19-衆-予算委員会第二分科会-3号 昭和29年02月27日
昭和二十九年二月二十七日(土曜日)午前十時四十九分開議
出席分科員
主査 庄司 一郎君
倉石 忠雄君 原 健三郎君
森 幸太郎君 八木 一郎君
長谷川 保君 山花 秀雄君
堤 ツルヨ君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 草葉 隆圓君
労 働 大 臣 小坂善太郎君
出席政府委員
厚 生 技 官(公衆衛生局環境衛生部長) 楠本 正康君
分科員外の出席者
専 門 員 小林幾次郎君
—————————————
本日の会議に付した事件
昭和二十九年度一般会計予算中文部省、厚生省及び労働省所管
昭和二十九年度特別会計予算中文部省、厚生省及び労働省所管
—————————————
○森(幸)主査代理 ではきのうに引続き、予算委員会第二分科会を開会いたします。
昭和二十九年度一般会計予算中、文部省、厚生省及び労働省所管、並びに昭和二十九年度特別会計予算中、厚生省及び労働省所管を一括して議題といたします。きのうまでに各省所管についての大体の質疑を終了したわけでありますが、なお若干の質疑が保留になつておりますので順次これを許します。庄司一郎君。
○庄司委員 厚生省の特に環境衛生部門における当局に、きわめてこまかい点をお伺い申し上げ、もつて国民衛生保健の完璧を期したいと思うのであります。
まず第一にお伺いいたしたいのは、昭和二十九年度予算の中には水道施設費としてたしか七千五百万円ほどを御要求になつておるようであります。この項目の予算は、前年度においては一億三千三百余万円であつたと思います。本年は緊縮予算の関係といいましようか、たたりといいましようか、七千五百万円ほどにこれが減らされておる。これは一体どういうわけであるか。
それから簡易水道関係、これはおもに市町村のうちでもある一定の部落であるとか、特定の部落であるとか、簡易水道でございますからある小地域に架設される簡易水道関係が多いと思うのでありますが、その簡易水道整備費補助は六億四千万円でございます。かようなものが計上されておるようでございまするが、上水道並びに簡易水道ともにわが国民の保健衛生のためには、あくまでも拡充整備して行かなければならぬことは言うまでもございません。厚生省当局においても環境衛生の立場から、むろんその御方針であるとは思いまするが、さてお尋ねいたしたい結論は、以上の水道予算をもつて二十九年度は上水道において、あるいは簡易水道関係において、全国市町村等において何箇所、あるいは何十箇所ほど御計画をなされ、あるいは補助の対象となる市町村があるかというようなことをまず最初にお伺いしたいのであります。
[中略]
○庄司委員 そこでさらにお伺いしたいことは、全国市町村等に、厚生省はかなり長い間、また今後将来とも、その完璧を期すべく、補助政策をとられ、あるいは起債のわくを与えて、水道あるいは簡易水道の施行を助成されることはまことにけつこうでありまするが、この施行の結果において、おのおのの市町村がその好むところにより、あるいは日本鋼管会社の鋼管を給水パイプとして用いるところもある、あるいはイタリア式のエタニット・パイプを用いるところもあり、あるいは従来の鉄管を用いられる町村もある、あるいはまた秩父セメント関係のパイプを用いられるところもあり、おのおのそれには特色がございましよう。また長所もございましよう。これらについて私は、どの会社のメーカーの製品が最も理想的な耐久力を持つておるか、また環境衛生の点から見て、その場合には腐蝕せざるところの特質を持つておる、従つて耐久力を持つておるというような意味から、あえて厚生省がどの会社の製品を特に推薦されるとか推奨されるとかいうようなことをお願いするのでもなければ、要望するのでもない。ただどの会社の製品であろうと、当該市町村が多大の金をかけ、あるいは起債のわくをもらい、国家の補助を受けてでき上つた水道のパイプそのものが、百年も二百年も長い将来きわめて安全なる状態にあつて、水道の所期の目的を達成させることができ得るような処置に御指導だけは願わなければならないのである、こういう観点から——特に本員は若い時代直接水道関係の工事に従事した経歴もあります。水道関係についてはわが国最高の権威者である中島工学博士の指導のもとに、微力ながら多少の予備知識を持つておる者でありますが、以上の観点から、何も厚生省をして特殊なる会社の特殊な製品の御選定と御推薦というようなことは、もちろん弊害が伴うのであるから、そういうことを強制するのじやない。