6-参-本会議-4号 昭和24年10月31日
昭和二十四年十月三十一日(月曜日)午時十時三十五分開議
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議事日程 第四号 昭和二十四年十月三十一日 午前十時開議
第一 両院法規委員の選挙
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[前略]
○田中利勝君 本員はこの際、貿易政策及び鉱業問題について緊急質問をすることの動議を提出いたします。
[中略]
○田中利勝君 私は最近の輸出不振の窮状打開に関連いたしまして、政府の貿易対策について質問いたしたいのであります。日本経済の自立化を窮極の目的とする経済九原則の実施は、インフレを抑止し、企業の合理化を行い、生産を増大すると共に、輸出の振興を図ることをその最大の目的としていたことは明らかであります。これがために、この四月に三百六十円の單一為替レートの設定を見るに至つたのであります。然るに本年に入りまするや、アメリカを初めとして世界的不況に際会し、遂にイギリスも三〇%のポンドの切下を断行し、これに呼応してインドその他の各国も又同じく三〇%内外の為替レートの切下を行なつたのであります。即ち政府が当初予想していた状況と今日当面している事態との間には、甚だしい変化と相違が生じたということを先ず第一に指摘して置かなければならないのであります。最近におきましては、輸出の不振は著しく、その滯貨は綿糸綿布だけを見ましても、五百億円と言われておるのであります。その他総計いたしますならば、実に一千億円の巨額に達すると見られているのであります。又ポンド切下直後の九月下旬においては、輸出契約高は五百九十万ドルに減退しております。そのために安本の見通しといたしましても、本年度の輸出は大体において四億五千万ドルに停滯するのではないかと予想されているのであります。かように我が国経済の再建の根幹をなすべき輸出貿易は誠に憂慮すべき事態に置かれているのであります。他方において現内閣は、輸出補助金を打切ると共に価格差補給金の削減乃至撤廃を行い、更に中小企業は著しい金詰りの現象を呈しているのであります。これがために企業の合理化の強行によるコストの引下げは、労働者の首切り、賃金の切下げ、或いは労働強化を招きつつあるのであります。かような輸出の不振、生産の減退、失業の増大は、一般の国民の耐乏生活を過重しているのであります。今や労働不安或いは社会不安の樣相を呈するに至つたのであります。このことは実に吉田内閣の財政金融政策の破綻を暴露したものと言わざるを得ないのであります。以上の意味におきまして、今日の経済的不況を打開する上からして、如何にして輸出を増進するか、從つて又そのために如何なる輸出振興対策を用意するかということは極めて重大であることは明らかであります。かような立場からいたしまして、私は特に次の諸点について政府の所見をお伺いしたいのであります。
< 略>
次に簡單に一言、電気銅の価格差補給金の打切りに伴うところの政府の鉱業政策について質問いたしたいのであります。
銅、鉛、亜鉛等の非鉄金属鉱業は、敗戰後の極めて困難な状態に置かれていたにも拘わらず、鉱山労働者の再建の意欲によつて、その生産は漸次回復されて参つたのであります。鉛、亜鉛については、すでに四月以降、価格差補給金が打切られておりますが、更に銅については今回補給金が廃止されるに至つたのであります。非鉄金属鉱業は、すでに現内閣の誤まつたるところの財政金融政策によつて、国内の有効需要の減退と滯貨の激増のために苦境に立つているのであります。これに加えて補給金の打切りの打撃は、大半の鉱山をして操業不可能の状態に陷れ、その結果、三万五千人の失業者が予想せられているのであります。政府は補給金の廃止を無準備に強制し、その善後策を何ら講じないことは、折角立つ直りつつある産業に対して不当な打撃を與えて、日本経済の再建を却つて妨げている結果を來たしていると言わなければならないのであります。成る程、銅の滯貨はすでに一万六千トンに達しておりますが、今後一年間以内において、国鉄、電力等の大口需要を見越すならば、やがて多くの米銅を輸入せざるを得ない状態になつて來ると思うのであります。從いまして国民経済の全体を考慮いたしますならば、鉱山産出銅についてのみ消費されないものだけについて政府が合理的な価格を以て一定数量を買上げて、以て崩壞の危機にあるこの金属鉱山の生産を最低限度に維持しなければならないと考えるのであります。この点について政府のお考えを承わりたいのであります。更に政府は海陸運賃の改訂につき、貨物運賃の引上げを考えておられますが、このことが実現されますならば、現在日本の金属鉱山の精錬所を持たない大部分の鉱山は、補給金は打切られ、更に貨物運賃が九割引上げられるということが伝えられておるときにおきまして、いわゆる精錬所に送るところの売鉱鉱山の鉱石は大貨物となつて厖大な運賃を支拂わなければならないということになりますから、日本のいわゆる地下資源金属鉱山は大半を挙げて崩潰せざるを得ない状態に直面しておるのでありますが、この貨物運賃に対して政府は割引制度を考えておるかどうかお伺いしたいのであります。
更に、鉱山の合理化を促進し、生産コストを引上げることは当然でありますが、もう一つの大きな要素をなしておるところの深鉱費或いは試堀費に対して政府は助成金を増額すべきであると思うのであります。而もその財源は、現在我が国内に豊富な資源があるにも拘わらず、硫化鉱の輸入計画を立てておるように聞いております。この輸入補助金を深鉱費に振向けるならば、その実現は決して困難でないと思うのであります。銅の一部の政府買上げと共に、深鉱費の増額について稻垣通産大臣の御意思をお伺いしたいのであります。同時に今日当面する非鉄金属鉱山の窮状を打開する上に、政府の鉱業政策について御所見を承わりたいのであります。
〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
[中略]
○国務大臣(稻垣平太郎君) (続)中日貿易の見通しの問題でありますが、これは私この前この壇上でも申上げたと思うのでありますが、御承知のように中日貿易と申しましても、我々は目下管理下にありまするので、從つて我々の政策は司令部のポリシイと軌を同じくするものでなければならないと、かように我々は考えておるのであります。從つて只今といたしましては、実際に中日貿易というものが直接には取引が行われていないということは事実であります。ただ実際上におきましては、香港のバイヤー或いはその他朝鮮のバイヤーを通じまして、取引が実際には行われておる。一部には取引が行われておる。そこで今後できるだけ対中国との取引につきましては、何らかの方法によりまして、これが連繋を図つて行きたいと、かように考えておるのであります。從來凡そ日本の輸出入の三割を占めておりました対中国貿易でありますから、我々はこれを全然ネグレクトしているものではないということを申上げて置きたいのであります。
次に鉱業問題についてお答え申上げたいと存じます。第一には銅の補給金打切についての問題でありますが、御承知のように、これはもう田中さんの御專門で非常によく御承知と思うのでありますが、今日大体五千トン程度の月産があるかと思うのでありますが、そのうちの半額は、半額とは申せませんが、大体二千トンくらいはこの頃は余つておる、或いは千五百トン程度は余つておるとの情勢にあることを承知いたしております。併しながら恐らく從來の日本の銅の需要状態から見まして、ここ一年或いは一年半のうちには、むしろこれが不足を來たす、或いは輸入されなければならないという情勢に相成るであろうと我々は存じておるのであります。その意味におきまして、今度、銅の補給金を外すと同時に我々がとりましたところの手当は、今日ありまするところの、先程御指摘の滯貨のうち約一万トンを、大体アメリカから輸入しますところの、日本へ入つて來るC・I・F値段に相当する金額を以て融資する、こういう形で、我々の斡旋によりまして、すでに融資は進行いたしておるのであります。一万トンでありまするから約十四億円でありますが、この程度の融資が進行いたしておるということを申し添えて置きたいと思うのであります。それと同時に從來計上してありませんでした探鉱費特に銅の探鉱費を計上する。今度の補正予算にも大体六千万円の探鉱費が計上いたしてあるのであります。それからして、探鉱費の問題にそのまま入つてしまいましたが、御承知のように探鉱費は從來は金につきまして約千四百万円と記憶いたしておりますが、千四百万円の探鉱費が計上されておつたのでありますが、今回は補正予算について六千万円の銅の探鉱費を計上して、尚、來年度におきましては一億二千万円の探鉱費を計上いたしておるようなわけであります。その外、黒鉛、石綿等につきましても多少の探鉱費を計上いたしておるような次第であります。大体一メートル当り八千円と我々は推定いたしまして、その半額の四千円を計上いたしました額が一億二千万円、こういうことに相成つておる次第であります。非鉄金属について、いろいろ例えば今後の補給金の打切りその他によつて三万五千人の失業者が出る、こういうお話でありますが、この点もさようなことを言われておることを私は承知いたしております。併しながらこれに対しましては、我々といたしまして一方に今後将來必要であろうと想定されまするところの金の採取に対しまして、特にこれが奬励の手段をとりたい。御承知のように只今は採金額は約二トン半乃至三トンであります。これを三年間の計画といたしまして十トン程度に引上げて行きたいということを考えております。例の鴻ノ舞或いは串木あたりはすでにその準備に著手いたしておるようなわけでありまして、殊に我々は青化精煉所の設備その他に対して融資の方法を講じて、直接融資の方法を現に行なつておることを申し添えて置きたいのであります。
それから御指摘の硫化鉱の問題でありますが、硫化鉱は、來年度はできるだけ多くの肥料を作りたい、できれば輸出にも振向けたい、かように考えております。大体肥料を百八十万トンくらい作る、そのうち十万トンくらい輸出に振向けたいと考えておりますので、從つて硫化鉱につきましては特にその増産を奬励するの方法をとりたいと考えておるのであります。只今硫化鉱の輸入云々のお話がありましたけれども、昨年度の形勢においては、今年度十万トンを輸入する必要があろうかというので、十万トンの輸入を計画いたしたのでありますが、その後、硫化鉱の成績が非常によろしいので、本年度の十万トンもこれを差止めるという措置をとつたのでありますが、すでに二万五千トンだけは輸入済でありましたので、あとの七万五千トンというものはこれが輸入を取止めた、ころいう情勢であります。尚、來年は硝安の輸入をもこれを差控えまして、国内の硫化鉱の増産に待とう、こういうように考えておりますので、硫化鉱の増産とそれから採金の政策、この二つによりまして、恐らくその三万五千人と称せられるところの田中さんのいわゆる失業者というものは私は大いに緩和されるのではないか、かように考えております。私に対する御質問のお答えといたします。
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〔椎井康雄君発言の許可を求む〕
○議長(松平恒雄君) 椎井康雄君。
○椎井康雄君 本員は経済復興五ケ年計画発表中止に関する緊急質問の動議を提出いたします。
○小林勝馬君 椎井君の動議に賛成いたします。
○議長(松平恒雄君) 椎井君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。椎井康雄君。
〔椎井康雄君登壇〕
[後略]