68-参-社会労働委員会-13号 昭和47年05月11日

昭和四十七年五月十一日(木曜日)午前十時十四分開会
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   委員の異動
 五月九日
    辞任         補欠選任
     鈴木美枝子君     佐野 芳雄君
 五月十日
    辞任         補欠選任
     中山 太郎君     高橋文五郎君
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 出席者は左のとおり。
   委員長          中村 英男君
   理 事
                鹿島 俊雄君
                高田 浩運君
                大橋 和孝君
                小平 芳平君
   委 員
                上田  稔君
                上原 正吉君
                川野辺 静君
                高橋文五郎君
                橋本 繁蔵君
                山下 春江君
                須原 昭二君
                田中寿美子君
                藤原 道子君
   衆議院議員
       社会労働委員長代理理事     橋本龍太郎君
   国務大臣
       労 働 大 臣  塚原 俊郎君
   政府委員
       労働大臣官房長  藤繩 正勝君
       労働省労働基準局長       渡邊 健二君
       労働省安全衛生部長       北川 俊夫君
   事務局側
       常任委員会専門員        中原 武夫君
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  本日の会議に付した案件
○労働安全衛生法案(内閣提出、衆議院送付)
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[前略]

○委員長(中村英男君) 労働安全衛生法案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。塚原労働大臣。

[中略]

○田中寿美子君 私もそれを見たのですけれども、特定化学物質の中の発ガン性のあるもの、あるいは発ガン性とは書いていないけれども、発ガン性の意味ですね。発ガン性の疑いのあるものに処罰があるんです。で三十万円以下ですか、一方は三十万円、一方は十万円ですよね。あとのものについてはその職場の中の空気が許容基準以上によごれていたからといって何も別に処罰を受けるようにはなっていないでしょう。これはどういうふうにするんですか。

○政府委員(北川俊夫君) いま御指摘の工場内の空気、環境につきましては、いまの特定化学物質で申し上げますと、一類物質のいま先生おっしゃった発ガン性の物質のほかに二類物質というものもございまして、たとえばアルキル水銀であるとか、あるいは石綿であるとか、塩素とか、塩素化ビフェニル——PCB、こういうものにつきまして許容濃度といいますか、抑制濃度、これを各物質ごとにきめております。これ以上の空気濃度、すなわち有害な環境でございますればこの法律の二十三条違反ということで罰則がかかるわけでございます。

○田中寿美子君 そうすると、三十万円と十万円の罰則がどこかにありましたね。三年以下は五十五条に……。

[中略]

○田中寿美子君 時間がもうなくなったんで、私、職業病について十分の討論ができないんですけれども、この労災法の職業病の定義というのは「業務上の事由による労働者の負傷、疾病、廃疾又は死亡」というふうに定義してありますね。まあ「業務上の事由による」ということばの解釈のしかたなんですけれども、これは狭くも解釈できるし、広くも解釈できるんですが、私考えますに、労働と関係あるすべての疾病を職業病というふうに呼ぶべきではないかと思いますが、そのほうがはっきりすると思うのですがいかがですか。

○政府委員(渡邊健二君) 業務上の疾病ということは、やはり業務遂行中その業務に起因して、それが原因で発生した職業病である。業務に起因するものというふうに私どもは解してまいりたいと思います。

○田中寿美子君 これは実際に事例に当たると、一つ一つ、これが職業病であるかどうかということをケース・バイ・ケースできめているわけですね、ちゃんとはっきりわかったものは別として。あるいは、それで使用者のほうはできるだけそれを職業病としたくない。労働者のほうは職業病であると主張することがしばしばある。これも労働条件でございますから、対等の立場で労働者が自分たちの意見が言えるようにされなければいけないということです。それから企業家が有害な物質を取り扱っているときに、労働者に十分知らせているかどうかの問題なんですね。そして知らせる義務を負わせているかどうか、それは労働省でどういう指導をしているかということを、例のヘップサンダルの製造で人が死にましたね、ベンゼンを使っていて……。それから最近アスベスト石綿についても、たいへんこれはPCBぐらいおそろしい物質であるということを私は化学雑誌で読んで驚いたわけなんですけれども、こういうことで次々と新しい有害な物質が発見されてきて、それを使っている。それに対して意外にちょうどPCBが非常に広く使われているように、アスベストもずいぶん使われているらしいですね。われわれの身辺でも石油ストーブのしんだとか、おふろの煙突だとか、屋根のスレートだとか、ふとんの詰めものに使っていたり、防火用、消火用、いわゆる熱や電気の絶縁、まあ、その他騒音防止にも使っているそうです。非常に範囲が広いそうですが、こういうことについて……。しかも針が突きささると絶対に出てこないそうですね。ですから、肺ガンの原因にもなるし、じん肺症の一つだと、石綿肺ということばで呼ばれておりますように、鉱山や工場にあるということも非常に最近やかましくいわれ始めているんですけれども、これはまあ化学者の間やら特定の専門家の間ではいわれていても労働者自身にはわかっていない。これは私は知らせる義務があるし、それからそれに対して保護をする義務があると思います。こういうものはどういうふうに指導していらっしゃるか、PCBのこともそうですけれども……。