ただ要は施工後においてはきわめて安全なる装置であつて、長い将来その鉄管なりパイプなりが、腐蝕して、腐蝕の部分に穴が明き、あるいはガス爆発をしてひるが入る、みみずが入る、その他あらゆる無数の徽菌が入つて、かえつてこの腐蝕したる水道の敷設町村においてチフス患者が非常にふえたというような実例があるのであります。そこで私はこういう観点から、昨年の十一月の七日厚生委員会に臨時に委員を願いまして、特に厚生省は御質問を申し上げ、なかんずく直接あなたよりいろいろ御答弁をいただいておつたのでありまするが、その御答弁の中に、まだ本委員と厚生省の間に未解決の問題がございます。その未解決の問題は、給水パイプ管が爆発して多大の損害を市町村等が受けた、そのパイプ——これは幸か不幸か秩父セメトン製造のパイプでございます。それらに対して厳重なる警告を与えられたかどうか、つまり工業標準規格というものが五箇条かに相なつておることも御承知の通りであります。その規格に合わないものに国家が補助を与え、工事を施行させるということは危険である。そこでこのパイプの中には雑繊維が混入していないもの——これはより完全なるものを推奨さるることがきわめて適当でございまするが、石綿とセメント、これ以外の雑物、特に雑繊維が混入された場合には、その雑繊維から腐蝕が出て参りまして、パイプに穴が明き爆発をする、それから黴菌が入る、みみずが入る、あるいはひるが入る。そういう衛生環境上まことに望ましからざる状態にあるのでありますが、前回の質問において、さようなメーカーに対しては相当御注意あるいは御警告があるものと考えておりましたが、その後どういう対策をとられたか、また厚生省がパイプの製品に対して厳重なる御検査があつてしかるべきものと考えて質問をいたしておつたのであるが、その後検査の制度を設けられて御励行なさつておるかどうかということを、最初一点お伺いしたいのであります。
○楠本政府委員 ただいま御指摘のように、最近エタニット・パイブと申しましようか、石綿セメント・パイブがかなり普及をして参りました。これらは金額の安い点等から当然のことと存じますが、その結果、私どもも、従来までしばしばこれらの石綿セメント・パイプによる工事の結果いろいろな事故が起つておるということを承知をいたしております。しかしながら元来この鉄管あるいは石綿セメント・パイプ等を比較いたしますと、お互いに一長一短がございまして、どちらが優秀であるということもなかなか言えぬのであります。そこで私どもといたしましては、特に簡易水道等の場合には、むしろ場合によつては石綿セメント・パイプで十分である、かように考えておるわけであります、しかしながら今も申しますようにいろいろと工事の結果事故が起る場合も承知をいたしております。ところがこれらの事故はもちろんいろいろなところに原因もありましようが、一つにはその設計方式並びに工事の方法によつて大分違つて参るのであります。つまり工事の方法が非常にむずかしいというところに一つの問題があります。さような点から考えまして、目下これらの原因につきまして十分に調査をし、その現状を把握いたしまして、今後できるだけ工事設計等の指導をいたしたい、かように考えて目下全国的にわたつてその結果について調査をいたしております。なお石綿セメント・パイブに限らず、すべて水道管は水道協会が個々につきまして試験をいたしておりまして、必ずこの試験に合格したもののみを各町村が使うように私どもは指導をいたしております。従来までほとんどすべての場合、この指導はかなり徹底をいたしまして、無検査の品物は使われておらぬ、不合格品は使われおらないというような現状のように承知をいたしております。
○庄司委員 ぜひ検査も励行され、全国水道協会の厳密なる検査を経たるものを、かような問題に関して比較的予備知識のございません町村等に、ひとつよく納得の行くようなお話もして、将来御指導をお願い申し上げたいと思うのであります。
時間の関係上、五、六問質問がございまするが、立て続けにひとつお伺いを申し上げますから、それぞれお答えを願つておきたいと思います。先ほど申し上げた昨年の第十七回国会厚生委員会において、上水道用の石綿セメント高圧管に対し御説明をいただいたのであるが、その後の調査により、国家の補助奨励の手前もあり、かつは国民の生存保健上に関係することきわめて甚大であると考えまするので、これは捨ておけない問題であるから、以下数項にわたつてお伺いをしてみたい。それにどうか誠意を持つて良心的な御説明を与えていただきたいと思うのであります。
