極力防止に努めたのでありますが、やはり場合によつては残念ながら若干入つていたものがあつたかに承知をいたしおつたのであります。また一方製造過程におきまして、毛布を使いましてセメントを巻き込む関係もありまして、場合によりますと、望ましいことではありませんが、若干有機繊維がまじるようなこともございます。ところがただいま御指摘になつております秩父セメントでつくりましたパイプは、工業奨励館におきまして検査の結果、残念ながら若干の有機繊維を認めたのであります。そこで私どもといたしましては、ただちにいつ製品にされたかということを調べてみましたところが、二十七年の製品でございました。つまり旧規格時代の製品でございました。私どももこういうはなはだ申訳ないことをしたわけでございまするが、何分にもこれは旧規格時代の製品であつたために、かようなことが起きた。従いまして今後はかようなものはもう再びつくられることはございません。また現在昨年つくつたものにおきましても、逐次用途を転換する等の措置を講じまして、支障のないようにいたしたい所存でございます。なお一方ではさらにこれらの製品の監督を厳重にいたしますために、今後は工業標準化法の規定に基きまして品目を指定いたしまして、政府の責任におきまして製造業者の製造成績、検査成績、あるいは検査の方法、その他品質管理の方法に対しまして、直接監督するよう目下通産当局と協議をいたしておる次第でございます。

○庄司委員 具体的に申し上げた秩父パイプは、工業奨励館において調査されたそのものは昭和二十七年の製品であられたような御答弁でございますが、昭和二十七年の何月ごろの製品であるか、御調査がありますれば念のために伺つておきたいと思います。

○楠本説明員 その点はつきりいたしておりませんが、さらにいつの製品であるかをあらためて調査いたしましてお返事を申し上げたいと思います。

○庄司委員 大体御答弁で満足をいたしました。こいねがわくば、農村の暗渠排水等の農村の土地改良の面に用いられておる製品でございますので、ただいま御答弁に現われたような政府責任のもとに、この後一層石綿セメントの改良、発達をされ、政府において責任を持つていただけるような、町村長その他が安心して購買することができ得るような程度にまで、改善的、改良的御好意ある指導、監督をこの際お願い申し上げて、私の質問を終ります。
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[後略]