10-参-経済安定委員会-3号 昭和25年12月16日
昭和二十五年十二月十六日(土曜日)午前十時四十八分開会
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本日の会議に付した事件
○日本経済の安定と復興に関する調査の件(貿易計画に関する件)
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○委員長(佐々木良作君) それじや委員会を開会いたします。
前回調査事件として貿易計画及びその実績について説明を役所のほうから受けまして、これに対する質疑を継続中であつたわけであります。その質疑の継続中に追加資料の要求がありまして、今日役所のほうから持つて来て頂いたわけです。従いまして今日の議題といたしましては、同様に調査事件を議題としまして、貿易の実績と計画、特に来年度を目当の貿易計画についての審議をしたいと考えます。
なおこの前の委員会で御要求がありましたので、役所関係の説明、質疑応答に答えて頂く外に、民間から実情に詳しい方を参考人としてお招きいたしまして、適宜御説明を聽いたり或いはこちらから質疑をしたりというふうに考えております。参考人としておいでを願いましたのは、日産協の乙幡近治君、同様に齋藤與四三君、それから日本鉄鋼連盟の岡野清彦君、重工業輸出振興会の松本尚茂君、それから加藤武夫君、倉重武久君であります。説明員の方につきましては必要なときに適宜御発言できるように一つ前以て委員会として了承しておきたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
[中略]
○委員長(佐々木良作君) 速記を始めて下さい。
それでは次に参考人としてお招きしてありました日産協の方にお願いいたしまして、業者の側に立つての最近の、特に輸入の隘路についての要望事項の概要の御説明を承わりたいと思います。
○参考人(乙幡近治君) それでは私から御説明申上げます。今日は、日産協の関係としましては、日産協の事務局の外に鉄鋼並びに機械関係の方もお見えになつておりまして、鉄鋼とか機械とかに関係した問題は、そのかたたちからくわしくお話があるかと思いますので、私の方からは先般参加の業界に照会しまして、物資輸入の隘路と、その打開策につきまして回答を頂きましたので、その回答を整理したものにつきまして簡單に、極く一般的な、共通的な点についてお話してみたいと思います。
御存じの通り昨年の秋にローガン構想による貿易方式がとられまして、当時は輸入先行のこのローガン方式も、全般的に買手市場のときでありましたので、非常にスムースに出発するかに見えたのでありますが、その後国際情勢がいろいろ変りまして、特に事変後各国の戰略物資の買いあさり等が盛んになりましたために、買手市場が売手市場へと転化して参りました。それにつれまして価格も非常に騰貴するとか、或いは今まで自由に輸出さしていたものを、或る品目については許可制をとるとか、それから又船舶が非常に不足して来るとか、そういうような事情が次々と出て参りまして、ものによつてはすでに契約をしていたものもキヤンセルとなるとか、或いはキヤンセルの危險が目前に追つているとか、又は私積の予定が延期されるとか、そういうように非常に事情が変化をして参りまして、必ずしも最初予期していたように輸入が円滑に行かないというような事情が、最近非常に現われて参つたわけであります。
それから又金融の問題につきましては去る九月十八日附のLC分から日銀によるユーザンスが実施されまして、当時輸入金融の逼迫を唱えられていたものが幾分か緩和を見たのでありますが、なお且つ業種或いは商品によりましては、三カ月のユーザンスでは期間が足りないとか、或いは又輸入資金はいいが輸入したあとメーカー側で引取る場合の引取資金が不足するとか、そういうような事情が非常に強く現われて参りましたので、日産協といたしましては、この際各業種の方面から実情を聽取いたしまして、それをまとめて官庁側、或いは関係方面又は国会方面にも一つ要望して、その輸入の促進について御協力をお願いしようというわけで今回の調査をいたしたものであります。
〔委員長退席、理事永井純一郎君委員長席に着く〕
そこで先月末その調査をとりまとめたのでありますが、この調査は実はその後に至りまして中共地域向の輸出禁止等が出ましたので、非常に事情が変つておるとは思いますが、私どものやりましたこの調査、それ以前の調査に属しますので、或いは若干現代とは事情が異なつた点もあるかと思いますが、それらの点につきましては先程申上げました通り、鉄鋼並びに機械の実際に業界にタツチしておられる方から修正なり訂正なりの御意見があると思いますので、私どものほうとしましては大体調査に現われたところにつきまして若干見解を述べてみたいと思います。