ただいま私の受けておる情報によりまして、最近における上水道事故の一部を御参考に申し上げたい。これは厚生省においても情報をとられておることと思いまするが、喜ばしい情報でありません、悲しむべき情報であります。すなわち工事施行後において高圧管パイプの爆発関係は、長野県伊那郡高木村、これは昭和二十八年度の三百五十万円工事であります。同県の北佐久郡伍賀村、これは百三十万円工事、南佐久郡の上松町、これが三百五十万円、東筑摩郡の麻積町二百五十万円工事、これらはパイブの種類は全部秩父パイプであります。七十五ミリあるいは五十ミリあるいは七十五ミリ、七十五ミリ、かような関係になつておるが、全部工事施行直後において事故が発行して爆発をいたしておるのであります。香川県においては託間町、これは百五十ミリ、これも破裂であります。香川県田熊町、これは一千メートルの工事でありますが、秩父パイプ百ミリないし百五十ミリ、これも続発であります。福島県常磐炭鉱勿来鉱業所、これは百五十ミリ、約二千メートル、これも続発であります。福岡県刈田町、これが一千メートル、百五十ミリ、これも続発でございます。福岡市、これも百五十ミリ。熊本県の水俣市、これも秩父パイプの箇所だけが破裂しておるのであります。長崎市吉井町、これも続発であります。これはエタニット・パイプと称して秩父パイプを代納したのであります。なお本年一月二十八日、横浜市上水道管破裂四千二百件と翌日の新聞に発表されましたが、この事故は御調査になりましたか。かようなことを列挙してあえて申し上げるゆえんのものは、私ども国会議員も市町村の要請によつて、早くこの市に上水道を設けてもらいたい、国の補助をもらいたいと、この部落に簡易水道の要請があるから簡易水道を許可してもらいたい、それに伴う補助並びに起債のわくはなるべく多くもらいたい、これは政党政派のいかんを問わずどの党派の国会議員も、選挙区から頼まれますと、民意暢達の意味において請願陳情をしておることはいうまでもございません。けれども、その工事が一旦完成したあかつきにおいて、以上の実例において申し上げたように、間もなくその高圧パイプが破裂するのでありまして、これを修理補修しなければならない。しばらくの間は断水して給水が困難になるのであります。こういうような工事完成後における問題については、実は今まで各党派を問わず国会における質問になかつたから、これは国会議員として決して親切なゆえんでないと思つて私は御質問しておるのであります。ゆえに、先ほど申し上げたように、でき得るだけ耐久力を払つておるりつぱなパイプを市町村等が購入できるような御指導がほしい、こういうことから申し上げておるのであります。
そこで公衆衛生、環境衛生に関する件でございますが、上水道は公衆衛生に関することが第一と思われますが、そのパイプについて、イタリアでは今から二十六年前、西暦一九二七年バデユア医大のカサグランデ教授が、鉄管は、それから出る鉄分が黴菌の繁殖を助けることから、エタニット管と比較実験して、摂氏二十二度下でチフス菌は鉄管では瀞水中で三日ないし五日間、動水中で三日ないし四日間生存するが、エタニット管では、静水で四十八時間、動水ならそれより短かく、またコレラ菌は鉄管ですべての場合四十八時間以上生存するが、エタニツト管で、静水二十四時間、動水五時間で死滅すると発表し、上水道は少くとも夜間は滞水する時間が相当あるのですから、これは重要なことと思いますが、黴菌に対しかようなお考えはありませんか。かような点が重要とすると、エタニツト・パイプのような石綿セメント高圧管に対し、石綿に有機繊維を入れ、それが必ず腐るものである以上有害とは思いませんか。煙突、屋根ぶきスレートのごとき低圧品でさえ、京大堀尾教授の試験成績は不良としており、スレート業者中には絶対不可としている者も相当あるのですが、それでも同教授は五%までは製造技術によつては混入してもよいのではないかと言つているのですが、この疑問付のものを上水道用高圧管に適用するのは乱暴で、わずかに五%といつても重量比であるから、パルプのような有機繊維は石綿の約三分の一の重量だから、容積からいえばその三倍となつて、非常に多くなり、とうてい許しがたいものとなるが、そういうことは思いませんか。上水道用秩父パイプに入つておる有機繊維は肉眼でもはつきり見わけのつく黄色い斑点で現われており、セメント袋のくずのこま切れのようですが、その正体は何ですか。楠本説明員が明治二十八年十月七日第十一回国会衆議院厚生委員会でなされた説明に、管の製造に毛布を使うため、自然にその落毛が入るから、有機繊維の混入は不可避とありますが、毛布といつてもフエルトと通称するもので、二枚使つており、それが約三百六十ポンドでパイプを三百トンつくるととりかえるのでこれが全部使い果されてパイプの中に入るとしても、〇・〇五%にしか当らないし、実際には一〇%も減らない。それも毛布を洗いながら使うため大部分は流れ去るので、落毛がパイプの中に発見されたとか、落毛のために故障があつたとかいうことは、外国ではもちろん国内でも聞かないのです。そして昭和二十八年正月七日東京都立工業奨励館長橋本宇一氏がエタニツト・パイプの成績書に有機繊維を混入しないことを報告しているのですが、これは昭和二十八年十一月二日質問第四号で当委員から提出した秩父パイプの成績書と同時に出したもので、これでも落毛のないことがおわかりになることと思いますが、御高説はいかがですか。
