61-参-建設委員会-25号 昭和44年07月10日

昭和四十四年七月十日(木曜日)午前十時二十五分開会
    —————————————
   委員の異動
 七月八日
    辞任         補欠選任
     高山 恒雄君     中沢伊登子君
 七月九日
    辞任         補欠選任
     中沢伊登子君     高山 恒雄君
  出席者は左のとおり。
    委員長         大和 与一君
    理 事
                大森 久司君
                山内 一郎君
                沢田 政治君
    委 員
                上田  稔君
                小山邦太郎君
                塚田十一郎君
                中津井 真君
                林田悠紀夫君
                米田 正文君
                田中  一君
                松永 忠二君
                松本 英一君
                二宮 文造君
                宮崎 正義君
                高山 恒雄君
                春日 正一君
   衆議院議員
       建設委員長    始関 伊平君
   国務大臣
       建 設 大 臣  坪川 信三君
   政府委員
       建設政務次官   渡辺 栄一君
       建設大臣官房長  志村 清一君
       建設省計画局長  川島  博君
       建設省住宅局長  大津留 温君
   事務局側
       常任委員会専門員        中島  博君
    —————————————
  本日の会議に付した案件
○建築基準法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
○委員派遣承認要求に関する件
○不動産鑑定士特例試験及び不動産鑑定士補特例試験に関する法律案(衆議院提出)
    —————————————

○委員長(大和与一君) ただいまから建設委員会を開会いたします。
 建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。坪川建設大臣。

[中略]

