76-衆-科学技術振興対策特別委…-5号 昭和50年12月17日

昭和五十年十二月十七日(水曜日)午後三時四分開議
 出席委員
   委員長 八木  昇君
   理事 伊藤宗一郎君 理事 田川 誠一君
   理事 竹中 修一君 理事 粟山 ひで君
   理事 石野 久男君 理事 瀬崎 博義君
      加藤 陽三君    木野 晴夫君
      羽田  孜君    藤波 孝生君
      近江巳記夫君    内海  清君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣(科学技術庁長官)      佐々木義武君

 出席政府委員
        科学技術庁長官官房長     小山  実君
        科学技術庁原子力局長     生田 豊朗君
        科学技術庁原子力局次長    半澤 治雄君
 委員外の出席者
        科学技術庁原子力局安全審査管理官      櫻井 保孝君
        労働省労働基準局安全衛生部計画課長     中村  正君
        参  考  人(動力炉・核燃料開発事業団理事長)     清成  迪君
        参  考  人(動力炉・核燃料開発事業団副理事長)    瀬川 正男君
        参  考  人(動力炉・核燃料開発事業団東海事業所再処理建設所長)   中島健太郎君
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十一月二十日
 科学技術振興対策の改革に関する陳情書(東京都千代田区大手町一の九の四経済団体連合会長土光敏夫)(第二七五号)
 長崎県に原子力船むつの新母港設置反対に関する陳情書外一件(長崎県西彼杵郡伊王島町議会議長坂本実之助外一名)(第二七六号)
 原子力の安全性確保及び平和利用促進に関する陳情書(長崎県議会議長松田九郎)(第二七七号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 閉会中審査に関する件
 科学技術振興対策に関する件(使用済核燃料の再処理及び原子力船むつに関する問題等)
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○近江委員 初めに、動燃の再処理工場の問題についてお伺いしたいと思います。
 十二月の十三日、十四日にウラン溶液の漏れた事故がまた発生しておるわけであります。まず、この事故の起きた原因につきましてお伺いしたいと思います。

[中略]

○近江委員 初めに、動燃の再処理工場の問題についてお伺いしたいと思います。
 十二月の十三日、十四日にウラン溶液の漏れた事故がまた発生しておるわけであります。まず、この事故の起きた原因につきましてお伺いしたいと思います。

[中略]

○櫻井説明員 ただいまの御質問でございますけれども、給液のラインに熱媒のオイルパイプが巻いてございます。そこのところが先ほど局長から説明いたしましたように、五百グラムウラン・パー・リットルのウラン溶液が漏洩をいたしまして、その部分にかかっております。それで、そこの除染作業をいたしますときに、いま申し上げました熱媒のオイルパイプを保護するために、しめしたおしめ紙といいますか、これはティッシュペーパーのようなものでございますが、それをかぶせてございます。そこの下を熱媒のオイルパイプが通っておりまして、その温度が約百二十度程度でございます。そのためにそのおしめ紙が乾きまして、少しくすぶって焦げ臭いにおいがしたという事実がございます。

○近江委員 私が先ほど申し上げましたように、当然そういうフランジの部分であるとかいうところは保温がしにくいわけですね。これは前の委員会でも問題になりましたが、労組側として何十項目かのそうした提言もしておった、そういう中に入っておるわけですね。当然これは心配である。ところが、試験を続行した。こういうようなウラン溶液の漏れの事故をまた起こしておるわけです。こういうずさんな事故が続出しておるわけですよ。当初からこういうことは予測されるわけですよ。しかも、圧力計をこれは利用していたのですか。そういうフランジ部分等の保温についてはどうしていたのですか。

○中島参考人 いまのお話でございますが、まず最初に、予測していたかどうかということでは、詰まりがある、詰まるかもしれないということはある程度予測はしておったわけでございます。したがいまして、当然詰まるということは、硝酸ウランの濃度が濃くなった場合に晶出するという現象があって詰まるわけです。先ほどの保温でございますが、各配管、それからポンプ、それからフランジ部分、ここら辺には、いま熱媒の通ったパイプをはわせまして、そしてさらにそれにアスベストを巻いて保温しておったわけでございます。ただ、その保温効果が部分的にではございますが、十分でないということが今回判明したわけでございます。

