34-参-社会労働委員会-11号 昭和35年03月08日

昭和三十五年三月八日(火曜日)午前十時三十二分開会
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  委員の異動
本日委員江田三郎君辞任につき、その補欠として安田敏雄君を議長において指名した。
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 出席者は左の通り。
   委員長     加藤 武徳君
   理事
           高野 一夫君
           吉武 恵市君
           坂本  昭君
           藤田藤太郎君
   委員
           鹿島 俊雄君
           勝俣  稔君
           紅露 みつ君
           谷口弥三郎君
           徳永 正利君
           山本  杉君
           片岡 文重君
           村尾 重雄君
  国務大臣
   労 働 大 臣 松野 頼三君
  政府委員
   労働政務次官  赤澤 正道君
   労働大臣官房長 三治 重信君
   労働省労政局長 亀井  光君
   労働省労働基準局長      澁谷 直藏君
   労働省職業安定局長      堀  秀夫君
  事務局側
   常任委員会専門員       増本 甲吉君
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  本日の会議に付した案件
○じん肺法案(内閣送付、予備審査)
○労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案(内閣送付、予備審査)
○身体障害者雇用促進法案(内閣送付、予備審査)
○労働情勢に関する調査(一般労働行政に関する件)
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○委員長(加藤武徳君) それではただいまから委員会を開会いたします。
 じん肺法案、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案、身体障害者雇用促進法案、右三案を一括議題といたしまして、各案の細部について政府委員から説明を聴取いたします。まず、じん肺法案について説明をお願いいたします。