楠本説明員は、東京都工業奨励館長橋本宇一氏の秩父バイブ成績書は昭和二十七年製のパイブについてで、昭和二十八年七月改正された改正規格のものでなく、その前の旧規格のものだから、規格違反にならないと説明されましたが、当委員の調べたところを申し上げましよう。戦時中からのことを申し上げると、昭和十八年日本石綿パイプ工業組合ができたころは、戦争もたけなわで物資は欠乏し、石綿の輸入がないため、有機繊維を入れてもしかたがないということになつて戦時規格ができたのです。そしてそれ以前は有機繊維は低圧管の入に許したのを、高圧管まで拡大されたのです。終戦となり昭和三十二年二月全国石綿スレート工業協同組合ができて、同年五月に第一回技術委員会が開催されまして、戦時規格を改正して、高圧管には有機繊維の混入を禁止する話が出て、同年六月に第二回、また七月に第三回が続会されまして、有機繊維混入禁止が、そこで決定し、業者から見本を出させ、内務省土木試験所において試験の結果合格したので、それが裏づけとなつて、昭和二十四年八月土木規格JES七二〇二号が最後的に決定されたのであります。その土木規格のJES七二〇二号が昭和二十五年十二月通産大臣によつて、日本工業規格水道用石綿セメント管JIS五三〇一号(一九五〇)として制定され、同年三月二日官報をもつてこれが公示されたのであります。これが楠本政府委員の言われる古い規格なのであります。石旧規格によるとバイブはセメント及び石綿を用いることとあるのであります。これは絶対であります。さらに石綿には品質良好なる精製品でなければならない、リファインされたものでなければならない。カナダ石綿規格等による四級の中位以上の品と、品質を限定しておるのであります。昭和二十八年七月四日改正の新規格のように、有機繊維の混入禁止条項がなければ何を入れてもさしつかえがないと解釈をされておるかどうか。
以上たいへんややこしいことでありまして、これは専門的な何かありませんと、何ら興味がないような問題でありますが、要するに石綿及び最も優秀なる良質なセメント以外のもの、特に雑繊維等は混入してはならない。混入するならば腐蝕をしてバイブの爆発が続出することは先ほど申し上げた通りであります。そこで一層検査を厳重にされる。かような上水道並びに簡易水道等、施工後において爆発するような、ただいま列挙申し上げたような事実の製品等に対しては、あるいはメーカー等に対しは、その会社の何たるを問わず、どんな会社でありましても、公正無私なる見地より厳重なるところの警告を与え、注意をされ、市町村の水道工事、長い将来の水道の利用等に、いわゆる町村財政にも被告を与えないように、水の供給を受けておる市民にも迷惑を与えないように、インチキのパイブを、比較的水道関係の専門的知識において無知なるところの、無知と言つてはなはだ失礼ですが、予備知識のありません町村等に売りつけさせないように、よほど厳重なるところの対策をとらなければならないと私は考えておるのであります、今まで私どもはただこの町村に水道を設けてもらいたい。この部落に簡易水道どうかと、そういうことばかり願つて参つたのでありますが、ただいま申し上げましたように、この石綿セメントの中にはかなりインチキな、ルーズな品物があります。最近においてただいま列挙いたしましたように、遺憾ながら被害町村が多々現われ参つておるのであります。ただいま申し上げた読売新聞の四千二百件、これは多くに蛇口のようでありますが、たとい蛇口でありましても、この秩父セメント製の管はそこに何らかの弱点があつたのではなかつたか。日本におけるただいまエタニット・パイプあるいはセメント・パイプをつくつておる甲乙丙丁どの会社にも私は何らかの縁故関係がありません。ただただこの水道の耐久力をして完璧ならしめたい。りつぱなパイプを市町村に供給させて、施工後において爆発あるいは腐敗等のないように、私は青年の時代に水道の仕事に直接体験を持つたものでありますがゆえに、いかに多くの黴菌がこの腐蝕した部分、破裂した部分より混入しておるか、ほんとうにみみず。ひるなどを見たら驚きますよ。どうかひとつこの点はただ単に一定の器材のわくを与える、六億何千万円の予算を来年は与えるのだという単純な考えでなく、水道の基本をなすところのこの導水パイブ等に関しては、厚生省におかれましては責任を持たれた上において、厳粛なる規格の監督といつては何ですが、検査並びに御指導を要望してやまない次第であります。どうかただいま申し上げた要点を、五、六箇所あるようでありますが、簡明にお答えいただきたい。