○近江委員 これは十二月十三日午後九時三十分ごろ起きているわけですね。このときにゴム手袋と腕に汚染があった。ゴム手袋と衣服は処分したということになっておるのですが、二回目のときは一回目とわずか十センチ、これはほとんど離れてないところから漏れが出ているのですね。それで、硝酸ウランの溶液がフランジの部分から少し漏れておるのを発見して、それで作業員が漏れた場所を確認するため数秒間見た。その部分からバーンと溶液が下向きにシャワーのように激しく吹き出した、こういうことなんですね。こういうことは予測されておるわけですよ。だから、私たちが、一度中止をして総点検をやって、心配な部分をきちっと手直しをしてやりなさいということを言っているわけですよ。ところが、この設備はもう完全ですからと——私たちは「むつ」の二の舞をさせたくないから言っているわけです。それを、何か別の違ったような取り方をなさっておるように私は思うわけですね。十一月十三日に本委員会におきまして集中審議が行われたわけですが、それ以降の事故についてどういう事故があったのですか。この事故も含めて簡潔にひとつ、科学技術庁がつかんでいる範囲で報告してください。

[中略]

○瀬崎委員 全くいいかげんなんです、これは。最も科学的に厳密に答弁されなければならない科学技術庁の局長がこういう答弁をして、しかもいまのだと、本当の反省になっているのかどうかわからぬようなあいまいな答えしかしない。これは将来に非常に禍根を残すと思います。
 動燃事業団の方にお尋ねをしたいのですけれども、制御室の計測装置そのものは、工程に異常があることを発見するための役目は当然持っていると思うのです。同時に、その異常の原因を表示するという役目も持っているのじゃないかと私は思うのです。少なくともホットだとかあるいは実用運転に入って人が入れなくなるセルの場合だと、そういう役目を計測装置そのものが備えておりませんと、異常は発見できたけれども原因はわからない、対策が立てられない、こうなりますね。この点で現在の計測装置は原因究明という役目も同時に持っているんですかどうか。

[中略]

○瀬崎委員 それから、私もあの現場で気がつかなかったのですが、漏れた溶液そのものはどういう形でどこへ排除されたわけですか。

○中島参考人 ドラムかんに移して……(瀬崎委員「簡単に移せるのですか、あの場所で」と呼ぶ)移せます。まあ簡単でもないのですけれども、こういうこれ式のポンプで……(瀬崎委員「石油をくみ上げるようなポンプですか」と呼ぶ)そうそう、あれでやりますから。

○瀬崎委員 原始的ですな。
 問題のパッキングですね、ガスケットが初めは機械的な緩みから、これの腐食ということになりました。この間聞きますと、初めはアスベストだったかな、これをテフロンか何かにかえたようにお話しになりましたが、そう簡単にテフロンならいいという結論が出せる問題なんですか。

○中島参考人 ちょっといま記憶がはっきりしないのですが、テフロンではなくてSUS、ステンレスでコーティングしたものにしたわけでございます。

○瀬崎委員 ステンレスでコーティングしたというのですか。私は専門的なことはよくわかりませんから、それがどういうものか知りませんが、問題はそう簡単にそれに置きかえるという結論になったことが不思議で、事は材料に関する問題だからやはり相当期間をかけて改めてテストしてみないと、何せ温度や圧力の変化の激しいところなのでということでしたから、だからどういうふうな経過でそういうステンレスをコーティングしたものならいいということに落ちついたのか。

○中島参考人 これは実は当初のスペックは、SUSのいま言いましたようなステンレスでコーティングしたものであったわけです。しかし、実際に取りつけられたものはそのスペックに合ってないものであったということでございまして、これはわれわれとしましても工事人にも十分注意しておりますし、われわれとしても反省しておるわけでございます。