○委員長(大和与一君) 次に、本案に対する補足説明を聴取いたします。大津留住宅局長。

○政府委員(大津留温君) ただいま議題となりました建築基準法の一部を改正する法律案について逐条的に御説明申し上げます。
 第二条から第十八条までは総則関係の規定であります。
 第二条の改正は、用語の定義について所要の改正を行なったものであります。
 まず、第三号は、建築設備に新たに排煙のための設備を加えたものであります。
 第九号は、最近の用語例に従い石綿板を石綿スレートに改めるとともに、不燃材料に要求される不燃性を政令で定めることができることといたしたものであります。
 第二十一号は、今回の改正における地域、地区の新設及び廃止に伴い、定義について所要の整備をいたしたものであります。
 第二十二号は、大都市の特例の廃止と一部の事務を行なう特定行政庁の新設とに伴い、定義について所要の整備をいたしたものであります。
 第三条第三項第二号は、今回の地域地区制の改正に伴い、既存不適格建築物に関する取扱いについて、所要の規定の整備をいたしたものであります。
 第四条の改正は、政令で指定する人口二十五万以上の市においては建築主事を置かなければならないことといたしたものであります。
 第九条の改正は、特定行政庁が法令に違反した建築物に対し、同条第一項または第十項の規定により当該建築物の除却、工事の施工の停止等の命令をした場合において、必要があると認めるときは、その旨を公示するものといたしたものであります。
 公示の方法は建設省令で定めますが、公報への掲載、建築現場における立札による表示等を考えております。
 第九条の二の改正は、違反建築に対して早期にこれを発見し効果的な措置を講ずるため、建築監視員の制度を設けたものであります。すなわち、特定行政庁は、当該市町村又は都道府県の吏員のうちから、一定の資格を有する者について建築監視員を命じ、違反建築物に対する是正措置のうち緊急を要する工事停止命令等を行なわせることといたしたものであります。
 第十二条の改正は、特殊建築物の報告、検査等に関するものであります。
 まず、第一項の改正は、学校、病院、旅館その他の特殊建築物の適正な維持管理をはかるため、これらの建築物のうち特定行政庁が指定するものについては、その所有者は、建築士または建設大臣の定める資格を有する者の検査を受け、その結果を特定行政庁に報告しなければならないことといたしたものであります。
 第二項の改正は、建築設備に関する適正な維持管理を確保するとともに、行政事務の簡素化をはかるため、昇降機その他の建築設備のうち、特定行政庁が指定するものについては、現行の建築主事等による検査にかえて、建築士または建設大臣の定める資格を有する者の検査を受け、その結果を特定行政庁に報告することといたしたものであります。
 第十三条の改正は、建築監視員が工事停止の命令等をする場合においては、身分証明書を携帯し、係人の請求があったときは、これを呈示しなければならないことといたしたものであります。
 第二十八条から第三十七条までは建築物の構造及び建築設備に関する規定であります。
 第二十八条の改正は、居室の採光及び換気についての改正であります。
 まず、第一項の改正は、最近の照明設備の進歩にかんがみ、住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物には、採光のための窓その他の開口部を設けなければなりませんが、それ以外の建築物の居室には、採光のための開口部は必ずしも設けなくともよいことといたしたものであります。
 第二項の改正は、居室に政令で定める換気設備を設けた場合には、換気のための開口部に関する一般基準によらないことができることといたしたものであります。
 第三項の改正は、政令で定めるものを除き、映画館、劇場等の特殊建築物の各室及びその他の建築物の調理室、浴室等の室で火気を使用する部分には、新たに、一定の換気設備を設けなければならないことといたしたものであります。
 第三十条の二の改正は、長屋または共同住宅の各戸の界壁は、遮音上有効な構造としなければならないこととしたものであります。
 第三十四条の改正は、避難及び消火活動の円滑化という趣旨から、高層建築物には、原則として非常用の昇降機を設けなければならないことといたしたものであります。
 第三十五条の改正は、避難及び消火上の観点から、階数が三以上の建築物、旅館、劇場、百貨店等の特殊建築物には、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口を設けなければならないことといたしたものであります。
 第三十五条の二の改正は、階数が三以上である建築物、延べ面積が千平方メートルをこえる建築物または特定の建築物の調理室、浴室等の室で火気を使用する部分は、新たに室内の仕上げの制限に関する規定の適用があることといたしたものであります。
 第三十七条の改正は、建築物の主要構造部のほか、建築物の安全上、防火上または衛生上重要な部分に使用する建築材料の品質は、建設大臣が指定する日本工業規格または日本農林規格に適合するものでなければならないことといたしたものであります。
 第四十二条及び第四十三条は、建築物の敷地が接すべき道路に関する規定であります。
 第四十二条の改正は、特定行政庁が第一項第五号の規定により位置を指定する道につきまして、その線形、構造等に関する基準を、政令で定めることといたしたものであります。
 第四十三条の改正は、敷地と道路との関係について地方公共団体の条例で必要な制限を付加することができる建築物の範囲を拡大し、倉庫、危険物の貯蔵場等を含めることとしたものであります。
 第四十八条から第五十一条までは、用途地域に関する規定であります。
 第四十八条の改正は、現行の四用途地域に加えて、新たに、第一種住居専用地域、第二種住居専用地域、近隣商業地域及び工業専用地域の四用途地域を設けて八地域とし、それぞれの用途地域における建築物の用途制限を規定したものであります。
 新たな四用途地域の用途制限の内容は、次のとおりであります。
 第一種住居専用地域は、低層住宅にかかる良好な住居の環境を保護するための地域であり、現行の住居専用地区において制限される建築物のほか、新たに、大学、高等専門学校、各種学校及び特殊浴場を制限することといたしております。
 第二種住居専用地域は、中高層住宅にかかる良好な住居の環境を保護するための地域であり、住居地域において制限される建築物のほか、一般の工場、遊技場、旅館等を制限することといたしております。
 近隣商業地域は、近隣住宅地の住民に対する日用品の供給を行なうことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するための地域であり、商業地域において制限される建築物のほか、キャバレー、劇場、観賞場等を制限することといたしております。
 工業専用地域は、工業の利便を増進するための地域であり、現行の工業専用地区において制限されている建築物のほか、遊技場等を制限することとしております。
 また、住居地域におきましては、新たに特殊浴場を排除するとともに、公害を伴う工場に関する制限を強化する等の改正を行なうこととしております。
 なお、住居専用地区及び工業専用地区は廃止いたしました。
 第五十二条から第六十条までは、都市計画区域内の建築物の面積、高さ及び空地に関する規定であり、第五十二条から第五十六条までの五条において基本的な事項を規定しております。
