23-衆-商工委員会-6号 昭和30年12月14日
昭和三十年十二月十四日(水曜日)午前十時三十八分開議
出席委員
委員長 神田 博君
理事 小笠 公韶君 理事 小平 久雄君
理事 笹本 一雄君 理事 長谷川四郎君
理事 永井勝次郎君
阿左美廣治君 大倉 三郎君
菅 太郎君 菅野和太郎君
椎名悦三郎君 島村 一郎君
首藤 新八君 鈴木周次郎君
田中 龍夫君 伊藤卯四郎君
加藤 清二君 片島 港君
菊地養之輔君 櫻井 奎夫君
田中 武夫君 田中 利勝君
帆足 計君 八木 昇君
出席政府委員
通商産業政務次官 川野 芳滿君
通商産業事務官(大臣官房長) 岩武 照彦君
通商産業事務官(通商局長) 板垣 修君
通商産業事務官(鉱山局長) 松尾 金藏君
委員外の出席者
総理府事務官(公正取引委員会事務局経済部長)坂根 哲夫君
大蔵事務官(為替局外資課長) 小島要太郎君
通商産業事務官(重工業局長) 鈴木 義雄君
通商産業事務官(繊維局長) 小室 恒夫君
通商産業技官(鉱山局金属課長) 森 五郎君
専 門 員 越田 清七君
十二月十四日
委員猪俣浩三君辞任につき、その補欠として櫻井奎夫君が議長の指名で委員に選任された。
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十二月十三日
錦川特定地域総合開発計画促進等に関する陳情書(山口県議会議長二木謙吾)(第二二四号)
東北地方の総合開発促進に関する陳情書(北海道議会議長荒哲夫外七名)(第一四四号)
国士総合開発事業費の予算化に関する陳情書(北海道議会議長荒哲夫外七名)(第一四五号)
を本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
繊維、アルミニウム及びミシン工業に関する件
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○神田委員長 これより会議を開きます。
繊維、アルミニウム及びミシン工業に関する諸問題について、調査を進めます。質疑の通告がありますから順次これを許します。片島君。
[中略]
○小笠委員 私はただいま問題になっておりますシンガー・パインの問題に関連して一、二の点を政府側にただしたいと思うのであります。
私が申し上げるまでもなく、日本のこれからの経済自立の基本は、貿易の振興と雇用の増大であると思う。特に最近七十二万に上る完全失業者を出しておる今日であります。こういうふうな事態を考えますとき、この雇用の機会の増大をどこに求めていくかということになりますれば、何といっても中小企業面にその多くを求めていかなければならぬと私は思うのであります。この意味から、日本の中小企業対策というものが大きく、また新しい視野から考え直さるべき時期に到達したと考えるのであります。こういうふうな見地から見ますとき、非常に立ちおくれておる中小企業ならまた問題は別といたしましても、すでに世界水準に達しておるミシン工業に対して、シンガーミシンの外資導入あるいは設備の無為替輸入をするということにつきましては実に重大な問題だと私は考えるのであります。口に中小企業振興の意義をとなえながら、一方において刻下の要請である雇用の増大、輸出の伸張をはばんでいく措置をとらんとするといわざるを得ないのであります。この意味におきまして、この問題が単に一会社一会社の二つの間の取引のみの問題でないと私は考える。こういうような意味から、政府当局は日本の中小企業に対する外資導入あるいは設備の無為替輸入というこの問題に対して、原則的にどういう考え方をとっているか、またそういうふうな問題によって日本の中小企業対策というものをどういう角度からとっていくか、この原則的な御方針をまず承わりたいと思います。
○岩武政府委員 私、僣越でありますが、かわりまして今までのやっておりまする方向をお答えいたしたいと思います。外資法ができまして、その際国の基礎産業の発展に貢献するもの、あるいは国際収支の改善に寄与するものについては積極的に外資を歓迎するというふうなことに相なりまして、自来この関係で各種の技術提携あるいは資本の導入が行われていることは御承知の通りであります。その後日米通商航海条約もできまして、やはりこの外資法の趣旨にのっとりまして、アメリカ国との関係が一応締結されて、特殊の地下資源の開発、公益事業あるいは金融機関といったもの以外は内国待遇を与えるということになっているのであります。
