76-参-公害対策及び環境保全特…-4号 昭和50年12月17日
昭和五十年十二月十七日(水曜日)午前十時三十五分開会
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委員の異動
十二月十六日
辞任 補欠選任
浜本 万三君 矢田部 理君
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出席者は左のとおり。
委員長 藤田 進君
理 事
森下 泰君
山内 一郎君
栗原 俊夫君
内田 善利君
委 員
青木 一男君
井上 吉夫君
金井 元彦君
菅野 儀作君
藤井 丙午君
宮田 輝君
神沢 浄君
福間 知之君
小平 芳平君
沓脱タケ子君
近藤 忠孝君
三治 重信君
国務大臣
国 務 大 臣(環境庁長官) 小沢 辰男君
政府委員
環境庁長官官房 金子 太郎君
環境庁企画調整長 柳瀬 孝吉君
環境庁企画調整環境保健部長 野津 聖君
環境庁大気保全長 橋本 道夫君
環境庁水質保全長 堀川 春彦君
通商産業大臣官審議官 伊藤 和夫君
労働省労働基準安全衛生部長 中西 正雄君
事務局側
常任委員会専門 中原 武夫君
説明員
通商産業省立地害局公害防止導課長 弓削田英一君
通商産業省基礎業局基礎化学課長 石原 純徳君
通商産業省生活業局紙業課長 沢田 仁君
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本日の会議に付した案件
○公害及び環境保全対策樹立に関する調査
(苛性ソーダ製造法に関する件)
(大気汚染とNOX対策に関する件)
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[前略]
○委員長(藤田進君) 公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。
質疑のある方は順次御発言願います。
〔委員長退席、理事栗原俊夫君着席〕
○小平芳平君 ソーダ業界が、例の水銀の問題が発生して、その時点で水銀法から隔膜法に転換するということで来ておりますが、なかなか思うように転換もできてないというふうに新聞にも報道されております。この間の事情について、政府から御説明いただきたい。
○政府委員(柳瀬孝吉君) 水銀汚染問題につきましては、昭和四十八年の六月に関係十三省庁から成ります水銀等汚染対策推進会議を設けまして、いろいろな対策を講じてきたわけでございますが、当時、水銀を排出するおそれのあった苛性ソーダ工業に対しましては、四十八年の十二月末までに水銀の関連の作業工程についてのクローズドシステム化を完了するということと、それから、なお、万全を期するために苛性ソーダの製造法を従来の水銀法から水銀を用いない隔膜法に転換することを決めたわけでございますが、この際に、昭和五十年の九月までに三分の二を転換をし、五十二年の末までに原則として全部転換をするということに方針を決めたわけでございます。
そこで、その三分の二に決めたということにつきましては、いろいろ技術的な問題、あるいはソーダの隔膜法によりますと質が低下をするというような問題とか、いろいろな問題がございまして、三分の二を五十年九月までということにしたわけでございますが、これは、いろんな事情で三分の二まで達しない状況に立ち至ったわけでございまして、これにつきまして、関係省庁の課長会議で通産省からそういう御報告がございまして、環境庁といたしましては一日も早くその転換を図ってもらいたいという要請をいたしまして、五十年の三月までには三分の二の転換を完了するように通産省から強力な指導をしていただくというふうにお願いをしておるわけでございます。
○小平芳平君 その、いろいろな事情というのがのみ込めないわけです。
ですから、五十年九月までに三分の二ということは、どういうことでそういう目標が立てられたのか。可能性があったのかなかったのか。そして、今日、転換が進まないいろいろな事情というのは、どういう事情があるか。簡単でいいですから、要領よくお答えいただきたい。
○説明員(石原純徳君) ただいまの先生の御質問でございますが、私ども四十九年に三分の二の転換を決めましたときには、先ほど環境庁の方からも若干御説明がございましたように、水銀にいたしまして当時三百六十六万トンの能力がございました。この能力を一気に転換をするということになりますと、やはり、これは外国技術にかなり依存をしているという面もございますし、あるいは設備メーカー、機器を供給する方のメーカーの能力の方のギャップもあるであろう。それから、加えて品質の問題もアスベスト法によりますと化繊業界その他高純度品を要求するユーザー側の希望にこたえるかどうかというところにも問題が残るというふうな諸般の情勢を考えました上で、各企業からヒヤリングをいたしまして、まあ大体三分の二ぐらい、五十年の九月末までにいけるのではないかということで決定をいたした次第でございます。