13-参-大蔵委員会-67号 昭和27年06月13日
昭和二十七年六月十三日(金曜日)午後二時二十五分開会
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出席者は左の通り。
委員長 平沼彌太郎君
理事 大矢半次郎君
委員
岡崎 真一君
黒田 英雄君
西川甚五郎君
溝淵 春次君
小林 政夫君
小宮山常吉君
田村 文吉君
森 八三一君
江田 三郎君
大野 幸一君
下條 恭兵君
菊田 七平君
油井賢太郎君
政府委員
大蔵省銀行局長 河野 通一君
大蔵省主計局法規課長 佐藤 一郎君
説明員
通商産業省通商振興局経理部長 石井由太郎君
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本日の会議に付した事件
○緊要物資輸入基金特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○日本開発銀行法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○連合委員会開会の件
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○委員長(平沼彌太郎君) 第六十六回の大蔵委員会を開催いたします。
緊要物資輸入基金特別会計法の一部を改正する法律案について内容の説明をお願いいたします。
○説明員(石井由太郎君) 緊要物資輸入基金特別会計は昨年四月以来通産省
の所管において運用されておるのでございますが、本会計の設置の目的は民主主義諸国家に経済的協力をいたす意味におきまして、特需等の調達を容易
にいたしますために政府がみずから緊急に取得供給しなければならんと思われるような物資、言い換えますれば国際的に需給が逼迫いたしておりまして、これの取得の困難な物資を輸入いたしまして特需の用途に供給するという目的で設置いたされたわけであります。
本日までの運用状況は、この基金によりまして輸入いたしましたもの約八億、うち現に引取済になつておりますものが約四億という状況に相成つております。主要な買付けました物資はニツケル五百六トン、合成ゴム千七百八十六トン、石綿百七トン、コバルト一三トン及びアメリカからの原皮約四十二万枚、このような状況でございます。この会計は只今申しましたように特需の原材料として必要な国際的な供給の不足している物資を政府みずから取得して供給するという見地に立つて設置されたのでありますが、国際的供給不足物資の取得につきましてはひとり特需の原材料のみならず民需用につきましても政府におきまして確保供給する必要があるわけでございまして、これを一般の民間貿易方式によりまして供給いたしますることが、或いは貿易業者の資力の弱いこと或いは国内において比較的高い値段が維持されておりますために、買入競争をいたして殊更に不必要な価格の吊上げをやつておる、或いは将来の価格変動等を見越しましてなかなか思うような民間の買付が進まない、このような状況であるのでございますが、他面これらの稀少物資につきましては、或いは長期の契約を結びまして不断に国内に流入させるというような措置をとらねばならん必要もありますし、更に先頃我が国が加入いたしました国際原料割当会議におきましては、各国政府におきましてそれぞれの所要数量の計算をしてこれが原料割当会議等で審査を受けまして、各国に或いは消費の勧告、或いは輸入の勧告、或いは輸出の勧告等が行われるわけでございますけれども、輸入の勧告等の行われました場合においては、民間貿易方式等で取得し切れないものは各国がこれを引取る義務を負うというような申合せに相成つておる関係等もございまして、これらの物資につきましては長期契約を可能にし、又国内における不当な不必要な競争もなく、政府みずから取得いたしまして且つ国際的な不足物資の国際的な流通秩序に即応しつつ供給する方途を講ずる必要があるわけでございまして、かような見地から従来緊要物資特別会計がひとり特需の原材料といたしての国際的需給の逼迫いたしました物資を取得しておりましたのを改正いたしまして、一般民需の目的にも本会計を運用して輸入を確保し促進したいという考え方で本改正案を御審議願つておる次第でございます。
