19-衆-大蔵委員会-73号 昭和29年09月28日
昭和二十九年九月二十八日(火曜日)午前十時五十四分開議
出席委員
委員長代理理事 内藤 友明君
理事 有田 二郎君 理事 黒金 泰美君
理事 久保田鶴松君 理事 井上 良二君
宇都宮徳馬君 大上 司君
大平 正芳君 小西 寅松君
島村 一郎君 高橋 等君
田渕 光一君 宮原幸三郎君
小川 豊明君 福田 繁芳君
春日 一幸君
委員外の出席者
大蔵政務次官 山本 米治君
大蔵事務官(銀行局長) 河野 通一君
大蔵事務官(為替局長) 東條 猛猪君
国税庁長官 平田敬一郎君
中小企業金融公庫理事 塙 金太君
専 門 員 椎木 文也君
専 門 員 黒田 久太君
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九月十三日
委員並木芳雄君辞任につき、その補欠として本名武君が議長の指名で委員に選任された。
同月十七日
委員苫米地英俊君辞任につき、その補欠として金光庸夫君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十七日
委員金光庸夫君辞任につき、その補欠として苫米地英俊君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十八日
委員三和精一君、坊秀男君、及び苫米地英俊君辞任につき、その補欠として小西寅松君、田渕光一君及び高橋等君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員高橋等君辞任につき、その補欠として苫米地英俊君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
税制に関する件
金融に関する件
国有財産の管理状況に関する件
委員派遣承認申請に関する件
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○内藤委員長代理 これより会議を開きます。
税制に関する件、金融に関する件、国有財産の管理状況に関する件の二件を一括議題として審査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。春日一幸君。
[中略]
○春日委員 われわれは休会中といえども特に重要なる議案について、お互いに万障繰合せてこの委員会を開いておるわけです。違い人によって北海道、九州の選挙区から、国家焦眉の事柄についてこの委員会へ参画しておる。しかもあなたは何回も出て来ぬということはまったくけしからぬ。大蔵省の局長の中であなた一人なんです。昨日なんかも、そのように出て来ないということであるならば、これは証人として喚問するのやむを得ざることになろう、こういうような最終的段階に至って遂に出席して来たというようなことで、そういうような人では、重要な外資関係の事柄をあなたに信託をして行くということこついてわれわれははなはだ不安にたえないわけである。今後はひとつ必ず本委員会に出て、政府の方針について十分本委員会と連絡をとって、国会の権威をそこなわないように、のみならずわれわれの職責を遂行する上において支障を来すようなことのないように善処されることを強く要望いたしておきます。
それでは質問をいたしますが、本日の日本経済新聞によりますと、外資制限について米国から抗議が出されているということがいわれているのでありますが、一体先般来のシンガー・ミシンとパイン・ミシンとの提携、あるいはジョンス・マンビルと小野田セメントのフレキシ・ボードについての提携、こういうようなことについていろいろと懸案があなたの手元に残されており、さらにこれらを中心として、新聞の報ずるところによれば、事件がすでに八十件に達しているとのことでございますが、一体こういう事柄についてアメリカ政府からどういう抗議が出されているのであるか。その抗議に対する政府の見解はどういうものであるか、この点をひとつ明らかに願いたい。
○東條説明員 私が承知いたしております限りにおきましては、正式の抗議とか、あるいはそういう正式のものではないと思っております。日米石綿の問題でございますとか、あるいはシンガー・ミシンの問題等につきまして、政府部内でもいろいろと検討いたしているわけでありますが、これらの案件につきまして非公式に政府の考え方を照会したり、あるいはアメリカの業界の希望を取次いで日本側のこれに関する見解を求めるというような程度のものでございまして、シンガー・ミシンについて、こうであって、これはけしからぬではないか、あるいは日米石綿の問題について、こういう点について抗議する、さような性質のものでないと見ております。