○政府委員(澁谷直藏君) じん肺法案についての逐条説明を申し上げます。
 お手元に逐条説明という資料をお配りいたしておりますので、それをごらんいただきたいと思います。
 第一条は、本法の目的を規定したものでございます。本法は、じん肺について適正な予防及び健康管理等を講ずることによって、労働者の健康の保持そのほか福祉の増進に寄与することを目的とする旨を明らかにしたものでございます。
 第二条は、本法において使用される用語の定義を規定したものでございます。現行けい肺等特別保護法は、けい肺のみを規制の対象としておりますが、本法はけい肺のほか、石綿肺、タクル肺等広くじん肺一般を規制の対象とすることにいたしたのであります。
 第三条は、じん肺健康診断の実施方法について規定したものでございます。じん肺健康診断は、現行けい肺健康診断に相当するもので、ほぼ同一内容の診断を行なうこととしております。
 次に、第四条は、じん肺のエキス線写真像の区分と、じん肺健康診断の結果に基づくこの法律による労働者の健康管理の区分を定めたものでございます。この区分は、けい肺審議会医学部会の答申を尊重して定めたものでございまして、エキス線写真像については石綿肺を規制することといたしましたので、新たに異常線状影を主とする像についての区分を定めたこと、健康管理の区分については、現行法においてはけい肺の症状を区分するという建前をとっておりましたが、今回はもっぱら健康管理という見地から労働者を区分するという行き方に改めたことが現行法と異なっている点でございます。
 第二章は、本法の中核をなすもので、じん肺の予防と健康管理についての使用者、労働者等のもろもろの義務を定めております。
 第五条でございますが、第五条及び第六条は、予防に関して新たに設けた規定でございますが、第五条は、じん肺にかかることを予防するため、使用者及び労働者に対して粉塵発散の抑制等の措置を講ずるように努めるべき義務を課したものでございます。
 労働基準法においては、労働者保護の見地から危害防止のための必要な措置の最低基準が定められており、鉱山保安法においては、鉱山の保安上の見地から粉塵の抑制等について必要な事項が規定されております。従って、使用者及び労働者は、粉塵の抑制等について最低基準を定めた両方の規定を順守すべきはもちろんでございますが、さらに、これらの規定を上回る適切な措置を講ずる義務が本条により課せられるわけになるのでございます。
 次の第六条でございますが、第六条は、使用者は粉塵作業に従事する労働有に対して、じん肺の予防及び健康管理について必要な教育を行なう義務を有することを明記したものでございます。
 労働基準法及び鉱山保安法においては、それぞれ雇い入れの際等に衛生教育等を行なうことを規定しておりますが、本条においては、右の規定によるほか、じん肺の予防と健康管理を適切に実施するために、作業の実態に応じて必要な教育を行なうことを義務づけたものでございます。
 次の第七条から第九条までの規定は、常時粉塵作業に従事する労働者に対する使用者のじん肺健康診断の実施義務について定めたものでございます。
 使用者は、常時粉塵作業に従事する労働者に対して、その新規就労の際及び三年または一年以内ごとに一回定期的に、また、新たに肺結核にかかったことが明らかになった場合等はそのつどそれぞれじん肺健康診断を行なわなければならないことになっております。このじん肺健康診断の実施は、現行法によるけい肺健康診断の実施と、時期、回数等につきましてはおおむね同様でございます。
 次に第十条は、労働基準法に基づく健康診断と、本法に基づくじん肺健康診断との調整を規定したものでございます。
 第十一条は、関係労働者について使用者が行なうじん肺健康診断の受診の義務を定めた規定でございます。
 第十二条は、本法も健康管理区分の決定は現行法と同様国が行なう建前をとっていますので、その決定の基礎とするため、使用者に対し、じん肺健康診断等の実施結果資料の提出を義務づけたものでございます。
 第十三条は、本法においても健康管理区分の決定は、現行法において症状決定は国が統一的に行なうという建前をとっているのを引き継ぎまして、回収に国において行なうことを明らかにしたものでございます。
 第十四条は、国が健康管理区分の決定を行なったときの使用者に対する決定内容の通知と、当該通知を受けた使用者の労働者への通知義務を定めたものでございます。
 第十五条及び第十六条は、使用者の法定の義務として行なったじん肺健康診断に基づく健康管理区分の決定のほかに、随時、労働者及び使用者はじん肺健康診断を行なって、国に対し健康管理区分の決定を申請することができる随時申請の制度を定めたものでございます。
 第十七条は、適切な健康管理の実施を確保するため、じん肺健康診断に関する記録の作成及び保存の義務を定めた規定でございます。
 第十八条から第二十条までは、都道府県労働基準局長が行なった健康管理区分の決定について、労働大臣に不服の申し立てができる不服申し立ての制度について定めたものでございます。申し立て権者、申し立ての手続、裁決の手続等につきましては、現行法と同様でございます。
 第二十一条は、健康管理の区分が管理三である労働者の、粉塵作業以外の作業への転換について定めたものでございます。健康管理の区分が管理三である者が、引き続き粉塵作業に従事することにより、さらに健康状態が悪化することを予防するため、現行法にならい、本法においても、作業転換の制度を設けることとしたものでございます。
 次に、第二十二条は、前条の規定に従って作業の転換をした労働者に対する使用者の転換手当の支払い義務について定めたものでございます。本手当は、現行法の転換給付に相当するもので、支給条件、金額については現行法と同様でございます。
 第二十三条は、健康管理の区分が管理四の者は、一般に療養が必要である旨を明らかにし、また、当該労働者の注意を喚起するため、使用者が管理四である旨を当該労働者に通知する際、療養を要する健康状態にあることをあわせ通知しなければならないことを定めたものでございます。
 第三章は、じん肺審議会の設置、権限等について定めたものでございまして、本審議会は、現行法のけい肺審議会に相当するもので、その権限、組織等は、おおむね現行法と同様でございます。
 次に、第四章は、使用者の行うじん肺の予防及び健康管理に対する技術的援助、そのための粉塵対策指導委員制度の設置、けい肺罹患者に対する職業紹介、職業訓練の実施、就労施設の設置等、政府の行なうけい肺に関しての労使に対する援助について定めたものでございます。
 第三十二条及び第三十三条は、じん肺対策の推進をはかるために今回新設したものでございますが、第三十二条は、じん肺の予防と健康管理の適正化をはかるためには、政府の技術的援助に待つ点が多いことにかんがみまして、政府は、粉じんの測定等について技術的援助を行なうように努めるべきこと。また、そのために必要な研究施設、指導施設の整備をはかるべきことを定めたものでございます。
 第三十三条は、使用者の行なうじん肺の予防に関する措置について必要な技術的援助を行なわせるために、粉じん対策指導委員制度を設けることを定めたものでございます。この粉じん対策指導委員の制度は、本法において新たに設けられるものでございまして、衛生工学に関し、学識経験のある者を充てることになっております。
 第三十四条は、健康管理区分が管理三の要転換者で、企業内において転換ができず、やむを得ず離職せざるを得ない者に対する職業紹介及び職業訓練について、政府の義務を定めたものでございます。
 第三十五条は、じん肺罹患者に対する就労施設及び労働能力の回復施設の設置についての政府の義務を定めたものでございます。現行法においても、就労施設の設置義務を定めておりますが、本法では、これに合わせ、労働能力回復施設の設置義務を新たに定めております。
 第三十六条から第三十八条までは、転換手当に対する公課の禁止、転換手当を受ける権利の譲渡等の禁止、時効について定めたものでございます。その内容は、現行法における転換給付についての規定と全く同様でございます。
 第三十九条及び第四十条は、じん肺診査医の設置及び権能について定めたものでございます。本法の「じん肺診査医」は、現行法の「けい肺診査医」に相当するもので、設置の趣旨、権限等は、全く現行法と同様でございます。
 第四十一条は、本法の施行に関する事務をつかさどる行政機関を定めたものでございます。
 第四十二条及び第四十三条は、労働基準監督官の権限を定めたものでございまして、その内容については、現行法におけるのとほぼ同様でございます。
 第四十四条は、本法の目的を達成するための労働大臣等の報告聴取権限について定めたものでございます。
 第六草は、本法の違反についての罰則を止めたものでございまして、刑の程度は現行法に準じ、両罰規定を設けたことも、現行法と同様でございます。
 附則に参りまして、附則第二条から第七条までは、けい肺等特別保護法の廃止、本法の制定に伴う経過措置について定めたものでございます。
 附則第八条から第十一条までは、本法制定に伴う関係諸法律の改正を行なうことを定めたものでございます。
 以上でございます。

○委員長(加藤武徳君) それでは次に、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案について、細部説明をお願いいたします。

[後略]