51-参-社会労働委員会-2号 昭和40年12月28日
昭和四十年十二月二十八日(火曜日)午前十時二十分開会
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委員の異動
十二月二十七日
辞任 補欠選任
丸茂 重貞君 館 哲二君
十二月二十八日
辞任 補欠選任
館 哲二君 丸茂 重貞君
小平 芳平君 田代富士男君
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出席者は左のとおり。
委員長 小柳 勇君
理 事
鹿島 俊雄君
川野 三暁君
佐野 芳雄君
藤田藤太郎君
委 員
黒木 利克君
紅露 みつ君
土屋 義彦君
徳永 正利君
山本 杉君
大橋 和孝君
杉山善太郎君
森 勝治君
山崎 昇君
田代富士夫君
高山 恒雄君
国務大臣
厚 生 大 臣 鈴木 善幸君
労 働 大 臣 小平 久雄君
政府委員
防衛施設庁長官 小幡 久男君
防衛施設庁労務部長 江藤 淳雄君
外務省北米局長 安川 壯君
厚生大臣官房長 梅本 純正君
厚生大臣官房会計課長 戸澤 政方君
厚生省公衆衛生局長 中原龍之助君
厚生省医務局長 若松 栄一君
厚生省社会局長 今村 譲君
厚生省児童家庭局長 竹下 精紀君
労働大臣官房長 和田 勝美君
労働大臣官房会
計課長 上原誠之助君
労働省労政局長 三治 重信君
労働省労働基準局長 村上 茂利君
労働省職業安定局長 有馬 元治君
事務局側
常任委員会専門員 中原 武夫君
説明員
法務省刑事局刑事課長 伊藤 栄樹君
厚生省医務局次長 渥美 節夫君
労働省労働基準局労災防止対策部長 石黒 拓爾君
自治大臣官房参事官 降矢 敬義君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○労働問題に関する調査
(不当労働行為に関する件)
(失業保険制度に関する件)
(昭和四十一年度労働省関係予算要求に関する件)
○社会保障制度に関する調査
(米軍食傷兵の検疫に関する件)
(国立療養所等の運営に関する件)
(昭和四十一年度厚生省関係予算要求に関する件)
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[前略]
○委員長(小柳勇君) 次に、国立療養所等の運営に関する件について調査を行ないます。本件に関し、質疑のある方は、順次御発言を願います。
[中略]
○田代富士男君 ここにいらっしゃる皆さん方に事件の概要を申し上げますと、大阪にございます国立養療所、現在は近畿中央病院という名前に変わっておりますが、元厚生園長の瀬良好澄、また、元医務課長の高木善胤、研究検査課医長の横山邦彦の三名は、当国立療養所のエックス線技官、あるいは臨床検査技官及び主任看護婦を抱き込んで、昭和三十三年より昭和三十八年にわたる六年間、会社あるいは工場、銀行、約百十社と特別契約を結んで、一般検診、あるいは、じん肺検診を集団的に行ない、そうして国立療養所の施設を使用して、料金をば厚生省組織規程の会計法にもありますとおりに、医事係の窓口を通さずして請求書あるいは受領書を作成し、発行し、多額の金を取り、この金をかれら数人によって恣意に費消していた、このような不正事件でございます。これにつきまして、ただいま申し上げましたとおりに、順次説明をお願いしたいと思います。
○政府委員(若松栄一君) ただいま問題になりました事件の経過の概要を私どもの立場から申し上げさせていただきます。
昭和三十年の七月に、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法という法律が制定されまして、それによりまして粉じん作業——粉を吸い込む作業、粉じん作業の労務者に対してけい肺の健康診断を実施することが使用者の義務となったのでございます。しかし、初めてでございますので、初回の健康診断に限って、同法の附則によりまして国が直接実施することになりまして、昭和三十一年、当時労働省の外邦団体である労政協会が、けい肺法に基づく健康診断の実施を請け負いまして、その計画に基づいて、国立療養所大阪厚生園の瀬良園長が従来からけい肺の専門家であるということから、その学識経験を買われまして検診の委託を受けたのでございます。そうして、それが三十一年から三十八年まで行なわれてまいりました。また、一方、けい肺法の対象外の石綿を吸い込んだ石綿肺、あるいは滑石作業の場合に滑石を吸い込んで起こります滑石肺、あるいはアルミの粉を吸い込んで起こりますアルミ肺、黒鉛の粉じんを吸い込んで起こる黒鉛肺、あるいは溶接工等が鉄粉を吸い込んで起こります溶接工肺等の各種のじん肺の調査と診断の基準を設ける必要から、けい肺法の制定の翌年であります昭和三十一年から労働省が一石綿肺の診断基準を研究する立場で研究班を設けまして、瀬良園長も委嘱を受けて、厚生園の岡辺の地域に密集している石綿工場を巡回検診し、三十一年から三十三年までの間、研究資料を集めまして、当該じん肺の検診基準の制定、あるいは同法の制定の基礎的な資料を収集いたしました。昭和三十四年に大阪厚生園が現在地に移転いたしましたので、その整備にも忙しかったということと、さらに技術的に高度な研究もあわせてやりたいということから、従来、車等をもって巡回して検診しておりましたものを、さらに精密な検査を行なうためにエックス線検査の特殊撮影、あるいは肺機能の検査等をあわせてやるという研究上の目的もありまして、巡回診療をやめまして、けい肺、石綿肺の検診を病院に来院させてやることにいたしたのでございます。以上がそういう検診をやってまいりました経緯でございます。