○瀬崎委員 そうすると、これも初めて聞いたことなんですが、要は設計書どおりというか仕様書どおりになっていなかったということですか。

○中島参考人 その部分についてはそのとおりでございます。

○瀬崎委員 その部分についてと言われますけれども、たとえ一ヵ所でもこういうものが見つかってくると、まああれだけの複雑な膨大なものでしょう。これ、一つ一つ十分に点検した場合に、ほかにもこのような設計どおりではない部分、仕様書どおりではない部分というのは出てくるのじゃないですか。私どもならそういう危険を感ずるのですがね。

○中島参考人 その点につきましてはわれわれもやはり十分に調査しなければならぬというふうに考えております。ただ、これはわれわれもいままで通水試験、ケミカルテストを通じましてかなりの運転といいますか試験をしてまいったわけであります。その間にやはり幾つか、これは大丈夫かということで調べてみるというようなこともあったのでございますが、そういうことはなかったわけです。したがって、これがそうたびたびあるというふうなものとしてはわれわれも考えておりません。

○瀬崎委員 本当にそうたびたびあって、あっちもこっちも設計どおりになってないということになったら、これは大問題ですね。当然そういうことはあり得ないと私も思いますよ。しかし、通水やケミカルテストを経てなおこのように仕様書どおりになっていない部分が発見されてくるということになりますと、いまのウランテストを通じてでもなお発見されない部分が今度は本番のホットの場合に出てくるというふうな危険性も逆に言えばここから推定されるわけでしょう。ですからこういう点を考えますと、これはやはり設計どおりになっていないという問題については、もう少し最高の責任者の方で積極的にいま一遍全部について再点検を命ずるくらいの構えがないといけないのじゃないかと思うのですが、どうですか。

○瀬川参考人 ただいまのフランジのパッキングにつきましては、お話のようにコーティングしたアスベストであったということは私もきわめて遺憾に思っておる次第でございます。ただスペックどおりでなかったというのではなくて、設計はメタルパッキングであったものを施工のときにコーティングのアスベストに変更しているというふうに見ております。その段階におきましては、プルトニウム系統のパッキングも絶対永久に取りかえないんだということでなくて、やはり何年かに一回は取りかえるものだというような考えがどうも働いていたんではないかというように考えております。ただ、この間の、いま御指摘のエバポレーターのふぐあいということをいろいろ多角的に検討しまして、なるべくやはり当初考えておったメタルパッキングの方がどうもいいのではないか、やはり余り取りかえないような考え方の方がいいのではないかというふうに現在は考えております。恐らく変更したときは絶対取りかえないんだという考えでなくてもいいんだという考えが働いたかと思われます。
    〔委員長退席、石野委員長代理着席〕
また外国の例におきましても、プルトニウム系統におけるパッキングは一、二年間に一回は取りかえることがあるんだということが、外国でもやはりそう考えられておったようでございまして、そういう考えがやはりそのときは影響したんではないかというふうに現在は考えております。しかし、確かに御指摘のようにもう少しプルトニウムエバポレーターにつきましてはいろいろな角度から検討を加えまして、やはり圧力の上昇の原因とかあるいはパッキングの劣化の原因とかいうようなふくそうした問題であるという点から、私どももこの問題は徹底的に取り組みたいというふうに考えております。

○瀬崎委員 いままでのかん内圧力の問題とかあるいは密度の異常の問題とかいうのと、いまのパッキングの問題はちょっと性格が違うのです。私が中島所長の御答弁からいま聞いているのは、要は設計書や仕様書ではメタルでやれということになっていながら、これがコーティングアスベストであった、つまり設計書どおり仕様書どおりに行われていないという点について、これは大問題ではないか、もし一ヵ所こういうところが見つかったということになると、ほかにも設計書どおりになっていない面があるのではないかと心配するのが最高幹部の判断ではないか、こういうふうに申し上げて所見をお尋ねしたわけです。これは設計どおりのものを使っていなかったということになれば、しかもこれは施工途中にこういう変更が行われたということになれば、一体どのメーカーが責任を持つ問題になるのですか。

○中島参考人 メーカーといたしましてはジョイントベンチャーでありますところの日本揮発油サンゴバン、日揮でございます。しかし、同時に工事を総合的に管理する立場にあるのはわれわれでございますから、われわれもやはり責任がございます。