最後に、厚生大臣に、かような不良製品を出した会社は、遺憾ながら私の列挙によつては秩父セメントだけでございますが、その他にもあるかもしれません。あれはその情報によつてお伺いもし、お願い申し上げたい。私は一会社に何ら緑もございません。わが国の上水道、水道あるいは下水、農村においては二毛作を行うための土地改良、その水を供給するための上水管、これは農民に関係のある問題であります。ひとえにりつぱなインチキのない品物をつくつていただいて、供給していただきたいしそういう点の御配慮をお願いしたいという点について厚生大臣からこの後の対策について一言簡単に御答弁をいただきたいのであります。
○楠本政府委員 きわめて、専門的な御意見、御質問でございます。逐次順を追つてお答えさせていただきます。
最初にお話のございました各地の事故の頻発等につきましては、先ほども申し上げましたように、目下全国的に調査中でございます。従いましてこれらの調査の結果に基きまして、さらにその原因理由等を明らかにいたしまして、適当な対策を立てたいと考えております。
次に横浜市のパイプの事故でございますが、これは私どもの方でもさつそく調査をいたしまして、その結果たまたま本年一月二十七日から約一週問にわたりまして全市的に、約九千件に及ぶ破裂事故を起したのでありますが、これを調査いたしましたところ、その原因はすべて寒気が急激に襲つて来たための凍結事故でございます。その箇所等はすべて導水管ではなく、家庭引込みの給水管の破裂であつたのであります、しかもその九〇%は鉛管であつたように承知いたしております。しかしながらいずれにいたしましても、今後一層水道協会の行いまする試験の徹底をはかり、これを厳格に突施いたしまして、必ず町村に対しては検査に合格したものを使うように強力に指導いたす所存であります。
次にただいま専門的に細菌生存力の問題につきまして御意見があつたわけでありますが、ただいま御指摘の学説と申しましようか、この実験成績は実はいまだ私どもは承知いたしておりません。従つて万一かような事実があるといたしましても、少くとも世界の学界においていまだ承認される域には達していないのではなかろうか、かように考えております。なおこれらの点につきましては、私ども不勉強でありますので、今後学者等にもよく意見を聞きまして一層勉強を重ねたい、かように考えております。
次にお話にありました石綿セメント・パイプに有機質が混入する、これはもちろんある量以上に有機質が混入いたしております場合は、衛生上有害でありますことは申すまでもなく、一方水道の配水管としてもきわめて不適当なものであることは申すまでもございません。従いましてこれらの点はまつたく御指摘の通りと考えております。
次に同じく石綿セメント・パイプの中に入ります有機繊維の点につきまして、五%にも達するものはどうかというお話がございましたが、これらはもちろん不適当なものでございまして、とうてい許しがたいものでございます。従つてかようなものがかりにあつたとしますれば、それは当然検査の結果不合格品として処理されておるものと考えております。
次に秩父パイプにおきまして、御指摘の点は、肉眼でも見えるような雑物を混入しておつたというお話でございますが、私ども、この点につきましては、いまだ、確認をいたしておりません。そこでこの点につきまして至急調査をいたしまして、はたしてさようなことがあるか、しかもこれがどういう経路でできたものか、あるいは検査漏れか、あるいは検査がごまかされたか、さようなこまかい点について十分な調査をし、結論を得たいと考えております。従いまして御指摘のような混入物の正体がはたして何物であつたかということは、今ここでお答えするまでには至つておりません。しかしながらさような肉眼で見えるようなものがあつたとすれば、石綿セメント・パイプは日本標準規格においても、規格がきまつておるような関係もありますので、おそらく検査の結果不合格となつておるのではなかろうか、かように考えております。