この会計で計画いたしておりまする輸入計画は、国際割当会議からの割当物資ニツケル約千二百二十八トン七億三千万円、コバルト二百四十トン、これが七億二千万円見当であります。タングステン百五十トン二億二千五百万円、モリブデン五十トン約一億、国際割当会議に期待いたしておりまする物資約十八億程度でございます。更にその他の国際稀少物資で、各国の輸出統制等が極めて厳重でありまするもの、その代表的なものは、アメリカにおきまする外国貿易局の所管物資、一口にOIT物資と申しておりますが、OIT物資の取得でございます。例えば、石綿のごときものにつきましては極めて強い政治的交渉を以て当る。且つ継続的に輸入いたしまする有力なる資力を持つて契約いたしませんと輸入ができないのに対しまして、国内における実際の需要家は極めて多数の分散いたしました中小企業等でございます関係もありましてなかなか入つて参らない。このような物に対しまして、本資金で石綿等を輸入いたしたいと考えているわけでございます。OIT物資に期待していいものが約十億見当であります。合計いたしまして、二十七、八億乃至三十億見当が本会計で取得、運用しようとする総額でございまして、一般の民貿方式により得ないもののみを取上げまして、本会計による輸入をいたしたいと考えている次第でございます。
御審議の参考といたしまして、法文について申上げますれば、第一にございまする国際条約、国際協定、その他国際的な取極に基いて日本国に割当てられた物資の取得と申しますのは、国際協定と申すことができると考えておりますが、国際原料割当会議、IMCの決定によりまして、我が国に輸入の割当の勧告された物資のことを意味しているわけでございます。更にこのIMCで扱つております物資は、銅、亜鉛、鉛、棉花、綿リンター、タングステン、モリブデン、マンガン、ニツケル、コバルト、羊毛、パルプ、紙の十四品目でございますが、大体本基金で扱いますものが、只今申しましたようにタングステン、モリブデン、ニツケル、コバルトといつたような物資に限る考えでございます。第二に、外国政府において輸出を統制している物資、その他国際的な供給の不足している物資で、政府において取得しなければ輸入することが困難なものと申しまするのは、先刻申上げました米国からの外国貿易局割当物資、即ち商務省が輸出を極度に調整いたしておる物資をいうのであります。政府で輸入しなければ輸入が困難だと申しまする物資は、これらの物資につきましても、大部分のものは民間輸入方式を以て入手し得るのでございますけれども、先ほど申上げました、例えば石綿の輸入等にいたしますれば、需要者は分散且つ小資力であり、到底強力に政治交渉を背景といたしまして入手することができないというような場合に適用されるわけでございます。更に同一、同様な物資で、政府において取得することを有利とするものと申します範疇に現在考えておりまする物資は、大体外国政府で国際割当等を行つている物資と競合いたすのでございますけれども、従来のこの種物資の取引の実情に照らして考えて見ますると、少い物資を多数の一般業界が競合して引合いを出します関係もありまして、非常に国外市場の価格を高めるだけの結果に終つているというような例も多いわけでございますので、これらの場合には、政府が会計一本の力を発揮して有利に買付けたいという考えに立つているわけでございます。かようにいたしまして輸入いたしました物資の国内における供給につきましては、勿論会計の諸原則に従いまして払下げをいたすわけでございますが、払下げの価格につきましては、一応国内時価によらなければならんわけであります。但し本会計によりまして取得しました物資につきましては、輸入価額を下らない範囲で時価より低価に供給し得ることができるという緊急物資の売払いに関する法律が出ておりまするので、特殊なものに対しましては、輸入価額を越えない範囲で低価供給を行い得ることに相成るわけであります。どのような範疇に属する用途に対して安い価額を適用するかという点は、目下検討いたしておるのでございますが、考え方といたしましては、先ず特需でございます。これは国際的な割当等を行いまして、いわば国際的な切符制度を布いて、各諸国が比較的安く、日本国内より安い物を供給し合いまする理由は、国連軍或いは民主諸国家その他の経済協力を円滑にするという点にあるのでありまするから、特需に対しましては低価供給を図りたいと考えております。又重要な管理につきましては、会計の原則からこれは輸入原価ベースで供給できることに相成るわけであります。更に輸出につきましても、現在の我が国における一般特需の消費原材料の値段が高いにもかかわりませず、外国から安い原材料が手に入つた場合に、国内における原材料の高価格というものが輸出供給力を相当阻害いたしておる実情もございますので、このようなものに対しましても、低価供給の途を開きたいと考えております。更に我が国といたしまして、今後産業政策としてどうしても努力しなければならん目標の一つでございまする合理化用の機械類のための原材料、例えて申しますとニツケル等の価格で国内と輸入品等が相当違つておるのでございますが、このような場合に、或いは関税法によりまして、或いは合理化促進法によりまして、或いは法人税法等によりまして、特殊な償却等を認めている限定されました機械等に対しましては、これ又国際供給力を強くする意味から、原価ベースの供給をいたしたいと考えておる次第であります。
