5-参-商工委員会-8号 昭和24年04月11日
昭和二十四年四月十一日(月曜日)午後一時三十五分開会
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委員の異動
三月三十一日(木曜日)委員北村一男君の辞任につき、その補欠として山田佐一君を議長において選定した。
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本日の会議に付した事件
○昭和二十四年度総合生産計画及び資金計画に関する件
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[前略]
○委員長(小畑哲夫君) 速記を始めて。
○政府委員(小林英三君) 二十四年度におきまする生産計画に関して御説明申上げます。
先ず、二十四年度の計画といたしましては、いわゆる昭和五年乃至九年におきまする基準年次の約七五%というものを目標といたしております。これは二十三年度、いわゆる前年度の計画に比べまするというと約一二〇%になつておるわけであります。二十四年度の計画を達成する上におきまして最も問題になりまする事項は、申上げるまでもなく、資金の問題でございます。資金の問題につきましては、私の申上げましたあとで、資金課津も來ておりますから、尚、これ以上に詳しく御質問がございましたならば、或る程度速記を止めて頂いて御説明申上げようと思つております。特にこの産業設備資金の問題につきましては各部門の要求がございます。その要求を集計いたしまするというと、大体におきまして一千四百億円以上に達しておるのであります。現在示されておりまする御承知の復金の機能縮小並びにこの貿易資金の黒字利用、これもまだはつきりいたしておりませんが、大体貿易資金の特別会計の千七百五十億円の中で、五百億とか或いは六百億とかいうようなことになると思いますが、その貿易資金の黒字利用の線におきましては、その運用如何によりましては、全体といたしまして前年度から比べまするというと、そう著しく資金不足にならないと期待しておるのでありますが、併し少なくても第一四半期或いは前半期特に不足を招きまして、産業界に著しい影響があるだろうと考えております。勿論この資金不足の下におきましては、前年度以上に効果の現われる長期設備或いは開発が先ず抑えられまして、本年度の生産のための設備の復旧或いは拡充、こういうものに重点が置かれることになりまして、本年度の生産計画の達成に全力が注がれることになるのでありますが、それでもやはり石炭の四千二百万トン、或いは鉄鋼の百九十二万トンなどの基礎部門の生産計画達成は非常に困難を加えることと存ずるのであります。それから資材の配当の面におきましては、この資金とのギヤツプが生じまするがために、一般的には左程不足を告げないと思うのでありますが、一部輸入原材料の不足が相当大きな影響を與えると思うのであります。例えて申上げまするならば、ソーダ工業の主原料でありまするところの工業塩、鉄鋼原料といたしましてのコークス用石炭、それから鉄鉱石等を初めといたしまして、石綿、黒鉛、螢石生ゴム、線花、羊毛などの輸入確保のためには格段の努力を必要といたすのであります。又國内原料の中でも、製紙用のパルプ、或いはその原木、硫化鉄、硫黄、これらの生産確保は特に留意しなくちなやらん問題と考えます。その外に一般的の問題といたしましては、労働対策、賃金問題、或いは労働効率の向上対策、價格対策というようなものがございまして、更に爲替レートの設定に対処いたしまして、企業の合理化、生産技術等によりまするコストの引下げが要請されまして、單一爲替レートの下におきまする輸出振興方策が眞劍に考究せられなければならんと考えます。