この調査に現われたところを実は事情が一つ一つみな違つておりますので、一つ一つ本当はこれについて御説明いたしたいのでありますが、時間の都合もありますから極く簡單に要約した点につきまして申上げて、なお御質疑等ありましたらそれについて直接調査を担当した職員も参つておりますから御回答申上げたいと思います。
この調査に現われました業界側の意向を幾つかに要約して申上げますと、先ず第一番目といたしましては、輸入外貨資金の割当をできるだけ適正化して貰いたいというこういう要望であります。それは油脂関係の大豆とか、或いは塩の業界、或いはソーダの業界関係の原塩、それから皮革関係の原皮、それから製紙関係の「松やに」等について特に要望が出て参つておるのでありますが、供給力の大きい地域とか、或いは供給状況の安定した地域とか、或いは優良品の産地等に対して、従来必ずしも外貨資金が適切に割当てられておらないので、そういう地域に対して今後できるだけ重点的に割当てるようにして頂きたいと、こういう要望であります。
< 略>
それから六番目の問題でございますが、最初申上げましたような事情によりまして、最近非常に船舶が不足しているし、それから船賃が非常に高くなつて来ておりますので、できるだけ日本船による輸入物資の輸送を急速に実現するようにして欲しい、こういう要望でございまして、これは各業界から皆さんこぞつての要望でございます。 それから七番目といたしましては、相手国で輸出制限を行なつているものについてでございますが、これは特にアメリカ関係のものが多いのでありますが、品質の点その他からいたしまして、なかなか他に換え難いものもあるのでありますから、これらにつきましては強力な外交折衝をして頂きまして、できるだけ対日供給の実現を期するようにして頂きたい、こういう要望でございます。只今の点につきましては必ずしもアメリカばかりではありませんが、そういう要望に関係しております業界といたしましては皮革関係の原皮、特にキツプスキン、カーフスキン等、それからセルロイド関係のコツトン・リンター、化学纎維関係の同じくコツト・ンリンター、それからの石綿の業界でありますが、それから電気通信機、電気機械関係のニツケル、それから電線関係のカーボン・ブラツク、その他大きなものといたしまして紡績関係の綿花等がそれの主なものであります。
次に八番目といたしまして、輸入物資の引取資金の問題でありますが、七—九月以降外貨予算も拡大されましたし、又AAシステム等の実施によりまして最近の輸入の増大した関係の業界も多いのでありますが、二カ月のこの日銀ユーザンスでは必ずしも金融が十分でない点もありますので、ものによりましてはこのユーザンスの期間の例外措置も現在あるようでありますが、その他若干のものにつきまして尚ユーザンス期間の延長を適用して貰いたいと、こういう要望と、更に輸入したものの引取資金の円滑化を図つて頂きたい、このためには工業手形の再割を再現して頂きたいと、こういう要望であります。この輸入円金融の円滑化の問題につきましては、各業界とも非常に強く要望しておるところでありまして、ユーザンス期限の延長につきましては、例えば鉄鋼部門の鉄鋼の原材料についての要望、それから麻関係のベルギーから輸入するところの亜麻について、それから印度、パキスタンから輸入するところのジユート、それから羊毛の業界、それから石油、皮革等の業界から要望が参つておるのであります。輸入物資引取用のために工業手形の再割を復活して欲しい。こういう強い要望を持つております業界といたしましてはゴム、それから油脂、自動車、皮革、鉄鋼、石綿関係等の業界が強く要望いたしておるのであります。
それから九番目といたしましては、最近の国際情勢から見ましてできるだけ今後の生産を円滑にするためには、在庫量を通常在庫以上に保有しなければ生産に非常に不安があるのでありますが、そのためには正常在庫以上の在庫を持つためには普通の金融ベースに乗りませんので、これについて何らかの金融措置、或いはこれにつきましては政府で買上保有する制度をとつて貰いたいとこういう要望でありまして、正常在庫以上の数量を保有する場合に特別融資を考えて貰いたいという要望といたしましては鉄鋼、燐酸肥料、石綿等がございます。それから又場合によつて政府の買上保有制度をとつて貰いたいという希望につきましては同じく鉄鋼、皮革、ゴム等の業界から要望が参つておるのであります。