ところが、現実に先生の御指摘のように、その後遅延をいたしておるわけでございますが、これはいろんな理由があるわけでございますが、主な理由を御説明いたしますと、一つは地元の公害防止協定、これは先生御承知かと思いますが、水銀法でやりますと、約五〇%近い濃度の苛性ソーダが出てまいります。ところがアスベスト法でまいりますと、電解工程では一〇%強の苛性ソーダが出てまいりますので、これをどうしても煮詰めなければいけない。そうしますと、当然ボイラーが要るわけで、それに使用する重油、そこから出てくるSOx、NOxというふうな問題がございまして、地元の公害防止協定を締結をし面さなければならないというふうな問題で、ある企業の例を挙げますと、ことしに入ってやっとその地元の了解がとれたというふうなことでございます。工事は大体一年半から二年ぐらいかかるということでございますので、地元の了解がついてから着工ということになりますと、五十年九月には間に合わないというふうなのが一つの理由でございます。
それから二つ目の理由は、これは実は当初の私どもの見込みが見込み違いであったということでございますと不明の至りでございますが、やはり設備を供給する機械メーカーの方の供給が遅延をいたすということで、私どもも実は機械情報産業局という機械関係の局がございますので、そこを通じまして機器メーカーさんの方にも納入促進方を何度か、要請をしたわけでございますが、それが間に合わなかったというふうなことでおくれたケースがございます。
それから三つ目には、資金問題でございまして、ちょうど転換が決まりましたころは景気はそう悪くない時点であったわけでございますが、それがだんだんオイルショック等ございまして、金融引き締めというふうなことで、もちろん私ども開銀融資、北東公庫融資ということで財政的な援助はしているわけでございますが、協調融資の方はつきがたいというふうな事情がございまして、私ども実は取引銀行へお願いをして、何とか協調融資をつけてやってくれというふうなことを話した事例もございますが、そういう関係でややおくれたというケースがございます。
それから、後は隔膜法の工事の過程で工事現場のいろいろなトラブル、事故が起こりまして、予定の期日を達せなかったというふうな工事上のケースも実際ございます。いろいろございますが、主な理由はそのようなところでございます。
○小平芳平君 品質が落ちるということは、これは水銀法でやりながらも一部隔膜法でやっている企業もあったわけですから、十分わかっていたわけでしょう。そうすると、品質が落ちる、そしてまたボイラーで濃縮させるという装置が必要だ、そのためには大気汚染の二次公害が発生するではないかということ、あるいは後ほど労働省からも御説明いただきたいですが、アスベストですね、アスベストによる健康障害、労働者の健康障害、こういうこともわかっていたはずではありませんか。
それから特に機械メーカーは主にアメリカですか、この機械メーカーに限度があるということなんかも、もうとっくにわかっていなくてはならないはずだったと思うのです。ですから、そういう点、資金ですね、資金面も、不況がこういうふうに深刻になるということまでは見通しができなかったということは言えるかもしれませんが、資金面でも、相当費用がかさむということも当然わかっていたことだと思うのです。ですから、そういう点、余りにも環境庁長官が、三木さんが環境庁長官の時代に、五十年九月三分の二、五十三年末全転換ということを打ち出すには余りにもその打ち出し方がずさんだったのではないか。まるっきりできる目標のないことを、いかにもやるかのように政府が姿勢だけとった、こんなふうに受け取れるのですが、いかがですか。
○国務大臣(小沢辰男君) 当時のいきさつについては私詳細に存じませんが、私が着任してから経過等を聞いてみまして、確かに先生のおっしゃるような詰めが不十分であったような感じを私も持ちました。ただ、あのときは、とにかく水銀を出さないようにということで、むしろ三分の二と言わずに、九月までにはどうしても全部転換しろというぐらいの強い三木環境庁長官は姿勢を出されたようでございます。しかし、いろいろ検討してみると、いま言った、技術的に外国技術の導入に頼らざるを得ないような面がたくさんある、あるいは資金の面がある、あるいは一方、純度の高いものを要求する化繊業界の、要望等があるということで、対策会議の議長であった三木長官が各省の意見を聞いて、じゃ、まあやむを得ぬ、三分の二でがまんしよう、しかし三分の二はやれよということで御決定になったように聞いておるわけでございます。私参りましてから、いま先生の言われた石綿を使うことによる第二次的な公害の発生のおそれ、それから大気汚染の問題、百万キロリッター使わなければいけませんので、大変な大気汚染が地域によっては起こってくる。しかも一方において聞いてみますと、もうクローズドシステムが完全に行われまして、よほどの事故がなければ、あるいはまた取り扱いのよほどの不注意というようなものがなければ水銀が排出をされるという危険は全くない、こういうことだったものですから、やはりこの石綿の隔膜法による転換よりは、もっと高純度のものが得られる、しかも二次公害も起こすおそれのないようなイオン交換膜法の開発も一方において行われているのだから、むしろそちらのほうに、少し遅くなっても転換をしたほうが、よりいいのではないかという意見を私率直に持ったのでございます。