そこで御指摘のございました中小企業あるいは雇用の問題につきまして著しい悪影響のある場合に、一体どうするかということが一番の中心問題になると思います。この問題につきましては、実は御承知の通り先年来日米石綿の問題もございます。これは技術的にはある程度一日の長のある技術提携のケースでございましたが、関係の業界、ことに中小企業の多い業界でございますから、日本の経済関係から見まして、導入することによりましてその利益の反面、これが国内の関係の業界に与える不利益を比較考量いたしまして、相当長い間慎重に検討をいたしましたが、あまり歓迎するようなケースではないということで、自発的に先方が引き下ったというふうなことに相なっております。
シンガーミシンの場合も、御指摘のように、ある程度日本の技術としまして完成した業界のものでございます。また関係の中小企業の業界に与える影響も相当大きく、単に経済的な影響だけではございませんで、むしろ雇用の問題とも関係いたしておりますので、実は先ほど重工業局長が御答弁申し上げましたように、この問題につきましては、一方におきましては通商航海条約の建前もございますし、他方におきまして国内事情もございますので、御答弁申し上げましたように、慎重に対処しているのでございます。一応外資委員会としましては、あまり歓迎するようなケースではないというふうな結論に傾いているようでございますが、なお二、三問題を含めるところもありますので、最終的な結論を目下のところ下しておらないというのが実情のようであります。
これは私事務当局の立場としまして、今までの取り扱いの方針なり、あるいは経過なりを御報告したわけでございます。なお大臣が参りますれば、あるいはさらに明快な方針のお話があると思います。一応今までの考え方を申し上げた次第であります。
○小笠委員 ただいま御答弁を伺ったのでありますが、私の伺った質問に対する答えではないと思う。私は現下の日本の経済の状態から見て、中小企業対策と外資導入との関連についていかなる方針をもってこれから対処せんとするのか。その一つの現われとしてのシンガー・パイン問題である。ここにおいてシンガー・パイン問題の重要性は、基本政策の一環として見ているというところにあることを申し上げたのであります。この見地からのお話は何ら承わることを得ないことを遺憾とするのであります。これらの政治の対象が何といっても中小資本による企業への十分な配慮なしに行い得ないことは日本経済の持つ性格であります。この意味から本問題は通産行政の基本に関係する問題であると思うのであります。こういうふうな見地から見まするとき、通産行政の基本に関連して明確なる答弁ができないということはまことに遺憾といわざるを得ないのであります。責任大臣がおりませんから、私はこれ以上基本的な問題の追究はいたしません。だがしかし具体的な問題について一、二さらにお伺いをいたしたいと思うのであります。それは先ほどの政府委員の答弁を聞きまするとき、昨年の七月に外資導入の申請があり、本年九月に設備の無為替輸入の申請があったが、両方とも慎重考慮中だ、その考慮の標準として何をとっておるかというと、これが産業の発展になるかどうか、また国際収支の上にプラスになるかどうかという面を中心に判断をしたい、こう言っておる。さらにまたこういう面のほかにもう一つのものさしとして、この問題の措置いかんによる米国の反響いかんもまた考慮しなければいかんと言っている。私はこの答弁はごもっともでありまするが、しからば現実の日本のミシン業界をどう考えておるのか。産業の中で、戦後日本の軽工業、少くとも軽機械工業輸出におきますミシン工業の果してきた役割のいかに重大であり、日本の国の輸出の面における、また将来希望の持てる機械工業としてのミシン工業の認識が足らぬと思う。外国資本の導入によってさらにプラスできると考えるならば、それは間違いである。資本の移動は、あくまで高い利潤を追って動くことは御承知の通りであります。シンガーの資本が入ることは、より高き利潤を追って入ってくるのであります。そのことはすなわち日本の経済の産業の発達、国際収支の改善を考慮して資本が導入されるものではありません。資本が移動するものではありません。この見地から見まするとき、当然に結論は私は出てくると思う。当然に結論は出るはずのものを、形式的なるこういう標準によってさらに時日を遷延せんとするにすぎないものであるといわざるを得ないと思う。さらにまた一歩を譲って、米国の反響を心配する、関税の引き上げあるいはまた日本の輸出品に対する輸入の抑制等を心配をして、これらを彼此考量してどこにプラスが出るかということを考えなければならぬと言われるが、米国の反響は、この事実を万一拒否した場合に、どういう反響が出ると予想しておるのか、まずその反響の予想しておる事実を承わりたい。
[後略]