以上が本法を改正並びに今後の運用についての大体の方針でございますが、ついでを以ちまして国際原料割当会議の活動状況及び我が国におけるこの種稀少物資の需給状況を御説明申上げたいと思います。
我が国におきまして稀少物資と申しまするとニツケル、コバルト、タングステン、モリブデン、誰でも挙げる例なのでございますが、ニツケルについて申上げますと、大体国内における生産は、御承知のニツケル製錬助成法の施行等によりまして、大体次期百トンベース、二十七年度千百六十五トン程度の国内生産を上げ得る見込であります。これに対しまして需要は二千三百六十トン余りの国内需要があるのでございまして、差引千二百二十八トン程度をIMCの割当てにより海外から輸入することを期待いたしておる次第であります。
又コバルトにつきましては、これは国内生産は全然ございませんわけで、全需要量年間約二百トン余りのものを、二百二十一トンとなつておりますが、それをIMCの割当による輸入を期待いたしておるわけであります。
タングステンは、国内によつて約三百五十万トンの製錬生産を行つておるわけでありますが、需要は約四百トンでございまして、八十トン程度の輸入を仰がねばならんことに相成る見込みでございます。
モリプデンも国内の生産百三十トンに対しまして百需要約二百トン、前年度の持越等を考慮いたしますると、大体輸入に期得すべきものは二十五トン程度ではないかと考えております。これらの稀少物資を国際的に配分し、融通させるための機構といたしましての原料割当会議は昨年の二月十六日に発足いたしておるのであります。国際間の協調協力で不足物資の融通をしやすくするという目的のために設置された機構でございますが、現在銅、亜鉛、鉛、硫黄、綿花、石綿、タングステン、モリブデン、マンガン、ニツケル、コバルト、羊毛及びパルプ紙という品目について七つの委員会ができておりまして、現在二十八カ国がこれに加入して、その規制に従つた行動をとつておるわけでございます。我が国に対しましては、タングステン、モリブデン、硫黄につきましては昨年の第三四半期から、又銅、亜鉛、ニツケル、コバルト等につきましては第四四半期から国際割当を受けるように相成つております。この機構から割当を受けておりまする物資は昨年十月以来でございますが、ニツケル五百十六トン、コバルト百二十トン、タングステン百五十五トン、モリプデン七十七トン等の輸入割当を受けておるわけでございます。又硫黄につきましては五千トン、銅につきましては一万六千四百五十トン、タングステンにつきましては百十トン、亜鉛につきましては千七百七十トンを我が国から輸出するようにという勧告を受けて、それぞれの措置を講じておる次第でございます。以上……。
○田村文吉君 政府の輸入されたのは八億円ばかりのものが輸入されたというのですが、その行方はどうなつておるのですか。
○説明員(石井由太郎君) これは申上げますと、ニツケル四百三十七トン、それから合成ゴム六百七トン、石綿二十四トンというものが事実入つておるわけでございます。入つておりまする物資は約四億でございまして、これらのうち売られておりまするものは従来は本会計が特需の需要にだけしか売られておりませんでした関係上、ニツケル或いは石綿その他のものにつきましても特需の注文を受けまして、軍からの、進駐軍等の資材割当証明を受けました用途にだけ売渡しをいたしておる次第でございます。
○田村文吉君 いや、私の伺いたいのは、輸入されましたが、皆それが片つぱしから民間に払下げが済んでおるのか。又それがために高く輸入したけれども安く売られて行くというようなものが起つていないかどうか、そういう点を、例えばゴムですね、ああいうようなものについては逆に大分損して売つていらつしやるというようなことがありはしないか、こういうことを伺つておるのですよ。
[中略]
○油井賢太郎君 さつき御説明の中で金額を細かくされなかつたようですが、ちよつと金額はわかつたら発表願いたいと思います。トン数だけで結構です。一年間の金額をずつと、若し今言うのはあれでしたら、資料で出してもらつてもいいのですが。
○説明員(石井由太郎君) 御質問は本年度の計画の分は先ほど申上げましたように、現在手持の分についての御質問でございましようか。
○油井賢太郎君 一年間の分。
○説明員(石井由太郎君) ニッケル千二百二十八トン金額七億三千七百万円、コバルト二百四十トン、七億二千万円、タングステン鉱百五十トン二億二千五百万円、モリブデン五十トン約五千万円、計千十七億三千二百万円、これがIMCの割当物資であります。OITの割当物資につきましては、現在予定いたしておりまするのは石綿約二億円、需要はその他として考えているわけでございまして、まだ正確な計数の弾き出しに至つておりません。
○油井賢太郎君 そうしますと手持品の二十五億という特別会計にあるのですね。これはどんな内訳になつていますか。
[後略]