その意見を通産省にも環境庁としてよくひとつ言うてみろということからいろいろあれしまして、ただ、イオン交換膜法の本来、実用化にまだいっておりませんので、恐らくもう一年ぐらいたてば何とかなるだろうということでありましたものですから、それでは一方において当時決めた目標値というものがあるのだから、それはできるだけ達成することにして、ただ五十二年度末、したがって五十三年の年度末でございますから、五十三年の四月からはイオン交換膜法によって全部転換できるように、できるだけの努力をしてもらいたい、こういう要望をいたしたわけでございまして、当初の考えは水銀による汚染の公害の問題が非常に大きな問題であったものですから、確かにそういうそちらの方を充実して、少し転換についての技術的な検討というものが、表現はともかくとして不十分であったことは私も事実じゃないかと考えます。
○小平芳平君 環境庁長官ですね、どうすればいいかということを私はいまここで問題提起しているわけであります。長官からいろいろずっとお話がありましたことも、まず第一に通産省からイオン交換膜法というのは果たして実用化の段階がいつごろになるか。で、これも開発した企業によってどういうような違いがあるか、その見通し、それからアスベストによる労働関係ですね、労働関係では、アスベストによる労働者の健康障害に対してどういう配慮をなされているか、以上二点をお伺いしたい。
○説明員(石原純徳君) まず、イオン交換膜法の技術の開発状況でございますが、先生御承知かと思いますが、実はことしの四月に、これは具体的な会社の名前を言ってもよろしいかと思いますが、旭化成が延岡に年産四万トンの規模のもう実用化プラントを建てておりまして、まあ主として自分のところの自家消費ということで生産をいたしております。で、私どもの聞いている限りでは、順調に運転がなされているものというふうに了解をしております。それからもう一社、これは実はその旭化成の技術を買いまして、現在その一次計画の一環ということで工場建設中の会社がございます。それから、これはまだ実用段階ではございませんが、旭硝子さんが、これは実はことしの九月から、これはまだパイロットプラントでございますが、を建てまして、実験的な操業を行っておる。これが、旭硝子の発表によりますと、来年の三月ごろには一応の成果が出て、その成果を公表できるであろうということになっております。それから、あとまだいろいろと勉強している会社が幾つかございます。そういう状況を踏んまえまして私どもが判断をいたしますと、まあまあこの第二期計画の完了時が五十三年三月ということで組んでおりますので、これにはいま申し上げましたような各種のイオン交換膜の技術が利用可能であろうというふうに考えております。
それから石綿の問題でございますが、これは御承知のとおり、労働省の方で石綿の使用に関しましてはいろいろな規制を行っておりまして、私どもとしてはそれを遵守するというかっこうの指導を行っておる。で、特に労働省の規制によって労働環境というものに対してと、それから操業が実際にやりにくくなるという面では特に問題ない、つまり労働環境というものを維持しながら操業ができる状態に現在はなっておるというふうに考えております。
○政府委員(中西正雄君) じん肺等の予防対策として、石綿を取り扱う作業につきましては、従来から労働安全衛生法に基づく規則等によりまして、局所排気装置の設置と紛じん飛散防止のための措置並びに必要な場合には着装できる保護具の備えつけ等を利用者に義務づけているわけでございます。また、昭和三十五年からじん肺法によりまして健康管理等に遺漏のないようにいたしておりますし、昭和四十六年から特定化学物質等障害予防規則によりまして規制を強化してまいっております。
さらに近年この石綿が石綿肺、いわゆるじん肺のほかに肺がん、中皮腫を起こすということが明らかにされましたことから、本年九月にこの特化則を改正いたしまして、規制を強化しております。強化した中身を二、三挙げてみますと、一つは、この石綿を取り扱う作業について作業のやり方等につきまして特別の規制をした、そういう規定を設けたということ。それから抑制濃度につきましては、従来一立米当たり二ミリグラムであったものを、これを一立方センチ五ハイバア、これは濃度にいたしますと、従来の約十分の一ということでございます。そのほか健康診断につきましては、じん肺健康診断として一般の作業者は三年に一回という周期で健康診断をやることになっておりましたのを年に二回ということで規制を強化いたしまして、この石綿による障害の予防に努めているところです。
○小平芳平君 じゃ、ちょっと観点が変わりますが、五十年九月転換予定の企業が、工場がまだ転換の工事中である、あるいは全く着工してないというそういう企業名を公表することについて、通産省は公表しない、環境庁はあえて公表するというふうに報道されておりますが、通産省としても別にそういうことは秘密にしておく理由はないわけでしょう、いかがですか。