それからけさの日経新聞に未処理案件八十件という記事が出ておりましたが、これも私の記憶する限りにおいては、さようなたくさんの件数には上つておりません。御承知のように、日本の技術が相当遅れておりますので、技術援助の提携をしたいという申請は実はあとからあとから出て参りますので、相当処理はいたしておるつもりでございまするが、未処理案件はおそらく三十件ないし四十件程度現在でもあろうと思いますが、決して日本と米国との間の懸案と申しますか、相当技術的にむずかしい問題のある案件が、さようにたくさん現在未処理になつてあるという状況ではございません。
○春日委員 米国資本並びに技術と日本のそれそぞれの工業との提携の問題が、さまざまな形でもつてこの外資法に基く申請が政府に出されておるということは、われわれも承知をいたしておるのでございますが、このことについて私どもの申し上げたいことは、いずれにしても、あるいは外国の高度の技術を導入しなければならないものがあるかもしれないけれども、その必要がありとするならば、そういうような方法を講ずることを考えると同時に、なおその未熟な日本国内産業をすみやかに国際水準に高めることのための国内的な措置ということが、独自の立場において講ぜられるということも第一義的なものであろうと考えるのでございます。具体的に申しますならば、たとえばシンガー・ミシンが日本へ進出すれば、日本の国内のミシン工業がこれによつて非常な衝撃を受けて、そうしてあるいは関係労働者四十数万の者が路頭に迷う場合もあるということが非常に強調されております。さらにはまたフレキシ・ボードをめぐつて、同様の衝撃が国内の同種産業に対して与えられようとしている。さらに先般は明治製パンとアメリカ資本との提携によつて、日本の製パン業が非常な衝撃を受けておるのでございます。こういうような方式によつて次々とアメリカ資本の日本進出ということが考えられますならば、これは本日この日経が報道いたしております通り、テレビジョンにおいても、あるいは電気冷蔵庫においても、電気関係の諸製品におきまして、その他自動車関係産業等においても、次々とそういう申請が出されて、結局アメリカの大きなメカニズムによつて、日本産業そのものがあるいは大きく損壊するという場合も考えられるわけでございまして、それだけに、国内関係の企業家並びに関係労働者がこれに対してこぞつて反対をいたしておることは、これは局長においてもよく御認識を願つておることであろうと思うのでございます。ところがこのフレキシ・ポードの問題といい、シンガー・ミシンの問題といい、そういう申請があなたの方に出され、しかも反対の陳情があまねく尽されておるにもかかわらず、三箇月も五箇月もこのことが長く懸案になつて本日に至つておるわけでございますが、従つて次々と相次いで同様規模による申請が出されて来る。そうしてただいまの局長の答弁によるがごとくに、すでに三十件、四十件というような懸案をここに堆積するという形になつて参るのでございます。従いまして私どもは、経済の自立ということは何といつてもわれわれが独立を完成する前提条件としてこのことを達成しなければならないのでありまするから、われわれこの経済をほんとうに日本独自の形においてまず自立せしめることのために、政治施策は集中されなければならぬ。すなわち外資の導入によつてあるいはそういうような目的が達せられたとしても、その結果は植民地経済に堕し去るという心配が多分にあるというので、これは関係産業の企業家や労働者もこのことを指摘しておりますし、なお本委員会においても、さらにはまた通産委員会においても、同様の趣旨が強調されているのでございます。そこで私は、こういうような問題は早期に解決をして、そうしてあとから次々と申請されている事柄に対して、大体の一つの規格と申しましようか、めどをつけてやる必要があると思う。