  〔委員長退席、理事沢田政治君着席〕
 第五十二条は、容積率すなわち建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合に関する規定であります。この割合は、第一種住居専用地域内では十分の五から十分の二十まで、商業地域内では十分の四十から十分の百まで、その他の用途地域内では十分の二十から十分の四十までの範囲内で、各用途地域に関する都市計画において定めるもの以下とし、用途地域外におきましては十分の四十以下としたものであります。このほか、前面道路が十二メートル未満である場合には、容積率は、その幅員のメートルの数値に十分の六を乗じたもの以下でなければならないこと、計画道路にかかる敷地、その周囲に広い空地を有する建築物の敷地等の取り扱いについては、おおむね現行の容積地区におけると同様の規定を設けております。
 第五十三条には、建坪率すなわち建築物の建築面積の敷地面積に対する割合に関する規定であります。第一種住居専用地域内では十分の三から十分の六までの範囲内において都市計画で定める割合以下、近隣商業地域及び商業地域内では十分の八以下、その他の用途地域内においては十分の六以下、用途地域外では十分の七以下といたしました。このほか、防火地域内の耐火建築物、街区のかどにある敷地内の建築物、公園広場等の内にある建築物等の取り扱いについては、おおむね現行と同様の規定を設けております。
 第五十四条は、第一種住居専用地域内における建築物の外壁の後退距離についての規定であります。第一種住居専用地域内においては、当該地域の都市計画で外壁の後退距離を定めることができることとし、当該距離が定められた場合には、建築物の外壁またはこれにかわる柱は、その定められた距離以上敷地境界線から離さなければならないこととしております。この場合、都市計画においては、一メートルまたは一・五メートルのいずれかを定めるものといたしております。
 第五十五条の改正は、第一種住居専用地域における建築物の高さの限度を十メートルと定めたものであります。第一種住居専用地域以外の地域におきましては、容積率制限を都市計画区域全部に適用することといたしましたので、現行の住居地域内では二十メートル以下、住居地域外では三十一メートル以下の建築物の絶対高さの制限は、廃止いたしました。
 第五十六条の改正は、建築物の各部分の高さの制限すなわち斜線制限に関する規定であります。前面道路からの斜線制限は現行どおりでありますが、容積率制限を全国的に採用したことに伴い、隣地境界線からの斜線制限を一般的に採用することといたしました。
 また、第一種住居専用地域及び第二種住居専用地域においては、日照、採光、通風等に寄与する制限として、新たに敷地の北側境界線からの斜線制限を設けることといたしました。
 なお、空地地区及び容積地区は、廃止することとしております。
 第七十九条の改正は、建築審査会の事務の内容に照らして、建築審査会の委員の構成を改めたものであります。
 第八十五条から第九十七条の三までは、雑則に関する規定であります。
 第八十五条の改正は、仮設興業場、博覧会建築物等の仮設建築物の存続期間を、六カ月から一年に延ばすことといたしたものであります。
 第九十七条の二の改正は、第四条の改正に伴って大都市の特例を廃止するとともに、人口二十五万未満の市または町村について、新たに事務の一部を執行することができることといたしたものであり、これらの市町村の長及び建築主事のつかさどる事務の範囲並びに審査請求の取り扱いについて定めたものであります。
 第九十八条から第百二条までは、罰則に関する規定であります。
 第九十八条の改正は、建築監視員の制度の新設に伴い、建築監視員の命令違反について、特定行政庁の命令違反と同様の罰則を適用することとしたものであります。
 別表第一の改正は、最近における特殊建築物の火災事例にかんがみ、耐火建築物または簡易耐火建築物としなければならない劇場、ホテル、学校、百貨店等の建築物の範囲を拡大して、これらの建築物に類するもので政令で定めるものを加えたものであります。
 なお、この改正によりまして、避難階段の設置に関する基準、室内の仕上げの制限に関する基準等の適用を受ける建築物の範囲も拡大されることとなります。
 別表第二の改正は、第四十八条のところで申し述べたとおり、用途地域の細分化及び用途の純化をはかったものであります。
 別表第三、別表第四及び別表第五の改正は、用途地域地区の改正に伴う整理をいたしたものであります。
 最後に附則でありますが、附則は十八項からなっております。
 第一項は、この法律の施行の日を定めたものでありまして、公布の日から一年の範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。
 第二項から第十三項までは、地方自治法、港湾法、都市計画法等関連法規の改正をいたしたものであります。
 第十四項から第十七項までは、都市計画法等の一部改正に伴う経過措置に関することであり、今回の改正により、用途地域の再編成をいたし、かつ、用途地域に関する都市計画において容積率の指定を行なうことといたしましたので、これに伴い、必要な措置を定めたものであります。そのうち、第十四項においては、この法律の施行の日から三年以内に、この新たな用途地域に関する都市計画を定めるものといたしております。
 第十五項においては、この法律の施行の際現に定められている都市計画区域については、この新たな用途地域に関する都市計画が定められた日から、改正後の建築基準法の用途地域と関連する諸規定を適用することとしております。
 第十八項は、この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用について規定したものであります。
 なお、衆議院修正部分につきまして逐条的に御説明申し上げます。
 第九条の修正は、違反建築物に対して行政代執行を行なうための要件を緩和するとともに、違反建築物を公示するための標識を設置する場合、建築物の所有者等はこれを拒んではならないこと等といたしたものであります。
 第九条の三の修正は、特定行政庁は、違反建築物を取り扱った設計者、工事施工者、宅地建物取引業者を、これらの者を監督する建設大臣または都道府県知事に通知し、この通知を受けた建設大臣または都道府県知事は、登録取り消し、業務停止その他の必要な措置を講じなければならないことといたしたものであります。
 第十二条の修正は、建築主事等が確認、違反是正命令等をする場合には、建築物の所有者、工事施工者等に対して必要な事項を質問することができることといたしたものであります。
 第九十三条の二の修正は、特定行政庁は、確認申請書に関する図書のうち、建築物の敷地と建築物の関係を表示するものについて、閲覧の請求があった場合には、これを閲覧させなければならないことといたしたものであります。
 第百条の修正は、罰則に関するもので、第十二条の修正に伴うものであります。
 付則の修正は、政府は、工事の施工の停止命令等の履行を確保するための措置について検討を加えることといたしたものであります。
 以上、本法案並びに修正案につきまして、逐条的に御説明申し上げた次第でございます。

○理事(沢田政治君) これより本案に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は、順次御発言を願います。

[後略]