大体私共の方で今回調査いたしました物資輸入の隘路及びその打開策の要望の点につきまして、極く簡單に共通点につきまして申上げますと、大体以上のようになるかと思うのでありますが、尚それぞれの業界、或いは商品につきましてそれ以外の要望も多々あるのでありますが、それらの点につきましては先般お手許までこの調査書を差上げてありますので、それらを御覽の上十分その要望の打開につきまして御力協を願えれば甚だ仕合せと存ずる次第であります。
尚最近の中国向の輸出禁止問題でありますが、これにつきましては後ほど鉄鋼或いは機械の方面から詳しくいろいろとその影響するところなり、或いはそれについての要望なりが述べられるかと思うのでありますが、簡單に申上げますと、先ずその輸出禁止による影響といたしましては、先程来述べました私共の方の要望調査の中でも、実は中共向のこの輸出の禁止品目について戰略物資の範囲を狹めて欲しいという逆な要望もあつたときでございますし、今度のこの輸出禁止の措置は非常に大きな影響があるようでございます。特に輸出することになつておりました商品のキヤンセルによる損害等につきましては輸出信用保險による補償もございますが、業者の中には必ずしも保險契約をしておらないものもあるかと思いますし、又この保險金額は大体輸出契約額の八〇%以下になつておるかとも思いますし、又仮にそれが支拂われるといたしましても支拂がスムースに行くかどうか。そういう点につきましても多大な不安を持つておりますので、そういう点につきまして打開のためにできるだけ各万面の御盡力をお願いしたいと思う次第でありますし、又ものによりましてはこのキヤンセルのになつた商品を必ずしも直ぐ、最近売手市場とは言うもののいろいろの規格の点や何かから他に振替えがたいものもあるかと存ずるのでありまして、そういう点につきましては今後とも十分愼重で迅速な各方面の御対策をお願いしたいと存ずるのであります。
又この輸出禁止に伴うところの中共からの報復的な輸出禁止でありますが、この点につきましては、目下のところではそういう徴候も現われてないように聞いておりますが、或いはもうすでに現われているところがあるかも知れんとは思いますけれども、今のところ私の聞いた範囲では、報復的な輸出禁止はとられていないようでありますが、早晩これは現われると考えるほうが或いは至当かと思うのでありますが、業界といたしましては、中共地域から輸入するところの重要な物資が多多あるものでございますから、最近の傾向といたしまして、現金決済によつてもできるだけそれらの物資を買付けたい、こういう要望が非常に強かつた際でありますので、今度の輸出禁止によつて報復的な先方からの輸出禁止が行われるとしましたならば、その影響するところは極めて甚大ではないかと考える次第であります。勿論これにつきましては、政府側においても地域の切換え等について十分配慮をいたしておるように新聞紙上等でも拜見しておるのでありますが、必ずしも先方に輸出の余力があるかどうか、その点も疑問でありますし、又輸入する際の輸送力の点につきましても、非常に問題があると思いますし、仮にそれらがよいといたしましても価格の点等につきまして、大きな問題もものによつては出て来るのではないかと思うのであります。いずれ後ほど詳しくお話が出るかと思いますが、例えば強粘結炭のごときにいたしましても、現在開欒炭はCIF十二ドルぐらいで入つて来るようにも聞いておりますが、これがアメリカものに変りますとCIFで二十三ドル或いはそれ以上、ものによりまして二十三ドル七十セントぐらいまで行くのではないかと見られておるようでありますが、十二ドルの開欒炭は米炭の品位に換算しますと十七八ドルぐらいのものかと思いますので、二十三ドル七十セントのアメリカものに変えるということは極めて価格の点からいたしましても、業界に與える影響は深刻ではないかと存ずる次第であります。
このような次第でありますので、この問題につきましては、今後とも一応の禁止期間を一カ月としてあるのでありますが、その後の措置等につきましては、愼重な各方面の御協力をお願いしたいと存ずる次第であります。
以上極めて雑駁でありましたが、私からの御説明はこれで終らして頂きたいと思います。
○理事(永井純一郎君) それでは鉄鋼の関係のかたと機械の関係のかたの御説明を願います。速記をやめて下さい。
午前十一時三十五分速記中止
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午後二時二十三分速記開始
[後略]