許されるのか許されないのかわからないという形で政府が荏苒日を過しておりますので、あるいは許されるかもしれないという希望を持つところのそれぞれの企業者たちが、同様の規模と構想によつてあなたの方へ申請をし、これがすでに今日三十件、四十件というのであるが、さらにこの問題が等閑に付せられますならば、これは日本経済が指摘するがごとくに、やがては八十件に達し百件に達し、そうして収拾すべからざる混乱が起るということも考えられないことはないと思うのであります。あなたは今につこり笑われたけれども、笑うべき筋合のものではない。これはあなたが非常に困つてしまう問題であつて、あなた自体か困つてしまうということは、日本国内の企業者たちが全体的に困つてしまうという形になるのであつて、これを千期診断と申しましようか、そういうような申請が行われたときに、早期にての結論を下すことによつて、あとに祝く人々に対する一つのめどを示してやるということは、これはまさしく政治の要諦でなければならないと思うのであります。本日までこの問題が何ら両論を出さないで、それぞれ世上に、多くの疑惑とあやまてる風評と、いろいろの揣摩臆測を生ぜしめている責任たるや、実にあなたがこの問題を数箇月間うやむやに捨てていることに原因することが大きいと思うのでありますが、一体どうして数箇月間もこの問題に結論が下し得ないのであるか、あるいはまたこれは最近においてもうすでに結論が出し得る段階に立ち至つておるのであるか、あるいは当分何ともかんとも手のつけようがない状態にあるのであるか、この点について局長の御答弁を願いたいと思う。
○東條説明員 外資法に基く申請がございました場合には、私どもといたしましては、外資法の法律の条文でいわゆる認可の基準が定められているわけでございますので、その具体的な条件が認可の基準に該当するかどうかということのみによりまして、その許否が決定されるのでございます。申し上げるまでもないことでございますが、直接または間接に国際収支の改善こ寄与するかどうか、あるいは直接または間接に重要産業または公益事業の発達に寄与するかどうかという、外資法の第八条で決定になりましたこの目安に照しましてすべての案件を処理いたしているわけでございます。何分にも日本の技術が非常に広い分野にわたりまして遅れておりますので、毎回の外資審議会はほとんど十件に近い——もちろんその日によりまして案件の多寡はございますが、数件ないし十件に近い案件を処理いたしているわけでございますが、なおかつそういう技術水準の遅れておりますのが各方面にわたつておりまして、新しい申請あとからあとから出て参るということで、やむを得ず三十件ないし四十件にわたる申請が常時私どもの手元にあるという実情に相なつておるわけであります。できるだけこの事務の処理を急ぎまして、この法律の条文に合致しているかどうか、そういう基準に照しまして、外資審議会の審議に基きまして許否の決定を急いでおる次第でございます。従いましてこのシンガーの問題にいたしましても、あるいはその他の案件にいたしましても、判断の目安は、直接または間接に国際収支の改善に寄与するかどうか、あるいは重要産業または公益事業の発達に寄与するかどうかということに関する判断のわかれ目が、結局この具体的な案件の許否の基準になるわけであります。そこで私どもといたしましては、この二つの目安を単に政府の部内だけでなくて、広く民間の委員も入つておられますところの外資審議会で諮つて、その外資審議会の審議の結果を尊重いたしまして、政府としての意思決定をいたしたい、かような慎重な手続をとつておる次第でございます。日米石綿の問題につきましては、現在の申請では、まだこの二つのいずれかの条項に合致しているかどうかというはつきりした目安が立ちにくいということで、今日までまだ最終的な結論を出すに至つておらない次第であります。シンガーの方につきましては、現在出ておりまする申請の形では、この第八条の基準に合致しているかどうかという判断の難易は、日米石綿の方に比べますると容易ではなかろうか、かように考えております。しかし先ほども申し上げておりまするように、われわれといたしましては、政府部内の意見だけでなく、十分に審議会でも議を尽していただきまして、その結論に従いたい、かように考えております。そこで日米石綿の問題に比べますればこのシンガーの提携の方は、審議会としても結論も早く出ましようし、また政府としての意思決定も比較的早期にできるであろうというふうに考えておる次第でございまするが、現在のところでは、まだこの許否いずれにも決したということを申し上げる段階には至つておらない次第でございます。
[後略]