○瀬崎委員 いや動燃の責任、これは避け得られないと思いますが、だからといって実際動燃事業団の命じた設計どおりにやっていないということについて、やはりメーカーの責任もこの際はっきりさせなければいかぬと思うのですね。だから、どういう形でそれを問うのかということも含めてここで答えておいていただきたいと思います。

○清成参考人 大変的確な御質問で、私その点を非常に重視しております。プラントをつくるということになりまして、一番問題はその点でございます。これは数十年私それをやってきたので、設計の指定どおりになっていなかったということは一番重大問題で、したがいまして、これにつきましては私たちは徹底的に——責任としてはそれは私たちは最後の監督の責任はとりますけれども、ジョイントベンチャーの会社がもう全責任、これは当然そう考えておるところでございます。
 それで、おっしゃるとおり、一つそういうものがあればほかにもいろいろなところがあるんじゃないかということを考えるのが当然じゃないか。まさに当然でございまして、私も考えますけれども、実際問題としましては、実は先ほど石野先生の御質問の中でも申しましたけれども、これは私たちの方は実際にこの設計を全部チェックするような能力はなかった。それから陣容もなかった。したがいまして、これはフランスのサンゴバンのシステムデザインを信頼して、サンゴバンと日揮の合弁会社に短期的に注文しておるということなんでございます。したがいまして、われわれとしてはこれの発見はいまのようなかっこうのクランチストあるいはアシッドプロダクトテスト、その他のテストを通じまして発見していくという、私たち大体そういう考えでやっておりますので、いろいろ不備な点は先ほどからもちょっと御説明いたしましたけれども、こういう新しいものを設計しますといろんなところで間違いやあるいは不注意やら見落としやら出てまいります。出てまいりますから、これはわれわれが一緒になって改善していかなければならぬと思って、非常にいま一生懸命やっておるところでございまして、できるだけたくさんのものを発見した方がいいと私やっておるのですけれども、たちの悪いのは、いまの設計の指定と違ったことをやったという点、これは私は非常に動機が悪い。そういうようなことから、そういう動機に私は一番重点を置いて、これからのテストでいろんなことが発見されるものに対して対処していきたいというふうに考えております。

○瀬崎委員 私は一事が万事だという気は毛頭ありませんけれども、しかし、やはり理事長としてはこれは一事が万事というくらいの心構えを持ってほしい。それをやるためにチェックする能力とか人材が十分与えられていないと言われるなら、大いにここで声を大にしておっしゃっていただいて、長官がいらっしゃるのですからひとつ要求していただければ、われわれはそれを後押ししやすいと思うのですね。
 とにかく、このプルトニウム蒸発かんの問題は、論議すればするほど、われわれの素人論議でありますけれども、やはり非常に重大な内容を含んでいることがわかりますね。一つにはやはりいまの再処理工場のこれが焦点でもあろうと思うのです。そういう点で今後ともわれわれは注目したいと思います。こんなにこの問題で時間をとると私思いませんでしたが、出てくる事柄が重大なものですからついついこういうことになりました。
 次に、これはもちろん先ほども質問のありました脱硝塔の漏洩の問題です。一応科学技術庁を通じまして出されました事故報告書によれば、配管の周囲は保温材で温度を保っているんだけれども、何らかの要因で温度が下がって、そのために中に若干の結晶ができて、これがいわば詰まるという状況を来したのではないだろうか、こういうように書かれていますね。しかし、外から見えないわけですから、あれだけの複雑な配管の中の一体どこに結晶があるのか、あるいはまた確実に結晶だという結論が科学的に正しいのかどうか、そういうような点についてお聞きしたいのです。

○中島参考人 まず保温でございますが、これは先ほどもお答えしたのでございますが、硝酸ウランの濃度が上がって来ますと、もしそれは温度が下がれば消失するということで——保温といいまますと普通ならばアスベストを巻く程度でございますが、あの場合には熱媒を通した保温にしておったわけでございます。その中でどこで詰まったかということは、調べる方法としましては一応外から温度を上げまして、そして落ちる、流れるということから確認しているわけでございます。

○瀬崎委員 それじゃ現在も流れておるのですか。

○中島参考人 現在は溶かしまして、全部回収してございます。

[後略]