これらの検診を行ないます場合に、当初は労働省が直接労働基準局に実施させました。費用は一件につき五百円を国が二分の一負担し、使用者に二分の一負担させるというたてまえをとってまいりました。したがって、瀬良園長がそれらの委託を受けました場合に、当然それらの検診に従事した謝金というようなものを受け取ったことは当然であろうと思います。また、その後三十四年以降につきましては来院させまして、そこで検診を行ないましたために、先ほどお話にありましたような、病院の検査技官であるとかレントゲン技師というような者が、基準監督署、あるいは外郭団体である労働基準協会のかわりに事実上金銭の授受、をやったということは事実でございます。これに対して厚生省はそういう経理のしかたについてどういうふうに考えておるのかということを申しますと、私どもは、この検診は、たとえば結核検診が方々で行なわれておりまして、それがいろいろな業者に受託され、一部が国立病院、療養所等が受託しておりますと同時に、けい肺の検診もきわめて特殊な専門的な検診でございますので、専門家である瀬良園長がこれを受託してやったものというふうに解釈いたしております。したがって、そのような検診について謝金を受けるというようなことも当然あり得るだろうと思いますし、また、一方、来院させてやった場合、今度来院さしてやる以上、その診断費等が当然園の正当なルートを通って経理されるべきではないかという御意見のようでございます。しかし、私どもは、これはどこまでも瀬良個人がそういう特殊な学識経験を買われて受託したものであって、本来の国立療養所が受託してやったものではないという解釈に立っておりますし御承知のように、国立療養所は一般会計でございますので、当然それらの事業を恒常的にやるということのためには予算を計上し、そして、その中から経費を支出し、また、その収入を国庫に入れるというのがたてまえでございますが、この問題は、そのように本来国立療養所として行なうべき業務とは考えませんで、どこまでもそういう学識経験者が個人的な立場で受託したものと考えておりましたので、これを園の経理に入れ、国庫に入れるというようなことは指導してまいりませんでした。しかし、それでも園の施設あるいは人を使っているではないかという御意見も出ると思いますけれども、これにつきましては、国立療養所といえども、当然診療行為のほかに、研究業務というものも使命となっております。ことに園長がこの方面の専門家で、その学識経験を高く買われている人間でございますので、園長がそういう園の施設を若干使ってそのような研究業務をするということは、研究を助成するという意味からいっても、いたずらにチェックし、その研究が不自由になるようなことのないようにという配慮も私どもいたしておったわけでございます。
以上が経過の概要でございます。
○委員長(小柳勇君) 田代君の質問に対して、法務省が現状について調査しておる段階の御説明をお願いします。
[中略]
○田代富士男君 いまのお話でありますと、そのような、じん肺検診料等の謝金は受け取っても当然であると、そういうお答えでありますが、じゃ、いま国立の療養所が約百五、六十以上あると思いますが、そこでもそういうことをやって謝金を取っているわけなんですね。現在中央総合病院になっておりますが、これ以外のところでもやっているわけなんですね、その点お願いします。
○政府委員(若松栄一君) その瀬良園長のおりました大阪厚生園というのは、このまわりの地域に多数の石綿の工場がございまして、そういう意味で、この地域は瀬良園長にとってもきわめてかっこうな研究地域でもあったわけでございますので、厚生園がこれを非常に積極的にやっておりましたが、ほかの療養所ではそのような工場その他がないというような地域が大部分でございますので、ほかの病院でけい肺の検診を受託してやっていることは承知いたしておりません。
○田代富士男君 私が聞いているのは、全国の各療養所でこういうことをやっているのかやっていないのか、その点を聞いているんです。その厚生園のことじゃないんです。それをそのように認めるならば、謝金は受けるのは当然である。まして権威者であるならば、このような国立の施設を若干使ってもかまわないということでありますから、であるならば、全国の療養所でもやっているかやっていないか。いまのあれはお答えになっていませんよ。その点をお願いします。
[後略]