尚、主要産業の生産計画並びにその達成上の問題の点を個別的に御説明申上げまするというと、次のようなことになるのであります。先ず、第一番に、石炭の問題でございます。石炭の本年度四千二百万トンの生産というものは、御承知のように総司令部から示されたものでありまして、これの達成のための措置を指令されておるのであります。勿論企業の三原則及び経済の九原則の線に沿いまして、これが達成に邁進しなくちやならんことは言うまでもないのでありまするが、特にその一といたしまして、メリツト・システムによりまする炭價の是正、品位の向上による絶対量の減少、メリツト・システムと申しますのは、御承知のように、從來石炭の品位の良否ということにつきまして、炭價が余り懸り離れていなかつたのでございますが、この実質の良否によりまして炭價の決定をするという、このメリツト・システムによりまする炭價の是正、品位の向上による絶対量の減少、それから第二番目に労働時間の制約によりまする出炭の減、第三番目に資金難によりまする機械化の遅延、それから炭鉱の経営の困難、これは閉鎖炭鉱の続出等の問題が予想されまして、これを克服いたしまして四千二百万トンの生産を達成するということは、決して容易なことではないと考えるのであります。
次に、電力の問題でありまするが、資金難によりまする開発の遅延が直接本年度の発電に及ぼす影響は少いのでありまするが、火力用炭の購入が非常に困難となりまして、いわゆる資金の問用のために火力用炭の購入が困難となりまして、火力発電が抑えられますれば、地域的に相当大きな打撃を産業界に與えると思います。それから水力発電も、この冬の異常豊水は、逆に五、六月頃の異常渇水をもたらしまして、この面から本年度の計画の達成は困難視されておるのであります。即ち、この冬は例年に比べまして非常に雨量が多くて豊水でありましたけれども、逆にこの雪が少いものでありますから、五、六月頃の豊水期に逆の影響を及ぼすという結果のために、今年度の計画の達成というものはこの面から考えましても相当困難であろうと考えておるのであります。
次は、鉄鋼の問題であります。普通鋼鋼材は伸鉄及び再圧延を含めまして、大体百九十二万トンが本年度は計画せられているのであります。この基礎となりまするところの製銑、いわゆる銑鉄を作ります計画は二百万トンでありまして、これを達成いたしますためには、現在稼動しておりまするところの高炉の八基の外に更に八基を追加する必要がございます。又平炉におきましては、現在稼動中の五十四基を極力駆使いたしまして、新規稼動は十基程度に止めるのでありますが、これだけでも約九十億円の資金を要するのであります。而も前半期にその手当を必要とするのでありまするから、この資金の確保が困難になりまするというと、百九十二万トン計画というものは大幅に縮小せざるを得ないと考えます。その他の問題といたしましては、先ず第一番に、鉄屑の回收の強化、これは今国会に確か出す筈になつておりまするが、いわゆる鉄屑の回收法というものによりまする鉄屑の回收の強化、これはいわゆる鋼屑を回收する上におきまして法律化いたしまして、そうして鋼屑の回收を強化しよう。それから第二番目は、國内の配炭と輸入原料の確保、即ち輸入の前堤といたしまして輸出の促進を図る。それから第三番目は電力の確保の問題でありますが、これは現在の配電計画におきましては、先程安本からも御説明がありましたが、約一億キロワツト・アワーの不足があるのであります。第四番目は、鉄鋼需要部門の資金の充足によりまするところの賣上代金の確保が重要問題であります。これは先般來非常に問題になつている問題であります。これを現在のような状態に放置いたしまするならば、鉄鋼業界の資金逼迫によりまする経営の著しい困難を來すと考えております。尚、五番目には、今後の大きな問題といたしまして、東亞地域から廉價な原料、燃料を豊富に日本船で運搬いたしまして、操業度の向上、企業の合理化によりまするコストの引下と並行して、日本の鉄鋼界がペイする状態を一日も早くもたらすよう、格段の努力を拂う必要があると存じます。
それでは尚資金の面につきましては、資金課長から或る程度説明申上げますが、場合によりましてはお願いいたしまして速記を止めて頂きたいと思います。その際はよろしくどうぞ。
○委員長(小畑哲夫君) ちよつとお諮りしますが、当局の要求もありますし、尚安本の方へ折衝しましたが、資金計画は只今のところ立つていないということで、経済安定委員会も今開かれているのですけれども、どなたも見えていないようであります。そこで只今から商工省側の腹案と申しますか、そういうものを発表願おうと思うのであります。速記を止めて下さい。
午後二時三十六分速記中止
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午後三時三十五分速記開始
[後略]