○説明員(石原純徳君) 実はこの転換の計画でございますが、これは先生御承知のように、法律の根拠に基づくものではございませんで、私ども全くの行政指導ということでいま進めております。その行政指導を進める過程では、もちろんその各社の転換計画の進行状況、あるいはそれがおくれているとすれば、どういう理由があるかということはもちろん詳細、まあ可及的詳細に調査はいたしておるわけでございますが、そういう資料というものが本来行政指導をするために各企業からとったものでございまして、本来公表ということを目的にとっておりませんということがございまして、私どもいろいろな筋からも個別企業の名前の公表ということについて御要請があったわけでございますけれども、まあ慎重を期さしていただいたというのが現状でございます。環境庁さんの方でいろいろ御発表この前なさったわけでございますが、これは当然といいますか、環境庁の方は当然公表するという前提で都道府県を通じて各社の情報をとられて公表なさったということでございまして、私どもと情報のとり方その他のあれが違いますし、それはそれで私は妥当な措置であると思っております。
○小平芳平君 そうしますと、環境庁長官ですね、先ほど御発言されましたように、このイオン交換膜法というものに対して期待を持ちながらも、とにかく一たん政府のきめた方針は貫くということでいかれますのか。第一、私も先ほど申しましたように、また長官もお話しされたように、とにかく水銀をなくそうというあの時期の状態というものは私もよく承知いたしております。いまここへ来まして国の方針が一体どうなのか、そういう新しい技術の開発ということでこうした転換計画に対して変更しようという考えなのか、あくまで水銀をなくすという、五十二年度末ですか、五十二年度末には完全に水銀をなくす、あくまでそれで通しますということか、その辺いかがですか。
○国務大臣(小沢辰男君) まず第一に、先生は十分御承知なんでございますが、国民に御理解をいただかなければいけないのは現在の苛性ソーダ工業界のみならず、水銀を使っているところは四十八年の十二月末をもちましてクローズドシステムを一切完了いたしましたので、水銀はたれ流しということはあり得ない。ただし、万が一の事故があったような場合にはそれが排出されるおそれなきとしないので、したがって、水銀というあの非常に影響の多い有害な化学物質については一切出さないということを考えますと、大事には大事をとって、やはり苛性ソーダ業界の転換というものはせっかく政府が各省そろって対策会議をやって決めたことでありますから、私がそれをいま変更するとか、そういうようなことは、万一のことを考えた場合に、やはり国民の健康を守る立場に立って見れば、これは転換は転換として進めていかなければいかぬだろうと。その際、幸いに、先生が御心配になりました石綿の粉じんにまじったいろいろな健康障害ということは、最近TABという方法によって石綿のいろんなこの使用原材料のあれが変わって——まあ全部アメリカから来るわけでございますけれども、変わってまいりましたので、その点の心配はないだろうと。あとは大気の問題だけでございますが、大気の問題もできる限り私どものその地域における公害防止協定等を十分やりまして、それぞれ工場が考えていただくということで解決をし得るとすれば、あとは、問題は非常に膨大な金をかけて、日本経済的にも非常に大きな投資をするわけでございますので、せっかくそういうことであるとすれば、品質の点からも、第二次公害の点からも考えまして、イオン交換膜法の転換技術開発を急いでいただいて、そちらの方にせっかく転換をするんなら転換をしていただいた方がいいんじゃなかろうか。しかし、それがもし相当先になるとすれば、これはそのために転換をいつまでもほっておくわけにはいきませんので、通産省のその辺のところは御指導いかんによって——しかし、最終目標はまあ五十年度いっぱいということであくまでもひとつやってほしいと。私どもの希望を申し上げれば、イオン交換膜法による転換をむしろ一日も早く進めてもらいたい、こういうことでございます。
○小平芳平君 基本姿勢はわかりました。
次に、産業廃棄物について、時間の関係がありますのでまとめて質問いたしますが、まず環境庁長官が廃棄物処理のための第三者機関、公社のようなものをつくって地域的な広域にわたる廃棄物処理の方法を考えるということが新聞にも報道され、社説でもそういう考えは大事なことだというふうになっていたように思いますが、この点について伺いたい。
ちょうど同じころ、通産省では再資源化五カ年計画、こういうことで発表になっておりましたが、そのことについて伺いたい。
それから第三に、たとえば通産省に伺いたいんですが、これは産業廃棄物と言えるかどうか、旧ノーカーボン紙はどれだけの——使用を中止した段階で企業は四社はっきりしているんですが、どれだけの在庫があったかというと、私が幾ら要求しても出してくれませんが、そうしたものはどういう処理がされたか、以上三点について伺いたい。
[後略]