次に先国会の厚生委員会におきまして私から、御指摘のように、これはフエルトを使つて製造をする過程において、どうしてもフェルトの一部がパイプに漏れ、そのために有機繊維が混入することはやむを得ぬということはなるほど確かに申し上げました。しかしながらこの意味は、きわめて微量の、化学分析上証明せられる、つまり顕微鏡的な存在である、さようなものはやむを得ないということを申し上げたのでありますが、その際言葉の足りなかつたために、ただいまお話のような誤解がもしあつたといたしますれば、それははなはだ遺憾でございます。私はもちろんこれはきわめて微量で、顕微鏡的には、あるいは化学分析上にはかようなものが証明せられることもあり得るということを申し上げたのであります。これははなはだ言葉が足りずに失礼をいたした、かように考えております。
次にこの標準規格につきまして最後にお話がございました。私も戦時中以来この石綿セメント・パイプの規格がいろいろかわつて参りましたいきさつ等をよく承知をいたしております。またその戦時中のものを新たにかえて、逐次りつぱな製品ができるような規格に進みつつある状況もよく知つております。その点につきましてはただいま先生の御指摘の通りでございます。ただこの昭和二十八年七月以前の旧日本標準規格におさましては、当然有機繊維を使用してはならないものとなつております。ただこれが規格上明記されておらなかつたのでありますが、規格に明記されていないからといつて、かようなものを混入していいとは決して解釈いたしておりませんので、かようなものがあればもちろん、規格品にはあるいは合格しておるかもしれませんが、実質的にはこれは不合格となる品物であります。その点も誤解のないようにお願いしたい、かように考えております。
なお最後に私どもは、今後経済的な事由からもあるいは簡易水道が逐次普及して行きます観点等から考えまして、この石綿セメント・パイプというようなものが今後一層普及して行くのであろうと考えております。従つてこれらの品質の向上につきましては今後とも十分意を用いまして、りつぱな品物が日本においても生産されるように努力をいたしたいと存じております。
なお現在の製品におきましても、アメリカ等の製品に比べますと確かに劣るところがございましてこれらの点は日本産業の見地から申しましてもはなはだ遺憾な点と考えております。なお具体的には今後水道協会の試験をさらに徹底するよう、協会を特に督励いたします。そしてかような少しでも品質の悪いものは不合格品になるような措置を強行いたしたいと考えております。一方町村に対しましては、今後とも必ず試験に合格した品物を使うように強く要望し、指導いたす方針でございます。さらに、もしも現在の石綿セメント・パイプに対しますところの標準規格がまだ不十分であるという点がありますれば、それらの点は今後研究をいたしましてこの規格を改正し、そして逐次りつぱな品物ができるように進めて参りたいと存じます。
なお最後に、私どもはただいま先生からお話のございましたように、決して町村に対しまして単に金をやつたり起債をつけたりして、水道を引けばそれで事終れりとは毛頭考えておりません。単に起債をつけたり補助をつけたりすることは一つの手段にすぎません。要はりつぱな水道が各家庭に引かれ、これによつて生活が改善され、環境衛生が改善され、そしてりつぱな国民生活ができることを念願といたしているのでございまして、かような点に関.しましては今後一層力を尽して進みたい所存でございます。
○草葉国務大臣 庄司さんの御意見まことにごもつともだと存じます。水道の行政と申しますか、問題は、環境衛生、公衆衛生の上から一つの大きな中心をなしますことは御意見の通りであります。現在わが国の全世帯のうち、水道を使用しておりますのはわずかに三五・七%程度である、井戸水を五三%程度あるいはわき水を五%程度、流れ水を四%以上も使つておるという現状でありますから、水道の普及とあわして簡易水道等の普及に政府は全力を尽しておる状態であります。しかし全力を尽すからといつて、決してこれに用います器具あるいはパイプその他をゆるがせにいたしましては、水質だけはりつぱになつてもお話のようなかえつて逆効果を来すおそれがありますので、この点に対しましては、ただいま部長からもお答え申し上げましたように、今後十分研究をし、かりに不十分なもの、あるいは不正当なものがありますればこれを使わないように十分検討いたしまして御期待に沿うようにいたしたいと存じております。なおこれらの器具その他は科学の進歩につれましてだんだんと改善され、進歩して参りますから、十分厚生省といたしましても研究調査を重ねて参りたいと存じております。
[後略]