○政府委員(北川俊夫君) いま御指摘のたとえばアスベストの問題につきましては、われわれのほうのじん肺法の対象物質になるわけでございます。その他PCB等は特定化学物質等障害予防規則等によって規制をいたしておるわけでございますが、そういう安全衛生法あるいは基準法に基づきまして、従来規制をしておりました物質につきましては、新法におきましてはそのまま引き継ぎますとともに、新しい法律の第百一条で法令の周知ということを事業者に義務づけております。この法律及びこの法律に基づく命令の要旨、こういうものを必ず労働者に周知をさせなければならない、こういう義務づけを加えております。それとあわせまして、先生御指摘の非常に有害なあるいは危険な業務につきましては、この法律の五十九条に「安全衛生教育」の規定がございますが、それの第三項の中に「事業者は、危険又は有害な業務で、労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。」、こういうことになっておりまして、非常に有害な業務につきましてはどういう防護措置をするべきか、あるいは防護具のつけ方はこうであるという教育のしかたをしなければ、危険または有害業務にこれからはつけてはならない、こういうことになるわけでございます。

○田中寿美子君 法律はけっこうだと思います。私、問題はそれをどんなに実行するか、たいへんなことだなと、これを読んでみんなそう思いますよ。いまのアスベストなんかはたとえば紡績工場なんかでもあるわけです。そこで働いている、これは大阪堺の付近の国立療養所の病院長が書いておられるものを読みましたけれども、七人のうち六人死んでいますよね。こういうことはみんな新しい材料を使って作業する場合には、慢性毒性、急性毒性その他いろんな有害な性質のものなんかについて知らせる仕事というのは、教育機関に入れて教育をしているのじゃ間に合わないような問題で、すべての事業者に早急にそういう手だてをしなければいけないし、事業者からは知らせる義務を負わせなければいけないし、労働者にも労働省から組合に通知をするというようなことをしなければ私はいけないと思います。ぜひ、それをやってもらいたいと思います。
 もう時間がありませんから終わりますけれども、大臣、朝から討論でわかりますように、安全衛生というのは労働者の重要な労働条件であるということ、ですから、これは労働省が意欲的にイニシアをとって守る立場をとっていただきたい。
 それからこの職業病のことを十分討論できませんでしたけれども、新しい作業工程を導入する、いわゆる合理化ですね、合理化を進めていく中で労働条件に非常に無理がいくと、あるいは新しい設備をつくる中で、職業病もしばしば起こっておりますわけですね。ですから、そういう点が十分考慮されないと、労働者の健康は守られないし、安全も衛生も守られないということをすごく大臣としては意識していただきまして、それで労働者の条件を守る立場での行政並びに行政指導、あるいは閣内での発言などをしていただきたいと思います。
 最後に決意を伺いたいと思います。

○国務大臣(塚原俊郎君) われわれが今回いま御審議を願っている労働安全衛生法を提案いたしましたのも、もちろんいろんな御批判はあるかもしれませんけれども、やっぱり労災というものをなくそうという、いま有毒物質の問題も出ておりましたけれども、有害物質の問題も出ておりましたけれども、たとえば労働者の健康を守るために、こういうものの製造禁止、また規制をやらなければならない。もちろん関係機関と御相談することもありますが、そういう立場に立ってこの法案を提出したのであります。十分御審議を願いたいのでありまするが、御趣旨の、御指摘の点はよく承りました。
 これからますます世の中は日進月歩、新しいものがどんどん入ってくると思います。その行程におきまして、いろんな問題も出てくるでしょうし、特に、職業病についてはわれわれも十分考えて、それに対しまた万全の対策を立てなければならない問題も出てくると思います。御趣旨の点を体しまして、この法案が成立いたしましたならば、これの運営並びに今後の諸問題などにも対処していく考えであります。

[後略]